秘められた願い~もしも10年後にまた会えたなら~

宮里澄玲

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 12月24日のクリスマスイブ。
 午前中に私たちは役所へ向かった。今日はたまたま土曜日の開庁日だったので、窓口で胸を高鳴らせながら婚姻届を提出した。
 書類の不備や書き漏れがないかどうか係の人が確認をした後、無事に受理され、私たちは晴れて夫婦になった。
 「おめでとうございます、どうぞお幸せに」と係の人に笑顔で言われ、2人ではにかみながら「ありがとうございます」とお礼を言った。
 
 私の引っ越しが終わったのが先週の日曜日で、今日まで実家で過ごした。その間に婚姻届提出の際に必要な書類などを用意し、駿さんが保証人欄にお父様の名前が記入済の用紙を持って私の実家に来て、お父さんに名前を書いてもらった後、私たちはあのガラスペンを使って(お母さんに、まあ綺麗ね~色違いのお揃いなのね! と冷やかされながら)、自分たちの名前を記入をしたのだった。  

 役所を出たその足で、前に指輪を貰ったジュエリーショップに行った。ここで結婚指輪も買うことにしたのだ。
 お店にいたのはあの時と同じ人で、店内に入ると、にこやかな笑みを浮かべた。
 「いらっしゃいませ。先日は誠にありがとうございました。本日は何かご所望のものがおありでしょうか」
 「今日結婚したので指輪を見に来ました」
 駿さんが言うと、店員さんの顔がぱぁっと明るくなり、
 「まあ、それはおめでとうございます! こちらがマリッジリングのコーナーでございます。どうぞごゆっくりご覧になってください」
 と、私たちを案内してくれた。

 色々見て着けさせてもらった中で気になったのは、プラチナのV字のリング。翼を広げたようなラインが美しく、真ん中に小さなダイヤが1つなので普段着けていても華美になりすぎず、いいなあと思った。
 駿さんも気に入ってくれ、サイズも直さずに大丈夫だったのでこれに決めた。
 「結婚おめでとうございます。どうぞお幸せに」
 「ありがとうございます」
 また祝福の言葉を貰って本当に嬉しかった。
 
 店を出ると駿さんが腕時計に目をやった。
 「ちょうどいい時間だな」
 通りかかったタクシーに手を挙げて乗り込むと、駿さんが有名な高級ホテルの名前を運転手さんに告げた。
 もしかしてそこでランチかな、と思って尋ねると、何と一泊するのだと…! しかもスイート!! 事前に何も聞かされてなかったので驚きのあまり口をパクパクさせていると、
 「ダメ元でホテルに聞いてみたらたまたまキャンセルが出て取れたんだ。せっかくの記念日なんだ、式も披露宴もなしだし、旅行もすぐには行けない代わりにこれくらいは贅沢しないとな。それに、引っ越し作業も全然手伝えなかったから、美沙絵にゆっくり休んでほしいんだ。レストランもディナーのコースを予約してあるから」
 私のために…ああ、嬉しい…!
 「…駿さんだってすごく忙しかったのに…。ありがとうございます…。あんな高級ホテル、一生縁がないと思っていました…夢みたいです!」
 駿さんが微笑みながら私の手を握ると耳元に口を寄せた。
 「…ゆっくり休んでって言ったけど、ごめん、やっぱり朝まで寝かせられないかもしれない」
 「…っ!」 
 その意味に、かあぁぁぁっとなる。軽く睨むと、駿さんはただ笑うだけだった。
 
 ホテルを目の前に、はぁ…と感動のため息しかでない。閑静な一等地に建つ、堂々たる佇まい、広々とした大庭園、高台にあるので夜は美しい夜景が一望できるだろう。本当によく予約が取れたな…。大きなツリーがロビーに、至る所にクリスマスの飾りが上品に施されている。
 チェックインまでまだ少し時間があったので、ホテル内のカフェレストランでランチをすることにした。個室が空いていたのでそこに案内された。夜はフランス料理のコースということなので、ランチはサンドウィッチとケーキのセットにした。やはり高級ホテルだけあって、サンドウィッチのパンがふわふわで柔らかく、具材も豊富で本当に美味しかった。ケーキも甘ったるすぎず上品な味わいで、大満足だった。
 
 レストランを出ると、クリスマスの装飾が美しく施された庭園内を散歩した。歩いていると一角にイタリア風の立派なドーム型のパーゴラがあった。駿さんが私の手を引いてそこに向かった。
 私に向かい合った駿さんが神妙な面持ちになった。 
 「…美沙絵、慌ただしかったが、今日無事に結婚できて本当に嬉しい。心から感謝する」
 一度、ふっ…と軽く息を吐くと私の手を取った。
 「私、海堂駿は、ここにいる海堂美沙絵を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓います」
 私の目から涙が一筋零れた。
 「…私、海堂美沙絵は、ここにいる海堂駿を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓います」
 駿さんがリングケースを開けて私のリングを取ると、左手の薬指にゆっくりと指輪をはめ、そこに唇を付けた。
 涙で愛しい人の顔が霞んでしまったが、私も少し震える手で駿さんの指に指輪をはめた。
 「…私がこれまでに好きになったのは、ただ1人…。海堂駿さん、あなただけです。10年前も、今も、そしてこれから先も、私の想いは変わりません。あなただけを心から愛しています」
 「…! 美沙絵、俺も一生、お前だけを全力で愛するよ…」
 駿さんが私の腰に手を添えるとゆっくりと身を屈めてきたので、目を閉じ、誓いのキスを交わした。

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