洪鐘祭でキス

壺の蓋政五郎

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洪鐘祭でキス 14

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「手続きはお願いしたい。雅恵、ごめんなさい」
 横田から電話を切った。折角覚えた国際電話の仕方、もう外国に電話をすることもなくなる。電話の前の壁に貼ってある厚紙に主要な連絡先が手書きしてある。下から二番目に中国にいる横田の滞在先が書いてある。雅恵は太書き細書き両用のマジックの太書きのキャップを外した。二本線でなぞったが中国の中の字が消え残った。中の字を四角に塗りつぶした。

 安満岳は快晴だった。
「景色いいねえ、気持ちいい」
 目的を忘れて観光を楽しんでいる。それだけ山頂からの眺めは絶景である。
「ほんとね。海に囲まれているって安心感がある」
 雅恵が景色を楽しんでいる。
「鎌倉も海があるやろ?」
 聖が愛に訊いた。聖も悟も愛と誠二、里美と亨の関係は知らない。誠二は伝えておけばよかったと悔んだ。
「聖君は毎日漁に出るの?」
「ああ、お天気任せ、やけん日曜も祝日も無し。海があれとりゃ休み。気楽ばってん不安定」
 聖が真っ白い歯を見せて笑った。愛は自分が初めて知る世界の人だと思った。鎌倉にはいない、まるで異次元の新鮮さを感じた。
「イルカとかクジラとか会うの?」
 里美が悟に訊いた。
「ああ、イルカは年中合う、クジラも時々。イルカは友達もおる、一緒に泳ぐったい」
 悟も白い歯を出して笑った。日に焼けて肌が黒いせいかより白く見える。歯が白いといい人のように感じる。誠二と亨は自然に逆らわず生きる逞しさと、海や山を愛するやさしさに敵わないような気がした。もし自分達が若い女なら、聖と悟に魅かれていくのも当然かもしれないと羨ましくもあった。
「聖、ぼちぼち白山神社に案内してあげんねえ。陽が陰ると山は寂しゅうなるけん」
 聡子が言った。白山神社は隠れキリシタンが信仰していた。迫害を受けながらも、仏教寺院を崇拝するためと隠し作った祠で信仰を続けていた。その祠の前に来た。
「雅恵さんと二人にしてくれん」
 聡子が言うとみんなが神社に向かった。
「雅恵さん、相馬先生と不思議な体験ばしたんはここばい。今雅恵さんが立ちよー場所に相馬先生が立ちよらした」
 雅恵は一瞬右足を上げた。そしてしっかりと踏みしめた。左足も同様に踏んだ。相馬を追い掛けて北鎌倉駅からタクシーを無賃乗車し、大船駅で切符も買わずに改札に飛び込んだ。そしてホームの端で立ち尽くしたあの日が鮮明に浮かんだ。祠を見上げる。
「雅恵さん、一緒に祈ってみようか。もしかしたらあん時んごと教会ん中に入るるかもしれん。つまらんなら諦めよう」
 聡子がやさしく言った。雅恵が頷いた。
「あたし、お祈りの作法が全く分かりません。教えてください」
 生まれてこの方キリスト教と関わったことがない。土地柄もそうだが仏教とスクラム組んで商売をしていた家系である。
「父と  子と  聖隷の  み名によって  アーメン」
 聡子がやって見せた。
「もう一度いいですか?」
「父と  子と  聖隷の  み名によって  アーメン」
 聡子はふくよかな掌で水を掬うような優しい動きで十字を切った。雅恵は真似て呟いた。
「一番大切なんは神様ば信じることばい。雅恵さんは仏教徒でん、神様は天で通じ合うとーと思う」
 雅恵が頷いた。そして祈った。
「父と  子と  聖隷の  み名によって  アーメン」
 二回繰り返して祈りを捧げた。数秒間手を合わせ相馬のことを想った。目を開けて天を見上げた。変わらぬ快晴の空だった。二人は顔を見合わせて笑ってしまった。
「雅恵さん、気ば落とすような言い方ばいばってん、あたし達にはそん力は無かんやなか。相馬先生と一緒に祈ったけん不思議な体験ばしたんじゃなかとですか?あたしはそう思う」
「そうですかねえ」
 雅恵は聡子に諭されても納得がいかなかった。それは今年の4月に愛が異次元体験をしている。その時相馬はいない、愛と二人だけである。二回目は愛と里美、それに茶屋の女将と4人だった。何よりその後、愛は一人で異次元に入っている。
「はっ」
 雅恵は息をのんだ。もしや愛にその力があるのではないだろうか。
「どうされました?」
「はい、うちの愛が異次元体験をしました。愛と一緒の時に鐘突き男が出て来たんです。今年三回体験しましたがいずれも愛がいました」
「もしかして愛ちゃんにそん力があるとかもしれんばい。相馬先生と同じ力ば持っとー」
 子猿が遊んでいるような声が聞こえた。愛達が戻って来た。雅恵と聡子は愛を見つめた。
「どうしたのおばあちゃん?」
 答えることが出来ない。
「固まっているよ二人共」
 里美が言った。
「聖、悟、おばあちゃんが不思議な体験ばしたことは話した。ばってんおばあちゃんに特別な力があったわけやなか。相馬先生が導いてくれたと今雅恵さんと二人で確信した。そして愛ちゃん、雅恵さんから聞いて愛ちゃんに相馬先生と同じ力があるんやなかかと思うたと。自分でそがんこと感じたことなか?」
 急に振られた愛は戸惑った。その力は雅恵にあるものとばかり考えていたからである。雅恵が相馬を慕う気持ちと60年前の約束を果たそうとする相馬の想いが一致して起きた現象だと決め付けていた。しかしよく考えてみると自分一人で異次元に行った。雅恵が一緒じゃなくても不思議体験をした。
「やってみようか」
 愛がぽつんと言った。一瞬間が開いた。
「危険だと思う、もしここで同じことが起きたら取り返しがつかない。帰る日も決まっている。それまでに愛ちゃんが戻らなければどうする。止めた方がいい」
 誠二が現実的な視点から判断した。
「夏休み中に帰ればいいんじゃない。毎日親にはラインしてるし、あたしは問題ないよ。ここまで来て、チャンスがあれば試そうよ。そのための旅行じゃない。おばあちゃんを元カレに会わすためのプロセスだわ。10月の洪鐘祭に元カレが来てくれるかもしれない、その布石を逃す手はないわ。誠二や亨は仕事があるから先に帰ればいいわ。あたしは残る」
 里美が言い切った。
「里美」
 雅恵が里美の手を取った。
「誠二、悪いが俺も残る。里美たちを残して帰れない。仕事より優先するべきことだと思う。ここでおばあちゃん達を守れなければ生きてる資格がないような気がする」
 亨が里美に続いた。
「山口さん達はどう考えますか?危険を冒してまで異次元に拘るか?愛ちゃんは異次元で彷徨っていました。たまたま、本当に運よく、引き摺り出せたと言うのが現実です。もしここで同じように異次元に吸い込まれ、すぐに戻れればいいけど、もし戻らなければ誰が責任を取るんですか?聡子おばあちゃん、聖、悟、そうだろう、そんな危ない事してまで試す必要がどこにあるんですか?」
 誠二は焦っていた。自分だけが浮いているように感じた。もし長引けば仕事の約束はどうやって断るとか、消防の集まりに行けないとか、そんな日常が浮かんでは消える。
「おいは雅恵おばあちゃんの好きにさせてやればよかと思う」
「おいもだ、急ぐことはなかごと思う」
 聖と悟が続けて答えた。
「誠二君、おうちん考えはもっともだ。正論やと思う。家ば守る立場にある男はそれぐらいしっかりした考えば持っとーと女は安心出来る。ばってん誠二さん、おうちにも夢があるやろ、そん夢んために60年思い続けた雅恵さんに叶えちゃりたかと思うと。それには特別な力ば持った愛ちゃんが欠かせん。愛ちゃんに相馬先生と会うて雅恵さんの思いばしっかり伝えてもらいたか。愛ちゃんはきっと帰るる。神様がそがんことはせん。こん齢になるとね、少しだけ神様に近うなるけん若か時に感じんじゃったことが感じたりすると。分かって誠二君」
 誠二は愕然とした。自分の考えが全否定された。神輿保存会でも消防団でも、若手のリーダー、末は山ノ内を背負って立つと煽てられてのぼせていただけだと分かった。現実に追われた夢のない男だとレッテルを張られてしまった。
「誠二、お前は山ノ内に必要な男だ、山ノ内を頼む」
 亨に宥められると余計辛くなった。
「今日は観光客も多かし一旦引き揚げよう。そして明日ん朝、日ん出と同時に戻ろう。今晩一杯やりながら、行く人は行く、行かん人は行かんば明日ん出発までに決めればよかっさ」
 聡子がまとめた。下山は言葉を忘れたように誰も喋らない。

 愛が生まれたのは平成18年、鎌倉祭りの日だった。
「私は家にいるよ。いつ生まれるか分からないからね」
 雅恵はパレード見学を断っていた。
「そうですか、私も栄子に付いていてあげたいんですけど囃子から離れられなくて」
「いいのよ俊司さん、栄子もその方が安心してるよ。あなたが町内のために動いてくれるからあのおてんばも鼻が高いのよ」
 俊司が初めて高宮家を訪れた時、アロハシャツにゴム草履だった。ニヤニヤして口の利き方もへらへらで高宮家から総スカンを喰らった。二回目の訪問も同じ格好ならこの家の婿に迎え入れることはなかっただろう。しかしバリバリのスーツにピカピカの革靴、そして家の草刈りを始めアパートの帳簿までささっと片付けてしまった。それに対しての対価を求めるわけでなし、無欲で献身的だった。一家の印象はガラッと変わり、どうか来てくださいと迎え入れる側に回った。結果は予想以上の婿だった。活動的でその上知的である。協調性があり何より優しい。地域住民からも高宮の婿殿と慕われている。
 病院から電話があったのは昼過ぎだった。タクシーで藤沢の産科に行くとまさに猿のような赤ん坊が泣いていた。栄子を産んだ時もそうだったが人類の祖先は猿に間違いないと思った。
「栄子」
 雅恵が栄子の枕元に立つ。
「お母さん」
 嬉し涙のつもりが親子の契り涙になってしまう。親はいつまでも親で、子はいつまでも子であると確信する瞬間である。
「頑張ったね」
「ありがとう」
 生まれるまでの不安が吹き飛んだ。
「母子ともに健康です。おめでとうございます」
 医者の駄目押しに更に嬉し涙が溢れ出る。雅恵と栄子は生まれるまで男女どちらかは秘密にしていた。雅恵が俊司に電話を入れる。呼び出した瞬間に出た。
「無事生まれましたよ。先生が母子ともに健康ですと太鼓判を押してくれました」
 俊司は携帯を握り締めて泣いた。
「お義母さん、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
 俊司の太鼓が止まって笛が困っている。
「おい、婿殿、生まれたのか?」
 囃子保存会の会長が目を丸くした。俊司が頷いた。万歳をした。
「よし俺が変わる、お前はすぐに行け」
 俊司から撥を受け取った。
「いや会長、私が太鼓を放り出したら逆に栄子に叱られますよ」
「ばか野郎、行ったら分かる。女房なんてのはそんなもんだ。早く行け」
 追い出されるように若宮大路を跨いで反対車線からタクシーを拾った。囃子の半纏に半股、白足袋姿の俊司が病院に入る。
「栄子」
「あなた」
 嬉しくて涙が止まらない。
「あなた、囃子は?」
「会長に追い出された」
「ありがとう」
「栄子、頑張ったね」
「うん、あなたのお陰よ。どっちだか知りたくないの?」
「栄子が生んでくれた子だ。どっちでもいい、神様からの授かりものだから」
「あなた、あなたに似てくれればいいわ」
「栄子に似たらいいと思う。美人の娘になるぞ」
「あなたに似た方がいいわ、優しくて頭のいい人に育つは」
「栄子の方がいいに決まってるさ」
「あなた似がいいの」
「神様、栄子似にしてください」
 雅恵は聞いているのが馬鹿らしくなり病室からそっと抜け出した。

 愛は両親より祖母の雅恵に懐いた。小学校の授業参観も雅恵に来るようねだった。また、俊司の影響もありボランティアに興味を持った。中学生になると父の俊司とボランティア活動に出掛けるようになった。親子で災害地域に出向いた。冬場には山村の年寄り宅に雪掻きにも出掛けた。こうして愛は人の為に生きることを生きがいに感じ始めていた。弱い物を見るとほっとけない。学校で虐めらえている子にはすぐに寄り添った。学年が上の虐めっ子にも逃げずに立ち向かった。中学二年の時だった。クラスメイトが家出をした。学校では虐められ家庭では相手にされない。その子を捜し歩き夜中になってしまった。藤沢のゲームセンターで不良に囲まれてたのを見つけた。
「美鈴、何やってるの?帰るよ。お母さん心配しているよ」
「愛、どうしたのこんな夜中に、おばあちゃんに怒られちゃうよ。あたしは平気、これからドライブ」
 不良少年の腕にぶら下っている。
「駄目だよ美鈴、帰るよ」
 愛は美鈴の腕を引っ張った。
「おい、放せ。それとも一緒に行きたいのか?誘われないからやきもち焼いているんじゃないのか?」
 不良少年が愛の肩に手を回した。
「触んないでよ、美鈴、帰るよ」
 美鈴を強引に引き離した。不良グループ4人に取り押さえられた。高宮家では捜索願を出すかどうか迷っていた。
「美鈴って子が家出したって捜しに行ったのよ」
 栄子が心配で右往左往している。
「落ち着け栄子、愛は強いから大丈夫だ」
 励ます俊司も動悸が激しい。
「どこか行きそうなとこはない?お母さん聞いていない?」
「美鈴って子が藤沢のゲームセンターに出入りしている話は訊いた。何度か迎えに行ったことがあるらしい」
「よし、行きましょう」
 俊司が買い替えたばかりの軽自動車で藤沢に向かった。
「あそこですよ、深夜営業のゲームセンターは」
 俊司が車を反対車線のガードレール沿いに横付けした。雅恵が降りて走る。国道だから車の往来も激しい。今まさに車に引きずり込まれようとしている愛がいた。
「愛」
 不良少年が一瞬ひるんだ。その隙に愛が美鈴の手を引いた。不良少年の手が伸びたが愛がその手を払った。
「美鈴走るよ」
 道路の反対側で俊司が手を振っている。ガードレールを跨いだ。左右を見ずに俊司の軽自動車に向けて走った。大型トラックがクラクションを鳴らした。急ブレーキを踏んだが間に合わない。
「あああっ」
 栄子の断末魔の叫びが国道を真っ二つに割いた。雅恵も俊司も目を瞑った。不良少年の車は逃げ去った。トラックはぶつかった位置から車二台分進んで止まった。トラックの運転手が降りて車の前に出る。いない。車の下を覗き込む。いない。
「おばあちゃん」
 美鈴の手をしっかりと握り締めた愛が呼んだ。愛と美鈴はぶつかった位置のガードレールの歩道側に立っていた。運転手がふーっと安堵の溜息でアスファルトにへたり込んだ。完全にぶつかっていたとみなが諦めていた。

「ああっ」
 雅恵が半身起こした。
「雅恵さん、どうかしたと?悪か夢でも見たんじゃなかとですか」
 隣で寝ている聡子が心配した。
「ああっ、そうかもしれない、きっとそうなんだ」
 雅恵が呟いた。
「想い出したことでもあると?」
「安満岳の祠の前で、聡子さんが言ったこと」
「なんやったっけ?」
「愛に不思議な力があると言う話です」
 雅恵は克明に話した。聡子はやっぱりと頷いて合点がいった。
「間違いなか、愛ちゃんは神様に選ばれた人たい」
 翌日誠二は一人で帰宅することになった。
「みなさん、すいません。本当は一緒に雅恵おばあちゃんの夢を叶えるために残ることを優先すべきだと、昨夜一晩考えました。ですが帰ることにしました。現実から抜け出せない自分が情けないと思います。でも普通に生きていきたいんです」
 誠二はみんなの前で挨拶した。
「いいのよ誠二君。それが普通の考え方だと思う。ここまであたしの我儘に付き合わせてしまってごめんね。あなたは山ノ内を背負う人材、これからもお願いします」
 雅恵が深く礼をした。
「誠二」
 亨がハグした。二人の間には友情以上の関係が成立していた。
「亨、頼む」
 誠二がハグを返した。
「誠二君、気ば付けて帰らんねえ。平戸口まで悟に送ってもらわんねえ。ライン友達になったけんお祭りんことビデオで送ってくれんね」
 聡子が誠二の手を握った。悟の車に乗り込む誠二は項垂れていた。
「さあ、お日様が上がる前に出発しよう。日ん出と同時にお祈りばしよう」
 聡子の号令で出発した。聡子は努めて明るく振る舞っているが内心は誠二の心配が胸中をざわつかせていた。それは雅恵も愛も同じである。もし異次元に入って戻れなかったらどうなる。誠二の言い残した言葉がぐさっと胸に刺さった思いで登山をしている。
「愛、元気出して、大丈夫、もし取り残されたらあたしがまた助けてあげるから」
 里美だけが不安を感じていない。
「ありがとう里美、里美と友達になれてよかった」
 愛が礼を言った。海が朝やけで輝いている。
「あれが黒島、大きな天主堂がある」
 聖が愛に教えた。
「きれいな島ね」
「黒島天主堂って立派な教会がある。ひいひいお爺さんはあそこの生まれ」
「行ってみたい、そんな教会で結婚式挙げたい」
 愛の言葉に聖が照れた。そして祠の前に到着した。
「愛ちゃん、準備はかんまんか?あたしは神様ば信じとーと。愛ちゃんはきっと帰って来る。雅恵さんの思いば相馬先生に伝えてくれん」
 実は聡子も不安だった。愛が戻らなければどうやって責任を取ればいいのか。いや責任など取れるはずがない。
「うん。おばあちゃん行って来る。あたし、相馬先生にきっちりと話してみる」
 愛は相馬に恋をしてしまった。そのことを聡子には伝えていない。相馬に会って、自分か雅恵かを確認するつもりである。
「愛、お前には不思議な力がある。相馬先生と同じ力だと思う。いいかい、きっと戻ってくるんだよ。おばあちゃんは、どっちでも受け入れるから」
 愛が頷いた。愛を中心にみんなが輪になった。
「父と  子と  聖隷の  み名によって  アーメン」
 聡子が祈り、みなが続いた。4回祈った時だった。風向きが変わった。空がぼやける。眩暈がした。空のぼやけが晴れると教会の中に居た。ステンドグラスの下に外国人の神父がいる。愛の前まで進んで来た。愛を告解部屋に連れて行った。その時また空がぼやけた。眩暈がする。ぼやけがとれると茜色の朝焼けだった。里美が告解部屋があった辺りに走った。亨が続いた。里美が一回転して空を見た。
「愛、愛、愛」
 里美が空に向かって呼んだ。
「もう一回祈ろう。教会に戻るるかもしれん」
 五人は輪になって祈った。3回、5回、8回。
「聡子さん、ありがとう、愛は異次元に行きました。あの子は神様から特別な力をいただいた子です。これからは空からあたし達を見守ってくれるでしょう」
 雅恵が泣き崩れた。聡子が重なった。
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