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第4話:トドメの接吻は突然に
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前回、謎のロボットを倒した私はまたも調子に乗ってしまったが、この時"ある勢力"に目をつけられたのを当時は知らなかった・・・
「突然ですがここで緊急速報です───秋津市を訪れていた佐川健議員が交通事故で亡くなりました」
そのニュースを聴いて私は気になり、事件現場へと向かった。
事件現場に着いた私は、警察に気づかれないよう野次馬の一人として行動した。
どうやら佐川議員が乗っていた車はガードレールを突き破って崖から転落したようで、雨も降ってない今、スリップでそうなったではなかった。
「〔ただの事故・・・だったのかな〕」
私はそう思っていたがやっぱり納得いかない。ただ、手掛かりがない今はただの事故として考えるしかなかった。
私が現場から帰ろうとしている途中、ある人とすれ違う。その人をよく見ると濃い緑色の婦人服を着た女性だった。
「〔甘い・・・匂い?〕」
すれ違う時に感じた甘い匂い・・・それは香水の匂いにも感じるが、私はそういうの詳しくないから気にも留めなかった。
それから次の日も犠牲者が出る。今度は出張で秋津市に来ていた会社員で、あまりにも最初の被害者とは接点が無さ過ぎた。
レディブラストとして現場に赴いた私が取り敢えずやる事とすればまず警察官に許可を取る事だが、案の定それは無理だった。
ヴィランから地元を救っても待遇が変わる事が無いし、だからと言って私も見返りを求める為にヒーローやってる訳じゃないのだが、ロボットを倒したのだから信用はして欲しいなぁ。
結局、功績はあっても認められないのが現実───現場を調べることは諦めたが、ある人に訊くことはできるだろう。私命の恩人だし。
その夜、私は警察署から出て来た兄の前に姿を現した。
レディブラストとして現れた私を見て、彼は驚きを隠せなかったがすぐ冷静になってくれた。
「何しに来た?」
「威圧感出すの止めてよ・・・今起きてる事件について訊きたいんだけど」
彼はそれを言われて、少し悩んだ後に自分の車に私を乗せた。
車を走らせて向かった先は秋津市の観光名所であるポートタワーで、その駐車場で情報共有が始まった。
彼はあまり乗り気じゃなかったが、助けてもらった借りと言う事で渋々捜査状況を教えてくれた。
一人目と二人目の被害者に接点は無いものの、彼らに共通しているのは"ある女性"と接触していた事で、その女性と会ってから数日経った後に謎の死を遂げているそうだ。
あともう一つ共通しているのがなんと、香水のような"甘い"匂いで、それぞれ現場や遺体から発せられていた。
私はその情報を聞いて、ある事を思い出す。それは事件現場から帰る時にすれ違った謎の女性だ。
もしかしたら女性じゃなくてオカマかもしれないけど、とにかくその人物からも香水みたいな甘い匂いがした。
「甘い匂いか・・・」
彼は考え込んだ後、自分の推理を私に言った。
「恐らくだが、そいつは"I.S.W."だ」
何それ?って思う人も多いだろうから解説すると、I.S.W.とはInternational.Special.Wanted.の略で、日本語に直すと"国際特殊指名手配者"なんだよ。これは特殊な装備や能力で犯罪をした人の事を指す言葉で、あの爆弾魔とかもそれに当てはまる。
「えっ、そうなの?」
「いや、顔が知られている訳ではないが情報はあるからな。確か、"毒を操る能力者"だと言われてる」
毒を操る能力者なんて、一番今回の事件に適している。ただ、顔が分からない今、どうやって探すかが問題だった。
しかし、情報はそこで止められ、私は帰るよう促された。あともう一押しだったのに。
その日以降、次々と起こる謎の突然死は秋津市の住民を震撼させ、様々な措置が取られた。
それは私の高校も同じで授業は午前の4時間・・・ただし外出禁止だけどそんな規則守る人の方が少ないよ。
私は橙子の買い物に付き添っていた───わけじゃなくて彼女から強引に連れてこられた。
「先生とかにバレたらお終いだよ・・・」
「もーっ、ミカったら怯え過ぎだよ」
彼女から冗談に思われて溜め息を吐く。しかし、今考えるとこの出来事が犯人と巡り合う事になるとは思わなかった。
化粧品店から出てお望みのものを見た橙子はご満悦だったが、当の私は先生に見つかるのが怖くて辺りを見渡していた。
そんな事をしながら歩いていると、ある人とぶつかってしまう。私は尻餅をついてしまった。
「あっ、すみません」
橙子が私とぶつかった相手に謝る。私も謝ろうとして顔を上げると、そこにいたのはすれ違った時のあの人物だ。
「いえいえ、私も前を見ていなくてごめんなさいね───あれ、どうしたの?」
私は目を丸くしてその人物を見ており、友達の声でやっと我に返った。
「あ、す、すみません・・・」
我に返って気弱な謝罪をする私。そんな私を相手は許してくれたようだ。
そして相手は去っていき、私達二人は帰ろうとしていた。
「もーっ、周りを見張るのは嬉しいけど近くに気付けないのは駄目だよ!」
「ご、ごめん・・・」
「それにしても、あの人よくあんな格好で暑くないよね。どう見ても服も香水もブランド品っぽいし───」
彼女が話し終える前に倒れ込む。それに驚いた私は声をかけるが応答無しで、異様な寒気が背筋を凍らせた。
周りを見渡すと、周りの人は次々と倒れる。事態を把握できない私は動揺してしまうが、無理矢理冷静になって、手首の脈を測ることにした。
幸いな事に脈はあり、別の人も同じように脈は動いていた。
意識を失っているだけだと言うことに安心した私だが、これで犯人は確定した───そうと決まればレディブラストの出番だ。
トイレに駆け込み、制服を脱ぎコスチューム姿になる。これで準備万端だ。
私は辺りを見て、先程すれ違った女性を探す。恐らく、まだ遠くに入ってないはずだ。
そしてようやく発見する。彼女は出入り口から優雅に出ようとしていた。
私は彼女を威勢よく呼び止め、相手も足を止めた。
「貴女が連続殺人事件の犯人ね」
「・・・まさか、私の能力が効かない人がいるとはね」
彼女は振り向いて私と対峙する。しかし帽子の奥からは余裕そうな不敵な笑みが見えていた。
「大人しく捕まるなら私も危害は加えないわ」
「ごめんねお嬢ちゃん、私捕まる気ないから」
そう言って再び出入り口を方を向いて歩く彼女にイラっときた私は、浮遊して急接近し、彼女の肩を掴んだ───が、それが一番の過ちだった。
彼女は振り向いて私の口に接吻する。普通こんな事になったら顔を赤くするのがお約束なんだけど、そうはいかなかった。
「またねお嬢ちゃん、辛いだろうけどすぐ慣れるから」
彼女は去っていくが、私のは麻痺して動かない。身体が酸素を受け付けず、口からは泡を吐き出し、その苦しみに涙が出てくる。相当辛いけど声を出す事も出来ず、そのまま悶絶した。
意識が朦朧とする中、防護服を着た人達が続々と私の周りに現れて、何かを話していた。
「レディブラストに対するワクチンは?」
「あります」
「よし、効力が出ればいいが・・・」
そうして私は意識は切れた。
それからしばらくして目醒めると、そこは何処かの部屋で、コスチュームは着たままで、マスクもウィッグもつけたままだ。
身体の調子は良くなっており、先ほどの苦しみが嘘のようだった。
私がいた部屋はベッドと簡易的な机のみが置かれているだけで、その机の上には自分の物とは別のスマホが置いてあった。
忘れ物かに思われたが、私が触れるとすぐ画面のロックが解除される。そこにアプリは必要最低限なものしかなく、メッセージのアイコンに1件表示されていた。
そのアプリを開くとメッセージの送り主は"緊急用"という名前で、内容について私は驚愕した。
『立花未可矢並びにレディブラストに伝える。君や我々が追っている"マダムヴァイパー"は、秋津駅で大規模なテロ行為を行おうとしている。
もしこれを阻止できなければ数多くの犠牲者が出てしまう。それだけは我々も避けたい。だから力を貸してほしい』
なんで私の正体を知っているのか───そしてこの送り主は何者なのか考えることは多いが、ヴィランが本当に向かったとなると危険だ。
私はその部屋から出て空を飛んだ。
先ほどいた場所はテントのようで、周りにも多くのテントが張ってあった。
恐らく先ほどの毒でやられた人達を隔離するためだろう。もうこれ以上犠牲者を増やさない為にも私は空を飛び、ヴィランのいる場所へと向かった。
駅前にたどり着いた私は閑散としたその光景に驚く。
いつもは人がいる場所だが、今は無法地帯のような一面が視界に広がっていた。
後の祭りだったのだろうか、しかしあの女性をこのまま放って置けない私はそのまま駅の中に入って行った。
駅の渡り廊下まで歩いていると、そこに奴はいた───彼女は偶然鉢合わせとなっても驚かず私を見据えていた。
「まだ生きていたのね、"あの機関"からワクチンでももらった?」
「お生憎様───えっ?」
彼女がそこまで把握してるとは思わなかったし、"あの組織"についてもよく分からない。強いて分かることはスマホを支給されて指示してきたって事ぐらいだ。
「───貴女は騙されているのよ、レディブラスト」
「そんなこと言われても騙されないって・・・」
「いいや、貴女にワクチンを打ったその組織は、私にこの街へ毒を散布することを命令したのよ。
そして毒に冒された人々にワクチンを与える事で、莫大な利益が生まれる───そんな算段よ。
でも、貴女にワクチンを打って寄越したということは私はもう用済みってことね」
私はその言葉を聞いて戦意を失いかける。もしこの話が本当なら、この人も被害者なのだ。
「だからね、貴女にこっち側へ来て欲しいのよ。私達は似たもの同士だから、一緒に組織を倒しましょう」
そう言って彼女は私に手を差し伸べる。恐らくこの人も知らない内に特殊な力を持ってしまった人なんだ───と、思っていた矢先邪魔が入った。
窓からドローンが現れる。しかし、普通のではない、武装したドローンだった。
武装ドローンは両翼に付けた機関銃で発砲し始めた。
マダムヴァイパーは逃げ、私は置き去りになる。しかし不思議なのはドローンが攻撃しているのは私ではないようで、彼女の事を集中して狙っていた。
私は彼女を追いかけ、隣にある都心ビルのホールに辿り着く。ドローンは追いかけて来なかったが、その代わり驚くべきことを耳にした。
「申し訳ありません"教授"、武装ドローンの邪魔が入り、レディブラストの勧誘に失敗しました───はい、H.S.の名の下に」
彼女は通信ではっきりと教授の名前を言う。ますます彼女に対して怪しさが増した。
隠れていた私は顔を出して彼女に気付かせる。私の心はもう決まったのだ。
「レディブラスト、貴女も生きていたのね」
「さぁ、一緒に協力して───」
「断るわ」
「どうして?」
「貴女は毒で大勢の犠牲を出した。そんな人を私は許しておけない」
彼女はため息を吐きながら、コートのボタンを一つ一つ外していった。
「貴女って人は・・・」
彼女がそれを言うと、ホールにあったテーブルの一つが私めがけて投げられる。手で投げたんじゃない、鞭を使って投げたんだ。
彼女は婦人服を脱ぎ捨て、正体を現した。
光沢がかった緑色のスーツは毒々しい女ヴィランのようで、私が欲しかったドミノマスクまで付けている。しかも長い髪まで緑色なんて、どこまで緑好きなんだろうかこの人。
「私の名前は"マダム"ヴァイパー、邪魔をするなら貴女を殺す」
「"マダム"って事は"おばさん"なの?」
「おばぁ・・・っ!!」
彼女はその言葉に対して顔を赤くして激昂した。
「失礼ね、私まだ23歳なの!!このっ───生かして返すか!!」
彼女は腰のホルスターから拳銃を取り出し、私に撃つ。しかし私は空を飛んで回避した。
そんな余裕な私はサウンドブラストを放つが、相手も相手で避ける。しかも、私が撃つのと同時に周りにあるテーブルや椅子を投げて阻止してきた。
優位性を取っていたにも関わらず、ふとしたところで気を抜いてしまった私は椅子に当たって床に落ちた。
「いったぁ・・・」
立ち上がろうとした私だが、追い打ちをかけるように首に鞭が巻き付いた。
徐々に息が出来なくなり、視界がぼやけ始める。蛇のように巻き付く鞭を外そうとサウンドブラストを目の前のヴィランに撃とうとしたが、いつものように発射できなかった。
「貴女の能力があれば世界を変えられるのに・・・馬鹿な民衆の為に身を滅ぼす必要なんてないのよ?」
その言葉を聞いて、私はある事を思い付く。ヒーローとしては最低な事だけどね。
「・・・私が間違っていたよ」
間違えを認めた私は俯きながらその言葉を呟き、そして案の定の答えが返ってきた。
「分かってくれるのね!!」
彼女は嬉しそうに近づき、締め付けから私を解放した。
「さぁ、私と一緒に───」
「騙されたね」
私はニヤリと笑って彼女に掴みかかった。
「卑怯な戦法を・・・」
「貴女だってやってんじゃん」
「うるさい!」
私は頭から奥に放り投げられるが、なんとか着地し、そのまま形勢を立て直すが、身体に鞭が巻き付き、拘束されてしまった。
「次は貴女を殺す、今度は甘くない苦しい死でね!!」
しかし、そんな事で負ける私じゃない。私は空を飛び、彼女から逃れようとする。もし私の推測が本当なら今回の敵はそれ程の力は持ってないはずだ。
その推測は的中し、彼女は耐えられず鞭を手放し、私は回転して鞭を外した。
「このっ・・・」
彼女はホルスターから拳銃を再び取り出して撃とうとするが、私は急接近してサウンドブラストを放った。
そしてしばらくした後、警察の特殊部隊が突入し、皆防護服を着ていた。
そこにいたのは鞭で身体を縛られたマダムヴァイパーだけで、警察達は収納袋に彼女を被せた。
当の私はすぐ現場から逃げ、ショッピングモールに置きっ放しの荷物を回収した。
テントはもう撤収済みで、最後まで謎だった"あの組織"については解明されなかったが、それについてはまた後ほど───。
「突然ですがここで緊急速報です───秋津市を訪れていた佐川健議員が交通事故で亡くなりました」
そのニュースを聴いて私は気になり、事件現場へと向かった。
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どうやら佐川議員が乗っていた車はガードレールを突き破って崖から転落したようで、雨も降ってない今、スリップでそうなったではなかった。
「〔ただの事故・・・だったのかな〕」
私はそう思っていたがやっぱり納得いかない。ただ、手掛かりがない今はただの事故として考えるしかなかった。
私が現場から帰ろうとしている途中、ある人とすれ違う。その人をよく見ると濃い緑色の婦人服を着た女性だった。
「〔甘い・・・匂い?〕」
すれ違う時に感じた甘い匂い・・・それは香水の匂いにも感じるが、私はそういうの詳しくないから気にも留めなかった。
それから次の日も犠牲者が出る。今度は出張で秋津市に来ていた会社員で、あまりにも最初の被害者とは接点が無さ過ぎた。
レディブラストとして現場に赴いた私が取り敢えずやる事とすればまず警察官に許可を取る事だが、案の定それは無理だった。
ヴィランから地元を救っても待遇が変わる事が無いし、だからと言って私も見返りを求める為にヒーローやってる訳じゃないのだが、ロボットを倒したのだから信用はして欲しいなぁ。
結局、功績はあっても認められないのが現実───現場を調べることは諦めたが、ある人に訊くことはできるだろう。私命の恩人だし。
その夜、私は警察署から出て来た兄の前に姿を現した。
レディブラストとして現れた私を見て、彼は驚きを隠せなかったがすぐ冷静になってくれた。
「何しに来た?」
「威圧感出すの止めてよ・・・今起きてる事件について訊きたいんだけど」
彼はそれを言われて、少し悩んだ後に自分の車に私を乗せた。
車を走らせて向かった先は秋津市の観光名所であるポートタワーで、その駐車場で情報共有が始まった。
彼はあまり乗り気じゃなかったが、助けてもらった借りと言う事で渋々捜査状況を教えてくれた。
一人目と二人目の被害者に接点は無いものの、彼らに共通しているのは"ある女性"と接触していた事で、その女性と会ってから数日経った後に謎の死を遂げているそうだ。
あともう一つ共通しているのがなんと、香水のような"甘い"匂いで、それぞれ現場や遺体から発せられていた。
私はその情報を聞いて、ある事を思い出す。それは事件現場から帰る時にすれ違った謎の女性だ。
もしかしたら女性じゃなくてオカマかもしれないけど、とにかくその人物からも香水みたいな甘い匂いがした。
「甘い匂いか・・・」
彼は考え込んだ後、自分の推理を私に言った。
「恐らくだが、そいつは"I.S.W."だ」
何それ?って思う人も多いだろうから解説すると、I.S.W.とはInternational.Special.Wanted.の略で、日本語に直すと"国際特殊指名手配者"なんだよ。これは特殊な装備や能力で犯罪をした人の事を指す言葉で、あの爆弾魔とかもそれに当てはまる。
「えっ、そうなの?」
「いや、顔が知られている訳ではないが情報はあるからな。確か、"毒を操る能力者"だと言われてる」
毒を操る能力者なんて、一番今回の事件に適している。ただ、顔が分からない今、どうやって探すかが問題だった。
しかし、情報はそこで止められ、私は帰るよう促された。あともう一押しだったのに。
その日以降、次々と起こる謎の突然死は秋津市の住民を震撼させ、様々な措置が取られた。
それは私の高校も同じで授業は午前の4時間・・・ただし外出禁止だけどそんな規則守る人の方が少ないよ。
私は橙子の買い物に付き添っていた───わけじゃなくて彼女から強引に連れてこられた。
「先生とかにバレたらお終いだよ・・・」
「もーっ、ミカったら怯え過ぎだよ」
彼女から冗談に思われて溜め息を吐く。しかし、今考えるとこの出来事が犯人と巡り合う事になるとは思わなかった。
化粧品店から出てお望みのものを見た橙子はご満悦だったが、当の私は先生に見つかるのが怖くて辺りを見渡していた。
そんな事をしながら歩いていると、ある人とぶつかってしまう。私は尻餅をついてしまった。
「あっ、すみません」
橙子が私とぶつかった相手に謝る。私も謝ろうとして顔を上げると、そこにいたのはすれ違った時のあの人物だ。
「いえいえ、私も前を見ていなくてごめんなさいね───あれ、どうしたの?」
私は目を丸くしてその人物を見ており、友達の声でやっと我に返った。
「あ、す、すみません・・・」
我に返って気弱な謝罪をする私。そんな私を相手は許してくれたようだ。
そして相手は去っていき、私達二人は帰ろうとしていた。
「もーっ、周りを見張るのは嬉しいけど近くに気付けないのは駄目だよ!」
「ご、ごめん・・・」
「それにしても、あの人よくあんな格好で暑くないよね。どう見ても服も香水もブランド品っぽいし───」
彼女が話し終える前に倒れ込む。それに驚いた私は声をかけるが応答無しで、異様な寒気が背筋を凍らせた。
周りを見渡すと、周りの人は次々と倒れる。事態を把握できない私は動揺してしまうが、無理矢理冷静になって、手首の脈を測ることにした。
幸いな事に脈はあり、別の人も同じように脈は動いていた。
意識を失っているだけだと言うことに安心した私だが、これで犯人は確定した───そうと決まればレディブラストの出番だ。
トイレに駆け込み、制服を脱ぎコスチューム姿になる。これで準備万端だ。
私は辺りを見て、先程すれ違った女性を探す。恐らく、まだ遠くに入ってないはずだ。
そしてようやく発見する。彼女は出入り口から優雅に出ようとしていた。
私は彼女を威勢よく呼び止め、相手も足を止めた。
「貴女が連続殺人事件の犯人ね」
「・・・まさか、私の能力が効かない人がいるとはね」
彼女は振り向いて私と対峙する。しかし帽子の奥からは余裕そうな不敵な笑みが見えていた。
「大人しく捕まるなら私も危害は加えないわ」
「ごめんねお嬢ちゃん、私捕まる気ないから」
そう言って再び出入り口を方を向いて歩く彼女にイラっときた私は、浮遊して急接近し、彼女の肩を掴んだ───が、それが一番の過ちだった。
彼女は振り向いて私の口に接吻する。普通こんな事になったら顔を赤くするのがお約束なんだけど、そうはいかなかった。
「またねお嬢ちゃん、辛いだろうけどすぐ慣れるから」
彼女は去っていくが、私のは麻痺して動かない。身体が酸素を受け付けず、口からは泡を吐き出し、その苦しみに涙が出てくる。相当辛いけど声を出す事も出来ず、そのまま悶絶した。
意識が朦朧とする中、防護服を着た人達が続々と私の周りに現れて、何かを話していた。
「レディブラストに対するワクチンは?」
「あります」
「よし、効力が出ればいいが・・・」
そうして私は意識は切れた。
それからしばらくして目醒めると、そこは何処かの部屋で、コスチュームは着たままで、マスクもウィッグもつけたままだ。
身体の調子は良くなっており、先ほどの苦しみが嘘のようだった。
私がいた部屋はベッドと簡易的な机のみが置かれているだけで、その机の上には自分の物とは別のスマホが置いてあった。
忘れ物かに思われたが、私が触れるとすぐ画面のロックが解除される。そこにアプリは必要最低限なものしかなく、メッセージのアイコンに1件表示されていた。
そのアプリを開くとメッセージの送り主は"緊急用"という名前で、内容について私は驚愕した。
『立花未可矢並びにレディブラストに伝える。君や我々が追っている"マダムヴァイパー"は、秋津駅で大規模なテロ行為を行おうとしている。
もしこれを阻止できなければ数多くの犠牲者が出てしまう。それだけは我々も避けたい。だから力を貸してほしい』
なんで私の正体を知っているのか───そしてこの送り主は何者なのか考えることは多いが、ヴィランが本当に向かったとなると危険だ。
私はその部屋から出て空を飛んだ。
先ほどいた場所はテントのようで、周りにも多くのテントが張ってあった。
恐らく先ほどの毒でやられた人達を隔離するためだろう。もうこれ以上犠牲者を増やさない為にも私は空を飛び、ヴィランのいる場所へと向かった。
駅前にたどり着いた私は閑散としたその光景に驚く。
いつもは人がいる場所だが、今は無法地帯のような一面が視界に広がっていた。
後の祭りだったのだろうか、しかしあの女性をこのまま放って置けない私はそのまま駅の中に入って行った。
駅の渡り廊下まで歩いていると、そこに奴はいた───彼女は偶然鉢合わせとなっても驚かず私を見据えていた。
「まだ生きていたのね、"あの機関"からワクチンでももらった?」
「お生憎様───えっ?」
彼女がそこまで把握してるとは思わなかったし、"あの組織"についてもよく分からない。強いて分かることはスマホを支給されて指示してきたって事ぐらいだ。
「───貴女は騙されているのよ、レディブラスト」
「そんなこと言われても騙されないって・・・」
「いいや、貴女にワクチンを打ったその組織は、私にこの街へ毒を散布することを命令したのよ。
そして毒に冒された人々にワクチンを与える事で、莫大な利益が生まれる───そんな算段よ。
でも、貴女にワクチンを打って寄越したということは私はもう用済みってことね」
私はその言葉を聞いて戦意を失いかける。もしこの話が本当なら、この人も被害者なのだ。
「だからね、貴女にこっち側へ来て欲しいのよ。私達は似たもの同士だから、一緒に組織を倒しましょう」
そう言って彼女は私に手を差し伸べる。恐らくこの人も知らない内に特殊な力を持ってしまった人なんだ───と、思っていた矢先邪魔が入った。
窓からドローンが現れる。しかし、普通のではない、武装したドローンだった。
武装ドローンは両翼に付けた機関銃で発砲し始めた。
マダムヴァイパーは逃げ、私は置き去りになる。しかし不思議なのはドローンが攻撃しているのは私ではないようで、彼女の事を集中して狙っていた。
私は彼女を追いかけ、隣にある都心ビルのホールに辿り着く。ドローンは追いかけて来なかったが、その代わり驚くべきことを耳にした。
「申し訳ありません"教授"、武装ドローンの邪魔が入り、レディブラストの勧誘に失敗しました───はい、H.S.の名の下に」
彼女は通信ではっきりと教授の名前を言う。ますます彼女に対して怪しさが増した。
隠れていた私は顔を出して彼女に気付かせる。私の心はもう決まったのだ。
「レディブラスト、貴女も生きていたのね」
「さぁ、一緒に協力して───」
「断るわ」
「どうして?」
「貴女は毒で大勢の犠牲を出した。そんな人を私は許しておけない」
彼女はため息を吐きながら、コートのボタンを一つ一つ外していった。
「貴女って人は・・・」
彼女がそれを言うと、ホールにあったテーブルの一つが私めがけて投げられる。手で投げたんじゃない、鞭を使って投げたんだ。
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「"マダム"って事は"おばさん"なの?」
「おばぁ・・・っ!!」
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「失礼ね、私まだ23歳なの!!このっ───生かして返すか!!」
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そんな余裕な私はサウンドブラストを放つが、相手も相手で避ける。しかも、私が撃つのと同時に周りにあるテーブルや椅子を投げて阻止してきた。
優位性を取っていたにも関わらず、ふとしたところで気を抜いてしまった私は椅子に当たって床に落ちた。
「いったぁ・・・」
立ち上がろうとした私だが、追い打ちをかけるように首に鞭が巻き付いた。
徐々に息が出来なくなり、視界がぼやけ始める。蛇のように巻き付く鞭を外そうとサウンドブラストを目の前のヴィランに撃とうとしたが、いつものように発射できなかった。
「貴女の能力があれば世界を変えられるのに・・・馬鹿な民衆の為に身を滅ぼす必要なんてないのよ?」
その言葉を聞いて、私はある事を思い付く。ヒーローとしては最低な事だけどね。
「・・・私が間違っていたよ」
間違えを認めた私は俯きながらその言葉を呟き、そして案の定の答えが返ってきた。
「分かってくれるのね!!」
彼女は嬉しそうに近づき、締め付けから私を解放した。
「さぁ、私と一緒に───」
「騙されたね」
私はニヤリと笑って彼女に掴みかかった。
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「貴女だってやってんじゃん」
「うるさい!」
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「次は貴女を殺す、今度は甘くない苦しい死でね!!」
しかし、そんな事で負ける私じゃない。私は空を飛び、彼女から逃れようとする。もし私の推測が本当なら今回の敵はそれ程の力は持ってないはずだ。
その推測は的中し、彼女は耐えられず鞭を手放し、私は回転して鞭を外した。
「このっ・・・」
彼女はホルスターから拳銃を再び取り出して撃とうとするが、私は急接近してサウンドブラストを放った。
そしてしばらくした後、警察の特殊部隊が突入し、皆防護服を着ていた。
そこにいたのは鞭で身体を縛られたマダムヴァイパーだけで、警察達は収納袋に彼女を被せた。
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しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
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手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
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