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第10話:月光狂想曲
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10月───この月の最後にはハロウィンが待っている。しかし、この時の私が対峙している敵は一足早いハロウィンと言っていいだろう・・・
ある日の夜、私は街中を駆ける。この時の私はクライムファイターの如く路地裏を抜け、屋上へと飛び上がっていった。
満月の夜───綺麗な月の光が敵の存在を知らせる。そいつは電灯の上で女の人の首筋に牙を立てて、今にでも血を啜ろうとしていた。
奴は私が来た事に気付き、こちらに声を掛けた。
「おや? こんな夜に麗しき娘がもう1人・・・」
この時の私は、とある事情で顔に包帯を巻いている。軽い傷なら自然と治るが、この火傷は残り続けていた。
「その女性を離しなさい、さもないとお前を・・・」
腕にエネルギーを溜めながら警告する私に、奴は溜め息を吐いて電灯の上から降りた。
「折角の"食事"だったのに・・・」
「まるで"吸血鬼"みたいな事を・・・」
貴族のような格好で、顔立ちは若く整っており、長い白髪を後ろで一本に結んでいた。
黄色い瞳は怪しく光り、口には普通の歯には肉食動物のような2本の尖った牙・・・その男は吸血鬼だった。
しかし、この時の私はそんな事を信じていない。寧ろ吸血鬼のフリをしたヴィランだろうと思っていた。
奴は女性を静かに置くと、私の方に向かって話をした。
「君は・・・狩人かい?」
「・・・貴方を懲らしめるヒーローよ」
そう言い返すと、奴は笑う。確かにおかしいけど・・・あっちもおかしい。
「私は"カシリウス・ヴラム・ワラヴァニア"───以後お見知り置きを」
彼は右足を引き、右手を体に添え、左手を背中に隠し頭を下げる。いわゆるボウ・アンド・スクレープというやつで、よく紳士がやるやつ。
優雅に挨拶される中、私は右腕を引き、左腕を前に突き出して戦闘態勢をいじするが、調子狂う・・・その態勢のまま私は仕方なく自己紹介した。
「・・・レディブラスト」
「それは本名ですか?」
「そんなのどうだっていいじゃん」
「ははっ、まぁいいでしょう。どうです? 私から血を吸われ───」
「断る。吸血が食事だって・・・頭おかしいんじゃないの?」
そう言うと、彼は首を横に振りながら両手を上げて溜め息を吐いた。
「理解してもらえないとは残念です・・・では」
そこから戦闘が始まる。奴は右手に手刀を作って横に振るが、私は間一髪でしゃがみ、その後、転ばせる為に地上で回し蹴りをした。
しかし、奴は軽くそれを避けてしまい、私は立ち上がって体勢を整えた。
両手両足にチャージし、攻撃するものの、奴は余裕そうに回避し続け、私の心を惑わせた。
戦っている最中───徐々に霧が濃くなる。今日は秋津市に濃霧注意報など出ていない・・・というか、さっきまで霧が出る気配など無かった。
霧だらけになり、奴の姿が見えない。その中で私は周りを見渡すが、どこにも奴は見えない。
恐怖や警戒心から、周りにサウンドブラストを放つものの命中している感触が無い。徐々に体力を奪われ、私はその場に跪いた。
私の顎に布の感触が当たり、流れるまま見上げるとそこには奴がいた。
抵抗したいのにできない・・・私はそのまま立ち上がった後、スーツのジッパーを少し開けられ、奴の顔が首筋に近付き───注射針が刺さる感触がした。
その行為はすぐ終わり、奴は立ち去る。霧も何故か晴れており、決着をつけようと私が静止しようとした瞬間───重い鼓動と同時に私は座り込んだ。
「ああ、心配要りませんよ。貴女は"選ばれた"───」
奴はケープを翻してすぐに立ち去る。私の視界は真っ暗になり、そのまま倒れた。
渇いた───喉が渇いた。
水ではダメだ。血・・・血が欲しい。
欲しい、血が欲しい。
誰かがこちらに来る───そいつから血を貰おう。
───そんな事を考えて助けに来たI.S.M.A.の人達を襲ってしまったが、"ある人物"により阻止され、私は意識を失った。
そこからどれぐらい経ったのか分からないが、私はI.S.M.A.本部にいた・・・ベッドに拘束されて。
最初は意識が朧げだが、その時覚えている光景としては、その人物が自分の掌を切って、そこから出た血を私に舐めさせていた・・・恥ずかしいな。
そしてちゃんと意識を取り戻した時には血への渇きは無くなったものの、吸血鬼だという事で厳重に監視されていた。
拘束ベルトで動きも取れず、私は窮屈な思いとI.S.M.A.の人達からやっぱり信用されていないのかなという思い込みから辛くなっていた。
そんな時、ある男が部屋の中に入ってくる。私が拘束されているとは言え、恐れ知らず・・・しかし、ここは後々分かる。
「レディブラスト───いや、立花未可矢。気分はどうだ?」
黒い髪に色白の肌、しかも黒スーツに黒い革の手袋というクールな感じのイケメン・・・めっちゃタイプじゃん!!
あっ、話が脱線する。まぁ、彼の名はアルヴァンさん。前に枢木さんが言ってた恩人とは彼の事だった。
しかし、ここで疑問に思う人は思うだろう。何故彼は老けてないの?って。それは・・・後で分かるよ。
彼は北米支部からやって来た吸血鬼専門のアドバイザーのようで、秋津市にカシリウスが現れた事により、急遽来日してくれたそうだ。
どうやら吸血鬼化というのは、吸血した相手を殺せば元に戻る・・・らしいが、その確証は一度しか無く、不安でしか無かった。
彼は私を元気付けながらもエージェントや実働部隊と共にカシリウスを倒しに行くそうだが・・・この時の私は不安になっており、それはすぐ的中した。
I.S.M.A.の包囲作戦は失敗し、アルヴァンさんはカシリウスを1人で追跡中・・・なのだが、そんな奴はこっちに乗り込んで来た。
「レディブラスト───いや、"私の伴侶"」
「えっ・・・今なんて?」
「私の伴侶と言ったのですよ、立花未可矢。さぁ、その拘束を解いてあげましょう」
拘束を解かれ、自由になった私は恩を仇で返す様に戦闘態勢に入るが、その際に奴の瞳を見てしまい、吸血鬼特有の催眠にかけられて意識を失った。
意識が目覚めた頃には秋津市上空───奴は私を抱いて優雅に空を浮遊していた。
「お目覚めですかな、未可矢」
「・・・えっ、ここ何処? というか、何で名前知ってるの!?」
「血には記憶が刻まれているのですよ、私や一部の吸血鬼にはそれを知ることができる」
「あぁ、そう・・・そういう感じなんだ・・・」
ヒーローもヴィランもいるから吸血鬼がいても不思議じゃない・・・とは言え、こんな田舎に出るとは思わないでしょ!
「貴女はどうして人間共の味方をするのですか? 奴等はいずれ貴女を殺す」
「そう言われても・・・私は正義の味方として───」
「正義の味方をしたところで、正義が味方をしてくれるとは限らない───特に民衆というのはそういうものですよ」
「確かにそうだけど・・・」
「人間讃歌を謳い、我々の様な人外を殺す───そんな奴等の味方をした所で、貴女は淘汰される側に回るだけですよ」
「どうしてそんなこと言うの?」
「貴女が憧れるヒーロー、"キャプテン・サンダーボルト"を見てきたからですよ。彼は、何の力も持たない大衆の為に戦った・・・しかし、人間というのは残酷なもので、今まで彼が行ってきた事に対して掌を返して"偽善"だと批判した」
「そんな・・・」
「彼が今どうなったかは分かりません。人間とはそういう生き物なんですよ。貴女は特別な力に目覚めた、それは愚かな生物とは違うんですよ」
「で、でも・・・!」
そんな時だった。カシリウスがゆっくり落下する瞬間、一発の銃弾が彼の右肩を貫いた。
奴がその銃創に気を取られた一瞬の隙をついて私は蹴りを入れて浮遊し、奴はそのまま落ちていくものの、奴はそのまま道路を走っていった。
私は先を越して戦うものの、相手は傷を負っているにも関わらず余裕そうだった。
吸血鬼している私の感覚や身体能力はいつもより格段と鋭く、高くなっているがその反面、血を飲まないとそれを維持できなかった。
戦っている最中、車が猛スピードでこちらに向かってきており、私も奴もどちらも飛んだ。
宙で回転しながら回避した時、周りの状況がスローモーションに流れる───そして着地する頃にそれは解除された。
奴はポートタワーへと走って逃げ、私達を轢こうとした車から運転手が降りて来た。
「無事か!? さっきはすまない」
運転手の正体はアルヴァンさんで、私は咄嗟に大丈夫だと言った。
彼はカシリウスを追いかけており、途中で見失ったが本部に侵入されたとの報告を聞いて場所をすぐに探知───奴をライフルで撃ち抜いたのは彼だ。
しかし、ライフルでは無く今度は刀を車から取り出してポートタワーに向かおうとするが、ここで私、吸血衝動に悩まされてしまった。
「ほら、これを飲め」
彼が渡したのは輸血パックで、普通なら飲むのに抵抗するものの、血に渇き過ぎた私はすぐに飲んだ。
「ありがとうございます・・・これは?」
「I.S.M.A.の面々が採った血だ。注射嫌いとか血液型が合わない奴は採ってないけどな」
そう言われて涙ぐみそうになるが、そんな暇はない・・・私は心の中で感謝しながら、元凶となる吸血鬼を退治しにいく事にした。
ポートタワー/シェリオン───此処は秋津市観光名所の一つで、約140m・・・今から向かう所は絶対に登る事が無い場所・・・そもそも登れない場所だ。
奴が登っていったシェリオンへ、いざ───と思ったらガラスに私の姿が映ってない。唖然とする私だが、奴を倒せば元に戻るだろうと思って気にしなかった。
「未可矢、俺の手を掴んでくれ」
これ言われた時、心の中で変な声出ちゃったよ・・・でも本当は頂上へ連れていってくれと頼まれているだけだった。
そのまま頂上へ飛び、私達はアンテナの所でケープを靡かせて立っているカシリウスと対峙した。
「・・・やはり理解できない。そこまでして愚かな者共を救おうとしますか」
「食事だと言って人を見下す貴方には解らないでしょうね!」
「人間が豚や鳥などの動物を殺して食べるのと、何ら変わらないでしょう?」
「そっ、それは・・・」
「なら、貴方は食べ物の気持ちになった事がありますか? 無いなら私も同じことをしても問題ない筈だ」
その言葉に私は口を重くするが、アルヴァンさんはそんな私を尻目に奴と話した。
「貴様の御託はいい、さっさとやろう」
「ほぅ? 誰かと思えば"アルヴァン"では無いですか。忌まわしき"混血児"とまたここで会う事になるとは」
「カシリウス・・・貴様の事は今度こそ地獄に送ってやる・・・」
「出来るものなら、ですが」
クールなイメージから一転、まるで戦いに飢えているかの様な物言いに私は困惑した。
刀を抜き、剣戟を繰り広げる。当然私も参加するが、奴は徒手空拳が得意なのか、どちらの攻撃も防ぎ、受け流した。
そんな中、再び吸血衝動が私に襲い掛かる。しかも良い所で。
カシリウスはアルヴァンさんの攻撃一回転して回避した後、蹴りをいれて彼は落ちそうになっていた。
その時、何を話していたのか分からないが、彼は奴の足を引っ張って一緒に落ち、私は衝動を我慢してそこに駆け付けた。
2人は落下するものの、そんな時に鍔迫り合いをしており、そんな中、彼は奴に刀を刺すものの、それでも奴は余裕そうに首を絞めた。
血、血が欲しい・・・そんな時にある事を思い付き、私は落ちていく2人を追う様に落ちて行った。
奴が彼を手刀で貫こうと腕を上げるが、その腕にガブリ───私は噛み付いた。
私の方に気を取られた事で、首を絞めていた手を緩め、アルヴァンさんは解放される。彼はコートの裏側から銀色の杭を取り出してそれをカシリウスの心臓に刺す───しかし、まだ差し込みが甘く、彼は私にトドメを頼んだ。
「───未可矢、やれ!!」
私は腕から口を離し、奴の前に向かって腕にチャージし、杭底を殴り付けた。
杭が強く刺さるのと同時に、奴は目を大きく見開く。そして、穏やかな表情を私に見せて、燃える様な感じで灰になっていった。
奴を倒し、私は地面にいつもの着地をする。そしてアルヴァンさんもかっこよく着地を決めた。
刀は地面に刺さっており、彼はそれを拾って片手でクルクルと回した後、それを鞘にしまった。
もう少しで夜明け───私も奴と同じく灰になるのかな・・・と哀しくなっていたが、ガラスには私の姿がちゃんと映っており、吸血衝動も無くなっていた。
やったぁ!!と喜んでいると、何処からとも無く私達を呼ぶ声───枢木さんだ。
「2人とも無事で良かった・・・」
「俺が死ぬ訳ないだろ?」
「まぁ、貴方は"アルヴァン・ザ・ダークスレイヤー"だもんね」
私はアルヴァンさんの名前に困惑した。
「えっ、だ、ダークスレイヤー・・・?」
「えっ、嘘ついたの?」
「話がややこしくなるからな」
「どういう事ですか?」
簡単に説明すると、ダークスレイヤーというのは、吸血鬼や人狼など、いわゆる闇の住人の天敵としてこの通り名が付いているが・・・人間と吸血鬼のハーフで設定盛り過ぎでしょ・・・でも好き。
そんな私は蚊帳の外に、2人は話を始めた。
「ちなみにマックスウェルさんは元気?」
「ああ。あの狼野郎、余程あの街が好きなようで」
「ふふっ。自警団活動なんて、未可矢さんと同じだね」
「でもアイツは身体引き裂くけどな」
ドン引きしそうな話はそのまま続き、私達は帰っていった。
その後、私は包帯を外すと火傷は治っており、吸血鬼化した時の身体的な特徴は無くなった事から、私は家に帰してもらった。
当然、家族からも心配されたし、学校に行くと色々な人から訊かるしで大変だったけど・・・その興味はすぐに冷め、私は日常生活に戻ることが出来た。
そして31日───この日はハロウィンで、私は橙子と一緒に学校へ向かっていた。
「ねぇ、駅前でハロウィンフェスやるって。仮装していかない? 私魔女の格好して行こうかな~」
「〔なら私はレディブラストの格好でも───〕」
そんな時、私の側を誰かが通り過ぎる。その瞬間、聞き覚えのある声が私の耳に入った。
「また逢いましょう、レディブラスト───いえ、立花未可矢」
奴は倒した筈───そう思って私は振り向くものの、そこに奴の姿は無かった。
「ミカ、どうしたの・・・?」
「えっ? ああ・・・何でもないよ」
「・・・そう? まぁいいや。でさ───」
そうして私は再び歩き始める。
カシリウス───今なら貴方の言う事も少しは解る。でも私は人を助ける為に正義の味方になった。
だから、もし貴方が何度復活しようが、私が何度でも相手になる───
ある日の夜、私は街中を駆ける。この時の私はクライムファイターの如く路地裏を抜け、屋上へと飛び上がっていった。
満月の夜───綺麗な月の光が敵の存在を知らせる。そいつは電灯の上で女の人の首筋に牙を立てて、今にでも血を啜ろうとしていた。
奴は私が来た事に気付き、こちらに声を掛けた。
「おや? こんな夜に麗しき娘がもう1人・・・」
この時の私は、とある事情で顔に包帯を巻いている。軽い傷なら自然と治るが、この火傷は残り続けていた。
「その女性を離しなさい、さもないとお前を・・・」
腕にエネルギーを溜めながら警告する私に、奴は溜め息を吐いて電灯の上から降りた。
「折角の"食事"だったのに・・・」
「まるで"吸血鬼"みたいな事を・・・」
貴族のような格好で、顔立ちは若く整っており、長い白髪を後ろで一本に結んでいた。
黄色い瞳は怪しく光り、口には普通の歯には肉食動物のような2本の尖った牙・・・その男は吸血鬼だった。
しかし、この時の私はそんな事を信じていない。寧ろ吸血鬼のフリをしたヴィランだろうと思っていた。
奴は女性を静かに置くと、私の方に向かって話をした。
「君は・・・狩人かい?」
「・・・貴方を懲らしめるヒーローよ」
そう言い返すと、奴は笑う。確かにおかしいけど・・・あっちもおかしい。
「私は"カシリウス・ヴラム・ワラヴァニア"───以後お見知り置きを」
彼は右足を引き、右手を体に添え、左手を背中に隠し頭を下げる。いわゆるボウ・アンド・スクレープというやつで、よく紳士がやるやつ。
優雅に挨拶される中、私は右腕を引き、左腕を前に突き出して戦闘態勢をいじするが、調子狂う・・・その態勢のまま私は仕方なく自己紹介した。
「・・・レディブラスト」
「それは本名ですか?」
「そんなのどうだっていいじゃん」
「ははっ、まぁいいでしょう。どうです? 私から血を吸われ───」
「断る。吸血が食事だって・・・頭おかしいんじゃないの?」
そう言うと、彼は首を横に振りながら両手を上げて溜め息を吐いた。
「理解してもらえないとは残念です・・・では」
そこから戦闘が始まる。奴は右手に手刀を作って横に振るが、私は間一髪でしゃがみ、その後、転ばせる為に地上で回し蹴りをした。
しかし、奴は軽くそれを避けてしまい、私は立ち上がって体勢を整えた。
両手両足にチャージし、攻撃するものの、奴は余裕そうに回避し続け、私の心を惑わせた。
戦っている最中───徐々に霧が濃くなる。今日は秋津市に濃霧注意報など出ていない・・・というか、さっきまで霧が出る気配など無かった。
霧だらけになり、奴の姿が見えない。その中で私は周りを見渡すが、どこにも奴は見えない。
恐怖や警戒心から、周りにサウンドブラストを放つものの命中している感触が無い。徐々に体力を奪われ、私はその場に跪いた。
私の顎に布の感触が当たり、流れるまま見上げるとそこには奴がいた。
抵抗したいのにできない・・・私はそのまま立ち上がった後、スーツのジッパーを少し開けられ、奴の顔が首筋に近付き───注射針が刺さる感触がした。
その行為はすぐ終わり、奴は立ち去る。霧も何故か晴れており、決着をつけようと私が静止しようとした瞬間───重い鼓動と同時に私は座り込んだ。
「ああ、心配要りませんよ。貴女は"選ばれた"───」
奴はケープを翻してすぐに立ち去る。私の視界は真っ暗になり、そのまま倒れた。
渇いた───喉が渇いた。
水ではダメだ。血・・・血が欲しい。
欲しい、血が欲しい。
誰かがこちらに来る───そいつから血を貰おう。
───そんな事を考えて助けに来たI.S.M.A.の人達を襲ってしまったが、"ある人物"により阻止され、私は意識を失った。
そこからどれぐらい経ったのか分からないが、私はI.S.M.A.本部にいた・・・ベッドに拘束されて。
最初は意識が朧げだが、その時覚えている光景としては、その人物が自分の掌を切って、そこから出た血を私に舐めさせていた・・・恥ずかしいな。
そしてちゃんと意識を取り戻した時には血への渇きは無くなったものの、吸血鬼だという事で厳重に監視されていた。
拘束ベルトで動きも取れず、私は窮屈な思いとI.S.M.A.の人達からやっぱり信用されていないのかなという思い込みから辛くなっていた。
そんな時、ある男が部屋の中に入ってくる。私が拘束されているとは言え、恐れ知らず・・・しかし、ここは後々分かる。
「レディブラスト───いや、立花未可矢。気分はどうだ?」
黒い髪に色白の肌、しかも黒スーツに黒い革の手袋というクールな感じのイケメン・・・めっちゃタイプじゃん!!
あっ、話が脱線する。まぁ、彼の名はアルヴァンさん。前に枢木さんが言ってた恩人とは彼の事だった。
しかし、ここで疑問に思う人は思うだろう。何故彼は老けてないの?って。それは・・・後で分かるよ。
彼は北米支部からやって来た吸血鬼専門のアドバイザーのようで、秋津市にカシリウスが現れた事により、急遽来日してくれたそうだ。
どうやら吸血鬼化というのは、吸血した相手を殺せば元に戻る・・・らしいが、その確証は一度しか無く、不安でしか無かった。
彼は私を元気付けながらもエージェントや実働部隊と共にカシリウスを倒しに行くそうだが・・・この時の私は不安になっており、それはすぐ的中した。
I.S.M.A.の包囲作戦は失敗し、アルヴァンさんはカシリウスを1人で追跡中・・・なのだが、そんな奴はこっちに乗り込んで来た。
「レディブラスト───いや、"私の伴侶"」
「えっ・・・今なんて?」
「私の伴侶と言ったのですよ、立花未可矢。さぁ、その拘束を解いてあげましょう」
拘束を解かれ、自由になった私は恩を仇で返す様に戦闘態勢に入るが、その際に奴の瞳を見てしまい、吸血鬼特有の催眠にかけられて意識を失った。
意識が目覚めた頃には秋津市上空───奴は私を抱いて優雅に空を浮遊していた。
「お目覚めですかな、未可矢」
「・・・えっ、ここ何処? というか、何で名前知ってるの!?」
「血には記憶が刻まれているのですよ、私や一部の吸血鬼にはそれを知ることができる」
「あぁ、そう・・・そういう感じなんだ・・・」
ヒーローもヴィランもいるから吸血鬼がいても不思議じゃない・・・とは言え、こんな田舎に出るとは思わないでしょ!
「貴女はどうして人間共の味方をするのですか? 奴等はいずれ貴女を殺す」
「そう言われても・・・私は正義の味方として───」
「正義の味方をしたところで、正義が味方をしてくれるとは限らない───特に民衆というのはそういうものですよ」
「確かにそうだけど・・・」
「人間讃歌を謳い、我々の様な人外を殺す───そんな奴等の味方をした所で、貴女は淘汰される側に回るだけですよ」
「どうしてそんなこと言うの?」
「貴女が憧れるヒーロー、"キャプテン・サンダーボルト"を見てきたからですよ。彼は、何の力も持たない大衆の為に戦った・・・しかし、人間というのは残酷なもので、今まで彼が行ってきた事に対して掌を返して"偽善"だと批判した」
「そんな・・・」
「彼が今どうなったかは分かりません。人間とはそういう生き物なんですよ。貴女は特別な力に目覚めた、それは愚かな生物とは違うんですよ」
「で、でも・・・!」
そんな時だった。カシリウスがゆっくり落下する瞬間、一発の銃弾が彼の右肩を貫いた。
奴がその銃創に気を取られた一瞬の隙をついて私は蹴りを入れて浮遊し、奴はそのまま落ちていくものの、奴はそのまま道路を走っていった。
私は先を越して戦うものの、相手は傷を負っているにも関わらず余裕そうだった。
吸血鬼している私の感覚や身体能力はいつもより格段と鋭く、高くなっているがその反面、血を飲まないとそれを維持できなかった。
戦っている最中、車が猛スピードでこちらに向かってきており、私も奴もどちらも飛んだ。
宙で回転しながら回避した時、周りの状況がスローモーションに流れる───そして着地する頃にそれは解除された。
奴はポートタワーへと走って逃げ、私達を轢こうとした車から運転手が降りて来た。
「無事か!? さっきはすまない」
運転手の正体はアルヴァンさんで、私は咄嗟に大丈夫だと言った。
彼はカシリウスを追いかけており、途中で見失ったが本部に侵入されたとの報告を聞いて場所をすぐに探知───奴をライフルで撃ち抜いたのは彼だ。
しかし、ライフルでは無く今度は刀を車から取り出してポートタワーに向かおうとするが、ここで私、吸血衝動に悩まされてしまった。
「ほら、これを飲め」
彼が渡したのは輸血パックで、普通なら飲むのに抵抗するものの、血に渇き過ぎた私はすぐに飲んだ。
「ありがとうございます・・・これは?」
「I.S.M.A.の面々が採った血だ。注射嫌いとか血液型が合わない奴は採ってないけどな」
そう言われて涙ぐみそうになるが、そんな暇はない・・・私は心の中で感謝しながら、元凶となる吸血鬼を退治しにいく事にした。
ポートタワー/シェリオン───此処は秋津市観光名所の一つで、約140m・・・今から向かう所は絶対に登る事が無い場所・・・そもそも登れない場所だ。
奴が登っていったシェリオンへ、いざ───と思ったらガラスに私の姿が映ってない。唖然とする私だが、奴を倒せば元に戻るだろうと思って気にしなかった。
「未可矢、俺の手を掴んでくれ」
これ言われた時、心の中で変な声出ちゃったよ・・・でも本当は頂上へ連れていってくれと頼まれているだけだった。
そのまま頂上へ飛び、私達はアンテナの所でケープを靡かせて立っているカシリウスと対峙した。
「・・・やはり理解できない。そこまでして愚かな者共を救おうとしますか」
「食事だと言って人を見下す貴方には解らないでしょうね!」
「人間が豚や鳥などの動物を殺して食べるのと、何ら変わらないでしょう?」
「そっ、それは・・・」
「なら、貴方は食べ物の気持ちになった事がありますか? 無いなら私も同じことをしても問題ない筈だ」
その言葉に私は口を重くするが、アルヴァンさんはそんな私を尻目に奴と話した。
「貴様の御託はいい、さっさとやろう」
「ほぅ? 誰かと思えば"アルヴァン"では無いですか。忌まわしき"混血児"とまたここで会う事になるとは」
「カシリウス・・・貴様の事は今度こそ地獄に送ってやる・・・」
「出来るものなら、ですが」
クールなイメージから一転、まるで戦いに飢えているかの様な物言いに私は困惑した。
刀を抜き、剣戟を繰り広げる。当然私も参加するが、奴は徒手空拳が得意なのか、どちらの攻撃も防ぎ、受け流した。
そんな中、再び吸血衝動が私に襲い掛かる。しかも良い所で。
カシリウスはアルヴァンさんの攻撃一回転して回避した後、蹴りをいれて彼は落ちそうになっていた。
その時、何を話していたのか分からないが、彼は奴の足を引っ張って一緒に落ち、私は衝動を我慢してそこに駆け付けた。
2人は落下するものの、そんな時に鍔迫り合いをしており、そんな中、彼は奴に刀を刺すものの、それでも奴は余裕そうに首を絞めた。
血、血が欲しい・・・そんな時にある事を思い付き、私は落ちていく2人を追う様に落ちて行った。
奴が彼を手刀で貫こうと腕を上げるが、その腕にガブリ───私は噛み付いた。
私の方に気を取られた事で、首を絞めていた手を緩め、アルヴァンさんは解放される。彼はコートの裏側から銀色の杭を取り出してそれをカシリウスの心臓に刺す───しかし、まだ差し込みが甘く、彼は私にトドメを頼んだ。
「───未可矢、やれ!!」
私は腕から口を離し、奴の前に向かって腕にチャージし、杭底を殴り付けた。
杭が強く刺さるのと同時に、奴は目を大きく見開く。そして、穏やかな表情を私に見せて、燃える様な感じで灰になっていった。
奴を倒し、私は地面にいつもの着地をする。そしてアルヴァンさんもかっこよく着地を決めた。
刀は地面に刺さっており、彼はそれを拾って片手でクルクルと回した後、それを鞘にしまった。
もう少しで夜明け───私も奴と同じく灰になるのかな・・・と哀しくなっていたが、ガラスには私の姿がちゃんと映っており、吸血衝動も無くなっていた。
やったぁ!!と喜んでいると、何処からとも無く私達を呼ぶ声───枢木さんだ。
「2人とも無事で良かった・・・」
「俺が死ぬ訳ないだろ?」
「まぁ、貴方は"アルヴァン・ザ・ダークスレイヤー"だもんね」
私はアルヴァンさんの名前に困惑した。
「えっ、だ、ダークスレイヤー・・・?」
「えっ、嘘ついたの?」
「話がややこしくなるからな」
「どういう事ですか?」
簡単に説明すると、ダークスレイヤーというのは、吸血鬼や人狼など、いわゆる闇の住人の天敵としてこの通り名が付いているが・・・人間と吸血鬼のハーフで設定盛り過ぎでしょ・・・でも好き。
そんな私は蚊帳の外に、2人は話を始めた。
「ちなみにマックスウェルさんは元気?」
「ああ。あの狼野郎、余程あの街が好きなようで」
「ふふっ。自警団活動なんて、未可矢さんと同じだね」
「でもアイツは身体引き裂くけどな」
ドン引きしそうな話はそのまま続き、私達は帰っていった。
その後、私は包帯を外すと火傷は治っており、吸血鬼化した時の身体的な特徴は無くなった事から、私は家に帰してもらった。
当然、家族からも心配されたし、学校に行くと色々な人から訊かるしで大変だったけど・・・その興味はすぐに冷め、私は日常生活に戻ることが出来た。
そして31日───この日はハロウィンで、私は橙子と一緒に学校へ向かっていた。
「ねぇ、駅前でハロウィンフェスやるって。仮装していかない? 私魔女の格好して行こうかな~」
「〔なら私はレディブラストの格好でも───〕」
そんな時、私の側を誰かが通り過ぎる。その瞬間、聞き覚えのある声が私の耳に入った。
「また逢いましょう、レディブラスト───いえ、立花未可矢」
奴は倒した筈───そう思って私は振り向くものの、そこに奴の姿は無かった。
「ミカ、どうしたの・・・?」
「えっ? ああ・・・何でもないよ」
「・・・そう? まぁいいや。でさ───」
そうして私は再び歩き始める。
カシリウス───今なら貴方の言う事も少しは解る。でも私は人を助ける為に正義の味方になった。
だから、もし貴方が何度復活しようが、私が何度でも相手になる───
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しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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