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第12話:雪下の血闘
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後悔する事は誰にでもある───私にとってヒーロー活動とは、憧れと同時に後悔の思いもある。自ら痛くて辛い思いはしないといけないし、見返りなんて求められない。しかも、ネット上では顔も名前も知らない人達から叩かれるし、正体バレる事も許されないから身近な人の前では、いつも通りの自分として振る舞わないといけない・・・だからこそ、正義の味方は孤独であるべきなのかもしれない。
12月上旬───私は橙子と一緒に遊ぶ約束をしていたのだが、2、3時間も遅れた挙句、苛立ちばかりが増していた。
理由は多々あるが、私がネットで誹謗中傷されている事実に気付いたからというのと、いつ起こるか分からない事件に対し気を張ってないといけないからだ。
何をしても最近楽しくない・・・この時の私にはその思いが強くあり、橙子との関係は次第にギクシャクし始めていた。
その出来事も次の日───私達は学校で会っても挨拶も交わさずにいた。
橙子は私の反対で友達は多く、誰とでも仲良くなれる陽キャだ。どうせ他の人と一緒に私の陰口でも言ってるのだろう・・・この時は憂鬱とした思いで生活していた。
学校からの帰り道、私は駅前に向かう・・・といっても特に理由は無いのだが。
ぶらぶら歩いていたいというのもあったが今は冬───凍った地面に足を滑らせてしまった。
転びそうになった瞬間、誰かが私を支える。一瞬の出来事過ぎて隣を見ると───
「───大丈夫?」
そこには黒髪ロングの綺麗な人がいて、私はその人の容姿に対して呆気に取られていた。
「は、はい・・・」
体勢を直して様子を見る。その人物は赤い光沢のロングコートを着ており、パッと見自分と同じ日本人かと思ったが、実際違った。
「えっと・・・ありがとうございます」
「良いのよ、これが私だから」
私はその人に一礼して足速に立ち去ると、そのままコーヒー店に入って、ホットのカフェオレを注文した。
椅子に座り、カフェオレを冷ます間、物思いに耽る。正直なところ、ヒーローというのが何なのかよく分からなくなっていた。
特別な存在に選ばれたと思って最初は嬉しかったし、ワクワクもあった───しかし、今は「こんな筈じゃない」と現実を否定したい気持ちがあった。
橙子と知り合ったのは中学1年の時で、その時から彼女はキラキラしていた。
性格も真逆で、しかも趣味も合わないのに、何故か仲良くなっていた・・・今考えると何でだろうと思う気持ちばかり強くなっていた。
そんな事を考えていると、突如スマホが鳴り出す。私はイライラを抑えながら電話に出て、藤堂さんに話しかけた。
「はい、未可矢です」
「立花、すまないがお前に出動して欲しい」
「どうして?」
「I.S.W.が現れた」
私は乗り気じゃないまま、制服からコスチュームへと着替える・・・正直寒いからコートを着てそのまま現場へと向かった。
現場へ辿り着くと、そこにはI.S.M.A.のエージェントが倒れており、彼等には身体に斬られた箇所があった。
「おやおや、来てしまいましたか」
その声を聞き、後ろを振り向くと、そこにいたのは───赤いロングコートで不気味なお面を被った人物だった。
民族衣装のようなお面を付けており、両手にはシャムシール・・・どんな感性をすればそんな格好になるのやら。
「その格好・・・マジなの?」
「ええ・・・これが私だから」
聞き覚えのある言葉を言った後、その人物は異名を名乗った。
「───私は"ソードダンサー"、貴女とあなたに協力する者達を殺せと命じられて此処へ来た」
「ふーん・・・殺せるなら殺してみれば?」
「その言葉、後悔しない?」
「そっちこそ───私を敵に回した事、後悔させてあげる」
私はすぐに戦闘体勢をとって謎の二刀流剣士と対峙する。奴はこちらに刀剣を振るい、私はそれを避けながら反撃の機会を窺った。
そして、反撃のチャンスを見つけ、サウンドブラストを放つ。相手は振りかぶった直後で、隙だらけ───これで勝ったと慢心してしまった。
───相手はサウンドブラストをさらっと避けた後、油断してしまった私に斬りかかる。私は避ける間も無く両腕を胸元でクロスさせて防御するものの、刃はコートやコスチュームを破って私の肌を斬りつけた。
切り傷による鋭い痛みに私は声を殺して涙目になる。このコスチュームには一応、防弾や防刃機能は付いていた筈だが、このヴィランの前では無力だった。
私の両腕から滴る血が凍った地面に零れ落ちる。サウンドブラストを放とうにも両腕を斬られたせいか腕が上がらない・・・しかし、奴には慈悲が無いのか、容赦無く私に斬りかかった。
私は痛みを抑えて回避に徹するが、それでも相手は私の動きを読んでいるようのか、私のみぞおちをヒールの踵で蹴り付けた。
みぞおちを蹴られ、異様な程の激痛が私を苦しめる。両腕の切り傷とはまた違った痛みで、私は耐え切れずにそのまま悶えながら地面に座り込んだ。
視界が揺らぐ。
口の中からは胃液が込み上げているのか酸っぱい味が口内に広がる。吐き気に襲われ、激しくえずいた。
ソードダンサーは足で私の顔を冷たい地面に押し付けた。
「どう? 殺されそうになる気分は?」
「このっ・・・!」
私は左腕にエネルギーを溜めてサウンドブラストを放とうとするが、刃が左手の甲に突き刺さり、私はその痛みに叫んだ。
しかも追い討ちをかけるように私の右手をヒールの踵で踏みつけ、両手にはそれぞれ違う痛みが私を襲った。
痛みと傷口から感じる寒さに耐えながらも私は目の前で勝ち誇るように立っているヴィランを睨み付けた。
殺してやる───ふと、頭の中でその言葉が浮かぶものの、ヒーローとしての矜持に反してしまう為、何とか殺意を抑えた。
「さぁ、ダンスはお終い。全力じゃないのは私への手加減? 自分を買い被り過ぎではないかしら?」
「く・・・このっ・・・」
「呆気なかったけど、悪く思わないでね───」
刀剣の先端が私のうなじに刺さろうとする瞬間、お巡りさんと思わしき声が聞こえた。
ソードダンサーは逃げていくかと思いきや───私の手から刀剣を引き抜き、お巡りさんの方へと向かっていく。そして、何発かの乾いた銃声と倒れるような音が聞こえた。
私が痛みに耐えながら後ろを振り返ると、そこには血溜まりの上に倒れたお巡りさんと、そんな彼を見下ろしているソードダンサーがいた。
「───貴女にチャンスをあげる」
睨み付ける私に奴はそう言った。
「クリスマス───その日までに私と踊り合える程の実力を付けなさい。もし約束を破るなら、貴女を二度と舞台に立てない姿にしてあげる」
ソードダンサーはそれを言って何処かへと立ち去る。私は奴を追いかけたかったが、動くと痛いせいか、まともに立ち上がる事が出来なかった。
ソードダンサーが逃げて少し経った後、私はI.S.M.A.の医療班に斬られたエージェントと共に本部まで運ばれて行く。現場の血は隠され、私達の事は隠蔽・・・現場に残ったのは、唯一の犠牲者となったお巡りさんだけだった。
エージェントの何人かが殉職する事になり、オフィス内では追悼式が行われる。簡易的ではあるものの、共に勤務してきた仲間が死ぬというのはとても心に刺さるものだ。
私も参加していたものの、守れなかった責任などもあってか、居心地の悪い状況が続いていた。
スーパーヒーローなのに。
私はヒーロー失格だ。
いやだ、私にばかり押し付けないで欲しい。
心にヒビが入っていく───しかし、それに私は気付かない。
いや、気付かないフリをしていたのかもしれない。
追悼式から次の日、私はいつも通り駅前に行く。特に深い理由は無く、人混みの中に流れるまま歩いていた。
自分の事で頭が一杯なのか、それとも当事者では無いからか・・・そんな事を考えても仕方ないのは分かっていた。
またいつものコーヒー店に行き、カフェオレを注文する・・・こんな事をしてても何も解決しないのは解ってる。ただ、私の中でも悩んでいた。
ヒーローとしての活躍は公に出来ず、私の能力を見た武雄くんやI.S.M.A.の面々は例外だとして、何も事情を知らない家族やしんゆ・・・いや、クラスメイトの橙子は私がレディブラストだという事を知らなかった。
そもそもこんな王道に付き合う必要ある?
不特定多数の人達に見せるならともかく、家族や友人に正体をバラした方が楽ではないか? ヒーローは常に孤独だなんて、いくらぼっちの私でも耐えられないよ。
考え事をしている中、スマホが鳴る。私は何を期待したのかスマホの画面を見て肩を落とす。I.S.M.A.からだった。
橙子からの着信かと思ってしまった私が馬鹿だった・・・I.S.M.A.からのメッセージを見ると、それはソードダンサーについての内容と一枚の画像だった。
その画像は秋津市駅前の何気無い人混みの写真に見えたが、明らかにこちら側へ視線を向けている人物がいた。
───私はその人物を知っている。ソイツは赤い光沢のロングコートを着た"あの人物"に共通していた。
ソードダンサーと戦った時に生じた疑問が確信に変わるが、この時の私では奴と戦うに値しない・・・また痛い思いをするのがオチだった。
───しかし、そんな時にある事を思い付いた私は本部へと向かい、その考えを実行した。
それから23日になり───この日は修了式で、明日から冬休み・・・橙子との関係はまだ悪いままだ。
私は自分の家がある天崎に向かおうと駅前に行くが───そこに奴はいた。
不特定多数の中に混ざって歩くソイツは、私の視線に気付いたのかこちらを見る。そしてこちらに向かってきた。
私は身構えそうになるが、まるでI.S.M.A.の情報とは別人の様な雰囲気だった為、私はあのメッセージが本当に信憑性のある情報なのか疑った。
「あら、また会ったわね───どうしたの、怖い顔して?」
「えっ、あっ・・・いや、すみません」
怪しまれない様に取り繕い、私は話を進めた。
「確かに奇遇ですね、今日はどちらへ・・・あっ、すみません」
あまりにも失礼な事だと思い、すぐに私は謝った。
「良いのよ、私はいつも通り散歩しているから」
「なるほど・・・」
やっぱりソードダンサーとは別人だ・・・そう思っていたが、私の嗅覚は香水の匂いとは別に"微かな鉄臭さ"を感じ取った。
「───あら、どうしたの?」
私は何でも無い様に再び取り繕うが、奴は私に衝撃的な言葉を放った。
「それとも私から"血の匂い"から感じ取ったかしら───"立花未可矢"さん」
「───なぜ私の名前を?」
「貴女を見かけた時、そう呼ばれていたから。でも、貴女にはもう1つの顔がある・・・そうでしょ?」
穏やかな表情から一転して、奴の表情は妖しげな微笑を浮かべる。
人を殺す事に慣れ、そして楽しんでいる表情であり、私はその表情を見て恐怖した。
戦闘態勢を取ろうとするものの、奴は私にそれは不要だと伝えた。
「ここで貴女と殺し合う気は無いわ。ここで争って不利になるのは貴女なのだから」
確かに奴の言ってる事は正しく、今私が手を出せば周りに被害が及ぶ可能性もあるし、何よりも正体がバレる・・・しかも奴はここで一悶着起こす気は本当に無いようだった。
「・・・あなたの目的は?」
「あの時と同じよ」
「なら、誰からの依頼? プロフェッサーから?」
「ええ、そうよ」
「・・・どうしてすんなり答えるの?」
「もう解ってるでしょ? 貴女は教授にとってキャプテン・サンダーボルト以来の脅威と認定され、だから私が派遣されたの」
憧れのヒーローの宿敵から脅威認定されるのは、認められたようで嬉しいが、それは同時にいつ殺されるのか判らないリスクを更に背負う事となった。
ここからは後戻りなど出来ない───私は動揺する気持ちを無理やり抑えながら話を聞いた。
「憶えているなら良いのだけど、25日までに私を倒せる位の力を付けなさい。それまでに私は待つから」
「待つって・・・何で?」
「うーん・・・貴女を気に入ったからかな」
意味の分からない事を言われて困惑するが、私はその条件をのんだ。
何でって思うだろうが、私にも解らない・・・奴はI.S.M.A.の職員さんや地元のお巡りさんを殺したヴィランだ。なのに私は奴の条件を素直にのんでしまった。
そして決着の日───私は奴から指定された目的地に向かう直前、ある人にメッセージを送った。
これまでヴィランと戦ってきたが、ソードダンサーは私が思っている以上に狂っている・・・何よりも、奴は殺しを楽しんでいた。
だからこそ、私は死を覚悟した───今度こそ倒せなければ私は殺される。そんな不安と恐怖があったからこそ、私は橙子にメッセージを送った。
死地へ向かう前に仲を戻したいと言うのもおかしな話だが、やっぱり未練があるままだと嫌だと言う気持ちがあった。
メッセージを送ったが、既読は付かない───まぁ、それもそうだよね。私はソードダンサーとの決闘をする為に指定された場所へと向かった。
指定された場所に到着し、私は奴と対峙する。奴はまだソードダンサーでは無く、私もマスクを外して左脇に抱えた。
「メリークリスマス───立花未可矢」
こんな時にでも冗談を言える奴に対し、私は憎しみを込めて睨み付けるが、それで動じる筈が無かった。
「あら、そんなに怖い表情して。良いわ、それでこそヒーローというものよ」
「本当に周りに人はいない?」
「ええ、この舞台に乱入してくる観客いない筈・・・まぁ、貴女のところの協力者達がちゃんと大人しくしてくれればだけど」
「それなら心配無いわ・・・その為に頭下げてきたもの」
「ふふっ、貴女は真面目なのね」
「お前みたいな奴が何をやらかすか判らない以上、下手に動けないと思って」
「まぁ、それが賢明よ───」
奴は部族のお面を被って二刀流のシャムシールを両手にソードダンサーへと変わり、私もマスクを被ってレディブラストになった。
両者がそれぞれ仮面を付けた所で戦いの火蓋は切って落とされた───ソードダンサーは先住民の様な奇声を出して私に向かって来る。私はコートの中に着ていたコスチュームのベルトから2本の短いスティックを取り出した。
剣の舞を回避し、一本のスティックを相手の腕に叩きつけて剣を落とさせる。しかし相手は私の膝下をヒールの踵で蹴り付けて動きを封じた。
───膝下から全身に痺れるような激痛が走り、私は泣きそうになるが、相手に慈悲など無い。剣の一振りがこちらに向かって来るものの、私は直感でそれを回避した。
相手は即座に落とした剣を拾って二刀流へと戻る。そして、私にそれを振り回した。
乱れている様で舞い踊る様な動き───それはまるで私の動きを読んでいるようにも思えた。
I.S.M.A.の技研班で作られた2本のスティックには何の効果も無い。しかし、弾力のある素材で作られている事から投擲に使い易かった。
私は1本のスティックを相手に投げ付けて相手は当然のようにそれを避ける。しかしスティックは壁に当たった反動でそれが私の方向へと跳ね返っていき、向かって来るソードダンサーの左肩に当たった。
痛みに跪く相手を追撃する様に、私は左腕にチャージして殴り掛かるが、相手は左に転がって回避し、剣を振って私の右腕に切り傷を付けた。
斬られた腕が痛い───血が白い地面に滴り落ちていく。しかし、それでも負ける訳にはいかない・・・私は痛みと涙を堪えて殴り掛かった。
戦い始めてからどれぐらい経ったのだろうか───お互い身体に傷を増やし、私の身体には至る所に斬られた跡が出来ていた。
「・・・しぶとい奴」
「・・・貴女もね」
そんな時に吹雪が吹き荒れ始めてしまい、視界が悪くなってしまう・・・タイミングが悪い。
しかし、私は拳を握りしめた後、呼吸を整えて瞳を閉じる。神経を研ぎ澄まし、五感で相手が何処にいるか索敵した。
まるでレーダーのように私とは違う鼓動が聴こえ始め、私はそこにサウンドブラストを撃ち込むと、ちゃんと命中した様で剣を落とした音が聞こえてきた。
私はその方向へ行き、再び立ちあがろうとするソードダンサーに馬乗りになって何度も顔を殴り付けた。
殴る毎にお面は割れ始め、ソードダンサーの顔半分が曝け出された。しかし、奴はそんな状況になっても怯えてなかった。
私は何度も何度も殴り付け、相手のお面を外す。奴の口の中は真っ赤になっており、私の拳は血で汚れていた。
「ふふっ・・・ははははっ!! 素晴らしいわ、貴女の暴力性は。それでこそヒーローよ」
「私を馬鹿にするな───!」
左腕にチャージして殴ろうとするが、その拳から血が滴っているのを見た瞬間、殴るのを躊躇った。
「───私は、例えお前の様な奴でも殺さない・・・」
そう言って奴から立ち上がった後、そのまま立ち去ろうとする。背後からは笑い声が聞こえるが、その声は次第に小さくなった。
───もう私には空を飛ぶエネルギーは残っていない・・・背中に重い物がのしかかる様に膝が地面に付いた。
血が白い地面に落ちていく───身体中が痛い。震えや涙が止まらない・・・死闘での緊張から解放されたせいだろうか?
銀世界の中、私は遠くに幻影を見る。それはヒーローをせず、普通に生活する自分。退屈ながらも最低限の生活が保障されている人生───クリスマスの日に何をやっているんだろうと思ってしまった。
とうとう私は雪の上に倒れ、視界が暗くなっていった───
12月上旬───私は橙子と一緒に遊ぶ約束をしていたのだが、2、3時間も遅れた挙句、苛立ちばかりが増していた。
理由は多々あるが、私がネットで誹謗中傷されている事実に気付いたからというのと、いつ起こるか分からない事件に対し気を張ってないといけないからだ。
何をしても最近楽しくない・・・この時の私にはその思いが強くあり、橙子との関係は次第にギクシャクし始めていた。
その出来事も次の日───私達は学校で会っても挨拶も交わさずにいた。
橙子は私の反対で友達は多く、誰とでも仲良くなれる陽キャだ。どうせ他の人と一緒に私の陰口でも言ってるのだろう・・・この時は憂鬱とした思いで生活していた。
学校からの帰り道、私は駅前に向かう・・・といっても特に理由は無いのだが。
ぶらぶら歩いていたいというのもあったが今は冬───凍った地面に足を滑らせてしまった。
転びそうになった瞬間、誰かが私を支える。一瞬の出来事過ぎて隣を見ると───
「───大丈夫?」
そこには黒髪ロングの綺麗な人がいて、私はその人の容姿に対して呆気に取られていた。
「は、はい・・・」
体勢を直して様子を見る。その人物は赤い光沢のロングコートを着ており、パッと見自分と同じ日本人かと思ったが、実際違った。
「えっと・・・ありがとうございます」
「良いのよ、これが私だから」
私はその人に一礼して足速に立ち去ると、そのままコーヒー店に入って、ホットのカフェオレを注文した。
椅子に座り、カフェオレを冷ます間、物思いに耽る。正直なところ、ヒーローというのが何なのかよく分からなくなっていた。
特別な存在に選ばれたと思って最初は嬉しかったし、ワクワクもあった───しかし、今は「こんな筈じゃない」と現実を否定したい気持ちがあった。
橙子と知り合ったのは中学1年の時で、その時から彼女はキラキラしていた。
性格も真逆で、しかも趣味も合わないのに、何故か仲良くなっていた・・・今考えると何でだろうと思う気持ちばかり強くなっていた。
そんな事を考えていると、突如スマホが鳴り出す。私はイライラを抑えながら電話に出て、藤堂さんに話しかけた。
「はい、未可矢です」
「立花、すまないがお前に出動して欲しい」
「どうして?」
「I.S.W.が現れた」
私は乗り気じゃないまま、制服からコスチュームへと着替える・・・正直寒いからコートを着てそのまま現場へと向かった。
現場へ辿り着くと、そこにはI.S.M.A.のエージェントが倒れており、彼等には身体に斬られた箇所があった。
「おやおや、来てしまいましたか」
その声を聞き、後ろを振り向くと、そこにいたのは───赤いロングコートで不気味なお面を被った人物だった。
民族衣装のようなお面を付けており、両手にはシャムシール・・・どんな感性をすればそんな格好になるのやら。
「その格好・・・マジなの?」
「ええ・・・これが私だから」
聞き覚えのある言葉を言った後、その人物は異名を名乗った。
「───私は"ソードダンサー"、貴女とあなたに協力する者達を殺せと命じられて此処へ来た」
「ふーん・・・殺せるなら殺してみれば?」
「その言葉、後悔しない?」
「そっちこそ───私を敵に回した事、後悔させてあげる」
私はすぐに戦闘体勢をとって謎の二刀流剣士と対峙する。奴はこちらに刀剣を振るい、私はそれを避けながら反撃の機会を窺った。
そして、反撃のチャンスを見つけ、サウンドブラストを放つ。相手は振りかぶった直後で、隙だらけ───これで勝ったと慢心してしまった。
───相手はサウンドブラストをさらっと避けた後、油断してしまった私に斬りかかる。私は避ける間も無く両腕を胸元でクロスさせて防御するものの、刃はコートやコスチュームを破って私の肌を斬りつけた。
切り傷による鋭い痛みに私は声を殺して涙目になる。このコスチュームには一応、防弾や防刃機能は付いていた筈だが、このヴィランの前では無力だった。
私の両腕から滴る血が凍った地面に零れ落ちる。サウンドブラストを放とうにも両腕を斬られたせいか腕が上がらない・・・しかし、奴には慈悲が無いのか、容赦無く私に斬りかかった。
私は痛みを抑えて回避に徹するが、それでも相手は私の動きを読んでいるようのか、私のみぞおちをヒールの踵で蹴り付けた。
みぞおちを蹴られ、異様な程の激痛が私を苦しめる。両腕の切り傷とはまた違った痛みで、私は耐え切れずにそのまま悶えながら地面に座り込んだ。
視界が揺らぐ。
口の中からは胃液が込み上げているのか酸っぱい味が口内に広がる。吐き気に襲われ、激しくえずいた。
ソードダンサーは足で私の顔を冷たい地面に押し付けた。
「どう? 殺されそうになる気分は?」
「このっ・・・!」
私は左腕にエネルギーを溜めてサウンドブラストを放とうとするが、刃が左手の甲に突き刺さり、私はその痛みに叫んだ。
しかも追い討ちをかけるように私の右手をヒールの踵で踏みつけ、両手にはそれぞれ違う痛みが私を襲った。
痛みと傷口から感じる寒さに耐えながらも私は目の前で勝ち誇るように立っているヴィランを睨み付けた。
殺してやる───ふと、頭の中でその言葉が浮かぶものの、ヒーローとしての矜持に反してしまう為、何とか殺意を抑えた。
「さぁ、ダンスはお終い。全力じゃないのは私への手加減? 自分を買い被り過ぎではないかしら?」
「く・・・このっ・・・」
「呆気なかったけど、悪く思わないでね───」
刀剣の先端が私のうなじに刺さろうとする瞬間、お巡りさんと思わしき声が聞こえた。
ソードダンサーは逃げていくかと思いきや───私の手から刀剣を引き抜き、お巡りさんの方へと向かっていく。そして、何発かの乾いた銃声と倒れるような音が聞こえた。
私が痛みに耐えながら後ろを振り返ると、そこには血溜まりの上に倒れたお巡りさんと、そんな彼を見下ろしているソードダンサーがいた。
「───貴女にチャンスをあげる」
睨み付ける私に奴はそう言った。
「クリスマス───その日までに私と踊り合える程の実力を付けなさい。もし約束を破るなら、貴女を二度と舞台に立てない姿にしてあげる」
ソードダンサーはそれを言って何処かへと立ち去る。私は奴を追いかけたかったが、動くと痛いせいか、まともに立ち上がる事が出来なかった。
ソードダンサーが逃げて少し経った後、私はI.S.M.A.の医療班に斬られたエージェントと共に本部まで運ばれて行く。現場の血は隠され、私達の事は隠蔽・・・現場に残ったのは、唯一の犠牲者となったお巡りさんだけだった。
エージェントの何人かが殉職する事になり、オフィス内では追悼式が行われる。簡易的ではあるものの、共に勤務してきた仲間が死ぬというのはとても心に刺さるものだ。
私も参加していたものの、守れなかった責任などもあってか、居心地の悪い状況が続いていた。
スーパーヒーローなのに。
私はヒーロー失格だ。
いやだ、私にばかり押し付けないで欲しい。
心にヒビが入っていく───しかし、それに私は気付かない。
いや、気付かないフリをしていたのかもしれない。
追悼式から次の日、私はいつも通り駅前に行く。特に深い理由は無く、人混みの中に流れるまま歩いていた。
自分の事で頭が一杯なのか、それとも当事者では無いからか・・・そんな事を考えても仕方ないのは分かっていた。
またいつものコーヒー店に行き、カフェオレを注文する・・・こんな事をしてても何も解決しないのは解ってる。ただ、私の中でも悩んでいた。
ヒーローとしての活躍は公に出来ず、私の能力を見た武雄くんやI.S.M.A.の面々は例外だとして、何も事情を知らない家族やしんゆ・・・いや、クラスメイトの橙子は私がレディブラストだという事を知らなかった。
そもそもこんな王道に付き合う必要ある?
不特定多数の人達に見せるならともかく、家族や友人に正体をバラした方が楽ではないか? ヒーローは常に孤独だなんて、いくらぼっちの私でも耐えられないよ。
考え事をしている中、スマホが鳴る。私は何を期待したのかスマホの画面を見て肩を落とす。I.S.M.A.からだった。
橙子からの着信かと思ってしまった私が馬鹿だった・・・I.S.M.A.からのメッセージを見ると、それはソードダンサーについての内容と一枚の画像だった。
その画像は秋津市駅前の何気無い人混みの写真に見えたが、明らかにこちら側へ視線を向けている人物がいた。
───私はその人物を知っている。ソイツは赤い光沢のロングコートを着た"あの人物"に共通していた。
ソードダンサーと戦った時に生じた疑問が確信に変わるが、この時の私では奴と戦うに値しない・・・また痛い思いをするのがオチだった。
───しかし、そんな時にある事を思い付いた私は本部へと向かい、その考えを実行した。
それから23日になり───この日は修了式で、明日から冬休み・・・橙子との関係はまだ悪いままだ。
私は自分の家がある天崎に向かおうと駅前に行くが───そこに奴はいた。
不特定多数の中に混ざって歩くソイツは、私の視線に気付いたのかこちらを見る。そしてこちらに向かってきた。
私は身構えそうになるが、まるでI.S.M.A.の情報とは別人の様な雰囲気だった為、私はあのメッセージが本当に信憑性のある情報なのか疑った。
「あら、また会ったわね───どうしたの、怖い顔して?」
「えっ、あっ・・・いや、すみません」
怪しまれない様に取り繕い、私は話を進めた。
「確かに奇遇ですね、今日はどちらへ・・・あっ、すみません」
あまりにも失礼な事だと思い、すぐに私は謝った。
「良いのよ、私はいつも通り散歩しているから」
「なるほど・・・」
やっぱりソードダンサーとは別人だ・・・そう思っていたが、私の嗅覚は香水の匂いとは別に"微かな鉄臭さ"を感じ取った。
「───あら、どうしたの?」
私は何でも無い様に再び取り繕うが、奴は私に衝撃的な言葉を放った。
「それとも私から"血の匂い"から感じ取ったかしら───"立花未可矢"さん」
「───なぜ私の名前を?」
「貴女を見かけた時、そう呼ばれていたから。でも、貴女にはもう1つの顔がある・・・そうでしょ?」
穏やかな表情から一転して、奴の表情は妖しげな微笑を浮かべる。
人を殺す事に慣れ、そして楽しんでいる表情であり、私はその表情を見て恐怖した。
戦闘態勢を取ろうとするものの、奴は私にそれは不要だと伝えた。
「ここで貴女と殺し合う気は無いわ。ここで争って不利になるのは貴女なのだから」
確かに奴の言ってる事は正しく、今私が手を出せば周りに被害が及ぶ可能性もあるし、何よりも正体がバレる・・・しかも奴はここで一悶着起こす気は本当に無いようだった。
「・・・あなたの目的は?」
「あの時と同じよ」
「なら、誰からの依頼? プロフェッサーから?」
「ええ、そうよ」
「・・・どうしてすんなり答えるの?」
「もう解ってるでしょ? 貴女は教授にとってキャプテン・サンダーボルト以来の脅威と認定され、だから私が派遣されたの」
憧れのヒーローの宿敵から脅威認定されるのは、認められたようで嬉しいが、それは同時にいつ殺されるのか判らないリスクを更に背負う事となった。
ここからは後戻りなど出来ない───私は動揺する気持ちを無理やり抑えながら話を聞いた。
「憶えているなら良いのだけど、25日までに私を倒せる位の力を付けなさい。それまでに私は待つから」
「待つって・・・何で?」
「うーん・・・貴女を気に入ったからかな」
意味の分からない事を言われて困惑するが、私はその条件をのんだ。
何でって思うだろうが、私にも解らない・・・奴はI.S.M.A.の職員さんや地元のお巡りさんを殺したヴィランだ。なのに私は奴の条件を素直にのんでしまった。
そして決着の日───私は奴から指定された目的地に向かう直前、ある人にメッセージを送った。
これまでヴィランと戦ってきたが、ソードダンサーは私が思っている以上に狂っている・・・何よりも、奴は殺しを楽しんでいた。
だからこそ、私は死を覚悟した───今度こそ倒せなければ私は殺される。そんな不安と恐怖があったからこそ、私は橙子にメッセージを送った。
死地へ向かう前に仲を戻したいと言うのもおかしな話だが、やっぱり未練があるままだと嫌だと言う気持ちがあった。
メッセージを送ったが、既読は付かない───まぁ、それもそうだよね。私はソードダンサーとの決闘をする為に指定された場所へと向かった。
指定された場所に到着し、私は奴と対峙する。奴はまだソードダンサーでは無く、私もマスクを外して左脇に抱えた。
「メリークリスマス───立花未可矢」
こんな時にでも冗談を言える奴に対し、私は憎しみを込めて睨み付けるが、それで動じる筈が無かった。
「あら、そんなに怖い表情して。良いわ、それでこそヒーローというものよ」
「本当に周りに人はいない?」
「ええ、この舞台に乱入してくる観客いない筈・・・まぁ、貴女のところの協力者達がちゃんと大人しくしてくれればだけど」
「それなら心配無いわ・・・その為に頭下げてきたもの」
「ふふっ、貴女は真面目なのね」
「お前みたいな奴が何をやらかすか判らない以上、下手に動けないと思って」
「まぁ、それが賢明よ───」
奴は部族のお面を被って二刀流のシャムシールを両手にソードダンサーへと変わり、私もマスクを被ってレディブラストになった。
両者がそれぞれ仮面を付けた所で戦いの火蓋は切って落とされた───ソードダンサーは先住民の様な奇声を出して私に向かって来る。私はコートの中に着ていたコスチュームのベルトから2本の短いスティックを取り出した。
剣の舞を回避し、一本のスティックを相手の腕に叩きつけて剣を落とさせる。しかし相手は私の膝下をヒールの踵で蹴り付けて動きを封じた。
───膝下から全身に痺れるような激痛が走り、私は泣きそうになるが、相手に慈悲など無い。剣の一振りがこちらに向かって来るものの、私は直感でそれを回避した。
相手は即座に落とした剣を拾って二刀流へと戻る。そして、私にそれを振り回した。
乱れている様で舞い踊る様な動き───それはまるで私の動きを読んでいるようにも思えた。
I.S.M.A.の技研班で作られた2本のスティックには何の効果も無い。しかし、弾力のある素材で作られている事から投擲に使い易かった。
私は1本のスティックを相手に投げ付けて相手は当然のようにそれを避ける。しかしスティックは壁に当たった反動でそれが私の方向へと跳ね返っていき、向かって来るソードダンサーの左肩に当たった。
痛みに跪く相手を追撃する様に、私は左腕にチャージして殴り掛かるが、相手は左に転がって回避し、剣を振って私の右腕に切り傷を付けた。
斬られた腕が痛い───血が白い地面に滴り落ちていく。しかし、それでも負ける訳にはいかない・・・私は痛みと涙を堪えて殴り掛かった。
戦い始めてからどれぐらい経ったのだろうか───お互い身体に傷を増やし、私の身体には至る所に斬られた跡が出来ていた。
「・・・しぶとい奴」
「・・・貴女もね」
そんな時に吹雪が吹き荒れ始めてしまい、視界が悪くなってしまう・・・タイミングが悪い。
しかし、私は拳を握りしめた後、呼吸を整えて瞳を閉じる。神経を研ぎ澄まし、五感で相手が何処にいるか索敵した。
まるでレーダーのように私とは違う鼓動が聴こえ始め、私はそこにサウンドブラストを撃ち込むと、ちゃんと命中した様で剣を落とした音が聞こえてきた。
私はその方向へ行き、再び立ちあがろうとするソードダンサーに馬乗りになって何度も顔を殴り付けた。
殴る毎にお面は割れ始め、ソードダンサーの顔半分が曝け出された。しかし、奴はそんな状況になっても怯えてなかった。
私は何度も何度も殴り付け、相手のお面を外す。奴の口の中は真っ赤になっており、私の拳は血で汚れていた。
「ふふっ・・・ははははっ!! 素晴らしいわ、貴女の暴力性は。それでこそヒーローよ」
「私を馬鹿にするな───!」
左腕にチャージして殴ろうとするが、その拳から血が滴っているのを見た瞬間、殴るのを躊躇った。
「───私は、例えお前の様な奴でも殺さない・・・」
そう言って奴から立ち上がった後、そのまま立ち去ろうとする。背後からは笑い声が聞こえるが、その声は次第に小さくなった。
───もう私には空を飛ぶエネルギーは残っていない・・・背中に重い物がのしかかる様に膝が地面に付いた。
血が白い地面に落ちていく───身体中が痛い。震えや涙が止まらない・・・死闘での緊張から解放されたせいだろうか?
銀世界の中、私は遠くに幻影を見る。それはヒーローをせず、普通に生活する自分。退屈ながらも最低限の生活が保障されている人生───クリスマスの日に何をやっているんだろうと思ってしまった。
とうとう私は雪の上に倒れ、視界が暗くなっていった───
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