レディブラスト 〜The Young Justice〜

橘樹太郎

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第14話: 激情の果てに

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 学校から帰った後の事───私はベッドに倒れ込む。別にパトロールした訳でもないのに疲れた・・・

 制服から楽な服に着替え、ベッドの上でスマホを弄る。WeTubeウィーチューブでも観てみようかな、ゆったり解説も良いな。

 そう思ってアプリを開くと、あなたへのおすすめの欄にはちょくちょく不快な動画があった。

 こんなチャンネル登録してないのに・・・と、WeTubeういつべのサムネを眺めていると、その中に気になる動画があった。
 
 どうやらその中身はファミレスでわざと迷惑行為をし、それを動画にした事を批判する内容のようだが、気になるのはそのウィーチューバーが言った言葉だ。

『"R"が今回の犯人にどのような裁き方をするのか、今後の活躍に注目です』

 R・・・そいつは先月ぐらいから一躍有名になった人物で、正式名称は"リトリビューショナー"だが、呼びにくいという事でR、若しくは"天誅マン"と呼ばれている。
 
 迷惑行為自体は前からあっただろうが、今はSNSネットが必須の時代、流行バズりたくて迷惑行為をする人が殆どだろう。

 それもその筈・・・というか、そんな事していいねやフォロワー稼げてるのほんと羨ましいよ。私も悪事止める度に上げようかな。


 そして夕食の時間になり、私は親と共にする。兄は事件の為に残業だそうだ。


 食事中、ニュースが流れてくる。その内容を聞く限り、男性が道端で刺殺されていたようで、その男は動画投稿者だったようだ。


 晩ご飯を食べた私は、スマホでその動画投稿者を調べてみる。その男は大物ウィーチューバーという訳ではなく、調べたら出てくる程度の人物だ。

 投稿している動画もそこまで凝っている訳ではないが・・・ある1つの動画が目に留まった。

『限界集落に行ってみた結果ww(秋津市)』

 うわぁ・・・と不快感を示しながらも、見覚えのあるサムネを押して視聴する。内容としては秋津市に来た投稿者が、人気のない夜中の秋津市の風景を映しながらヤバいヤバい言ってる感じで、コメント欄には『その時間帯だったら当たり前だろ』という配信者を批判する声や『ここに住んでる人は普通じゃない』という県どころか、そこに住んでいる人すら貶す様な声もあった。

 こんな感じで賛否分かれる結果となったが、本人は悪びれもせず、その動画について『本当の事では?』とコメントしていた。

 不快過ぎるが、秋津市が田舎なのは否定できない・・・オリンピックで景気良くなったという割に実感無いからね。


 話を戻すが、この投稿者とRになんの関係があるのかこの時はイマイチ分からなかった。
 寧ろ、Rがこの事件に関わっていたとは、この時は思いもしなかった───


 2月14日、この日が何の日かはみんな知ってるよね。そう、バレンタインデー。私はチョコを作るのが苦手だから、駅前で高級感のあるチョコを買い、それを家族や武雄くん、橙子とI.S.M.A.の皆さんに渡した。

 しかし、そんな日に事件が起こる。駅前近くにある雑居ビルの前には大勢の野次馬人々集まっており、彼らの前には警察や消防士がいた。

 空には警察やテレビ局のヘリが飛び交っており、屋上には1人の女子大生が身体を縛られた状態で今にも落ちそうな所に立っていた。

 私はコスチュームに着替え、雑居ビルの屋上へ飛ぶが・・・そこには人質しかおらず、犯人らしき人物はいなかった。

 サーマルに切り替えて周りを見渡すが、やはり犯人がいる気配は無い。屋上の安全を確認クリアしたところで人質を解放しようとするが、彼女は泣きながら「ごめんなさい」と言い続けていた。

 何とか落ち着かせようとするが、彼女の首に掛けられていたスマホにある動画が再生された。

 動画を見る限り、その人気配信者は、度々炎上発言をしており、一時期は活動を休止したようだが、復帰した後でも普通に炎上発言ばかりしていた。

 しかし何故、Rは配信者では無く無関係の人達に狙いを定めているのだろう? 
 ───この時の私には理解ができなかった。

 そんな時、私は全身に寒気を感じる。今が寒い時期というのもあるが・・・これは違う。私の直感だ。

 直感を気にして周りを隈なく警戒していると、人質を繋いでいたロープがブチっと切れ、人質は屋上から真っ逆さまに落ちていく───私は間一髪で彼女を助け、地上にいる警察官や消防士に引き渡す。彼らの向こうにはアナウンサーが私を持ち上げる言葉を言っているが、何を伝えたいのか分からない犯人に対し、不気味さを感じていた。


 その後、I.S.M.A.が仕入れた情報によると、ロープには"誰かが切断した形跡"があると判明し、屋上にあった違和感について、更に謎が深まった。

 それから次の日───今度はバスジャック事件が発生する。乗客が多く乗る時間帯を狙ったのだろうが・・・兎に角話を進めよう。

 どうやらバスジャックした犯人はサラリーマンで、彼は爆弾を自身の身体に付けており、今にも自爆しそうな雰囲気だった。

 犯人の要求・・・などは一切無く、バスのガソリンが切れた時点で自爆するという話で、レディブラストわたしが来ても自爆する気のようだ。

 どうする事も出来ない為、私はその光景をただ遠くから見つめている事しかできない・・・しかし、ライブ映像では傍観する私を非難するコメントがどんどん出ていた。

 仕方ないでしょ・・・と思いつつも何とか自爆を阻止しようと考える。時を止めたり、爆弾を凍らせたり、それか幽霊みたいな能力さえあれば楽勝なのかもしれないけど、私にはそんな能力なんて無いからね。


 そんな時だった───バスの内部に謎のコスチュームを着た人物が現れ、自爆犯を取り押さえる。犯人は自爆しようとせずそのまま捕まり、バスの乗客も無事に助かった。

 ───都合が良すぎるって?
大丈夫、私もそう感じたから。


 そいつが例の"R"であり、奴は取材に応じる事無く姿を消した。

 これに関しては私も訳が分からなすぎて、I.S.M.A.に連絡を入れるが、藤堂さんは知らないようだった。

 私もいきなり現れたアイツに困惑するが、考えても仕方ないと思ってその場を後にした。


 ネットではRに対する賞賛で溢れかえっており、レディブラストわたしに関しては誹謗中傷で一杯だった。

 新しいヒーローが現れれば私の立場は徐々に無くなっていく・・・虚栄心プライドは私に焦燥感を与えていた。


 I.S.M.A.ではRについて緊急会議が開かれており、私も参加していた。

 会議で話題となったのは奴が"自分の姿を現したり消したりする"事への考察で、透過能力なども候補に上がったが、私のサーモビジョンが反応しなかった時点で居ないような雰囲気があった。

 しかし、それならあの時屋上で感じた違和感は何だったのだろう?
バスの事件といい、引っかかる事ばかりだ。

 それから月曜日となり、昼休み頃───スマホに連絡が入る。I.S.M.A.からの緊急召集かと思われたが、それは家族からだった。

 人気の無い場所に行き、電話に応答すると母が出て、その要件に私は愕然とした。

 兄が事故に遭った───ヴィランとの戦いを経て、突発的な出来事にはもう慣れたかと思えば違った。

 私の腕は生気を失った様に下がり、落ちたスマホからは私の名前を呼ぶ声が薄らと聴こえてきた。


 その後、先生に事情を伝え、早退してきた私は、学校の駐車場に停まっていた親の車に乗り、病院へと向かった。


 病院に着き、兄が運ばれた病室へ足を踏み入れるや否や、私は溢れそうになる感情を抑え込んだ。

 両親は息子の姿に叫ぶどころか青褪めた表情かおになっていった。

 身体の一部を失った訳では無いのだが、至る所に包帯が巻かれており、バイタルも生死の淵を彷徨っている様に安定していなかった。

 医師の話によると、兄は車を走らせている途中で別の車に追突されたようで、追突してきた車はかなりのスピードを出していたという事だった。

 追突してきたほうの運転手も負傷しているが、命に別状は無い。その運転手を問い詰めようとしたがったが、何処にいるのか判らない以上、どうする事も出来なかった。

 
 その翌日、私は学校を休ませてもらい、I.S.M.A.本部へと向かう。本部でもあの事故を調査しているようで、兄の車に追突してきたほうの運転手に刑事として話を訊いたようだ。

 追突した車の運転手は「急にハンドルが効かなくなった」と話したそうで、最初は嘘かに思えたが、どうやらその車には"安全運転サポート"機能が付いていたようだった。

 その運転手がワザと切ったのではという線も考慮されていたものの、彼の家族や知人にも話を訊いた所、その線は無いと判断された。

 この時の私には信じられておらず、真っ先にでもその運転手の所へ向かおうとしたが、限りある理性で何とかその感情を抑えた。

 藤堂さん曰く、現場状況を警察と連携して確認していたが、それでも事件にまつわるものは無く、表向きは車両間での事故として話が進む筈だったが・・・


 ここから数刻置いた後、地元のニュースがRのメッセージを受け取ったと報道する。それは3分ぐらいのメッセージで、内容によると『職務を遂行せず国外にいる議員及び存在理由の解らない党に重い処罰を与えよ、さもなくば警察関係の人間が犠牲になる』という事で、警察署に爆弾を置いたようだった。

 しかし、ここでまた新たな情報が入る。今度は学校に爆弾を置いたという話で、Rの血迷ったような動向に混乱した。


 ヒーローから一転、まるでテロリストのような行為に私達は困惑するが、WeTubeには本人と思わしき声明が配信された。

 本人はニュースでのメッセージは全てデマだと話すが、コメント欄は荒れており、その荒れ具合から彼は叫びながら配信を終了した。

 脅迫文は本人にとっても予想外だったのか、それ以降はアカウントも消え、秋津市に姿を現さなくなった。

 結局、爆弾はデマだと判明したがその犯人は未だに掴めなかった。


 兄も意識を取り戻し、Rも居なくなった事で束の間の休息が訪れたと思った矢先、今度は最悪の事件が起き始める。

 電車の中で、高校生の頭が破裂するという凄惨な出来事であり、そんな超常現象オカルトじみた事件に警察は頭を悩ませていた。

 事件現場には約7cm位の針に似た物が血塗れで落ちていて、付着していた血液が被害者のDNAと一致した。

 その事件以降、学生を狙う事件が多発し、学校は軒並みに休校となる。警察も隈無くパトロールしているが、犯人は未だに見つからなかった。


 それから2月の祝日となり、I.S.M.A.は警察経由で"ある情報"を手に入れた。

『僅かに犯人の姿を"見てしまった"』

 その通報をしたのは1人の男子中学生で、彼は下校中に"視認できない何か"と激突したようで、その際に一瞬だけ姿を見たのだと言う。

 ───しかもその姿は、表舞台から姿を消したとされるRにそっくりだったとその子は言っていた。

 姿を目撃してからというもの、彼の身の回りには不可解な出来事が発生し、その子どころか両親すら家から出れなくなっていった。

 警察にも話し、家の周りを警戒してもらっているが、犯人は一向に姿を現さず、何があったのかと野次馬が集まってくる事態になった。


 次第に追い詰められる一家の元へ赴いた私は、その姿に驚かれるが、被害者の両親は私を神様が来たように歓迎してくれた。


 被害者宅に入ると、床にはブルーシートが敷かれており、理由は「いつでも逃げられるように」という事だった。

 家の窓にはガムテープが隙間無く貼られており、外からはおろか、中から外の状況を確認する事はできない・・・いや、寧ろ見たくなかったのだろう。

 その中学生は自室でカーテンを閉めて部屋に引き篭もってしまっている。両親はノックして私が来た事を伝えるが、彼は両親と違い、あまり歓迎していなかった。

 私は別に良いと伝えるが、どうやら息子さんは私のファンのようで、それで少しでも救いになるならと思い、歓迎してくれたのだ。


 数分ぐらい待った後、その中学生は扉を少しだけ開き、私の姿を見た。

「・・・本当にレディブラスト ?」

「そうよ」

 私が笑顔で答えるが、彼は暗い表情のまま扉を閉めようとする。しかし、彼の父親が扉が閉まる前に抑えた。

 息子は嫌がっているのにも関わらず、強引さを感じる父親に私は宥めようとするが、結局止める事は出来ず、息子の方は心が折れて私達を部屋へと入れてくれた。

 部屋は荒れており、足の踏み場がない事を両親は怒るが、私はやっと宥める事が出来た。

「今更ヒーローが来ても、ぼく達はアイツに殺されるんだ・・・」

「大丈夫、私が───」

「じゃあ何で他の人があんなにグロく殺されるんだよ!? ぼく達が何したっていうんだよ!!」

 彼は私に掴みかかり、怒鳴りながら泣いていた。
 ───そんな彼を、家族を守らないといけない。
 そう思っていたのに───

「大丈夫、私が絶対に守るから───
必ず・・・」

 彼の両手を自分の両手で包み、私も泣きそうな声でそう言うが、下から物音が聴こえ、彼の父親が見に行く事にした。

 私も行こうとしたが、残りの2人を守るよう頼まれ、彼の後ろ姿を見送った。

 警察が辺りを固めているのに、マスコミかウィーチューバーが入り込んで来るとは考え難い・・・私は嫌な予感がして2人を部屋に入れようとしたその時───

 ピタッ、ピタッと雫が一滴一滴落ちる音が聴こえる。その音はハッキリと聴こえるようになり、私は腕にチャージした。


 階段の側で滴る血が見え、私は目に見えない何かを追いかけて一階へ───しかし、それは間違えだった。

 相手の着るスーツは特殊なのか、姿が見えないどころか足音すら聞こえない。あの血だけが手掛かりで、床に落ちた血を頼りに追うがそこに居たのは、被害者の父親だったものだ。

 頭は下顎しか無く、右腕は骨が完全に露出していた。

 彼の周りは血溜まりになっており、壁にもたれ掛かっている。恐らく、落ちているゴルフクラブから察するに彼は叫ぶ暇無く殺された・・・そうとしか考えられなかった。

 私は見るに堪えない無惨な姿に嘔吐してしまう。どうやったらこんな残忍なことが出来るのか、考えられなかった。


 そんな時、二階から悲鳴が聴こえる。私はすぐさま2人の元へ向かうが、部屋には息子が頭を抱えて叫び声を上げていた。

「嫌だあああ!! まだ死にたくない!! まだしにたく───」

 ───まるで今までの被害者と同じ様に頭が破裂し、私のマスクから露出している肌に血と生温かい肉片が付いた。

 母親は息子の死に叫び、私はそれを呆然と見ている事しか出来なかったが・・・通信にI.S.M.A.とは違う誰かの声が聞こえてきた。

『いつレディブラスト出るの?』

『天誅マン、そんな家族どうでもいいから早く戦って欲しいわ』

『糖質家族の為に警察集まり過ぎ』

 不快な言葉の数々に私は通信を切ろうとしたが、機能がオフにならない・・・そんな時、微かに笑い声が近くで聴こえた。

 その場所を見ると、そこだけぼやけており、それが人の姿をしている事に気付いた。

 私はサウンドブラストをそこに向けて発射しようとするが、奴はそれに気付いて逃げようとするが、私はそいつを追った。

 取り押さえようとしたが、通信機から聴こえる不愉快な言葉の数々におかしくなっていた私は、そいつの腰にタックルして、窓を割って外へと出てきた。


 ───私は姿を現した奴が死なない様に、落ちる直前で勢いを軽減する。しかし、それは捕まえる為じゃなく、痛めつける為だった。

 馬乗りになり、Rの頬を何度も殴り付ける。マスク越しからでも血が滲む程に、私の拳が奴の血で汚れる位に。

 ───殺してやる。
 ───それも痛々しく、被害者達の顔を1人1人思い出せるように。

 殴り付け、チャージした拳を殴り付けようとするが、周りにはその状況に唖然として銃を下ろす警官、口を抑えるアナウンサー、そしてスマホのカメラをこちらに向ける一般市民達・・・私はその時に一瞬我に返るが、Rは私を突き飛ばして逃げようとしていた。

 銃を構える警官達。しかし、私は逃げるRにサウンドブラストを放って彼を強引に這いつくばらせ、左脚を折った。

 苦痛により絶叫するが、そんな事など被害者の受けた苦しみに比べれば・・・と思い、私は再び仰向けにし、マスクを脱がせた。

 Rのマスクを外すと、そこには自分より歳上の男が顔を腫らして泣いており、命乞いでは無く、世の中への憎しみを呟いていた。

「何でだよ・・・何で・・・誰も解らないんだよ・・・」

 解る筈の無い言葉に私は憤りを覚えるが、拳から滴り落ちてきた血を見て、ようやく我に返った。

 自分の行いに過呼吸を起こしかけるが、ヒーローとしての役目に戻ろうと、立ち上がったその瞬間───


 私を押し退け、誰かが倒れているRに包丁を刺す。Rは驚愕した表情を浮かべて刺した相手を凝視する。その人物は被害者の母親で、彼女は呪いの言葉を叫びながら何度も何度も包丁で突き刺した。

 私は何とか彼女の行き過ぎた復讐を止めるが、それはもう遅く、Rは死んでいた。

「何で・・・何でなの・・・何で夫と息子あの子が死ななきゃならなかったのよ!? 返して、返してよぉ!!」

 彼女は私に掴みかかってそう叫ぶが、私にはどうする事も出来ず、ただ彼女の悲痛な叫びを受け止める事しか出来なかった。


 事件翌日、容疑者であるR・・・もといリトリビューショナーの家族関係が公開され、更には彼のスマホや手帳、知人などの情報を基にあの時の言葉が分かっていった。



 会社勤めの彼は、自身の惨めで辛い生活と、不良や犯罪者、迷惑行為をする人が賞賛され、まともに職務を実行しない議員やただ喋るだけでお金を貰える人達との差に憤りを感じ、リトリビューショナー天罰を執行する者として世間から注目を浴びようとしていた。

 しかし、ここである事が引っ掛かる───それなら秋津市を馬鹿にした動画投稿者を刺殺した犯人は誰なのだろうか?

 その次に起きた2件の事件はRがやったと判明した。

 その事はまだ納得いくのだが・・・兄が遭遇した交通事故、途中で起きた警察署並びに学校などに爆弾を仕掛けたといいデマ、そして学生を狙った無差別殺人───何かが心の中で引っ掛かっていた。

 無関係に捉えていた複数の事件───これが後に同一犯による犯行とは思いもしなかっただろう。



 Rによる事件後、彼の家族は死んだ彼に代わりバッシングを受けている。それは同郷の住人はおろか、知名度稼ぎで秋津市にやって来たウィーチューバーも家族が家から出る度に凸ってはマスコミ紛いの事をしていた。

 被害者の家族がその後どうしているかは判らない。彼等は、彼女等はずっと、犠牲になった子供の事を考えなくてはならないのだろうか?

 ネット上では、不特定多数の人々が様々なコメントを発しているが、どれも掌返しや私とヴィランの戦いを刺激として、犠牲者など興味無いと言ったコメントなど、あまりにも心が無いように感じていた。

 橙子からはメッセージが届くが、私はそれを未読無視スルーしている・・・いや、何かを返信する気にもなれなかった。

 I.S.M.A.からのスマホの電源を切り、私は部屋に引き篭もる。寝ようとしても、あの時の光景惨状走馬灯フラッシュバックのように私の目に映り、眠れなくなっていた。

 Rのやった事は許されない行為・・・しかし、私はそれでも否定できなくなっていた。

 迷惑行為や炎上行為はあの事件以降も続き、殺人や強盗などの事件すら正当化されていく───でも、私にはそれを黙って見ている事しかできなかった。

 世界は常に変化する───それはどんな犠牲が出たとしても、「不幸だったね」の一言で終わり。
 それでも地球は回っていき、いつかは忘れ去られる───それが現実。


 私は震える手である所に電話を掛ける。I.S.M.A.でも知人でも無く、電話に応答してもらえるか判らない相手───

『───はい、こちらは心のホットラインです。今日はどうされましたか?』



「・・・話を、聴いてもらえませんか?」
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