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#3 未知の道
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「それじゃ、早速行こうかー!百聞はなんとかって言うし……ね!」
椅子から立ち上がり、なにやらキメ顔をしている紗夜さんの横で店長が、それをいうなら百聞は一見にしかずでしょ……、と小さく呟く。
ついてきて、と言いながら紗夜さんに続く店長の後について歩く。こんな調子で大丈夫なんだろうか……。
話はひと通り聞いたが、邪数多やその存在がもたらす不吉。さらには、それを覆すためには自分自身が何かをしなければならないということ……。それら全てがよく分からないでいた。
論理的には、言語化されて説明を受けたのでなんとなく分かる。やはり百聞は一見にしかず、ということなんだろうか。
「よし……。店長!運転任せたよー!」
「はいはい……こんな夜に大声出さないでね……」
「これは……」
バックヤードからコンビニの外へと出ると、目の前にはまるで不格好な、しかし何処かスチームパンク風な、そこら中のガラクタを組み立てて出来たような車があった。
オープンカー形式であり、そのまま店長が運転席に乗り込み、助手席に紗夜さんが乗り込む。……この車、本当に動くのだろうか?
「なにしてるの界人君!早く乗ってー!」
「あ、はい」
紗夜さんに急かされ、慌てて乗り込む。座り心地は悪くないが、少しだけわがままを言うなら……狭い。
「それじゃあ、行こうか。……紗夜さん、準備は良い?」
「大丈夫。それじゃ、始めよっか!」
二人は顔を見合わせて、それぞれ同時に鍵をさす。どうやら鍵穴がそれぞれ二つあったようだ。それから二人は交互に、合言葉のようなものを口にしだした。
『秒針と雲流し』
『光ある空の源』
『黒きの短し』
『鼓動、燃ゆ』
『誰そ彼の表裏』
『湖畔の月蜜』
『夢見る宇宙と』
『刹那の未来へ』
『『兆合』』
二人合わせてそう唱え鍵を回すと、機体が大きく唸り声を上げて小刻みに上下に揺れ出す。どうやらエンジンがかかったようだ……!
「こっからが本番……!」
「主軸駆動系、始動良好。サブも大丈夫……!紗夜さん、そっちは!?」
「並行線解釈装置、良好!空間固定領域装置も問題なし!いつでも行けるよ!!」
「それじゃあ……行くよ!界人君も、しっかり掴まっててくださいっ!」
「は、はい!!」
店長がレバーを引き、シフトチェンジ。そして紗夜さんが何やら別のボタンを押して、店長とは別のレバーを引く。
するとどうだろう。段々と車の揺れが大きくなってきているっ……!唸り声も、同時に大きくなっていく!
店長がアクセルを踏み込む……と同時に、車は進むことなく別空間の空中へと瞬時に飛ばされた。
◎◎◎
「てんちょ~!!居るなら返事して~!!」
「店長ー!」
現在、訳も分からない砂漠で店長を捜索中……。どうしてこうなった。
理由は明白。空中に出た、俺たち三人を乗せた車が空中分解したためである。やっぱり駄目であったか……。そして、紗夜さんと俺は近くに落ちたのですぐ合流出来たのだが、店長だけ別の場所に落ちてしまったため、現在に至る。
落ちた場所は一面砂漠の、到底現実とは言えない場所であった。空は奇妙に光る月のような惑星と底無しの闇。たったそれだけであった。
そもそもあのコンビニの周りが俺の住んでる現実世界ではないのだから、今さら異界に戸惑う必要もない。
そう考えていると、何やら見覚えのある車のようなガラクタと、その側で頭から砂に突っ込んでいる人がいた。うん、店長である。
それを慌てて掘り起こし、なんとか三人無事(?)に集まることが出来た。なんで砂に埋まってたのにダンボール取れてないんだろう……。
「店長、車どうしようね?」
「……一応原因については検討がついているし、予備パーツがあるからなんとかなるよ。さあ、邪数多のいる場所へ行こう」
「おっけ!よし行くよ、界人君!」
「はい!」
そうして一旦車をそのままにして、店長と紗夜さんの二人が先行し、その後ろを俺が歩く形で砂漠を進んでいく。
椅子から立ち上がり、なにやらキメ顔をしている紗夜さんの横で店長が、それをいうなら百聞は一見にしかずでしょ……、と小さく呟く。
ついてきて、と言いながら紗夜さんに続く店長の後について歩く。こんな調子で大丈夫なんだろうか……。
話はひと通り聞いたが、邪数多やその存在がもたらす不吉。さらには、それを覆すためには自分自身が何かをしなければならないということ……。それら全てがよく分からないでいた。
論理的には、言語化されて説明を受けたのでなんとなく分かる。やはり百聞は一見にしかず、ということなんだろうか。
「よし……。店長!運転任せたよー!」
「はいはい……こんな夜に大声出さないでね……」
「これは……」
バックヤードからコンビニの外へと出ると、目の前にはまるで不格好な、しかし何処かスチームパンク風な、そこら中のガラクタを組み立てて出来たような車があった。
オープンカー形式であり、そのまま店長が運転席に乗り込み、助手席に紗夜さんが乗り込む。……この車、本当に動くのだろうか?
「なにしてるの界人君!早く乗ってー!」
「あ、はい」
紗夜さんに急かされ、慌てて乗り込む。座り心地は悪くないが、少しだけわがままを言うなら……狭い。
「それじゃあ、行こうか。……紗夜さん、準備は良い?」
「大丈夫。それじゃ、始めよっか!」
二人は顔を見合わせて、それぞれ同時に鍵をさす。どうやら鍵穴がそれぞれ二つあったようだ。それから二人は交互に、合言葉のようなものを口にしだした。
『秒針と雲流し』
『光ある空の源』
『黒きの短し』
『鼓動、燃ゆ』
『誰そ彼の表裏』
『湖畔の月蜜』
『夢見る宇宙と』
『刹那の未来へ』
『『兆合』』
二人合わせてそう唱え鍵を回すと、機体が大きく唸り声を上げて小刻みに上下に揺れ出す。どうやらエンジンがかかったようだ……!
「こっからが本番……!」
「主軸駆動系、始動良好。サブも大丈夫……!紗夜さん、そっちは!?」
「並行線解釈装置、良好!空間固定領域装置も問題なし!いつでも行けるよ!!」
「それじゃあ……行くよ!界人君も、しっかり掴まっててくださいっ!」
「は、はい!!」
店長がレバーを引き、シフトチェンジ。そして紗夜さんが何やら別のボタンを押して、店長とは別のレバーを引く。
するとどうだろう。段々と車の揺れが大きくなってきているっ……!唸り声も、同時に大きくなっていく!
店長がアクセルを踏み込む……と同時に、車は進むことなく別空間の空中へと瞬時に飛ばされた。
◎◎◎
「てんちょ~!!居るなら返事して~!!」
「店長ー!」
現在、訳も分からない砂漠で店長を捜索中……。どうしてこうなった。
理由は明白。空中に出た、俺たち三人を乗せた車が空中分解したためである。やっぱり駄目であったか……。そして、紗夜さんと俺は近くに落ちたのですぐ合流出来たのだが、店長だけ別の場所に落ちてしまったため、現在に至る。
落ちた場所は一面砂漠の、到底現実とは言えない場所であった。空は奇妙に光る月のような惑星と底無しの闇。たったそれだけであった。
そもそもあのコンビニの周りが俺の住んでる現実世界ではないのだから、今さら異界に戸惑う必要もない。
そう考えていると、何やら見覚えのある車のようなガラクタと、その側で頭から砂に突っ込んでいる人がいた。うん、店長である。
それを慌てて掘り起こし、なんとか三人無事(?)に集まることが出来た。なんで砂に埋まってたのにダンボール取れてないんだろう……。
「店長、車どうしようね?」
「……一応原因については検討がついているし、予備パーツがあるからなんとかなるよ。さあ、邪数多のいる場所へ行こう」
「おっけ!よし行くよ、界人君!」
「はい!」
そうして一旦車をそのままにして、店長と紗夜さんの二人が先行し、その後ろを俺が歩く形で砂漠を進んでいく。
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