夜風の少女、太陽になる。

ベアりんぐ

文字の大きさ
5 / 5

中間テスト–2–

しおりを挟む
「それで、ここの現代仮名遣いは——」

「ほうほう!」



……………



「えっと、ここは虚数があるから——」

「ほ、ほうほう……」



…………



「こっちが縄文時代の遺跡で、こっちが——」

「……ん?」



………



「人体のフィードバックによって、ホルモンが——」

「……?」



……



「……まずは英単語を——」

「???」







 ……まずい。想像以上だった。

図書室での勉強会を終え、今は帰路に着いている。道を歩きながら月宮さんの現状を考える。

ある程度、勉強が出来る黒田君が匙を投げ私に頼んでくる理由がわかった気がする……。飾らず言えば、月宮さんは恐ろしく勉強ができない。

何故、ああなるまで放置していたのか……

 元々彼女のことは知っていた。なんせクラスが二年連続で一緒だから。

月宮さんはよく友達といるところを見る。いや、友達といない時の方が珍しいぐらいの人物で、私はそんな彼女の輝きが純粋に羨ましかった。

だから正直、勉強を教えてほしいと言われた時はなんとも言えない気持ちであった。でも黒田君の頼みでもあるし、何より悲壮感漂う月宮さんを、見捨てることが出来なかった。

……それに、私は前から明るくなりたいと思っていたのに、何も行動出来なかった。いや、自分を変えて誰かに何か、心にもないことを言われるのが怖かったのかもしれない。

……今思えば、この身体の太陽はその罰なのかもしれない。それと同時に、何かを変えるキッカケをくれたのかもしれない。ならまず、目の前のことから解決する。



「頑張ろう……!」



 まずは月宮さんのお願いを解決しよう。そうすれば月宮さんとなんか、良い感じになれそうだし!

とりあえず帰って、明日に備えよう。そうしよう!

 住宅街に沈みゆく太陽の代わりに、辺りを照らすようにして帰るのだった。













         ◎◎◎













 それからというもの、私と黒田君、そして月宮さんの三人で放課後には毎日図書室で勉強会をしていた。

そして図書室以外でも、もともとクラスは同じだからたまに私の席に月宮さんが来て、わからないことを聞きにくるようになった。

そうして中間テストまで残り一週間となった頃——



「……うん!ここも分かるようになってきたね。凄いよ、月宮さん!」

「えへへ~ありがとう、緋奈ちゃん!」

「二人とも、少し休憩しようか?」



 図書室で勉強を教えていると、そう黒田君が言ったので賛成し、少し伸びをする。

この一週間で月宮さんとの距離はだいぶ近くなっていた。なんなら向こうからは緋奈ちゃん・・・・・と呼ばれるくらいには。

……こうして近くなってきたことだし、そろそろ、あのこと・・・・を聞いても良いかな……



「ねぇ月宮さん」

「ん?どしたの?」

「こうしてテスト勉強してるけどさ……どうして、良い点数取りたいの?」

「……あ、そういえば言って、なかったね……実は、さ——」



 窓の外にある木々の影が伸び、ちょうど、俯きかけた月宮さんの目元に落ちる。その俯く彼女を正面から照らす私の光に、少しの揺らぎが見てとれる。埃と紙の独特な香りの狭間に、新芽のような若々しい香りが混ざる。



「グループの中で一番、合計点数が低かった人は、罰として、告白しなきゃ、いけないんだよね……」



 頬を桜色に染め、手元にあるシャープペンシルを持って見つめる彼女。

私はこの時、口をあんぐりと開け、全身に今までにない青春の鳥肌が立っていた。視線を泳がせる。ふと黒田くんと目が合ったとき、無意識に目線を逸らしてしまった。

 図書室の窓のカーテンがバサバサと暴れる。春の残り香がした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...