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2 時を刻むエレベーター②
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ころころ弧を描いたメダルは、たくさんの段差と長いスロープをくぐり抜け、吸い込まれるようにして隼斗の足元でぴたりと止まる。
「はいこれ、落ちたよ」
隼斗はすぐさま拾って、老夫婦に差し出した。
「ありがとう、親切なお坊ちゃん。そうだわ。よかったらこれ、受け取ってくださる?」
ていねいに頭を下げると、婦人は飛び切りの笑みを浮かべた。
隼斗の前に、黄金色に輝くメダルが差し出された。ファラオの肖像が彫り込まれ、エジプトらしい象形文字が添えられてある。
「えっ、でもこれ……」
ぼう然とそれに見入ったまま、隼斗は動くことができない。もらってもいいのだろうかと悩む隼斗の背を、父がそっと押した。受け取ってもいい、という合図だ。
「ぼく、こういうの、ずっと欲しかったんだ」
春の学年別マラソン大会。隼斗には、あとほんの一歩でメダルを取り逃した苦い記憶があった。
「ありがとう! 大切にするね」
老夫婦は仲むつまじく寄り添いながら、会場に吸い込まれていく。
「さぁ、我々も行こうじゃないか」
満足そうにほほ笑んだ父が、隼斗の肩を抱いた。
場内は、人びとの放つ熱気であふれかえっている。たった一歩進むのでさえ、もどかしい。大きな肩と肩の合間で、早くも隼斗はため息を吐き出した。
母とアカネはヘッドフォンに流れる音声解説に聞き入り、父は精巧に作られた神殿の模型を眺めながら、ふんふんうなずいている。
早々に飽きてしまった隼斗は、さっさと人だかりの輪を外れ、空いている反対側の通路に出た。
ガラスケースの列をすいすい通り抜け、壁に掛けられた年表にわずかに視線を投げる。
『エジプト・その栄光と歴史』
ガラスケースに覆われて大仰に掲げられた年表は、古王国時代、新王国時代、プトレマイオス朝の三つが、特に目立つように色別に塗り分けられていた。
「ギザ、ルクソール、アレクサンドリア? 歴史を揺り動かした栄光の都、かぁ」
ギザと書かれた横には、大きなピラミッドの写真が添えてある。
続いて、ルクソールの文字の下には黄金のマスクの写真。
ヘビを額に飾った女王様の絵には、アレクサンドリアと書き込まれていた。
「はいこれ、落ちたよ」
隼斗はすぐさま拾って、老夫婦に差し出した。
「ありがとう、親切なお坊ちゃん。そうだわ。よかったらこれ、受け取ってくださる?」
ていねいに頭を下げると、婦人は飛び切りの笑みを浮かべた。
隼斗の前に、黄金色に輝くメダルが差し出された。ファラオの肖像が彫り込まれ、エジプトらしい象形文字が添えられてある。
「えっ、でもこれ……」
ぼう然とそれに見入ったまま、隼斗は動くことができない。もらってもいいのだろうかと悩む隼斗の背を、父がそっと押した。受け取ってもいい、という合図だ。
「ぼく、こういうの、ずっと欲しかったんだ」
春の学年別マラソン大会。隼斗には、あとほんの一歩でメダルを取り逃した苦い記憶があった。
「ありがとう! 大切にするね」
老夫婦は仲むつまじく寄り添いながら、会場に吸い込まれていく。
「さぁ、我々も行こうじゃないか」
満足そうにほほ笑んだ父が、隼斗の肩を抱いた。
場内は、人びとの放つ熱気であふれかえっている。たった一歩進むのでさえ、もどかしい。大きな肩と肩の合間で、早くも隼斗はため息を吐き出した。
母とアカネはヘッドフォンに流れる音声解説に聞き入り、父は精巧に作られた神殿の模型を眺めながら、ふんふんうなずいている。
早々に飽きてしまった隼斗は、さっさと人だかりの輪を外れ、空いている反対側の通路に出た。
ガラスケースの列をすいすい通り抜け、壁に掛けられた年表にわずかに視線を投げる。
『エジプト・その栄光と歴史』
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「ギザ、ルクソール、アレクサンドリア? 歴史を揺り動かした栄光の都、かぁ」
ギザと書かれた横には、大きなピラミッドの写真が添えてある。
続いて、ルクソールの文字の下には黄金のマスクの写真。
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