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3 時を刻むエレベーター③
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展示物を照らすライトが反射して、ガラスケースに隼斗の姿を浮かび上がらせている。
首を伸ばして、何度もメダルをながめた。わざと難しい顔を作って、満足げにうなずいてみる。すると、ガラスケースに映った隼斗の顔が勝手に、にやりと笑った。
「うわぁっ! 何、今の」
隼斗は文字どおり、飛び上がる。
あわてて目を細め、じっくりとガラスケースをのぞき込んだ。
「……ぼくの顔、だよね?」
何度も確かめたが、ガラスケースの向こう側から不思議そうに見つめているのは、隼斗自身の顔だった。
「おかしいなぁ」
首をひねる隼斗の後ろ側を、たくさんの見物人が押し合いながら通り過ぎていく。
「どうした、隼斗。そんな所に突っ立って。こっちに来てごらん」
笑みを浮かべた父が、のんきに手招きした。なんだか心細くなった隼斗は、父親の元へと急ぐ。
「隼斗はツタンカーメンって、知っているかい?」
「うん。黄金のマスクの人でしょ。さっき、あっちの年表で見た」
「この人はね、隼斗と同じ歳で即位して、十九歳の若さで亡くなったと言われている、有名な少年王なんだよ。ほら、これが彼の玉座さ」
見てごらん、と父が得意げに指さす先を見やると、絵や文字が彫り込まれた豪華な椅子が置いてある。
「ほら、この横に描かれた絵を見て。ツタンカーメンは王様なのに、ずいぶん小さく描かれているだろう。横にいる男が、当時の神官アイだよ」
「えっ、王様よりも大きいね。これって、この人の方が偉いっていうこと? ツタンカーメンは王様なのに、なんだか頼りないね」
「……そうかなぁ。でも父さんは、ツタンカーメンも十分に王様の資質はあったと思っているよ」
壁の年表に目をやって、ほら、と隼斗を手招いた。
「ここに、こう書いてある。父王イクナテンの招いた国家の混乱を鎮めるため、排除されていた神官の復権を認めた。それにより、エジプトは再び一神教から多神教を信仰するようになった……」
「それで、自分の権力が弱まっちゃったの?」
笑いながら言うと、父は「大事なことだよ」と、正面から隼斗を見つめた。
「王様はね、自分よりも家族の名誉よりも、国民を第一に考えることが必要なんだよ」
首を伸ばして、何度もメダルをながめた。わざと難しい顔を作って、満足げにうなずいてみる。すると、ガラスケースに映った隼斗の顔が勝手に、にやりと笑った。
「うわぁっ! 何、今の」
隼斗は文字どおり、飛び上がる。
あわてて目を細め、じっくりとガラスケースをのぞき込んだ。
「……ぼくの顔、だよね?」
何度も確かめたが、ガラスケースの向こう側から不思議そうに見つめているのは、隼斗自身の顔だった。
「おかしいなぁ」
首をひねる隼斗の後ろ側を、たくさんの見物人が押し合いながら通り過ぎていく。
「どうした、隼斗。そんな所に突っ立って。こっちに来てごらん」
笑みを浮かべた父が、のんきに手招きした。なんだか心細くなった隼斗は、父親の元へと急ぐ。
「隼斗はツタンカーメンって、知っているかい?」
「うん。黄金のマスクの人でしょ。さっき、あっちの年表で見た」
「この人はね、隼斗と同じ歳で即位して、十九歳の若さで亡くなったと言われている、有名な少年王なんだよ。ほら、これが彼の玉座さ」
見てごらん、と父が得意げに指さす先を見やると、絵や文字が彫り込まれた豪華な椅子が置いてある。
「ほら、この横に描かれた絵を見て。ツタンカーメンは王様なのに、ずいぶん小さく描かれているだろう。横にいる男が、当時の神官アイだよ」
「えっ、王様よりも大きいね。これって、この人の方が偉いっていうこと? ツタンカーメンは王様なのに、なんだか頼りないね」
「……そうかなぁ。でも父さんは、ツタンカーメンも十分に王様の資質はあったと思っているよ」
壁の年表に目をやって、ほら、と隼斗を手招いた。
「ここに、こう書いてある。父王イクナテンの招いた国家の混乱を鎮めるため、排除されていた神官の復権を認めた。それにより、エジプトは再び一神教から多神教を信仰するようになった……」
「それで、自分の権力が弱まっちゃったの?」
笑いながら言うと、父は「大事なことだよ」と、正面から隼斗を見つめた。
「王様はね、自分よりも家族の名誉よりも、国民を第一に考えることが必要なんだよ」
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