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63 世界じゅうのすべての知識③
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「何か鳴ってるみたい」
「ええ、これはあなたの押したブザーに反応するようになっているのです」
「ぼく押していないよ。もう、回数も残ってないし」
「いいえ、押しましたよ。ええっと、別の時代、『ギザの砂丘にいるあなた』でしょうか?」
首をかしげていると、スナナは指先をぱちん、と鳴らした。みるみる彼の姿が宙に溶けていく。
半透明になった空中に、砂丘とサンドワーム。そして、真っ青になった隼斗の姿が浮かび上がる。
「それ、『今』じゃない! どこなの?」
隼斗は腕にすがった。
「どこって、見覚えがあるはずですが。あなたがサンドワームに襲われているので助け……ることは取引上もうできないので、様子を見に行こうかと思いまして」
例の泣き笑いの顔で、スナナがにやりと笑った。
● ● ●
ぼんやりと危なっかしい足取りのアカネと手をつなぎ、隼斗はアレクサンドリアの石畳を歩いていた。建物は見えているのに、いくら進んでもまったくたどり着くことができない。
「遠いなぁ……。ちゃんと歩いてよ、姉ちゃん。ほら、段差あるし」
エレベーターを降り、またもや別の時代に来た。
いくら隼斗が呼びかけても、アカネはふてくされたまま黙り込んでいる。
「姉ちゃんのおかげだよ? 『彼』に会えたのは」
あのね、と強い語気でアカネが言い放つ。
「違います、あれは不可抗力。あんたが『当選者様』になったから、あたしたち家族はそれぞれの地に飛ばされて……」
「そういうんじゃなくてさぁ」
なによ、とアカネの目じりがつり上がる。
「ツタンカーメン……いや、シュンにまた会いたいなぁ、ぼく」
アカネが何か口の中でつぶやいたが、隼斗は聞き返さなかった。
「ええ、これはあなたの押したブザーに反応するようになっているのです」
「ぼく押していないよ。もう、回数も残ってないし」
「いいえ、押しましたよ。ええっと、別の時代、『ギザの砂丘にいるあなた』でしょうか?」
首をかしげていると、スナナは指先をぱちん、と鳴らした。みるみる彼の姿が宙に溶けていく。
半透明になった空中に、砂丘とサンドワーム。そして、真っ青になった隼斗の姿が浮かび上がる。
「それ、『今』じゃない! どこなの?」
隼斗は腕にすがった。
「どこって、見覚えがあるはずですが。あなたがサンドワームに襲われているので助け……ることは取引上もうできないので、様子を見に行こうかと思いまして」
例の泣き笑いの顔で、スナナがにやりと笑った。
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ぼんやりと危なっかしい足取りのアカネと手をつなぎ、隼斗はアレクサンドリアの石畳を歩いていた。建物は見えているのに、いくら進んでもまったくたどり着くことができない。
「遠いなぁ……。ちゃんと歩いてよ、姉ちゃん。ほら、段差あるし」
エレベーターを降り、またもや別の時代に来た。
いくら隼斗が呼びかけても、アカネはふてくされたまま黙り込んでいる。
「姉ちゃんのおかげだよ? 『彼』に会えたのは」
あのね、と強い語気でアカネが言い放つ。
「違います、あれは不可抗力。あんたが『当選者様』になったから、あたしたち家族はそれぞれの地に飛ばされて……」
「そういうんじゃなくてさぁ」
なによ、とアカネの目じりがつり上がる。
「ツタンカーメン……いや、シュンにまた会いたいなぁ、ぼく」
アカネが何か口の中でつぶやいたが、隼斗は聞き返さなかった。
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