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74 アレクサンドリアのひとつ星④
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「……人の生き死にを面白いなどと言う男の庇護など、私は必要ない」
きっぱりと言い切った母は、同じく弟をかばおうと飛び出てきたアカネのことも抱きしめた。
「ごめんね。すぐに帰ろう」
母と娘は、しっかと抱き合った。宴の席は静まり返り、事の成り行きを固唾をのんで見守っている。カエサルは、いら立つほど緩慢に剣を握り直した。
「私たち、歴史を変えてしまったわね」
自嘲するように、母がつぶやく。
「いいじゃない。懸命に生きた人の記録が、歴史よ」
何か思い当たることがあるのだろう、アカネもまた唇をかんだ。
隼斗は黄金のメダルに両手を乗せて、深く息を吐き出す。タブレットも腕から外して、きつく握り締めた。
「ごめんね。ぼくがこんなメダルをもらったせいで、みんなのこと巻き込んだ。もし、もう一度家に帰れるなら、もう怒られるようなことは絶対にしないって誓うよ」
「あら、隼斗がそんないい子になっちゃったら、母さんやることなくなっちゃうわ」
無常な剣が、母に向かって振り下ろされる。
「母さん!」
駆け出そうとした隼斗は、思わずタブレットを床に取り落とした。途端に耳をつんざく鋭い機械音が鳴り響き、隼斗は動きを止める。
見る見るうちに、広間の中央に、エレベーターの四角い輪郭が現れ始めた。
「本当に、エレベーターだ。スナナさんが、どうして?」
気に抜けるような、なんとも軽い音が辺りに響き、青スーツに身を包んだスナナが顔を出した。
「あぁあ、ええと。……何かご用ですか? 聞くだけで、何もできませんけど」
十分だよ、と隼斗は破顔した。
「さて。とりあえず時間は停止させておきました。……お辛いでしょうが、私はここで聞かねばなりません。隼斗さん」
ここで初めて、スナナは隼斗の名前を呼んだ。
「この時代でクイズは出題されましたか」
隼斗は力なく首を横に振る。
「……あの、アレクサンドリア図書館に入れれば、クイズが出題されたんだよね? でも、図書館は燃えちゃって、ぼくたち中に入ることはできなかったんだ。だから……」
きっぱりと言い切った母は、同じく弟をかばおうと飛び出てきたアカネのことも抱きしめた。
「ごめんね。すぐに帰ろう」
母と娘は、しっかと抱き合った。宴の席は静まり返り、事の成り行きを固唾をのんで見守っている。カエサルは、いら立つほど緩慢に剣を握り直した。
「私たち、歴史を変えてしまったわね」
自嘲するように、母がつぶやく。
「いいじゃない。懸命に生きた人の記録が、歴史よ」
何か思い当たることがあるのだろう、アカネもまた唇をかんだ。
隼斗は黄金のメダルに両手を乗せて、深く息を吐き出す。タブレットも腕から外して、きつく握り締めた。
「ごめんね。ぼくがこんなメダルをもらったせいで、みんなのこと巻き込んだ。もし、もう一度家に帰れるなら、もう怒られるようなことは絶対にしないって誓うよ」
「あら、隼斗がそんないい子になっちゃったら、母さんやることなくなっちゃうわ」
無常な剣が、母に向かって振り下ろされる。
「母さん!」
駆け出そうとした隼斗は、思わずタブレットを床に取り落とした。途端に耳をつんざく鋭い機械音が鳴り響き、隼斗は動きを止める。
見る見るうちに、広間の中央に、エレベーターの四角い輪郭が現れ始めた。
「本当に、エレベーターだ。スナナさんが、どうして?」
気に抜けるような、なんとも軽い音が辺りに響き、青スーツに身を包んだスナナが顔を出した。
「あぁあ、ええと。……何かご用ですか? 聞くだけで、何もできませんけど」
十分だよ、と隼斗は破顔した。
「さて。とりあえず時間は停止させておきました。……お辛いでしょうが、私はここで聞かねばなりません。隼斗さん」
ここで初めて、スナナは隼斗の名前を呼んだ。
「この時代でクイズは出題されましたか」
隼斗は力なく首を横に振る。
「……あの、アレクサンドリア図書館に入れれば、クイズが出題されたんだよね? でも、図書館は燃えちゃって、ぼくたち中に入ることはできなかったんだ。だから……」
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