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10 虹色アンモナイト③
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着歴から叔母を選んでタップすると、すぐさま通話状態になる。
「大河なの? 今どこ? 大丈夫? また倒れたんじゃないかって、心配で心配で……」
口を挟む隙を与えないほど、叔母は何度も同じことばを繰り返した。
これから帰ると言うのを遮って、「迎えに行くから一ミリたりともその場から動かないで」と、叔母は涙声になる。
数分も経たないうちに、大河は後ろから腕をつかまれた。
「あー、ごめん叔母さん。ちょっと友達の家で勉強してたら、つい夢中になっちゃって」
屈託のない笑みを作り振り返ると、「バカじゃないの」とはき捨てられる。
「あんた友達なんてひとりもいないじゃないのよ」
大河の腕をしっかりと捕まえて仁王立ちになっているのは、叔母ではなくて隣家に住む幼なじみだった。
「なんだよ、寿々花か」
おれの愛想を返せよバカが、と続けると、無言のままガシガシ背中をたたかれた。
「あんたのせいで、おばさま一睡もしていないのよ。今、休んでもらってる。だからあんたは邪魔せずに、このまま学校に行きなさい」
ぽかりと口を開けていると、さらに背中に痛みの追撃がくる。
「なんであんたは連絡ひとつ入れられないの。もう子供じゃないんだから、自分の健康状態と周りの配慮をちゃんと頭に入れなさい、ばか大河」
冷え切った手が、今度は首の辺りを払う。
「それにね、さっきみたいな丸わかりの嘘を、おばさまの前で言うんじゃないわよ」
もっと心配させるから、と寿々花は続けた。
高校三年の春、グラウンドで倒れた大河は、その年の瀬まで入院生活を送ることになった。海外で仕事をしていてどうしても帰国できない両親に代わり、叔母を呼び寄せる案を提案したのも彼女だ。
大学に進学して忙しいにも関わらず、今でも大河を気にかけてくれる、貴重な存在。
そんな寿々花を叔母も信頼し、このところ大河が学校を休みがちなことまで相談しているものらしい。
「ねえ、ちゃんとうまくいってんの?」
「何が」
寿々花はそれ以上何も言わずに目元を抑え、すん、と鼻を鳴らした。
「大河なの? 今どこ? 大丈夫? また倒れたんじゃないかって、心配で心配で……」
口を挟む隙を与えないほど、叔母は何度も同じことばを繰り返した。
これから帰ると言うのを遮って、「迎えに行くから一ミリたりともその場から動かないで」と、叔母は涙声になる。
数分も経たないうちに、大河は後ろから腕をつかまれた。
「あー、ごめん叔母さん。ちょっと友達の家で勉強してたら、つい夢中になっちゃって」
屈託のない笑みを作り振り返ると、「バカじゃないの」とはき捨てられる。
「あんた友達なんてひとりもいないじゃないのよ」
大河の腕をしっかりと捕まえて仁王立ちになっているのは、叔母ではなくて隣家に住む幼なじみだった。
「なんだよ、寿々花か」
おれの愛想を返せよバカが、と続けると、無言のままガシガシ背中をたたかれた。
「あんたのせいで、おばさま一睡もしていないのよ。今、休んでもらってる。だからあんたは邪魔せずに、このまま学校に行きなさい」
ぽかりと口を開けていると、さらに背中に痛みの追撃がくる。
「なんであんたは連絡ひとつ入れられないの。もう子供じゃないんだから、自分の健康状態と周りの配慮をちゃんと頭に入れなさい、ばか大河」
冷え切った手が、今度は首の辺りを払う。
「それにね、さっきみたいな丸わかりの嘘を、おばさまの前で言うんじゃないわよ」
もっと心配させるから、と寿々花は続けた。
高校三年の春、グラウンドで倒れた大河は、その年の瀬まで入院生活を送ることになった。海外で仕事をしていてどうしても帰国できない両親に代わり、叔母を呼び寄せる案を提案したのも彼女だ。
大学に進学して忙しいにも関わらず、今でも大河を気にかけてくれる、貴重な存在。
そんな寿々花を叔母も信頼し、このところ大河が学校を休みがちなことまで相談しているものらしい。
「ねえ、ちゃんとうまくいってんの?」
「何が」
寿々花はそれ以上何も言わずに目元を抑え、すん、と鼻を鳴らした。
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