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13 虹色アンモナイト⑥
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ひとつひとつ店の継ぎ目を確認しながら進んでいくと、老舗和菓子店の角から、ぼんやりと煙が噴き出しているのが見えた。
「煙じゃない、煙じゃない。蒸気だ!」
もどかしく地団太を踏んだ大河は、制服のジャケットを脱いで襟元をつまみ、豪快に振った。ポケットもひっくり返して、中に残った砂はないかと探す。
「ルゥ! ルーレット! どこだ! どこにいる? こんな砂なんかで阻むなよ! おれは仲間じゃないのかよ!」
仲間、とたどたどしく繰り返す声が間近から聞こえ、大河はなおも声を張った。
「そうだよ。そうだろ? おれひとりだけ、仲間はずれになんかしないでくれよ……」
両手を冷たいコンクリートに付け膝を折ると、小さな影が大河に覆いかぶさってきた。
「仲間はずれになんか、してないよ……」
小さくてか細い声が、さらに震えている。
「ルゥ、おれ」
言いたいことはたくさんあったはずなのに、実際ルゥを目の前にすると、何もことばにならない。
ルゥはチョコレート色のコートのポケットから白砂を取り出し、すべて道端に捨てた。
それから大河の耳元にかかるおくれ毛を払って、最後の砂を払う。
「これで見えるようになるはずだよ」
うながされて立ち上がると、和菓子屋の隣に例の古い判子屋が当たり前みたいに現れた。
「ルーレットが、待ってるよ」
さらに、暖かな蒸気に満ちあふれた路地へと手招きされる。
「でもその前に、今日もこれからひとつ、届け物があるの。いっしょに行ってくれる?」
「なんだよ、それ。また、捨てられるんじゃないのか」
大河は破顔した。
大丈夫、とルゥがリスみたいにほおを膨らませて答える。
「今日の受取人はね、常連さんなの。とっても優しい人で、『みんな』その人のところに行きたがるんだよ」
見ると、ルゥの手のひらには、きらめくアンモナイトの化石が乗っている。
「その人はね、草原に住んでいるの。海原を生きたアンモナイトはね、土と草に囲まれた生活にあこがれていたんだって」
「煙じゃない、煙じゃない。蒸気だ!」
もどかしく地団太を踏んだ大河は、制服のジャケットを脱いで襟元をつまみ、豪快に振った。ポケットもひっくり返して、中に残った砂はないかと探す。
「ルゥ! ルーレット! どこだ! どこにいる? こんな砂なんかで阻むなよ! おれは仲間じゃないのかよ!」
仲間、とたどたどしく繰り返す声が間近から聞こえ、大河はなおも声を張った。
「そうだよ。そうだろ? おれひとりだけ、仲間はずれになんかしないでくれよ……」
両手を冷たいコンクリートに付け膝を折ると、小さな影が大河に覆いかぶさってきた。
「仲間はずれになんか、してないよ……」
小さくてか細い声が、さらに震えている。
「ルゥ、おれ」
言いたいことはたくさんあったはずなのに、実際ルゥを目の前にすると、何もことばにならない。
ルゥはチョコレート色のコートのポケットから白砂を取り出し、すべて道端に捨てた。
それから大河の耳元にかかるおくれ毛を払って、最後の砂を払う。
「これで見えるようになるはずだよ」
うながされて立ち上がると、和菓子屋の隣に例の古い判子屋が当たり前みたいに現れた。
「ルーレットが、待ってるよ」
さらに、暖かな蒸気に満ちあふれた路地へと手招きされる。
「でもその前に、今日もこれからひとつ、届け物があるの。いっしょに行ってくれる?」
「なんだよ、それ。また、捨てられるんじゃないのか」
大河は破顔した。
大丈夫、とルゥがリスみたいにほおを膨らませて答える。
「今日の受取人はね、常連さんなの。とっても優しい人で、『みんな』その人のところに行きたがるんだよ」
見ると、ルゥの手のひらには、きらめくアンモナイトの化石が乗っている。
「その人はね、草原に住んでいるの。海原を生きたアンモナイトはね、土と草に囲まれた生活にあこがれていたんだって」
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