不可思議∞伽藍堂

みっち~6画

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14 虹色アンモナイト⑦

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 チョコレート色のコートの襟を立て、ルゥが先になって歩き出す。
 草原と言うからには広大な場所を想像したが、ルゥが立ち止まったのは、商業ビルの乱立する建築予定地だった。
 立ち退きのためすっかり寂しくなった一画に、小さな平屋が残されている。
 ルゥは玄関先がよく見える場所に大河を連れていき、そこで待つように言った。
 チャイムを鳴らすと、すぐに年老いた男が顔を出す。人好きのする笑みを浮かべた老人は、ひと通りルゥが話し終えると、「うれしいねぇ」と、くしゃりと目尻を下げた。
「すると、わしはそのきれいな化石の受取人にふさわしいと、選んでもらえたのじゃな」
 アンモナイトを受け取るため、老人は両手を重ねた。その指先が虹色のアンモナイトに触れたとき、宙に光の玉が現れた。
 驚きのあまり大河は声を上げたが、老人はまるで動じずルゥとことばを交わしている。
 ひとつふたつ、またたきをする間に、光の玉はどんどん増えて空中を舞った。
「いつもありがとう、小さなお嬢さん。大切にするよ」
 気のせいかとも思ったが、目をこすっても光は消えない。それどころか、まるで雪でも降り出したかのように一面、光の玉に包まれていく。
「捕まえて、大河」
 いつの間にか戻っていたルゥが、両手を振り回して飛び跳ねている。
「触れるの、これ?」
「そう。あれは、伽藍堂が存在し続けるために必要なもの、なの」
 そっと手のひらで受け取ると、淡い光の玉はいっそう輝きを増した。
 大河が光の玉をかき集め、ルゥが小瓶に詰める。すぐに小瓶はいっぱいになった。
「もっと瓶はないの? まだまだ集められるのに」
「いいの、これに入るだけで。残りは大地に染み込んで、また空に上がっていくのよ」
 大切な報酬を手に伽藍堂に戻ると、一気に踊り場まで駆け上がった。
「ただいま!」
 大河が声を張り上げると、ルーレットが満面の笑みで出迎えてくれた。
「やあやあ、来ましたね。ふたりとも、ごくろうさまでした。さあ、その小瓶を見せてください。……とても良い光ですね。これでまた少しだけ、店が続けられますよ」
 古い洋館では蒸気が噴き上がり、機械音がさらに大きく響き渡った。
「大河君、おかえりなさい」
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