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15 翅のドレス①
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その日、大河はとても急いでいた。HRが終わると同時に教室を飛び出し、スニーカーが脱げそうになるほど懸命にグラウンドを突っ切った。
もうすぐ校門を抜ける、といったときに、グラウンドでストレッチをしていたサッカー部の元後輩が大河に気づいた。
手を振り、白い歯を見せながらみるみる加速し、なんなく並走する。
「だめじゃないですか、大河先輩。まだ、走る許可出ていないんでしょう」
「もう出たようなもんだよ」
足を止め、大河が息を整えている間に、後輩は雲間から顔をのぞかせた太陽をまぶしそうに見上げた。
「そうだ、おまえら今度N高のやつらと練習試合やるんだって? コーチに聞いたよ」
後輩は屈託なく笑うと、「見に来ますか」と真正面からひとみをのぞき込んでくる。
無理だろうな、と大河が言うと、後輩の顔が不安げに曇った。
「なんだ、その顔は。仕方ないだろ? おれにも事情があるんだからさ。大丈夫、おまえはもう立派なキャプテンだ。しっかりしろ」
まだ何事か言いたげな後輩を残し、通学用のスポーツバッグを背中に回した大河は、後ろ手を「じゃあな」と振る。
グラウンド沿いの細道を、背筋を伸ばして歩き続け、角を曲がるとしゃがみ込んだ。
心臓が百倍くらいに大きくなって、どくりどくりと脈打っているかのようだ。
素直に走り回れる彼らの姿が、うらやましい。
退院してずいぶん体力も戻ったが、心配する叔母を前にまたサッカーがしたいなどとは、とても言い出せない。
それでも、数日前と今とでは気持ちに格段の差がある。うらやましい、という気持ちに変わりはないが、今ではそれを受け入れる余裕ができたのだ。
ストレッチの終わった面々が、グラウンドを走り始める。ちろりと目の端でそれを確認し、立ち上がった。
「おれは、今しかできないことを、やる」
バッグの中を、大切そうにのぞき込む。倒れた教科書を端に寄せ、真ん中に置いた小さな小箱をかばうようにして、空間を作った。
「早くこれを、ルゥとルーレットに見せてやらなきゃ」
自分にも居場所がある。そう思うことで、胸を張ることができるのだ。
もうすぐ校門を抜ける、といったときに、グラウンドでストレッチをしていたサッカー部の元後輩が大河に気づいた。
手を振り、白い歯を見せながらみるみる加速し、なんなく並走する。
「だめじゃないですか、大河先輩。まだ、走る許可出ていないんでしょう」
「もう出たようなもんだよ」
足を止め、大河が息を整えている間に、後輩は雲間から顔をのぞかせた太陽をまぶしそうに見上げた。
「そうだ、おまえら今度N高のやつらと練習試合やるんだって? コーチに聞いたよ」
後輩は屈託なく笑うと、「見に来ますか」と真正面からひとみをのぞき込んでくる。
無理だろうな、と大河が言うと、後輩の顔が不安げに曇った。
「なんだ、その顔は。仕方ないだろ? おれにも事情があるんだからさ。大丈夫、おまえはもう立派なキャプテンだ。しっかりしろ」
まだ何事か言いたげな後輩を残し、通学用のスポーツバッグを背中に回した大河は、後ろ手を「じゃあな」と振る。
グラウンド沿いの細道を、背筋を伸ばして歩き続け、角を曲がるとしゃがみ込んだ。
心臓が百倍くらいに大きくなって、どくりどくりと脈打っているかのようだ。
素直に走り回れる彼らの姿が、うらやましい。
退院してずいぶん体力も戻ったが、心配する叔母を前にまたサッカーがしたいなどとは、とても言い出せない。
それでも、数日前と今とでは気持ちに格段の差がある。うらやましい、という気持ちに変わりはないが、今ではそれを受け入れる余裕ができたのだ。
ストレッチの終わった面々が、グラウンドを走り始める。ちろりと目の端でそれを確認し、立ち上がった。
「おれは、今しかできないことを、やる」
バッグの中を、大切そうにのぞき込む。倒れた教科書を端に寄せ、真ん中に置いた小さな小箱をかばうようにして、空間を作った。
「早くこれを、ルゥとルーレットに見せてやらなきゃ」
自分にも居場所がある。そう思うことで、胸を張ることができるのだ。
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