GELADEN~装弾済み~

如月 風佳

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犬の巣

過去【KEN&SHIN】

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「痛い!! ケン!! 痛いよ!!」


声が、霧が充満した山林の中に響き渡った。少年と言う言い方が相応しい身長の子ども…シンが騒ぎ立ていたのだ。それでも力ずくで腕を引っ張る長身の青年はケンだ。 


「ケン!! やめてよ!! 痛い!!」

腕を無理に引っ張られ、シンは喚きたてる。目には涙が浮かび、ただ必死に痛みを訴える。
しかし、ケンは更に力を込めて引っ張った。

「いいから!! また捕まるよ!!」

グイと引っ張ると

「痛いよ!!」

シンの悲痛な声が上がる。

負けじとシンもケンにつかまれている手首を振り払った。(!!) その瞬間、筒のようなライトが二人を照らした。サーチライトだ!! 手が離れてなお、少年の彼が“痛い!!”と泣き叫ぶ理由は、お互いの手首に手錠がかかっているからだった。ケンの右手とシンの左手を拘束されていた。それをケンが力任せに引っ張るのでシンの手首には鉄が食い込み、月明かりでもわかるような酷い色をしていた。
 ケンは再び往復して来たサーチライトの光に弾かれたようにシンを抱えて、木の影に飛び込んだ。

「くっそ!!」


ケンの舌打ちが聞え、シンは心配そうにそれをのぞく。それに気が付き、彼は眼鏡の奥の瞳を優しくさせた。


「痛くない? シンちゃん。」

言ってみた言葉に自分で苦笑がもれる。


「―――って…そんな訳ないっか…」


手錠をしているのに強く引かれたせいで手首が真紫色に変色しているのだ。シンはそれを小さい手とで、スリスリ撫でている。


「………」


辺りをのぞき見る。その目の鋭さといったら、さっき微笑みを形成していたものと同じとは思えない。 ずり落ちてきた眼鏡を押し上げる。
サーチライトの、まるでUFOでも下り立った時のような黄色い筒の光が 目を眩ます。

素早く頭を引っ込め、跪いてシンに囁くように言った。


「シンちゃん…? 鬼ごっこしようか…。」

シンがキョトンとした顔を見せる。


「ただし、今度のルールは特別。」


「トクベツ?」


大切な事でも繰り返すようにシンはゆっくり言った。それを見てケンは笑うと続けた。


「そう…トクベツ…。あの黄色い光りにあたっちゃったら溶けちゃうんだよ…?」


「はりゃ!!」


シンはたいそう驚いた顔を見せた。また、少し笑ってしまう。一生懸命なところが可愛くてしかたがない…。


「だからね…あの光が来たら、木に隠れるんだ…。いいね?」


「木に…隠れる…。解った!!」


シンが小さい手をピンと張って耳の横に持ってきた。すると、ケンは人差し指を口の前に運んでシッ…とやった。


「それと…喋っちゃダメなんだ。いいね?」

シンは慌てた様子で口を押さえた。ケンは笑って「いい物あげるよ」と言いズボンのポケットに手を入れた。

「ほらっ…ミルキーさん。口開けて…」


シンは素直にそれに従う。ケンは包みを開ける。


(あっ…虫歯…)


ヒョイと見た歯に虫歯があって何故か笑いが止まらなくなった。


「あーあーあー…」


「あ…ごめん…ごめん…」


口を開けっ放しでシンが「早く」と言ったようだったのだ。飴玉を投げ込む。投げ込む振りをして遊んでもいいと思ったが、生憎…時間がない。(餌をやるときの鯉のようで可笑しいのだけれど…残念だ。)

「いいね…喋ったらそのミルキーさん落っことしちゃうでしょ? だから…ダメ…解った?」


シンはコクンと頷いた。ケンは笑って見せ、立ち上がった。と、鋭い表情になって様子を伺いだした。光りはこの辺一帯を照らしている。さっきから三回目だ。


(この辺一帯に集中してきてる…。)


と、その時、服の裾を引っ張られた。


「なに?」


シンに聞く。


「…………」


どう考えても何か言いたそうな顔だ。


「どーしたの?」
シンは何も言わず、ヘタなパントマイムで口の周りをパタパタさせる。ケンは悟ったのか笑って 


「自分の口の横に飴を持ってって喋るんだよ。」


ヒントを与えたが大分難しそうな顔をしている。

やっぱりこうゆう情景でも笑いが込み上げてきてしまう。


「!! ホントだ!! 落ちない!!」


「よく出来たね…。で? どうしたの?」


「んー…鬼…どっちなのかなぁ~って…。」


ケンは笑った。


「俺が鬼をやるよ。シンちゃんは逃げるの。オーケー?」


「おーけー…」


ぎこちない言葉だがイッチョ前に親指を付きたててくる。笑った。


「あと…これ…」


シンは不安そうに手錠に繋がった腕を持上げた。


「うーん…そうだねぇ~…」


(シンちゃんにこれ以上、痛い思い…させられないっか…。)


「シンちゃん…」


「ん?」


「目…閉じて。変な音が聞えても開けちゃダメだよ。」

頷いて目を素直に閉じるところらへん、多分自分には真似出来ないな…と思う。
懐から黒光りした物を取り出す。拳銃だ。さっき、軍人が大量に死んでいたのでそこから拝借したのだ。おそらくメンバーの誰かと派手にやりあったに違いない。


(音がなるし…さすがに…手首を撃つってのも…)


気が引けるのだ。


仕方がないのでケンは手錠の手を木に押し当てた。


(どうか…はずれますように。)


心にもないお願い事をしてみる。一体、誰に願ったのだろう…。
ケンは高々と銃を振り上げた。


『ガン!!』


最初の一回から何回音が響いただろう。
『バキッ!!』と太い枝を折った様な音が辺りに響き渡った。


「………」


息が上がる。

涙が浮かんで先が見えなくなった。むせ返って咳が2回出た。手錠に引っ掛かっている骨を砕いたのだ。その後は死に物狂いで引っこ抜いた。 

「ケン?」


シンが不安そうな声を上げた。目はまだ閉じているようで、それでもキョロキョロしていた。
それじゃあ見えてないでしょ? と教えてやりたい気分になる。


「ここにいるよ…。」

いつか読んでやった絵本の妖精の声を真似ていった。


「シンちゃん。」


今度は自分の持ち前で…、するとどうだろう。シンの目から滝のように涙が溢れ、流れ落ちてきた。


「シンちゃん?! どっか痛いの?」


慌てて聞くと、シンが自分の名を呼び飛びついてきた。声に驚いたのとシンのいきなりの飛びつきに不意をうたれ、倒れる。
その時、砕いた右手を地面に押し当ててしまった。

「――――!!!」


声にならない激痛が一瞬、気を遠くさせた。けれど、ただ声を出さずに黙っていた。
痛みには慣れている方だ。

「ここに…いるよ。」


まるで修理の必要な水道のようにポツンポツンと言った。


「ケン! ケン…!!!」


シンはまるで逃げた飼い犬を見つけたときのように、迷子で母親が見つかった時のように泣き叫んだ。


「ここに…いるよ…」


彼は優しく言って、真紫色に変色した右手で帽子がのった頭を撫でてやった。そのたび、涙が出そうになるくらい痛くなって、ギシッ…ギシッ…と骨が軋んだ。


「ケン!! いなくなっちゃ嫌だよ!!」


ケンは「うん…」と優しく頷いて、言った。

「大丈夫だから…鬼ごっこしょうね…。」


「嫌だ!! だって…今のケン…ついてきてくれないもん!!」


子供はどうしてかこういう時を上手く察する。ケンは少し途方にくれたような顔をした。


「そんなことないよ。」


いくらケンがそう言ってもシンは首を縦には振らなかった。


「僕…いい子にしてたよ?!! なのに…なんで走らなきゃいけないの? ずっとあの人たちの言われた通りしてきた!!なのに!!なんで?! 」


シンが言っている“あの人たち”とは政府の人間の事だ。


「シンちゃん…。」


哀れむように…彼の声を聞いた。しかし、しっかりと痛みは共有している。


「セイもライも僕の友達はなんで死んじゃったの?! 殺されたの?!」

シンが叫んだ。セイもライも反乱軍を抹殺するべく集められた仲間。つまり、自分達と同じ境遇にあった者たちだった。


「お友達だったんだ…、なのにっ!!」


ケンのシャツを千切れるほど握り締めて、彼は大声で泣きたくなる衝動を懸命にこらえていた。ケンはそのやや大きめの帽子がのった頭をゆっくりと撫でた。


「知ってるよ、シンちゃん。俺も友達だった…。」


ケンは下唇をかみ締めた。本当に友達だった。同じ境遇だったから、今のメンバーより深く語れたヤツもいたのに…。それを奴等は…政府は…すべて奪っていった。一週間もさらされて帰って来た親友の腐敗しきった姿に、涙も出なかった。

行く末はコレかと…

こんな風になるために人を殺してきたわけじゃない…

悔しさよりも脱力の方が大きくて立ち尽くすほか、なかった。

「死んじゃうの?ねぇっ! ヒビキもアキラもチカも…僕もっ!!ケンもっ!!みんなみんなっ、セイやライみたいに…殺されちゃうの?僕…もう嫌だっ!!死んでほしくないんだっ!! 僕は何ももってなかった…けど、やっと…ケンに逢えて…ヒビキたちにも会えて…やっと一緒にいてくれる人が出来たのに! 死なないでほしいんだっ!!」

シンは叫んだ。叫んで叫んで…泣いて泣いて。ケンはただ、頷き、老成した微笑を作ったまま、シンの言葉を聞いていた。

―― セイやライは死んだ…

「シンちゃん…大丈夫…。」

―― でも…俺は生きてるよ? シンちゃん…

「ヒビキ達がやられると思う? 生きてたらまた逢えるよ。そのためにはまず、ココから逃げなきゃ…さぁ、立とっか…」

「嫌だ!!ケンと手を繋ぐもん!! 今までだってケンは僕の手を持っててくれたよ!! 手…繋いで走ろうよ…」


ケンは下唇を噛み締めた。残念な事にそれは出来なかった。砕けた右手、銃を持つための利き手の左手。もし、左手が塞がっていたら…どうだろう。前方から現れた敵に素早く銃を向けられる自信がない。


「ね…走って…。お願いだから…。」

「嫌だっ!!!」
今にも大声泣き出しそうなシンにケンは少しばかり焦り始めてくる。この声を聞かれたら…確実に居場所がバレてしまう…。
今も耳を澄ましているかもしれない…。
「大きな声を出さないで…! 本当に早く此処から離れた方がいいんだよ?解るよね?」
ケンの必死の声にもシンは首を縦には振らなかった。
「頼むから…」
懇願するような声を上げるがシンはその声に不安を感じたのだろうか…爆発したように泣き出した。

「わあぁぁぁっぁ…!!ケンがっっ!!ケンが置いてくぅっ!!」

ケンは泣き声を少しでも響きないようにシンを強く抱きしめた。

「置いていくわけがないでしょう…?!!」

その怒りに震えた声に似た叫びは…シンがどうしてこんな事を言い出すのかと戸惑っているようにしか聞こえなかった。

「…走るの…。」

―― どうか、そんなに純粋な声で…
―― 俺を呼ばないで。

シンは首を横に振る。


『ねぇ…この子に笑える?』


「…!」
「いたっ!!!」
ハッと気がついた時にはシンの小さな背中に爪を立てていた。
シンの瞳がまたブワリ…と波打つ。
「ご…ごめ…」
咄嗟に謝ろうとするが遅かった。シンの泣き声は周囲に木霊する。
「!!!ケンっっ!!怒ったのぉっ?! ゴメンナサイっ!!ゴメンナサ…っっ!!」
ケンはシンの口を押さえつけ…座り込んだ。
「ごめん…。俺が悪いんだよ? シンちゃんは謝らなくていいんだよ…?」
ダメだ、いつもならちゃんと解るまで言い聞かせて上げられるのに、時間の危機感とで余裕がなくなっている。
右腕の痛みに顔を歪めながらそう零すように言った。
いつものように、いつものようにと心がけて。

でも、今は確実にいつもとは違う。

シンに爪を立てて傷つけてしまった。

傷を…

「爪たてちゃってごめんね…」
―― 爪を立てたのは…
―― この小さな背中にじゃない…
―― 爪を立てたのは…
――『ねぇ…?この子に笑える?』
――イカれた昔の自分…。
ケンは辛く辛く目を閉じた。その表情は手の痛みを表現するときより痛々しいと感じられた。
何故だろう…今は昔のような事は思わないのに…。シン以外のメンバーにももちろん死んで欲しくないのに…昔の思考が今まだこびリ付いて…疼く。
「ごめんね…」
何度もそう零したくなる。だからシンにそう零した。赦されたかったのかもしれない。
「…あぁ…もー…」
…自分の醜さに泣けてくる…。
頭を下げるケンをシンが覗き込む。
「ケン?」
塞いだ手の隙間からシンがそう…窺うように呟いた。
「ん?」
シンを見る表情…困った顔をした表情。潤む瞳。
「――…!」
シンは大きな瞳をさらに大きくして息を呑んだ。
「自分が汚すぎて…泣けてくる…。」
―― 昔のように君を束縛してしまう要素が…また自分にある気がする。
『ねぇ…この子に笑える?』
―― 酷くきつく…――



シンは動きを止めた。
「…なんて…言ったの?」


ケンはもう一度、言った。信じられないと言う気持ちからか、シンの声が震えていた。

「…なんでもないよ…」

苦笑するいつもよりも潤んだ目に、シンは我を失いかけた。もう一人の自分が姿を現したのだ。
 
もう一人の自分。



「…っ!!…んな事! 笑った顔して言ってんじゃねぇーよ!!!」 


「…泣いていっても仕方ないから…」


ケンはシンの凶変ぶりに、一つも驚いた様子はなかった。目はグッと細くなり、黒くなった。
眉毛は吊りあがり、ケンを睨み付けた。


「んなもんっ!泣きたきゃ…大声で泣けばいいじゃねぇーかよ!! 俺の前じゃあ…無理なのかよ…。」


シンは下唇を噛んで、俯いた。


「違うよ…?ただ、これは…君達にいえないほど…醜い事だから…」

シンはケンを睨むように見据えた。
「きっと君たちは俺の事嫌いになるから…言わなくていいかな?」
シンはコクンとし、キッ…と顔を上げた。強く吊り上がった眉を見せる。
「勝手にしろよ…!行くぞ…!!」


シンの強い口調にケンは微笑んでいた。
―― いつか、昔の自分の醜い様を
―― 君に話せるときが来るだろうか?

ケンは悲しそうな…辛そうな微笑をシンに気づかれないように零した。そして…次の瞬間には唇を引き締め、顔を険しくしてシンに言った。
「シン…大量に軍人が死んでいた場所に戻ろう…。あの辺一帯はサーチライトが循環してこなかった。この後であの辺一帯から抜け出せる道を探したほうが良いかもしれない。」
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