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1.変身薬でマッスルになったら
しおりを挟む「進学前に、私の婚約者を決めるのですか?」
私の名前はフランソワ、銀髪で黒い瞳、王立魔法学園の中等部3年生です。
父から、高等部への進学前までに婚約者を決めるよう、言われました。
同級生で、ハイスペックな令息といえば、二人に絞られます。
まずは、伯爵家の令息ホワイト様、正妻の子で、金髪のイケメン、成績は1番と女性にモテます。
そして、伯爵家の令息ブラック様、側妻の子で、黒髪のイケメン、成績は2番と私のライバルで、男性にモテます。
私は、同級生からは美人と言われています。
褒められて、うれしいですが、態度には出しません。
この美貌を使えば、だれでも落とせます。
トロフィーワイフの座、つかみ取ります。
◇
数学のテストで、1問、解けませんでした。
ホワイト様は、満点です。
成績が2番なのは、いつものことです。
でも、今回は少し違います。
テスト問題に疑惑があります。
授業が終わり、図書室から本を借ります。
たくさんの本を、女性の細腕で持つと、とても重いです。
「重いでしょ、私が持ちます、お嬢さん」
廊下で、ホワイト様が助けてくれました。
優しい人です。また、好感度が上がりました。
◇
魔法研究室で、疑惑の問題に取り組みます。
ホワイト様は、テストで満点を取りました。この問題をどうやって解いたのでしょう?
あんな優しい人が、教師を買収するわけないし……
それにしても、本は重いです。
力が欲しいです。
「そうだ、英雄ヘラクレスのような筋肉質に変身する魔法薬を作りましょう」
そのスジでは天才と言われている私です。ササッと作ります。
「出来ました!」
スプレーボトルに入れて、自分にシュッと吹きかけます。
「これは失敗です!」
顔だけ、ヘラクレスのような筋肉質に変身しています。
図書室に着くころには、変身が解けるでしょう。
変身したまま、図書室へ本を返却に行きます。
体は令嬢のままなので、とても重いです。
廊下で、ホワイト様に会いましたが、ヘラクレス顔の私には、見向きもしません。
(当然ですよね)
あら、ブラック様が近づいて来ました。
「重いだろ、俺が持つよ、フランソワ」
彼が、本を持ってくれました。
しかも、私だと気が付いています。
「私がフランソワだと、なぜ、わかるのですか?」
ヘラクレス顔に、私の面影は少しだけありますが、言わないと判らないレベルです。
「当たり前だろ、いつもより筋肉質な顔だが、フランソワだ」
(美人な私を、普段、どう見ていたんだ?)
「ところで、ブラック様は、数学のテストで一問を間違えましたよね」
「うん、解くために必要な数値が、一つだけ、どうしても足りなかった」
「私もです」
◇
学生寮に戻って、窓から、青空に浮かぶ白い雲を眺めます。
ホワイト様と、ブラック様、どちらを選べばいいのか、迷います。
「うん、やっぱり、世の中、お金よ!」
「お金で苦労しないホワイト様を、婚約者に選ぶのが正解よ」
明日、自分の意思を話したいと思います。
◇
教室で、ホワイト様の横に座り、取り巻き様たちと一緒に歓談します
ホワイト様の自慢話を、楽しく聞きます。
過去の活躍を、聞きます。
言い訳、責任転嫁を、我慢して聞きます。
取り巻き様たちは、うなずきながら、ホワイト様を褒めます。
この手腕は、スキル[おべっか]レベル99の勇者様です。
「そういえば、フランシス様は、婚約者を決められましたか?」
取り巻き様が、私に話を振ってきました。
私が婚約者を決めることは、クラス中に広まっていたようです。
スキル[地獄耳]レベル99の賢者様たちです。
「はい、決めました」
ニコッと微笑みます。
「やはり、ホワイト様ですよね」
取り巻き様たち、ホワイト様、いや、クラス中の視線が集まります。
「私は、、、」
窓の外、青空に浮かぶ白い雲に、一瞬だけ、目を移します。
「婚約を、ブラック様に、お願いしたいと思います」
ニコッと微笑みます。
「「えー!」」
教室中が叫びました。
「あら、皆さん、聞いていらしたのですね」
ブラック様が、近づいて来ました。
「フランソワ、あなたのことは俺が一生守ります」
━━ FIN ━━
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