上 下
2 / 7

2.恋愛測定器で愛を数値化したら

しおりを挟む

「これは、人類を平和に導く、世界が望んでいたアイテムです」

 この水晶玉は、男女の相性、ラブラブ度を測定し、数値化することができます。

 私の名前は、マスカットリア、中等部3年生で黒髪、ヒスイ色の瞳を持つ令嬢です。


 これを使って、私と、あの人の相性を測定できれば……


    ◇


 教室で、令息と令嬢を集め、説明します。
「これは教会にあるスキルを測る水晶玉を改造した「ラブラブ水晶玉」です」

「これで、男女の相性を測ることができます」

「「えー!」」
 皆さんが驚きます。


「お疑いですか? それでは試してみましょう」


「アンジェリーナさん、このラブラブ水晶玉の上に、手を置いて下さい」

 アンジェリーナが、恐る恐る、ラブラブ水晶玉の上に、手を置きました。


「では、ギルスペード君、令嬢の手の上に、自分の手を重ねて下さい」

 ギルスペードが、恥ずかしそうに、アンジェリーナの手の上に、自分の手を重ねました。


 ラブラブ水晶玉が、淡く光り、中で数字が縦に回転しています。

「「止まった」」
 皆さんが、ゴクリと唾を飲みます。

「「キャー! 99 」」
 いきなり、スゴイ数字が出ました。

「お二人の相性は、レベル99です。お幸せに」

(こんな高い数字が出るなんて想定外、うらやましいです)


「次は、どなたが?」

「私たちが測ります!」
 最近、政略結婚が進んでいると噂のカップルが、手を挙げました。

 ラブラブ水晶玉の上で、手を重ねます。

「え? 50 」

 カップルは顔面蒼白です。

「私、お父様に言って、婚約を破棄してもらいます」
「ちょ! 待てよ」

「まって、この50でも、高い方なんですよ」
 私が、あわてて説明しようとしますが、カップルは、それどころでは無いようです。


「次は、どなたが?」
 みなさん、ビビッて手を挙げません。

「おい、お前、行けよ」
 留学生のグレープ君が、学友から前に押され出てきました。

「お相手の令嬢は?」

 令嬢のみなさん、ビビッて手を挙げません。
 それはそうです。留学生のグレープ君は、黒髪のイケメンです。

「マスカットリア、お前が犠牲になれよ」
 男性陣が、ひやかします。

「そうよ、黒髪同士で、似合ってるわ」
 女性陣は、こうなると冷たいです。


「わかりました」
 私は、ラブラブ水晶玉に手を置きます。

(まさか、こんなに早く、私の願いが叶うなんて)

「仕方ない」
 グレープ君が、手を重ねます。

 汗で、手が、シットリしています。

 ラブラブ水晶玉が、淡く光り、中で数字が縦に回転しています。

「「止まった」」
 皆さんが、ゴクリと唾を飲みます。


「「 999? 」」

「「満点は、100じゃないのかい!」」
 教室中から、ツッコミが入りました。



(もしかしたら、ラブラブ水晶玉は、汗の量を測っているだけ?)



「グレープ君、そ、そろそろ、手を放してくれない?」
 私の手を握って、放してくれません。

 彼の手のシットリ感、温かみ……
 恥ずかしくなってきました。

「マスカットリア、俺……」
 深い紫色の瞳が、私を見つめて、放してくれません。


 ━━ FIN ━━



しおりを挟む

処理中です...