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08.教会での小銭稼ぎ
しおりを挟む今日は、王宮からの帰りに、街の教会に寄る日です。
教会の裏側に、娼館があるので、王弟陛下が遊びに出る日に合わせ、私も街に出ます。その日は、街の治安が良いからです。
伯爵家の馬車の中で、平民の服に着替えました。顔は、ベールで軽く隠します。
「これは、ずいぶんと患者さんが多いですね」
教会の扉を開けると、長椅子が病人で埋まっていました。
一人ひとり、光魔法で治癒して回ります。費用は無料じゃありませんが、薬代よりは、ずっと安い金額に設定しています。
私の伯爵家は、金欠なので、小遣い稼ぎです。
なお、街の教会の神父様は、反乱軍のリーダーに、よく似ています。
今日は人数が多かったので、教会を出ると、少し暗くなっていました。
馬車との待ち合わせ場所に急ぎます。慌てていたため、道の角で、誰かにぶつかりました。
「あ、申し訳ありません」
「いや、貴女にケガはありませんか?」
「「え?」」
「オリーブ」
「ベルモット君」
なんと、ぶつかった相手は、平民の服を着た王弟殿下でした。
少し離れた角で、影が動きました。たぶん、護衛兵です。私だと分かるよう、ベールを一瞬上げて、銀髪と顔を見せます。
「こんな遅く、女性一人じゃ危険だろ、送っていくよ」
彼は、ワルぶっていますが、実は心優しいジェントルマンです。学生時代から変わっていません。
「自分に身体強化の魔法をかけているので、私は何かあっても逃げきれますよ」
「そうか、学園時代の仲間で、身体強化の魔法をマスターしたのは、俺とオリーブ、そしてアイツだけだったな」
「そうですね、でも、身体強化しても、最後尾を護って、後ろから刺されては……」
不覚です。ずっとこらえていた涙が……
「すまなかった……」
黄昏時、ベルモット君が、軽く抱きしめてくれました。
彼に、馬車まで送っていただきました。
「よぉ、じいさん、久しぶりだな。奥様を、ちゃんと送り届けてくれよ」
御者さんとは、昔の遊び仲間だったようです。
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