1 / 1
一話完結 お見合い、これで最後にしよう。婚約して欲しい
しおりを挟む「遅くなりました、お見合いの席はこちらでしょうか」
王宮の広い中庭で、ガゼボの中に立っていた見合い相手に挨拶をします。
「僕も今来たばかりです、クロガネです」
黒髪のイケメンです。
「ギンチヨです、よろしくお願いします」
と、言って気が付きました。
「「あれ?」」
お互いに、別のお見合い相手に挨拶した事に気が付きました。
「「失礼しました」」
急いで、本当の相手を探します。
別の令息様でしたが、少し気になる方です。
私は、伯爵家の令嬢、銀髪のギンチヨです。婚約すべき年齢ですが、お見合いが失敗続きで、相手が見つかりません。
◇
「ギンチヨ嬢の家は、資産はどのくらい持っています?」
本当の相手である子爵令息様と、お見合いをしていますが、気が進みません。
さっきから、お金の話ばかりです。
「少しよろしいですか?」
先ほどのクロガネ様が、割り込んできました。
「子爵令息様、確か、貴方には婚約者がいらっしゃいましたよね?」
え? なにそれ!
「な、なな」
子爵令息様は、しどろもどろになっています。
「子爵令息様、何をなさっているのですか!」
どこかの令嬢が怒鳴り込んできました。
「違うんだ、誤解だ、この二人を引き合わせていたんだ、ごめんなさい」
子爵令息様が逃げて、令嬢が追いかけて行きました。
中庭に、静粛が戻りました。
「助けて頂き、ありがとうございました。クロガネ様」
「ちょうど、通りかかったから」
彼は、恥ずかしそうな、悲しそうな表情です。
「またお見合いに失敗しました。これで9回目です」
私は、笑って言ったつもりですが、悲しそうな表情だと思います。
「そうでしたか。僕も、ダメでした。不貞の子だと噂が流されたため、血筋を重要視する令嬢から、断られてしまう」
彼は、ため息をつきました。
私も、ため息を一つ、見上げた青空が、まぶしいです。
◇
「ギンチヨ嬢、久しぶりだな」
王宮の夜会で、昔の男に声をかけられました。
お見合いをしましたが、この男の浮気が発覚したため破談となった、思い出すのも嫌な相手です。
「また、浮気相手でも探しているのですか?」
男をにらみます。
「お見合いの相手がいないんだって?」
「貴方が、ありもしない噂を流したからでしょ!」
この男と一晩デートしたと、ウソを流されたため、私にまともな見合いの話が来なくなってしまいました。
「怒るなよ、今夜は俺と踊ろうぜ」
「申し訳ないが、ギンチヨ嬢は、僕が先にダンスを申し込んでいるんだ」
割って入ってきたのは、クロガネ様です。
「おっと、スネにキズを持つ者同士かよ」
男の無礼な言葉に、クロガネ様の目が厳しくなりました。
「なりません。さぁ、ダンスを楽しみましょう」
私は、クロガネ様を引きはがします。
「心配なさらないで下さい。もうすぐ、あの男は、伯爵家と子爵家の、格の違いを味わいますので」
あの男が、このシャンデリアの輝きを見るのは、今夜が最後になるでしょう。
◇
ダンスが終わり、バルコニーに移動して、二人で涼みます。
「ギンチヨ嬢、僕と付き合ってくれないか」
クロガネ様が、指輪が入った箱を出してきました。
「あなたにとって、10回目のお見合い、これで最後にしよう。婚約して欲しい」
私は、指輪が入った箱を受け取り、輝きに目を奪われました。
彼が、侯爵家の正式な第一令息であることは、調べがついています。
彼は、優しく私の手を取ります。
「……待って下さい」
私は、その先には、踏み切れません。
「私は、浮気が怖くて、もう誰とも、婚約したくないのです」
顔を上げることができません。
「あら、クロガネ様、お久しぶりです」
突然、どこかの令嬢が近づいて来ました。
「私との婚約を破棄して、こんな芋令嬢と付き合っているのですか?」
失礼な令嬢です。
「婚約破棄は、貴女が浮気したからだろ!」
クロガネ様の語気が強まります。
「あら怖い、浮気されるのは、貴方に魅力が無いからですよ」
笑いながら、令嬢は会場へ戻っていきました。
……私は、魅力がないから、浮気されたの?
「僕が不貞の子だと、ウソの噂を流したのは、あの令嬢だ」
彼は、悔しそうです。
「心配は無用だ。あの令嬢は、二度と私たちの前には現れない」
月明かりに照らされたクロガネ様は、魅力的に笑います。
さわやかな夜風が、私たちを包みました。
クロガネ様が、私の瞳を見つめてきます。
「誓います、僕は浮気をしません! 貴女が好きだから!」
彼の真剣さが伝わってきました。でも……
「もし、貴方と、また偶然に出会ったなら、答えを出します」
そう言って、私は会場を後にしました。
◇
たぶん、私は彼を愛しています。
でも、男なんて信じられない私がいます。
もしも女神様が、私たちをもう一度、引き合わせるなら…… 私は、前に進める気がします。
王宮の中庭は、今日も青空です。
「ずっと、私を待っていたのですか? クロガネ様」
私たちが偶然に出会ったガゼボに、彼は立っていました。
「偶然ですよ」
「侯爵家の第一令息である僕、クロガネが、女神さまの導きに従い、愛しのギンチヨ嬢へ、あなたにとって11回目のお見合いを、申し込みます」
彼は、ひざまずき、事前に考えていたようなセリフを言いました。
「その願いは、かなわないかもしれません」
私は、左手を見せます。
「それは、僕が渡した指輪!」
彼は、驚き、立ち上がって喜びました。
「私は、すでに貴方からのプロポーズを承諾していますので、11回目のお見合いはできません」
そう言いながら、彼の顔に、私の顔を近づけると、彼の腕が、私の腰に回ってきました。
━━ FIN ━━
【後書き】
お読みいただきありがとうございました。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
帰ってきた兄の結婚、そして私、の話
鳴哉
恋愛
侯爵家の養女である妹 と
侯爵家の跡継ぎの兄 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日2回、予約投稿します。
2025.12.24
誤字修正いたしました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる