トドケガミ

りり

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郵便屋-八百万

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街から少し外れた昔ながらの石畳の道

そこにある建物はほとんどが今どき珍しい古い木造建築
そこだけ世間の喧騒から隔離されているように静かだ

私はある建物の前で立ち止まった
『郵便屋-八百万』と書かれた看板が掛けられている

すべての国にインターネットが普及しSNSが発達した今、郵便屋なんて仕事はとっくの昔に廃業した

と、言われているが
ここだけは、残っていたようだ

…よし

ガラガラガラ……

私は少し戸惑いながら古戸を開けた

そこには真ん中に低いテーブルが一つと
それを囲むようにソファが三つカタカナのコの字に並べられていて、
その周りをショーウィンドウが囲むようにして置かれている

ショーウィンドウには少し高そうなアクセサリーや古いガラクタのようなものまで、たくさん並べられている

ソファには一人の女の子が体育座りで座っていた

色素が薄く白っぽい髪に真っ白い肌、ぱっちりとした灰色の猫目が印象的な私と同じ中学生くらいの女の子


…こ、こん…にちは…

おそるおそる、声をかけてみる

「…ゆかりぃ、お客さんやでぇー」


ソファに座っていた少女はじっと私を見るなり店の奥の方に向かって声をかけた

幻想的な容姿とは裏腹になぜか関西弁…
ここ一応東京なのに…


ゆかり、という人がこの店の店主だろうか
女の人かな


店の中はガラス戸から入る柔らかな光が店の中を照らしている

5月ということもあってか、店の中は丁度いい温かさだ


私は周りを見回してみた

ショーウィンドウのそばには、木彫り、大きな振り子時計、ステンドグラスのランプ、ペルシャ絨毯などなど

いろんな物が目につく


グローバル化が進んでたくさんの国の物が日本に入ってきたから、しょうがないとは思うけど

す、すごく…ちぐはぐな感じがする…

なんでこんなにいろんな物が集まってるんだろう…


「いらっしゃいませー」

奥の方から男の人の声がした

あ、店主さんかな
…って、あれ、なんで男の人の声…

顔を見せたのは、少し痩せ気味な背の高い男の人だった

色白で、ブラウンの長めな髪に少し切れ長な目はよく見たら少し紺色がかっている

歳は…大学生くらいかな

それにしても…めっちゃ綺麗な顔…
女の人みたい…

「お待たせしてすみません」

私に笑いかけながら奥の部屋から出てきた

あっ….、えと……
つい声が裏返ってしまった

「とりあえず、座られたらどうですか?」

……はずい

顔を赤くしてソファに座る

すると目に入ってくるのが…

「のん、そんなに見てちゃだめ、困ってるだろ」

そう。さっきからずっと私の右隣のソファに座っているその女の子の視線が突き刺さっているのだ

見る、というよりは睨む、といった感じですが…

「すみません、人見知り激しくて…」

困ったようにそう言ったその男性は優しそうだ

「えっと、とりあえず自己紹介しますね。俺はゆかりっていいます。結ぶとかの結って書いて、ゆかりって読みます。」

あんまり聞いたことない名前ですね…

「はい、よく言われます。ね、のんも。」

声をかけられた『のん』という女の子はじっと私を見ながら

「のん、っていうん。」

と言った

のん…かわいい名前
すごく似合う名前だった

…でもなんで関西弁?(二回目)


「あなたは?」

「あ、あやせ、です。綾に瀬って書いて綾瀬です」

結さんは帳簿のようなものに名前を記録しているようだ

「……なまえ、は…なんていうん?」

え、

まさか話しかけられるとは思っていなかった

めっちゃうれしい…
名前を聞かれただけでこんなに嬉しいの初めてだ…

「ひな、っていうの!おひさまの陽に菜の花の菜で、陽菜」

「のんにも…のんにもな、漢字あるで、音って書いてのんや」

か、かわいい…!!
だんだん話してくれるようになったのんちゃん

「ひなも、のんって呼んでな」

うれしすぎる


「今回はなにをお届けしますか?」

そ、そうだ

「あ、あの…ここ、亡くなったひとにも届けてくれるって聞いたんですけど…」

これは友達づてに聞いた噂だ


ある老夫婦がいた

奥さんの方が病気で亡くなって、旦那さんが悲しみに暮れていたとき奥さんからの手紙を見つけた

それは遺書のようなもので、ある箱を見つけてほしいという内容だった

なんでもその箱は思い出の品が詰まった箱らしく
旦那さんは2年間も探し続けたそうだが、結局見つからなかった

それでも旦那さんは諦めきれず、奥さんに手紙を出したいと思った

突然の病で亡くなってしまった奥さんにきちんとした別れも言えず、ずっと後悔していたらしい

旦那さんは手紙に箱のあり場所と感謝の気持ちを綴り郵便屋である八百万に頼んだそうだ

普通は死者に手紙を出すことなんて出来るはずがないのだがこの八百万はどういう訳か届けることが出来たらしいのだ

その証拠に奥さんからの手紙は帰ってきて、最初はダメもとで頼んだ旦那さんも、手紙を読み、箱を見つけることができた

それを機に家にずっと引きこもっていることはなくなったらしい

これを聞いて、私も、と思った

_______私も、伝えないと、いけないの


「はい。承っております」

ほ、ほんとですかっ!

「はい」


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