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第37話 臨死体験なんてお断りだよ!
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翌日。
陸人は朝の五時半から起きていた。
枕が合わなかったのか布団が合わなかったのかはわからないが、あまり寝心地が良くなく、つい目が冴えてしまったのである。
朝食までまだ三十分ほど時間があるので、暇潰しに城外を散歩することにした。
ちょうど朝日が昇る時間帯で、空には赤とオレンジの美しいグラデーションが広がっている。
陸人は橋を渡り、オレンジ色に染まる川を越え、花畑の方へ行ってみた。
畦道に立つ若い女性を見つけ、ハッとして足を止める。
「あれ…エレミア?」
陸人は近付いて行って声を掛けた。
「おはよ、さっそく朝日を浴びに来たの?」
ところがエレミアは陸人に一瞥もくれず、虚ろな瞳で花畑を見つめている。
「ねぇ、何してるの?もしかして立ったまま寝てる?」
「いいえ、起きてるわ」
生気のない眼差しが、花畑から陸人へと向けられる。その視線は、ゆっくりと陸人の首元へ―――――
「その花の首飾り、本当にただの放射能除けなのかしら?」
「え?どういう意味?」
エレミアはその問いに答えず、陸人に詰め寄って花の首飾りに手を伸ばした。
「ちょっと頭を下げてくれる?」
「…なんで?」
「その首飾りを外すためよ」
「ふーん…。――――って、外したら放射能浴びて死んじゃうじゃん!」
「それが本当かどうかを確かめるためにやるのよ」
「それなら自分の体使ってやってよ!何普通に僕で試そうとしてんの?!」
「大丈夫、いざという時はちゃんと魔法で蘇生するから。ダメかしら?」
「ダ…ダメに決まってるだろ!臨死体験なんてお断りだよ!断固拒否!」
陸人は身を翻し、逃げるように城へと戻っていった。
陸人は食堂で朝食を食べ、部屋に戻って二度寝した。
十一時頃にまた起きて城内をうろうろした後、また部屋に戻って昼寝をし、目が覚めると窓から夕日が見えていた。
祭りの宴が始まるのは夕方なので、そろそろ会場へ向かわなければならない。
顔を洗って身支度を整えていると、誰かが部屋をノックして中へと入ってきた。
「陸人さん、いらっしゃいますか?」
ロティーだった。
「お迎えに参りました。今から大広間の方へご案内致します」
陸人は慌てて顔を拭き、ロティーと共に部屋を出た。
その後ロティーは他の三人も部屋から連れ出し、きびきびとした足取りで三階の大広間へと向かった。
パーティー会場は淡いパステルカラーの装飾で彩られ、中央に設置された長テーブルには所狭しと肉料理が並べられていた。
どうやら立食形式のようで、一人一人の席は決まっていないようだ。
「おお…なんて美味しそうな匂いなんだ。この匂いだけでもご飯三杯はいけそうだ!」
オーガストは早くも舌なめずりしている。ちなみに人間の姿だ。
「ねぇ、おじさん。ひょっとして今日一度も手洗ってないの?」
「そりゃ、せっかくの楽しい肉祭りに河童の姿で参加するわけにはいかないだろう?あの姿じゃ気軽にナンパもできんからな」
「えぇ…?」
「マジかよ、汚ねーな…」
ドン引きしている陸人達に気付き、オーガストは慌てて付け加えた。
「おいおい、勘違いするなよ!ほら、俺の手はこの通り綺麗だ!水では洗っていないが、部屋に備えつけのアルコールでこまめに消毒してるんだ。だから、握手しても大丈夫だぞ?」
陸人は手を差し伸べてきたオーガストを無視し、今度はエレミアに視線を向けた。
「そういえばエレミアもまだ呪いが発動してないんだね。妖精界って白いモノ少ないのかな?」
「おお、言われてみれば確かに…」
オーガストは腰を屈め、まじまじとエレミアの瞳を見つめた。
「もしや、何か特殊なコンタクトレンズをつけているのかな?たとえば白いモノが黒く見えるようになるとか…」
「え…?」
金色の虹彩に囲まれた瞳孔が、ハッとしたように大きく開く。
「まさか…」
「何何?どうかしたの?」
「みなさん、そろそろローズ女王がお出でになりますから、お喋りは控えてください」
ロティーに注意され、陸人達は口を閉ざした。
ほどなくしてローズ女王が会場に現れ、昨日のごとく挨拶を始めた。
少々長かったので陸人やオーガストは途中で何度も意識が飛びかけ、その度にロティーに脇腹を小突かれていた。
「それでは心ゆくまで料理をご堪能ください」
その言葉が放たれるや否や、陸人とオーガストは猛然と肉料理に向かって走っていった。
陸人は朝の五時半から起きていた。
枕が合わなかったのか布団が合わなかったのかはわからないが、あまり寝心地が良くなく、つい目が冴えてしまったのである。
朝食までまだ三十分ほど時間があるので、暇潰しに城外を散歩することにした。
ちょうど朝日が昇る時間帯で、空には赤とオレンジの美しいグラデーションが広がっている。
陸人は橋を渡り、オレンジ色に染まる川を越え、花畑の方へ行ってみた。
畦道に立つ若い女性を見つけ、ハッとして足を止める。
「あれ…エレミア?」
陸人は近付いて行って声を掛けた。
「おはよ、さっそく朝日を浴びに来たの?」
ところがエレミアは陸人に一瞥もくれず、虚ろな瞳で花畑を見つめている。
「ねぇ、何してるの?もしかして立ったまま寝てる?」
「いいえ、起きてるわ」
生気のない眼差しが、花畑から陸人へと向けられる。その視線は、ゆっくりと陸人の首元へ―――――
「その花の首飾り、本当にただの放射能除けなのかしら?」
「え?どういう意味?」
エレミアはその問いに答えず、陸人に詰め寄って花の首飾りに手を伸ばした。
「ちょっと頭を下げてくれる?」
「…なんで?」
「その首飾りを外すためよ」
「ふーん…。――――って、外したら放射能浴びて死んじゃうじゃん!」
「それが本当かどうかを確かめるためにやるのよ」
「それなら自分の体使ってやってよ!何普通に僕で試そうとしてんの?!」
「大丈夫、いざという時はちゃんと魔法で蘇生するから。ダメかしら?」
「ダ…ダメに決まってるだろ!臨死体験なんてお断りだよ!断固拒否!」
陸人は身を翻し、逃げるように城へと戻っていった。
陸人は食堂で朝食を食べ、部屋に戻って二度寝した。
十一時頃にまた起きて城内をうろうろした後、また部屋に戻って昼寝をし、目が覚めると窓から夕日が見えていた。
祭りの宴が始まるのは夕方なので、そろそろ会場へ向かわなければならない。
顔を洗って身支度を整えていると、誰かが部屋をノックして中へと入ってきた。
「陸人さん、いらっしゃいますか?」
ロティーだった。
「お迎えに参りました。今から大広間の方へご案内致します」
陸人は慌てて顔を拭き、ロティーと共に部屋を出た。
その後ロティーは他の三人も部屋から連れ出し、きびきびとした足取りで三階の大広間へと向かった。
パーティー会場は淡いパステルカラーの装飾で彩られ、中央に設置された長テーブルには所狭しと肉料理が並べられていた。
どうやら立食形式のようで、一人一人の席は決まっていないようだ。
「おお…なんて美味しそうな匂いなんだ。この匂いだけでもご飯三杯はいけそうだ!」
オーガストは早くも舌なめずりしている。ちなみに人間の姿だ。
「ねぇ、おじさん。ひょっとして今日一度も手洗ってないの?」
「そりゃ、せっかくの楽しい肉祭りに河童の姿で参加するわけにはいかないだろう?あの姿じゃ気軽にナンパもできんからな」
「えぇ…?」
「マジかよ、汚ねーな…」
ドン引きしている陸人達に気付き、オーガストは慌てて付け加えた。
「おいおい、勘違いするなよ!ほら、俺の手はこの通り綺麗だ!水では洗っていないが、部屋に備えつけのアルコールでこまめに消毒してるんだ。だから、握手しても大丈夫だぞ?」
陸人は手を差し伸べてきたオーガストを無視し、今度はエレミアに視線を向けた。
「そういえばエレミアもまだ呪いが発動してないんだね。妖精界って白いモノ少ないのかな?」
「おお、言われてみれば確かに…」
オーガストは腰を屈め、まじまじとエレミアの瞳を見つめた。
「もしや、何か特殊なコンタクトレンズをつけているのかな?たとえば白いモノが黒く見えるようになるとか…」
「え…?」
金色の虹彩に囲まれた瞳孔が、ハッとしたように大きく開く。
「まさか…」
「何何?どうかしたの?」
「みなさん、そろそろローズ女王がお出でになりますから、お喋りは控えてください」
ロティーに注意され、陸人達は口を閉ざした。
ほどなくしてローズ女王が会場に現れ、昨日のごとく挨拶を始めた。
少々長かったので陸人やオーガストは途中で何度も意識が飛びかけ、その度にロティーに脇腹を小突かれていた。
「それでは心ゆくまで料理をご堪能ください」
その言葉が放たれるや否や、陸人とオーガストは猛然と肉料理に向かって走っていった。
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