44 / 55
第44話 みんなズル過ぎだよ!
しおりを挟む
その夜。
四人はカンパナの安い宿屋に宿泊し、翌日の昼頃、おかみさんにチェックアウトを促されるまで爆睡していた。
「あーあ…もう少し寝てたかったのになぁ」
大衆レストラン“ボンボンジュール”でかなり遅めの朝食を取りながら、陸人は大欠伸をしていた。
「うーん…。このマグマドリア、なんか微妙だなぁ。他の料理にすればよかった」
「それじゃ、俺の灼熱地獄ナポリタンを分けてやろう」
オーガストは自分の食べ残しを陸人のマグマドリアの上に乗せた。先ほど水をがぶ飲みしたせいで、早くも河童の姿に変身している。
「ええ~!いらないよ!見るからに辛そうじゃん」
「なぁ、そんなこと言わずに食べてくれよ。舌が千切れそうなくらい辛くて、俺はもうギブアップだ」
「益々食べる気失せたよ。なんでそんなもの頼んだの?」
「いやぁ…。新メニューが出るとつい頼みたくなってしまってなぁ。まさかこれほど激辛だとは…」
「この岩石スコーンと一緒に食べたら少しは緩和されるんじゃないかしら?」
エレミアはオーガストの食べ残しのナポリタンの上に、文鎮のようにずっしりしたスコーンを置いた。ちなみに彼女は宿屋を出る前からすでに幼女化していた。
「これ本当にスコーン?かじったら歯が折れそうな気がするんだけど…」
「それじゃ、この溶岩トマトジュースをかけて湿らせろ。少しは柔らかくなるだろ」
シメオンは飲み残しのジュースをスコーンの上からジャバジャバ掛けた。
「うわぁ…。これ誰が食べるの?」
四人は無言で顔を見合わせた。
「これはもう公平に、ジャンケンしかないだろう」
オーガストが立ち上がり、拳を掲げる。
「チッ…。仕方ねーな…」
他の三人も立ち上がり、臨戦態勢を整える。
「最初はグー!ジャーンケーン…」
そのまま五秒が経過し、しびれを切らして陸人が口を開いた。
「どうして誰も出さないわけ?!」
「それはその…アレだ。なぁマトン君」
「ああ、アレだな」
「つまり全員が後出しで勝とうとしたのね」
「みんなズル過ぎだよ!」
「そういうお前だって出さなかっただろ」
「それはそうだけど…」
「ねぇ、無理して食べないでテイクアウトしましょうよ」
「おお、そうだな。非常食にしよう」
オーガストは賛同し、店員の人に持ち帰り用のパックを要求した。
“地獄の大噴火”こと食べ残しの特製弁当を手に、一行は大衆レストランを出て近くの広場へ向かった。
人気のなさそうな茂みを見つけ、いったんそこで巻物を広げて地図を確認する。
「最後の石があるのは、この緑のバツ印があるガインダってところだよ」
地名を聞くなりオーガストはがっくり項垂れた。
「はぁ…灼熱地獄のガインダか。テンション下がるな…」
「仕方ねーだろ。文句言ってないでさっさと転移魔法の準備しろよ、おっさん」
「はいはい…」
オーガストは渋々腰からステッキを抜き、地面に魔法陣を描き始めた。
いつものごとく一瞬にして景色が変わり、見渡す限りの砂漠が視界に広がる。
サウナのような乾いた熱気に、今にも体中の水分を奪われそうだ。
「あーーー!くそ暑い!!!」
それが陸人の発した第一声だった。
「だから言っただろ、灼熱地獄だと…」
オーガストはすでに意気阻喪している。
「本当にこんなところに石なんてあるのかなぁ?見るからに砂しかないじゃん…」
「あら、砂だけじゃないわよ」
エレミアが陸人の足元を指さす。
「そこにサソリが這ってるわ」
「うわっ!本当だ!」
「なんだ、陸人。サソリが怖いのか?こんなのエビと一緒だろう」
飛び上がる陸人を見て、オーガストがやれやれと首を振る。陸人はムッとして彼を睨みつけた。
「じゃあ後でおじさんが昼寝してる時に顔にサソリを乗せといてあげるよ」
「馬鹿にして悪かった!頼むからそれはやめてくれ!」
「おい、騒いでないで石を探すぞ!陸人、地図を出せ」
シメオンは暑さで苛立っているようだ。
流れる汗を拭いながら、全員で巻物の地図を見下ろす。
「印は砂漠の中心地辺りみたいだよ」
しかし周りを見回しても、宝を隠せそうな建物は見当たらない。
「もしかして…」
エレミアが砂漠を見渡しながら、小さく呟く。
「砂の下に埋まっているんじゃないかしら?」
十秒ほどの沈黙。
シメオンが砂を蹴って悪態をつく。
「こんなだだっ広い砂漠の中からどうやってあんな小さい石ころを探し出せっていうんだよ!永遠に見つかんねーだろ!」
「シメオン、怒っても石は出てこないよ。とにかく先へ進もう」
「進むって、どこへだよ」
「それは―――」
「陸人、そういう時はとっておきのおまじないがあるぞ」
オーガストは両手を大きく広げ、得意気にニヤリと笑った。
「目をつむって、十秒間回り続ける。止まった時に体が向いていた方向に進めばいいんだ!」
「一生回ってろ」
シメオンは冷ややかに言い放ち、どこともなく歩き出した。
「こんな暑いところでそんな激しい運動したら、体の水分がなくなってミイラになっちゃうと思うよ」
一応忠告してから陸人もシメオンの後についていった。
「二人とも冷たいなぁ…」
オーガストは吐息をつき、期待を込めた瞳でエレミアを見た。
「エレミア、君は俺のお遊びに付き合ってくれるよな?」
「ええ、いいわよ。どうぞ思う存分回って」
と、彼女は瞳を輝かせながら、
「河童のミイラなんてとても興味深いわ。しかもミイラ化する過程まで見られるなんて!」
「や…やはりやめておくことにする!」
オーガストとエレミアもシメオン達の後に続いて歩き始めた。
四人はカンパナの安い宿屋に宿泊し、翌日の昼頃、おかみさんにチェックアウトを促されるまで爆睡していた。
「あーあ…もう少し寝てたかったのになぁ」
大衆レストラン“ボンボンジュール”でかなり遅めの朝食を取りながら、陸人は大欠伸をしていた。
「うーん…。このマグマドリア、なんか微妙だなぁ。他の料理にすればよかった」
「それじゃ、俺の灼熱地獄ナポリタンを分けてやろう」
オーガストは自分の食べ残しを陸人のマグマドリアの上に乗せた。先ほど水をがぶ飲みしたせいで、早くも河童の姿に変身している。
「ええ~!いらないよ!見るからに辛そうじゃん」
「なぁ、そんなこと言わずに食べてくれよ。舌が千切れそうなくらい辛くて、俺はもうギブアップだ」
「益々食べる気失せたよ。なんでそんなもの頼んだの?」
「いやぁ…。新メニューが出るとつい頼みたくなってしまってなぁ。まさかこれほど激辛だとは…」
「この岩石スコーンと一緒に食べたら少しは緩和されるんじゃないかしら?」
エレミアはオーガストの食べ残しのナポリタンの上に、文鎮のようにずっしりしたスコーンを置いた。ちなみに彼女は宿屋を出る前からすでに幼女化していた。
「これ本当にスコーン?かじったら歯が折れそうな気がするんだけど…」
「それじゃ、この溶岩トマトジュースをかけて湿らせろ。少しは柔らかくなるだろ」
シメオンは飲み残しのジュースをスコーンの上からジャバジャバ掛けた。
「うわぁ…。これ誰が食べるの?」
四人は無言で顔を見合わせた。
「これはもう公平に、ジャンケンしかないだろう」
オーガストが立ち上がり、拳を掲げる。
「チッ…。仕方ねーな…」
他の三人も立ち上がり、臨戦態勢を整える。
「最初はグー!ジャーンケーン…」
そのまま五秒が経過し、しびれを切らして陸人が口を開いた。
「どうして誰も出さないわけ?!」
「それはその…アレだ。なぁマトン君」
「ああ、アレだな」
「つまり全員が後出しで勝とうとしたのね」
「みんなズル過ぎだよ!」
「そういうお前だって出さなかっただろ」
「それはそうだけど…」
「ねぇ、無理して食べないでテイクアウトしましょうよ」
「おお、そうだな。非常食にしよう」
オーガストは賛同し、店員の人に持ち帰り用のパックを要求した。
“地獄の大噴火”こと食べ残しの特製弁当を手に、一行は大衆レストランを出て近くの広場へ向かった。
人気のなさそうな茂みを見つけ、いったんそこで巻物を広げて地図を確認する。
「最後の石があるのは、この緑のバツ印があるガインダってところだよ」
地名を聞くなりオーガストはがっくり項垂れた。
「はぁ…灼熱地獄のガインダか。テンション下がるな…」
「仕方ねーだろ。文句言ってないでさっさと転移魔法の準備しろよ、おっさん」
「はいはい…」
オーガストは渋々腰からステッキを抜き、地面に魔法陣を描き始めた。
いつものごとく一瞬にして景色が変わり、見渡す限りの砂漠が視界に広がる。
サウナのような乾いた熱気に、今にも体中の水分を奪われそうだ。
「あーーー!くそ暑い!!!」
それが陸人の発した第一声だった。
「だから言っただろ、灼熱地獄だと…」
オーガストはすでに意気阻喪している。
「本当にこんなところに石なんてあるのかなぁ?見るからに砂しかないじゃん…」
「あら、砂だけじゃないわよ」
エレミアが陸人の足元を指さす。
「そこにサソリが這ってるわ」
「うわっ!本当だ!」
「なんだ、陸人。サソリが怖いのか?こんなのエビと一緒だろう」
飛び上がる陸人を見て、オーガストがやれやれと首を振る。陸人はムッとして彼を睨みつけた。
「じゃあ後でおじさんが昼寝してる時に顔にサソリを乗せといてあげるよ」
「馬鹿にして悪かった!頼むからそれはやめてくれ!」
「おい、騒いでないで石を探すぞ!陸人、地図を出せ」
シメオンは暑さで苛立っているようだ。
流れる汗を拭いながら、全員で巻物の地図を見下ろす。
「印は砂漠の中心地辺りみたいだよ」
しかし周りを見回しても、宝を隠せそうな建物は見当たらない。
「もしかして…」
エレミアが砂漠を見渡しながら、小さく呟く。
「砂の下に埋まっているんじゃないかしら?」
十秒ほどの沈黙。
シメオンが砂を蹴って悪態をつく。
「こんなだだっ広い砂漠の中からどうやってあんな小さい石ころを探し出せっていうんだよ!永遠に見つかんねーだろ!」
「シメオン、怒っても石は出てこないよ。とにかく先へ進もう」
「進むって、どこへだよ」
「それは―――」
「陸人、そういう時はとっておきのおまじないがあるぞ」
オーガストは両手を大きく広げ、得意気にニヤリと笑った。
「目をつむって、十秒間回り続ける。止まった時に体が向いていた方向に進めばいいんだ!」
「一生回ってろ」
シメオンは冷ややかに言い放ち、どこともなく歩き出した。
「こんな暑いところでそんな激しい運動したら、体の水分がなくなってミイラになっちゃうと思うよ」
一応忠告してから陸人もシメオンの後についていった。
「二人とも冷たいなぁ…」
オーガストは吐息をつき、期待を込めた瞳でエレミアを見た。
「エレミア、君は俺のお遊びに付き合ってくれるよな?」
「ええ、いいわよ。どうぞ思う存分回って」
と、彼女は瞳を輝かせながら、
「河童のミイラなんてとても興味深いわ。しかもミイラ化する過程まで見られるなんて!」
「や…やはりやめておくことにする!」
オーガストとエレミアもシメオン達の後に続いて歩き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる