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第二章:プリンセス、岐路に立つ
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翌朝、目が覚めたらもうお昼だった……。
あ……なんかデジャビュだわ。前にも似たようなことがあった気がする。
それよりも、なんで私裸なの? しかも寝汗かしら、体がしっとりしているわ。きっと子供と一緒に寝たから暑かったのね。
ちょうどお風呂に入りたかったし、それから出発にしよう。この子も……いれたほうがいいわよね。五歳くらいに見えるから、女風呂で大丈夫でしょう。一人にするわけにもいかないし、恥ずかしくても我慢してもらおう。
「アン……起きてる?」
あら珍しい。寝ているのかしら、返事がないわ。アンが寝坊するなんていつ以来かしら……。でも、それだけ彼女の負担になってるってことよね。なんとかしなくちゃだけどなんとも出来ない……わよね。今度からヒーリングをかけてから寝るようにしよう。体力的な事はそれで大分カバーできると思う。精神的な事は……一緒に頑張りましょうね、アン。
私だって……平気じゃないはずよ……多分。
でも気持ちのいい朝だって感じてる時点で……多分平気になっちゃったんだろうな私は。
お風呂と朝食を済ませて、出発の準備を整えた。シーラくんを起こしていたらアンも目が覚めたみたいで結局三人でお風呂に入った。出発前に汗を流す人もそれなりにいるみたいで、私たち以外にも数人の先客がいた。アンには申し訳ないけれど姿を消してこっそり入浴してもらった。どちらにしろシーラくんにも内緒なので結果的には変わらないのだけれど。気持ち的にはね。
あーあ。アンとお喋りしながらの入浴は昔からの楽しみなのにな……。早くこの子を送り届けなきゃ。
宿の人にお願いしてお弁当を用意してもらった。もちろん有料だけど、道中で作るのは色々大変だから一食でもお弁当があると凄く助かる。
何だかんだとしていたらもう二時の鐘が鳴った。命のタイムリミットが迫っているわりには呑気すぎるかもしれない。ボロを出さないように気をつけよう。……これはフラグではない。
俺くんの記憶がそれこそフラグだと警鐘を鳴らしているけれど、繰り返す、これはフラグではない!
宿を出るとすぐ近くに冒険者ギルドの特徴的な建物ーーお役所みたいなのが見えた。この街のギルドも例に漏れず大きくて立派だ。
近付くとその入り口付近に見覚えのある若い男性が立っていた。確か……主任のクラフトさん?
「おはようございます、クラフト主任」
いけない、もうお昼過ぎてるんだっけ。
「こんにちは、キラリさん。今起きられたのですか? やはり随分疲れておられたのですね」
「いえ……そんな……」
見事にバレた。さすが若くして受付主任を務めるほどの人。頭の回転が速いわね。
「ですがちょうどよかった。貴女を探していたんです」
「私を? 何故ですか?」
昨日ギルドに必要な報告は済ませた。討伐は出来なかったけれど、被害も出さずに白帝を天山へと帰らせたことが評価されて無事に貢献ポイント五倍の20ポイントを頂いた。やったね!!
なので、一体何の用なのか……?
「ご心配なく、悪い話ではありませんよ」
「すいません、理由がわからず……不安が顔に出ていましたか?」
「警戒するのはもっともな事です。いくら私がギルド職員でも不安を覚えるのは当然でしょう。若くて綺麗な女性の一人旅が大変な事は十分承知しています。気にしないでください。それと、今後も気を抜かずに旅をしてください」
……さりげなく若くて綺麗とか言うあたり、そっちの方もやり手かもしれないわね。
立ち話も何ですからとギルドの中へ案内された。昼を過ぎたギルド内は当然人が少なく、いつものように誰も……あ、一人いた。白い法衣のような服装の女性。どこかで見たことがあるような気がするけれど、回復魔法を主体とするヒーラーはあの手の格好をする人が多い。別に装備品に制限はないし、スキルに補正がつくわけでもない。そういう装備も存在するけれど相応の値段とどの装備品にどのスキル補正が付くかはランダムだった。
今でも思い出すのはエ○チな水着に消費魔力1/10と魔力自動回復LV5がついた時の事。あれは流石に神を恨んだわね……。まぁ昔(ゲーム)の話よ……ふっ……。
「どうぞ、おかけください」
まるでカフェのような待合室の一角に案内された。
「お茶を用意しますから少し待っていてくださいね」
受付主任スキル高いわね。まるで執事のようにエスコートされてしまったわ。そういう教育も受けているのかしら……? 貴族がらみの仕事もありそうだし、そういうものなのかしらね……。そういえばラーサスさんも動作に品があったような気がするわ。ギルド職員ってなかなかの優良物件かもしれないわね。
「……どうぞ。こちらのハーブティーは疲労回復を促進してくれますよ」
「ありがとうございます」
カップからふわりと漂う優しい香り。少し甘みがあって、でもスッキリとした爽やかな味わい。
「……おいしい……」
「どういたしまして。喜んでいただけて何よりです」
続けてもう一口頂いてから、要件を伺うことにした。
「まずは改めてお礼を。昨日は本当にありがとうございました。キラリさんが受けてくださっていなければ彼らが無事に街に戻る事はなかったかもしれません。ですが、その為に貴女が多大な犠牲を払う形になってしまいとても申し訳なく思っています」
多大な犠牲……宣告の事よね。でも自分でかけたからいつでも解けるし、刻印からどのような宣告かを判断する事は出来ないので、実は期限が来ても死ぬ事はない。あまり気にされるとかえって申し訳ない気持ちになってしまう。
「大丈夫ですよ。探し物を届ければ解いてもらえますから」
「それは信用しても大丈夫なのですか?」
「白帝がーー白虎族の方が私を騙してまで得られるものはありませんよ?」
「………………」
「どうされました?」
何やら考え込んでいる様子のクラフト主任。正直に言うとあまりこの件についてあれこれとやり取りをしたくない。何故なら殆ど全部作り話だから。
まだ幼い白帝ーーシーラくんを討伐したくない私のわがままによりいろんなことを誤魔化している状況だけに下手な発言が筋書きを破綻させてしまうかもしれない。何度も繰り返すけれど、これはフラグじゃないから!
「いえ、もしもの話ですが、キラリさんにかけられた宣告を解いた状態で白帝に会えばどうなるでしょうか?」
……それは『解呪』を使うという事……でしょうねおそらく。解けるかどうかは別として、万一解けた状態で再開したならば……。この脚本が事実だとするなら、白帝の信頼を失う可能性があると思う。人の国だから人に任せよう……と言う感じでやり取りをして、信頼してもらう証として自らの命を提示した。それなのに解呪しているというのは……。
「考えたくもありません。私は直接やり取りをして白帝様の清廉さを信頼し今回の交渉をいたしました。討伐は不可能と判断して被害を出さずに収めるのに最善だったと思っています。ギルド側にとっても何ら損失のある話ではありません。それこそ私がクエストを失敗した記録がつくくらいでしょうか?」
「いえ、それはありません。追い返して貰えただけで十分です。この件についてはギルド長にも承認を頂いています」
「それならどうして蒸し返すような話を……?」
ギルマス公認なら今更決定が覆る事はないはず。ますます意味がわからないわ。一体何の為に私はここへ……?
「実は……今この街に癒しの聖女と呼ばれる方が滞在中なのです」
なるほど、宣告を解除できるかもしれないからってことね。まぁ無理だろうけど。
私の立場的に断ってもおかしくはないと思う。さっきも白帝の信頼を裏切ることになりかねないからともしもの話を否定した所だし。
「……つまりギルドとしては解呪をしようと言うことですか?」
「今キラリさんの話を聞いた限りではそれは得策ではないでしょう。少なくとも私はそう判断します。しかし……ドロップ副ギルド長が同様の判断をするかはわかりません」
「なるほど、クラフトさんの一存ではどうにもできない案件ということですね……」
「申し訳ありません」
面倒ね……。すんなり解呪に応じてもいいのだけれど、先の発言に矛盾してしまう。私の立ち位置としては白帝の信頼を裏切りたくないから出来れば解呪は遠慮したい……と言うところなのだけれど、それがすんなり通るかどうか。
どうもただのお節介じゃない気がするのよね……。何か裏があるような気がするわ。私に関係あるかどうかはわからないけれど。
さて、どうすればいいのかしらね……。
「んー……。例えば、今日私と会えなかったということには……」
「さすがに他の職員の目がありますので……」
「ですよねー」
クラフトさんも苦笑している。私も言ってみただけで無理だとは承知している。でもそれが一番穏便なのよね……。
命がかかっている事だけに頑なに断るのも不自然なのかしら……。でも白帝の強大さを考えたら下手な事はしない方がいいと思うのよね……。実際に白帝を見ていないから過少評価しているのかしら?
……ありえそうよね。私みたいなのが交渉でどうにかしたくらいだから……。こういう時この見た目では説得力を持たせる事はなかなか難しい。
小柄な年若い女の子。どこをどう見ても強そうな要素はない。それどころか冒険者だということがまず信じられないと思う。今みたいに革の胸当てと護身用の短剣、紫紺の外套を身につけていても素直に信じては貰えないんじゃないだろうか? 私からするとどう見ても冒険者なのに……。
つくづく人は自分が信じたいことを信じちゃうんだなって思うわね。
「……私としては白帝の信頼を裏切るような真似はしたくありません。それこそ命に関わると思います。彼との約束は探し物を天山のとあるところまで届けることで、探し物はすでに確保済みです。天山までの道程も私なら何の問題もありません。正直言って解呪する事の方がリスクが高いとすら思います。……それでも受けるしかないんですよね?」
出来ればそちらで何とかして欲しいのだけれど。そういう意思を暗に示しているのだけど、ご理解頂けないかしら?
「申し訳ありません……」
「……わかりました。解呪を受けます。でもあまり長くは待てませんよ? 本当は先程街を出るつもりだったのですから」
「あの時間からーー失礼しました。すぐに解呪の手配をします」
思わず睨んでしまった。確かにあの時間からなのは自覚があるから、そう言われてもおかしくはないけれど、そちらの都合に沿ってあげてるんだもの、これくらいの八つ当たりはいいわよね?
だいたい何が「悪い話じゃない」のよ! 思いっきり面倒で悪い話じゃないのよ!!
あ……なんかデジャビュだわ。前にも似たようなことがあった気がする。
それよりも、なんで私裸なの? しかも寝汗かしら、体がしっとりしているわ。きっと子供と一緒に寝たから暑かったのね。
ちょうどお風呂に入りたかったし、それから出発にしよう。この子も……いれたほうがいいわよね。五歳くらいに見えるから、女風呂で大丈夫でしょう。一人にするわけにもいかないし、恥ずかしくても我慢してもらおう。
「アン……起きてる?」
あら珍しい。寝ているのかしら、返事がないわ。アンが寝坊するなんていつ以来かしら……。でも、それだけ彼女の負担になってるってことよね。なんとかしなくちゃだけどなんとも出来ない……わよね。今度からヒーリングをかけてから寝るようにしよう。体力的な事はそれで大分カバーできると思う。精神的な事は……一緒に頑張りましょうね、アン。
私だって……平気じゃないはずよ……多分。
でも気持ちのいい朝だって感じてる時点で……多分平気になっちゃったんだろうな私は。
お風呂と朝食を済ませて、出発の準備を整えた。シーラくんを起こしていたらアンも目が覚めたみたいで結局三人でお風呂に入った。出発前に汗を流す人もそれなりにいるみたいで、私たち以外にも数人の先客がいた。アンには申し訳ないけれど姿を消してこっそり入浴してもらった。どちらにしろシーラくんにも内緒なので結果的には変わらないのだけれど。気持ち的にはね。
あーあ。アンとお喋りしながらの入浴は昔からの楽しみなのにな……。早くこの子を送り届けなきゃ。
宿の人にお願いしてお弁当を用意してもらった。もちろん有料だけど、道中で作るのは色々大変だから一食でもお弁当があると凄く助かる。
何だかんだとしていたらもう二時の鐘が鳴った。命のタイムリミットが迫っているわりには呑気すぎるかもしれない。ボロを出さないように気をつけよう。……これはフラグではない。
俺くんの記憶がそれこそフラグだと警鐘を鳴らしているけれど、繰り返す、これはフラグではない!
宿を出るとすぐ近くに冒険者ギルドの特徴的な建物ーーお役所みたいなのが見えた。この街のギルドも例に漏れず大きくて立派だ。
近付くとその入り口付近に見覚えのある若い男性が立っていた。確か……主任のクラフトさん?
「おはようございます、クラフト主任」
いけない、もうお昼過ぎてるんだっけ。
「こんにちは、キラリさん。今起きられたのですか? やはり随分疲れておられたのですね」
「いえ……そんな……」
見事にバレた。さすが若くして受付主任を務めるほどの人。頭の回転が速いわね。
「ですがちょうどよかった。貴女を探していたんです」
「私を? 何故ですか?」
昨日ギルドに必要な報告は済ませた。討伐は出来なかったけれど、被害も出さずに白帝を天山へと帰らせたことが評価されて無事に貢献ポイント五倍の20ポイントを頂いた。やったね!!
なので、一体何の用なのか……?
「ご心配なく、悪い話ではありませんよ」
「すいません、理由がわからず……不安が顔に出ていましたか?」
「警戒するのはもっともな事です。いくら私がギルド職員でも不安を覚えるのは当然でしょう。若くて綺麗な女性の一人旅が大変な事は十分承知しています。気にしないでください。それと、今後も気を抜かずに旅をしてください」
……さりげなく若くて綺麗とか言うあたり、そっちの方もやり手かもしれないわね。
立ち話も何ですからとギルドの中へ案内された。昼を過ぎたギルド内は当然人が少なく、いつものように誰も……あ、一人いた。白い法衣のような服装の女性。どこかで見たことがあるような気がするけれど、回復魔法を主体とするヒーラーはあの手の格好をする人が多い。別に装備品に制限はないし、スキルに補正がつくわけでもない。そういう装備も存在するけれど相応の値段とどの装備品にどのスキル補正が付くかはランダムだった。
今でも思い出すのはエ○チな水着に消費魔力1/10と魔力自動回復LV5がついた時の事。あれは流石に神を恨んだわね……。まぁ昔(ゲーム)の話よ……ふっ……。
「どうぞ、おかけください」
まるでカフェのような待合室の一角に案内された。
「お茶を用意しますから少し待っていてくださいね」
受付主任スキル高いわね。まるで執事のようにエスコートされてしまったわ。そういう教育も受けているのかしら……? 貴族がらみの仕事もありそうだし、そういうものなのかしらね……。そういえばラーサスさんも動作に品があったような気がするわ。ギルド職員ってなかなかの優良物件かもしれないわね。
「……どうぞ。こちらのハーブティーは疲労回復を促進してくれますよ」
「ありがとうございます」
カップからふわりと漂う優しい香り。少し甘みがあって、でもスッキリとした爽やかな味わい。
「……おいしい……」
「どういたしまして。喜んでいただけて何よりです」
続けてもう一口頂いてから、要件を伺うことにした。
「まずは改めてお礼を。昨日は本当にありがとうございました。キラリさんが受けてくださっていなければ彼らが無事に街に戻る事はなかったかもしれません。ですが、その為に貴女が多大な犠牲を払う形になってしまいとても申し訳なく思っています」
多大な犠牲……宣告の事よね。でも自分でかけたからいつでも解けるし、刻印からどのような宣告かを判断する事は出来ないので、実は期限が来ても死ぬ事はない。あまり気にされるとかえって申し訳ない気持ちになってしまう。
「大丈夫ですよ。探し物を届ければ解いてもらえますから」
「それは信用しても大丈夫なのですか?」
「白帝がーー白虎族の方が私を騙してまで得られるものはありませんよ?」
「………………」
「どうされました?」
何やら考え込んでいる様子のクラフト主任。正直に言うとあまりこの件についてあれこれとやり取りをしたくない。何故なら殆ど全部作り話だから。
まだ幼い白帝ーーシーラくんを討伐したくない私のわがままによりいろんなことを誤魔化している状況だけに下手な発言が筋書きを破綻させてしまうかもしれない。何度も繰り返すけれど、これはフラグじゃないから!
「いえ、もしもの話ですが、キラリさんにかけられた宣告を解いた状態で白帝に会えばどうなるでしょうか?」
……それは『解呪』を使うという事……でしょうねおそらく。解けるかどうかは別として、万一解けた状態で再開したならば……。この脚本が事実だとするなら、白帝の信頼を失う可能性があると思う。人の国だから人に任せよう……と言う感じでやり取りをして、信頼してもらう証として自らの命を提示した。それなのに解呪しているというのは……。
「考えたくもありません。私は直接やり取りをして白帝様の清廉さを信頼し今回の交渉をいたしました。討伐は不可能と判断して被害を出さずに収めるのに最善だったと思っています。ギルド側にとっても何ら損失のある話ではありません。それこそ私がクエストを失敗した記録がつくくらいでしょうか?」
「いえ、それはありません。追い返して貰えただけで十分です。この件についてはギルド長にも承認を頂いています」
「それならどうして蒸し返すような話を……?」
ギルマス公認なら今更決定が覆る事はないはず。ますます意味がわからないわ。一体何の為に私はここへ……?
「実は……今この街に癒しの聖女と呼ばれる方が滞在中なのです」
なるほど、宣告を解除できるかもしれないからってことね。まぁ無理だろうけど。
私の立場的に断ってもおかしくはないと思う。さっきも白帝の信頼を裏切ることになりかねないからともしもの話を否定した所だし。
「……つまりギルドとしては解呪をしようと言うことですか?」
「今キラリさんの話を聞いた限りではそれは得策ではないでしょう。少なくとも私はそう判断します。しかし……ドロップ副ギルド長が同様の判断をするかはわかりません」
「なるほど、クラフトさんの一存ではどうにもできない案件ということですね……」
「申し訳ありません」
面倒ね……。すんなり解呪に応じてもいいのだけれど、先の発言に矛盾してしまう。私の立ち位置としては白帝の信頼を裏切りたくないから出来れば解呪は遠慮したい……と言うところなのだけれど、それがすんなり通るかどうか。
どうもただのお節介じゃない気がするのよね……。何か裏があるような気がするわ。私に関係あるかどうかはわからないけれど。
さて、どうすればいいのかしらね……。
「んー……。例えば、今日私と会えなかったということには……」
「さすがに他の職員の目がありますので……」
「ですよねー」
クラフトさんも苦笑している。私も言ってみただけで無理だとは承知している。でもそれが一番穏便なのよね……。
命がかかっている事だけに頑なに断るのも不自然なのかしら……。でも白帝の強大さを考えたら下手な事はしない方がいいと思うのよね……。実際に白帝を見ていないから過少評価しているのかしら?
……ありえそうよね。私みたいなのが交渉でどうにかしたくらいだから……。こういう時この見た目では説得力を持たせる事はなかなか難しい。
小柄な年若い女の子。どこをどう見ても強そうな要素はない。それどころか冒険者だということがまず信じられないと思う。今みたいに革の胸当てと護身用の短剣、紫紺の外套を身につけていても素直に信じては貰えないんじゃないだろうか? 私からするとどう見ても冒険者なのに……。
つくづく人は自分が信じたいことを信じちゃうんだなって思うわね。
「……私としては白帝の信頼を裏切るような真似はしたくありません。それこそ命に関わると思います。彼との約束は探し物を天山のとあるところまで届けることで、探し物はすでに確保済みです。天山までの道程も私なら何の問題もありません。正直言って解呪する事の方がリスクが高いとすら思います。……それでも受けるしかないんですよね?」
出来ればそちらで何とかして欲しいのだけれど。そういう意思を暗に示しているのだけど、ご理解頂けないかしら?
「申し訳ありません……」
「……わかりました。解呪を受けます。でもあまり長くは待てませんよ? 本当は先程街を出るつもりだったのですから」
「あの時間からーー失礼しました。すぐに解呪の手配をします」
思わず睨んでしまった。確かにあの時間からなのは自覚があるから、そう言われてもおかしくはないけれど、そちらの都合に沿ってあげてるんだもの、これくらいの八つ当たりはいいわよね?
だいたい何が「悪い話じゃない」のよ! 思いっきり面倒で悪い話じゃないのよ!!
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