魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第四章:プリンセス、聖都に舞う

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 あれからしばらく。
 ようやく急造パーティーとしての危機を乗り越えた私達は今後の方針を話し合い(?)決めることが出来た。
 結論から言おう。
 全員バカだ。
 命をかけてまでするべきじゃない。
 そう言った私に彼女らは凄く素敵な笑顔で返してきた。惚れた男と一緒にいられないなら死んだほうがマシだと。ましてや命の危険があるような場所なら……いざという時に私が身代わりになれるから。
 三人ともがそう言い切った。言い切りましたよ? ドーソンさん!?
 私に言えることはあまりない。好きにしてください。それと、ドーソン、死んでも守れ。
 以上です。


 壁の裂け目ーー洞窟の入り口から中へ。当然少し進めば真っ暗なので定番のフローティングライトを使おうとして思い留まった。
 そう、私は学習する女なのです。魔力を無駄遣いしないごく普通の魔法使い演じられますよ?
 なのでパーティーメンバーの魔法使いに譲ります。セクシーな胸当てからはみ出さんばかりの胸とは違って彼女の魔力は心許ないですが、仕方がありません。私は結界担当のゲスト魔法使い。無駄に目立たずひっそりと……。

「キラリちゃん灯お願い」
「はーい……あれ? 私……ですか?」

 先頭のファムさんに問い返す。あれ? 私は温存では?

「そうよ。だってあなたの方が魔力が高いでしょ?」

 それはそうですけど……。

「あの、結界……封印の方は……?」
「それもお願いね。ミストもいい魔法使いだけれど、あなたには敵わないわ。だからよろしくね」
「はぁ……」

 なんだかなぁ……。取り敢えず適当な石に『浮遊』と『魔力の灯火』をかけてファムさんの前方へ飛ばす。

「はい、どうぞ。進んでください」
「「「………………」」」
「こ……こんな使い方もあるのですね……。なるほど……ちょっとした魔法でも使い方次第でこんなにも便利なことができますのね……。ところでキラリ、あなたこれをどこで学んだのですか?」

 あー学習しきれてなかった。そうだったわ。複合……というか複数の魔法の重ねがけ、合わせ技的な運用はあまり一般的ではないのだったわね……。
 でも大丈夫。こんな時のお爺様よね!

「……えっと……お爺様に教わったのですが……おかしいですか?」
「お爺様……? その方が考えたの?」
「えっと……多分? 詳しくは知りません。本人は偉大な賢者だ……と言っていましたけれど、どうだか……」
「ーー賢者様ですって!?」
「ーーミスト!」

 興奮して掴みかかってくるミストさん……をドーソンさんが一喝。よかった、襲われずに済みそうーー。

「ーー後でやれ」
「はい!!」
「ちょっと!?」
「ーー今がいいのか?」
「……後でいいです」

 あれ? 何かおかしくないかしら??


 そうして左右にうねるように続く通路のような洞窟を進むとやがて扉に突き当たる。
 自然洞窟に扉。うん不自然。ゲームだとダンジョンに扉とか普通だけれど、改めて考えるととんでもなく不自然な光景だわね。
 もちろん後付けでできないことはないし、盗賊とかが根城にするような場所なら木の扉とかはありそうなのよ……。
 でも目の前のこれはそういう次元じゃない。俺くんの世界ならどうかしら? ……できるのでしょうねきっと。
 洞窟の壁にぴったりと隙間なく枠がはめ込まれた重厚感ある金属製の扉。
 過度ではないが見る者をそれなりには威圧……萎縮させるような装飾が施されていて、宝石かしら? 蔦の模様にまるで花のように緋や碧の石が嵌め込んである。宝石だけでも十分に価値がありそうだけれど、全体の美術品感が凄い。触るのも気が引けそうなお高い感じがするわね。
 ……何故かキラリ姫の記憶の中にも似たような扉がある。ああ、宝物庫の扉がこういう重厚な感じだったわね……。さすが魔王の娘だわ。
 そしてこのお高い扉が……。

「封印……ですね」

 伸ばした手が何かに阻まれて一定以上は扉に近寄れない。このままでは触れることも叶わない。盗まれる心配がなくて安心ね……。

「……さてと……。この封印を解けば先に進めると思います。ですが、何度も言いますが相当危険です。これが最後でしょう、それでも行くのですね?」

 振り返り一同の表情を順に見定める。
 皆真剣な表情。
 決心は……揺るがないみたい。

「ーーキラリ。お前はここから引き返せ。お前まで命をかける必要はない」

 ドーソンさん……。

「そうね。あなたなら一人でも街までは帰れるでしょう?」

  ファムさんも。

「あ、でも支援魔法はかけて行って欲しいですわ。うふふ」

 ミストさんまで……。

「もがれたくなければ引き返すといい」

 いえそれは嫌ですけどね……ナナンさんは最後まで……。まぁ表情は別の言葉を言いたそうですけれど……。

「ふふ……うふふ……」

 なんだかこういうのはおかしな感じね。なんて言うか……。

「あれですね、これは……ここは私に構わず先に行け……みたいな?」
「「「「ーーいや、それは違うだろ(でしょ)!?」」」」
「あら? そう……ですか?」

 ああ、そうですね。それだと私が死んじゃう役回りかしら? だったら……。

「それじゃぁ……みんなの帰りをここで待っているわ! 必ず……必ずみんなで戻ってきて!! ……みたいな感じですか?」
「おい待てやめろ。それは絶対誰か死ぬパターンだろ!?」
「いいえドーソン、いっそ全滅もあり得るセリフですわ」
「キラリちゃん酷い!?」
「ヤハリココデモイデイクベキネ」

 ナナンさんはいい加減胸から離れて欲しいかも……。

「それは困りましたね……では仕方がありません、私も一緒に行きましょう。そうすれば全滅フラグは回避できますね♪」
「「「えっ! ちょっと!?」」」
「ーーお前最初から……」
「それでは封印を解除ーーする前に全員に支援魔法をかけていきますよ!!」

 まずは『覚醒の光』でステータス三倍。続いて魔法防御、物理防御アップ。マナレジストとプロテクションを効果拡大でかけておく。あとは……『精神防壁』(アストラルシールド)と……『自然回復』(リジュネレイション)。

「……これくらいかしら?」
「「「………………」」」
「キラリちゃんあなたとんでもないわね」
「そうですか? それじゃ私の事は美少女天才魔道士って呼んでもいいですよ?」
「絶対呼びませんわ」
「もぐわよ?」
「あら? 私は呼んであげるわよ? ロリータマジシャンだっけ?」
「いや、全然違うから!? どうやったらそうなるの!?」
「あら? ビューティが抜けていたわね?」
「ーーやめて!? 普通の天才魔法使いでいいわ!!」
「おい自称美少女天才魔道士。いつまでも遊んでないでさっさと行くぞ! 全くお前らは緊張感がなさすぎるだろ!」

 自称が付くとこんなにも残念感が増すのね。勉強になったわ……。

「「「「はーい……」」」」

 ため息をつきつつみんなと一緒に返事を返す。なんだか遠足に来た先生と生徒みたい。
 あらやだ、私も大概緊張感がなかったみたいね。
 ……あ、でも一つだけ言わせて!? 欠伸しながら言ってるあなたも十分緊張感がないわよ?
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