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第五章:プリンセス、最果ての地に散る
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しおりを挟む「『水の方陣』!」
コインが落ちた瞬間、素早く後方に下がりながら魔法を発動させた。
今回キューブは五つ。サイズは1メートル。ただし幅と厚みは半分にして盾のような感じにしている。それを五枚というか柱みたいだから五本かも。それを自分の前に展開した。これでそう簡単には攻撃は受けない。
さて相手の出方は予想通り私の様子を観察してきた。
「あまり見かけない魔法だね……水の盾なのかな?」
「そうですね。術者の周囲を自在に動かせます。ある程度の強度がありますので盾にも武器にもなります」
ある程度ねぇ……まぁ味わってみてくださいませ。
「『石飛礫』!」
まずは接近させないようにしてみましょう。
無数の石の弾丸をばら撒いて牽制する。
ーーうん。やっぱり凄いわ! どういう動体視力をしているのかしら、二人とも剣で弾いている。
後衛は……ソフィス様の防御魔法で受け止めているみたいね。
ある程度の距離があるうちに障害物を仕込んでおきましょう。
「ーーくっ!?」
鈍い金属音!?
急に腕が引っ張られたと思ったら重い衝撃が!?
ノインさん!?
ほんの一瞬意識が逸れただけでこれですか!?
「ほう……まさか受け止めるられるとは思わなかった」
「冗談でしょ! 受けてなかったら斬られてたと思うんですけど!?」
「心配いらない、ソフィスは治療魔法のエキスパートだ!」
心配しかありませんよ!? 一見世間話でもしてるみたいだけどーー!!
魔法使い相手にーー。
ーーやり過ぎですよ!!
あっ、ちょ、くっ、うっ、ちょっと待って!?
速い、速すぎるってば!!
アクアキューブが間に合わない!
三つで後ろ半分を囲っているからいいものの、これじゃ私の体が千切れそうよ!
「『継続回復』!」
「なるほど、見事な剣技だが体が保たないようだね」
「くっ、そう思うのでしたら……手加減してくださってもよろしいのでは?」
腕の筋肉に物凄い負荷がかかっているのがわかる。ブチブチと筋繊維が切れている音でもしそうなくらいに無茶な動きで自動的にノインさんの剣を弾く。便利だけど不便だわこのスキル……体の事を何も考えていない。
相手に応じて勝手に反応するから、ノインさんの様な優秀な剣士が相手だと一般人クラスの私では体への負担が大きすぎる!!
「その剣技には覚えがある……剣聖に二度目の敗北は許されないーー」
私は関係ーー!!
「ーー剣技ダブルアクセル!!」
「きゃぁぁぁっ!! 『魔力の盾』!!」
強引に盾を展開して二連薙ぎ払いを弾いた。弾けてよかった! 殺気こもってなかった今の!?
「スイッチ!!」
ルクス様の掛け声で前衛二人がポジションを入れ替わる。一時的に手数が増えて魔力の盾が軋む。
「トライスラッシュ!!」
そして容赦なく剣技を放ってくる。
わ・た・し・はっ! 魔法使いですけど!?
キューブというか柱だからポストかしらーーってどっちでもいいわよ!! ルクス様の三連撃を二本のアクアポストで横殴りに彼もろとも弾き飛ばす。
「断魔剣!」
「ーー!?」
魔法の盾が切り裂かれて剣の切っ先が迫る!?
「『突風』!!」
「やるな!!」
ノインさんは突風に逆らわずに華麗に飛び退る。状況判断が速い、そして適切すぎ!
空いたスペースに今度はルクス様が切り込んできた! 息つく間もない連携ーー!?
「『魔法障壁』!」
剣と魔法。同時に飛来したアイスボルトを辛うじて弾く。前衛に気を取られていたらソフィス様から魔法攻撃が!
「ぃっ!!」
タイミング的にルクス様の剣撃は冥王剣スキルで対処するしかなかったけれど……やっぱり相手剣士の力量に対して私の身体能力がついていけてない!
「『大地の防壁』!」
ルクス様の前に土壁を作り出す。高さはたったの50センチくらい。だから軽々と飛び越えられてしまう。でもそれが私の狙い!!
「『突風』!!」
左右から迫る二人の前衛と少し後ろのソフィス様とメルさんも巻き込んで特大の突風でまとめて吹き飛ばす。少しタイミングがずれていたみたいで宙に浮いていたのはルクス様だけだったけれどかなり遠くまで吹き飛ばすことができた。
今のうちにーー。
「『束縛の蔦』!」
「この程度!!」
ノインさんを蔦で囲んで動きを封じてーーアクアキューブ(ポール)でソフィス様を挟んで圧迫。どちらも完封は出来ないからあくまで時間稼ぎ。
もう一人メルさんはーー!?
いない!? そんなはずは……。
ーー!?
まさか隠密系統のスキル!?
斥候職ならありえる!!
まずい! まずいわ。ああいうスキルは高レベルになると一度見失うと発見するのは相当困難。
「ーー旋風斬!!」
もう!? ノインさんが自由に!! 思ったよりも速い!?
「おぉぉぉぉっっ!!! ライトニングセイバー!!」
間髪入れずにルクス様の叫び声が響いた。
なるほど! 突進系の剣技を移動に!!
ーーっと、感心してる場合じゃない。
思ったよりも時間が稼げていない!!
「『幻惑の霧』!!」
周囲に無数のノインさんの幻影が出現した。
さすがは聖女。容易く見破れるものではないわね。
でも!!
「ーー『解呪』!!」
私には通用しないわ!
そんな事よりもソフィス様まで攻撃に参加してくるだなんてまさかもう抜け出したの!?
チラリと視線を向ければ……よかった。聖女様はしっかり挟まってらっしゃいました。アクアポール四本に挟まれて……その立派なお胸が凄いことに……。
それでも魔法が使えない訳ではないので自分の身を顧みる事なく仲間の支援をするだなんて……。さすがは聖女様!!
「キラリ! これで終わりだ!!」
「なかなか頑張ったねキラリくん!!」
解呪一回の隙でここまで詰め寄られるだなんて! さすがは勇者と剣聖。ここからどうにかしようと思えばそれはもう模擬戦ではなくなってしまう。
可能性を模索する僅かな逡巡。そんな事が許される訳もなく、二人の剣士の間合いに入った。
ここまでねーー。
「ーーこうさぁぁぁん!?」
突然胸の先端を襲う刺激。ふぇぇっ!?
「ぁ、ぃやぁ!?」
胸当ての下、服の中を何かが這いずり回っている!?
え!? え!? え!? なにナニ何!! なんなのよぉぉぉぉっっ!!??
「え、ぁ、ん、ひゃぁ……ぁん……」
先端を摘まれて捏ねられて体に力がーー。
「悪の魔法使いの首を取った……かねぇ……」
耳元でメルさんの声ーー!!
でも、それ首は首でも……違う首ですぅぅっ!!
いやぁぁぁぁぁんんんーー!!!!
「……なぁノイン……なんでこのパーティーは女の子ばっかりなんだろうな……時々俺の理性って凄いと感心するわ……」
「それは同意するが、何故私に言う? よもや婚姻前に体を求める気か? 悪いがこれでも貴族の娘なので婚約者と言えども抱かれてやる訳にはいかないぞ」
「それはわかっているさ。しかしな、目の前でああいうものを見せられては俺だってな……」
「見なければいいのではないか?」
「ふっ……そんなもったいない事が出来るか」
「もったいない……いや、いい。確かにあのレベルの美少女の痴態を見逃すのは大きな損失だろう。だがな、間違っても娼館などへは行くなよ? 勇者が娼館で女を買うなどとんだ醜聞だからな」
「わかってるさ……だからこんなにも苦しんでいるんじゃないか!」
「女には分からん苦しみだな。いっそ三人の誰かを口説いたらどうだ? 三者三様いずれも劣らぬ美少女揃いだぞ? 私の事なら気にしなくていい。妾の存在くらいで目くじらを立てたりしないぞ?」
「……お前ね……少しは嫉妬くらいしてくれよ。愛し合っている訳ではないが、それなりに好いてはいるんだぞ?」
「奇遇だな。私も相応にはお前のことを思っているぞ? そうだな、口付けくらいならば吝かではないぞ?」
「……だから、もう少し色気とか雰囲気とかをだな……」
「そんなものを私に求めるのがーー」
「間違ってねぇよ……はぁ……お前だって年頃の若い娘なんだ、悟りきった年寄りみたいな事を言うなよ……」
「うむ。努力はしよう」
「……やれやれ……とんだハーレムパーティーだな……」
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