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第五章:プリンセス、最果ての地に散る
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「ーーそれでは改めて出発するとしよう」
……と勇者が場の空気を変えようと発言すれば。
「出発も何もココ目的地だねぇ」
……と仲間がサラリと指摘する。空気読んでくださいメルさん。
「いや、だから館の中にだな……」
「まぁ突入するしかなさそうだねぇ……ねぇキラリ」
「ふぇ!?」
急に話を振られても困ります。思わず先ほど聞いた可愛い鳴き声を真似てしまったーー。
……ジト目が怖い。
「ん、んんん! そうですね。館の中に安置されている魔法道具を停止もしくは破壊しましょう!!」
取り敢えず真っ当な発言で誤魔化そう。
「そうだな。あまりのんびりし過ぎるのも問題だろう。そろそろ攻略を再開しよう」
「誰のせいで無駄な時間をとったと思っているのですか?」
「「………………」」
黙秘します……。
「さ、さぁ、ノインさん。参りましょうか」
「そうだなキラリ。行くとしようか」
「……二人とも、街に戻るのが楽しみね。腕によりをかけるから覚悟しなさい」
美女と腕によりをかけた手料理。思春期男子なら頰を真っ赤に染めて舞い上がる様な定番シチュだというのに、そこに何故か「覚悟」が必要な要素が混ざり込むとこんなにも複雑怪奇な心境になるだなんて……。
ある意味ではこれもまた定番とも言えるのだけれど……。
「い、いえ……聖女様にその様な事をさせるわけには参りません。料理の用意などは私にお任せくださいませ……」
「そうだぞソフィス。そういうのは新入りの役割だ。仕事を取ってやるものではない」
「そうですよ!」
「……二人とも往生際が悪いですわ。私が大切なお友達に手料理を振る舞いたいのです。もちろん食べていただけますね?」
恐ろしいくらいの満面の笑み。しかしーー。
目だけが笑っていない。それがこんなにも恐ろしいだなんて……。
「その辺で許してーー」
「あら? ルクスもご招待しましょうか?」
「ーーいや、仲が良くて何よりだ。女の子同士親交を深めてくれたまえ。はは……はははは……」
それだけで勇者を迎撃してしまうソフィス様……。やばい人を怒らせてしまったのかもしれない……。しかし勇者すら恐れる手料理って……。
では人形の館(?)攻略開始。
扉を開けると……そこはまるで貴族のお屋敷の様でした。ごくごく普通のお屋敷ですね……。
広いエントランスホールには豪華なシャンデリアが煌めき、正面には今にもお姫様がおりてきそうな素敵な階段。そこかしこに飾られた絵画や花瓶などはどれもこの場の雰囲気を崩すことなく調和している。それこそ標準で備え付けてでもいるのかホワイトブリムを付けたメイドドレス姿の萌えキャラ……じゃなくて黄色い髪の少女と、これまた定番すぎるモノクルの老執事が素晴らしい姿勢で待機している。
目に入るもの全てが十分に厳選された一流どころを取り揃えた。私自身にそこまで物を評価する目は持っていないけれど、それでも何か格調高いモノを感じさせられる。そんな内装の数々。
それはいかにも貴族のお屋敷然とした雰囲気の――。
「………………」
ん? 今私の脳内でアラートが鳴り響いている。はて? 貴族のお屋敷に似つかわしくないものでもあっただろうか?
もう一度視線をぐるりと一巡りさせて……あっ! あった!! 別段似つかわしくはないけれど、おかしなモノがあった。いいえ、いた。と言うべきだろう。
皆を見ればやはり同じ存在に意識を奪われている様子。
「「「「「………………」」」」」
だってありえないでしょ!? メイドと執事がいるだなんて!!?? ここって古代魔法王国期の建築物なのよね!?
一体どれだけの年月が経っていると思っているのよ!
それなのにどう見てもどこから見ても人間にしか見えないメイドと執事。 まさか精巧な人形だとでも!?
いえ違うわ! 執事が視線をこちらに向けて喋ったんだもの!!
「ようこそ招かれざるお客様方。当家をシュタインベルク家の屋敷と知ってのお越しでしょうか? 仮にそうだとすればそのような不敬は万死に値します。そしてもし知らずに訪れたのであれば……そのような無知なるものに生きる価値はございません。嗚呼何という事でしょうか! いずれにしろ万死に値するではありませんかっ!! メアリーいつ以来でしょうか、おもてなしの準備をしなさい」
「かしこまりました。セバス様。ちなみに七百九十四年と二百二十三日と十四時間十四分と三十一……二、三秒でございます」
「おお! そんなに経つのですか!?」
「はい、冗談です」
「冗談なのですか!?」
「はい。ちょとしたお茶目です」
「そうですか、それならば仕方がありますまい。ではメアリー支度をしなさい」
「かしこまりました。それでは着替えて参ります」
「……今度は何の冗談ですか?」
「いいえ、今度は本気です」
「ま、まぁいいでしょう。行ってきなさい」
「かしこまりました」
最初の仰々しさがあっという間に消え失せてしまった。残ったのがしらけた空気と一人の老執事。
どうするのよこの空気!? さすがの勇者様も凍りついているじゃないのよ……。
「えっと……セバス……さん?」
「何かねピンクの髪のエ□そうな娘」
「……ちょっと、初対面でそれはないでしょ!? 失礼ね!?」
「うるさい小娘ですね。図星を突かれたからと騒ぐようではたかがしれていますね」
「なっーー!?」
「そこで言葉を失うなど認めているようなものです。それで後ろの寝ぼけ顔のちっこいのと胸デカ娘……胸デカ女と……」
「待ちなさい!? 今何故言い直したのーーって無視!? 私を無視ですか!?」
言い直した執事の発言に抗議の声を上げた聖女様。でも残念。執事は完全に無視してノインさんに礼をしていた。
「これはこれは失礼いたしました。お一方だけ高貴な方がいらっしゃったようですね。このような有象無象の中に何故貴女様のような高貴な方がいらっしゃるのか理解に苦しみますが、そんな事はどうでもよろしい。掃き溜めに鶴、泥中の蓮、万緑叢中紅一点……例える言葉は数あれど貴方様に相応しいものはそう容易くは見つかりますまい。隣に立つ男などまさにただの草。道端にいくらでも生えてくる雑草。この場に相応しくありません。早々に立ち去るといいでしょう。……嗚呼、そういえば無断で当家に踏み入ったのでしたね……消えてしまいなさい」
ヒュッ!!
「ーークッ!?」
キンッ!
「ほう? 少しはやるようですね。それもそのはず、当家まで辿り着けたという事を失念しておりました。草は草でもただの草ではなく地中深くに根を張る面倒な雑草でございましたか……チッ鬱陶しい……」
床に転がったナイフ。ピカピカに磨かれた銀のナイフとそれを弾いた剣を構える勇者様。私には少し荷が重そうなのでさりげなく後ろに下がっておく。
「そちらがその気ならこちらも容赦はしない。行くぞ!」
「やれやれ……。このような年老いた執事を相手に五人がかりとは何とも恥知らずな無礼者でしょうか。いいでしょう。久しぶりに『銀の悪魔』の名を知らしめて差し上げましょう」
ジリジリと高まる緊張感。剣を構えるこちらに対して執事は何処からともなくナイフ……とフォークを取り出し、そして目にも留まらぬ速さで腕を振るった。
数度鳴り響く甲高い金属音と床を跳ねるナイフとフォーク。
キンキンッ! カンカンッ! キュインキュイン! サクサク……。
まぁそんな感じの音が鳴り響く攻防が繰り広げられている訳ですが……。
「やりますね……ですがいつまで保ちますかな?」
「ーーソフィス、キラリ下がれ!」
高速で放たれたナイフとフォークを全て剣で弾きながら勇者様が叫ぶ。
しかしーー。
「ご心配なく。『魔力の盾』を張っていますので大丈夫です」
実際何本かは勇者様の剣撃を潜り抜けてこちらまで到達しているけれど特に問題なく障壁で受け止めている。
カン……。
あ、また飛んできた。
「さすがですねキラリさん」
「助かるねぇ」
「そうだな。撃ち落せない速さではないが面倒だ」
「よもやこれ程とは……雑草から雑木へ昇格して差し上げましょう」
「勝手に言っていろ。それで弾切れのようだが?」
「その通りですな。仕方がありませんな……奥の手です」
「何!?」
そう言いながら執事は白手袋をはめた手を上に掲げていく。何をするつもりなのかーー!?
「ーー降参です」
「「「「「………………」」」」」
場を支配する沈黙。
アレ? 今なんて言ったかしら?
確か降参……?
カチャリ……バタン。
沈黙を破ったのは黄色い髪のメイド少女だった。
「お待たせしました。セバス様」
「うむ。うまく時間を稼げたようですな。さぁ第二ラウンドと参りましょうか……ところで着替えはどうしたのですかメアリー?」
「はい、ちゃんとインナーを着替えて参りました」
「……何の冗談ですか?」
「冗談ではありません。ちゃんと勝負下着に着替えて参りましたーーはっ!? これはセクハラでしょうか!?」
「違います。素朴な疑問です。だいたい何故勝負下着なのですか?」
「女が戦いに臨むのです。これは当然のことなのです!」
「何の戦いに臨むつもりですか貴方は……」
「何のってそんな!? またもやセクハラですかこの変態執事!!」
「またそれですか? 自分の孫くらいの歳の娘にそんな事するわけないでしょう?」
「つまり……変態ロリコン執事だと白状する訳ですね!? いやらしい!!」
「ですから違うとーー」
「ーーいつまで続けるつもりだ!」
ついに勇者様が痺れを切らした。
まぁそれはそうでしょう。シリアスな戦闘をしていたかと思えば一転してコントのような掛け合いが始まったのですから。
「………………いやん、エッチ」
「何がだ!?」
何故か今度はこちらに(勇者様に)絡み始めるメイド少女メアリー。棒読みなセリフが何ともやる気のなさを際立たせる。この娘一体何なのだろうか?
「からの~ポチッとな」
ーー!?
パカン!?
「うわぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「あぁぁれぇぇぇ~~~!!!」
「ふぇぇぇぇ~~~~~!!!」
足元の床が突然消失。
私たちは為す術もなく底の見えない暗闇へと滑り落ちていった……。
……と勇者が場の空気を変えようと発言すれば。
「出発も何もココ目的地だねぇ」
……と仲間がサラリと指摘する。空気読んでくださいメルさん。
「いや、だから館の中にだな……」
「まぁ突入するしかなさそうだねぇ……ねぇキラリ」
「ふぇ!?」
急に話を振られても困ります。思わず先ほど聞いた可愛い鳴き声を真似てしまったーー。
……ジト目が怖い。
「ん、んんん! そうですね。館の中に安置されている魔法道具を停止もしくは破壊しましょう!!」
取り敢えず真っ当な発言で誤魔化そう。
「そうだな。あまりのんびりし過ぎるのも問題だろう。そろそろ攻略を再開しよう」
「誰のせいで無駄な時間をとったと思っているのですか?」
「「………………」」
黙秘します……。
「さ、さぁ、ノインさん。参りましょうか」
「そうだなキラリ。行くとしようか」
「……二人とも、街に戻るのが楽しみね。腕によりをかけるから覚悟しなさい」
美女と腕によりをかけた手料理。思春期男子なら頰を真っ赤に染めて舞い上がる様な定番シチュだというのに、そこに何故か「覚悟」が必要な要素が混ざり込むとこんなにも複雑怪奇な心境になるだなんて……。
ある意味ではこれもまた定番とも言えるのだけれど……。
「い、いえ……聖女様にその様な事をさせるわけには参りません。料理の用意などは私にお任せくださいませ……」
「そうだぞソフィス。そういうのは新入りの役割だ。仕事を取ってやるものではない」
「そうですよ!」
「……二人とも往生際が悪いですわ。私が大切なお友達に手料理を振る舞いたいのです。もちろん食べていただけますね?」
恐ろしいくらいの満面の笑み。しかしーー。
目だけが笑っていない。それがこんなにも恐ろしいだなんて……。
「その辺で許してーー」
「あら? ルクスもご招待しましょうか?」
「ーーいや、仲が良くて何よりだ。女の子同士親交を深めてくれたまえ。はは……はははは……」
それだけで勇者を迎撃してしまうソフィス様……。やばい人を怒らせてしまったのかもしれない……。しかし勇者すら恐れる手料理って……。
では人形の館(?)攻略開始。
扉を開けると……そこはまるで貴族のお屋敷の様でした。ごくごく普通のお屋敷ですね……。
広いエントランスホールには豪華なシャンデリアが煌めき、正面には今にもお姫様がおりてきそうな素敵な階段。そこかしこに飾られた絵画や花瓶などはどれもこの場の雰囲気を崩すことなく調和している。それこそ標準で備え付けてでもいるのかホワイトブリムを付けたメイドドレス姿の萌えキャラ……じゃなくて黄色い髪の少女と、これまた定番すぎるモノクルの老執事が素晴らしい姿勢で待機している。
目に入るもの全てが十分に厳選された一流どころを取り揃えた。私自身にそこまで物を評価する目は持っていないけれど、それでも何か格調高いモノを感じさせられる。そんな内装の数々。
それはいかにも貴族のお屋敷然とした雰囲気の――。
「………………」
ん? 今私の脳内でアラートが鳴り響いている。はて? 貴族のお屋敷に似つかわしくないものでもあっただろうか?
もう一度視線をぐるりと一巡りさせて……あっ! あった!! 別段似つかわしくはないけれど、おかしなモノがあった。いいえ、いた。と言うべきだろう。
皆を見ればやはり同じ存在に意識を奪われている様子。
「「「「「………………」」」」」
だってありえないでしょ!? メイドと執事がいるだなんて!!?? ここって古代魔法王国期の建築物なのよね!?
一体どれだけの年月が経っていると思っているのよ!
それなのにどう見てもどこから見ても人間にしか見えないメイドと執事。 まさか精巧な人形だとでも!?
いえ違うわ! 執事が視線をこちらに向けて喋ったんだもの!!
「ようこそ招かれざるお客様方。当家をシュタインベルク家の屋敷と知ってのお越しでしょうか? 仮にそうだとすればそのような不敬は万死に値します。そしてもし知らずに訪れたのであれば……そのような無知なるものに生きる価値はございません。嗚呼何という事でしょうか! いずれにしろ万死に値するではありませんかっ!! メアリーいつ以来でしょうか、おもてなしの準備をしなさい」
「かしこまりました。セバス様。ちなみに七百九十四年と二百二十三日と十四時間十四分と三十一……二、三秒でございます」
「おお! そんなに経つのですか!?」
「はい、冗談です」
「冗談なのですか!?」
「はい。ちょとしたお茶目です」
「そうですか、それならば仕方がありますまい。ではメアリー支度をしなさい」
「かしこまりました。それでは着替えて参ります」
「……今度は何の冗談ですか?」
「いいえ、今度は本気です」
「ま、まぁいいでしょう。行ってきなさい」
「かしこまりました」
最初の仰々しさがあっという間に消え失せてしまった。残ったのがしらけた空気と一人の老執事。
どうするのよこの空気!? さすがの勇者様も凍りついているじゃないのよ……。
「えっと……セバス……さん?」
「何かねピンクの髪のエ□そうな娘」
「……ちょっと、初対面でそれはないでしょ!? 失礼ね!?」
「うるさい小娘ですね。図星を突かれたからと騒ぐようではたかがしれていますね」
「なっーー!?」
「そこで言葉を失うなど認めているようなものです。それで後ろの寝ぼけ顔のちっこいのと胸デカ娘……胸デカ女と……」
「待ちなさい!? 今何故言い直したのーーって無視!? 私を無視ですか!?」
言い直した執事の発言に抗議の声を上げた聖女様。でも残念。執事は完全に無視してノインさんに礼をしていた。
「これはこれは失礼いたしました。お一方だけ高貴な方がいらっしゃったようですね。このような有象無象の中に何故貴女様のような高貴な方がいらっしゃるのか理解に苦しみますが、そんな事はどうでもよろしい。掃き溜めに鶴、泥中の蓮、万緑叢中紅一点……例える言葉は数あれど貴方様に相応しいものはそう容易くは見つかりますまい。隣に立つ男などまさにただの草。道端にいくらでも生えてくる雑草。この場に相応しくありません。早々に立ち去るといいでしょう。……嗚呼、そういえば無断で当家に踏み入ったのでしたね……消えてしまいなさい」
ヒュッ!!
「ーークッ!?」
キンッ!
「ほう? 少しはやるようですね。それもそのはず、当家まで辿り着けたという事を失念しておりました。草は草でもただの草ではなく地中深くに根を張る面倒な雑草でございましたか……チッ鬱陶しい……」
床に転がったナイフ。ピカピカに磨かれた銀のナイフとそれを弾いた剣を構える勇者様。私には少し荷が重そうなのでさりげなく後ろに下がっておく。
「そちらがその気ならこちらも容赦はしない。行くぞ!」
「やれやれ……。このような年老いた執事を相手に五人がかりとは何とも恥知らずな無礼者でしょうか。いいでしょう。久しぶりに『銀の悪魔』の名を知らしめて差し上げましょう」
ジリジリと高まる緊張感。剣を構えるこちらに対して執事は何処からともなくナイフ……とフォークを取り出し、そして目にも留まらぬ速さで腕を振るった。
数度鳴り響く甲高い金属音と床を跳ねるナイフとフォーク。
キンキンッ! カンカンッ! キュインキュイン! サクサク……。
まぁそんな感じの音が鳴り響く攻防が繰り広げられている訳ですが……。
「やりますね……ですがいつまで保ちますかな?」
「ーーソフィス、キラリ下がれ!」
高速で放たれたナイフとフォークを全て剣で弾きながら勇者様が叫ぶ。
しかしーー。
「ご心配なく。『魔力の盾』を張っていますので大丈夫です」
実際何本かは勇者様の剣撃を潜り抜けてこちらまで到達しているけれど特に問題なく障壁で受け止めている。
カン……。
あ、また飛んできた。
「さすがですねキラリさん」
「助かるねぇ」
「そうだな。撃ち落せない速さではないが面倒だ」
「よもやこれ程とは……雑草から雑木へ昇格して差し上げましょう」
「勝手に言っていろ。それで弾切れのようだが?」
「その通りですな。仕方がありませんな……奥の手です」
「何!?」
そう言いながら執事は白手袋をはめた手を上に掲げていく。何をするつもりなのかーー!?
「ーー降参です」
「「「「「………………」」」」」
場を支配する沈黙。
アレ? 今なんて言ったかしら?
確か降参……?
カチャリ……バタン。
沈黙を破ったのは黄色い髪のメイド少女だった。
「お待たせしました。セバス様」
「うむ。うまく時間を稼げたようですな。さぁ第二ラウンドと参りましょうか……ところで着替えはどうしたのですかメアリー?」
「はい、ちゃんとインナーを着替えて参りました」
「……何の冗談ですか?」
「冗談ではありません。ちゃんと勝負下着に着替えて参りましたーーはっ!? これはセクハラでしょうか!?」
「違います。素朴な疑問です。だいたい何故勝負下着なのですか?」
「女が戦いに臨むのです。これは当然のことなのです!」
「何の戦いに臨むつもりですか貴方は……」
「何のってそんな!? またもやセクハラですかこの変態執事!!」
「またそれですか? 自分の孫くらいの歳の娘にそんな事するわけないでしょう?」
「つまり……変態ロリコン執事だと白状する訳ですね!? いやらしい!!」
「ですから違うとーー」
「ーーいつまで続けるつもりだ!」
ついに勇者様が痺れを切らした。
まぁそれはそうでしょう。シリアスな戦闘をしていたかと思えば一転してコントのような掛け合いが始まったのですから。
「………………いやん、エッチ」
「何がだ!?」
何故か今度はこちらに(勇者様に)絡み始めるメイド少女メアリー。棒読みなセリフが何ともやる気のなさを際立たせる。この娘一体何なのだろうか?
「からの~ポチッとな」
ーー!?
パカン!?
「うわぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「あぁぁれぇぇぇ~~~!!!」
「ふぇぇぇぇ~~~~~!!!」
足元の床が突然消失。
私たちは為す術もなく底の見えない暗闇へと滑り落ちていった……。
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