魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第五章:プリンセス、最果ての地に散る

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 薄暗い穴の底はゼリーみたいな液体が満たされていて、私たち全員無事に着水した。

 ぬぷん。

 ……とかいう感じのいやらしい音を立てて。

 しかも困ったことにさっきから体の奥深くが熱い。恐らくというか確実にこの液体には媚薬成分が含まれている。
 それともう一つ頭の痛い事がある。
 それがーー。

「全くこのへっぽこメイド! 私たちまで落ちてしまったではありませんか!!」
「てへ♪」
「誤魔化すんじゃありません! 一体どうするつもりですか!」
「それはですねセバス様……」
「それは……?」
「敵の敵は味方という事ですよ」
「ほう? 確かに共通の第三の敵勢力というものがあれば敵同士が一時的に手を組む事もあるでしょう。それは史実が物語っています」
「そうでしょう、そうでしょう。ですからここは一つその第三の勢力を用意すればいいのです」
「それで?」
「それだけです」
「それだけ……なのですか?」
「そうでございますよ。一介の美少女メイド風情にそれ以上どうしろと仰るのですか? その辺りは敏腕一流執事であるセバス様の役割ではありませんか」
「確かに一流の執事である私の領分とも言えなくはないですな」
「左様でございます。ささ、ここは一つ腕の見せ所でございますよセバス様」
「仕方がありませんなーーとでもいうと思いましたか!? このおバカメイド!!」
「えへへ……やっぱりダメですか?」
「当然です!」
「だったらどうするんですか?」
「ここは一つ……」
「ここは一つ?」
「あちらのお客人方にーー」
「お客様に?」
「頼るしかないでしょう!! ほら、お前のせいでこのような事態になっているのです。まずは謝り倒して何とかしなさい!」
「そんなーー!? 私のこの体を差し出せと仰るのですか!? 鬼! 悪魔! 変態! ロリコン! エロ執事!」
「待て待て待てーーーい!? 聞き捨てならない発言を連発するのはこの口ですか!? 一体ご主人様は何を考えてこのようなメイドを……」
「いひゃいれす。それとご主人様は私に日々の癒しを求めておられました。口煩い老執事よりも若くて可愛いメイドにお世話されたかった。そういう事です」
「だまらっしゃい! 貴方はお世話どころか迷惑と騒ぎを起こしていただけでしょう! 一体私がどれだけ後片付けに奔走したことか……」
「何の事でしょうか? 記憶にございません」
「はぁ……そして挙げ句の果てにはこのような地下に落とされてしまう始末。こんな哀れな老人をどなたか助けてはくれないでしょうか?」(チラ)
「それを言うのでしたら口煩い変態ロリコン執事に虐げられている美少女メイドこそを助けたくなるのが人情心情愛情本能というべきところでございます。どこかに英雄のような清く正しい殿方はいらっしゃらないでしょうか?」(チラ)
「「嗚呼……神よ! 迷える哀れな私をお救いください!!」」(チラ)

「「「「「………………」」」」」

(勇者様、出番ですよ)
(いやいや、ここは救いの女神、癒しの聖女の出番だろう!?)
(待てルクス。貴様はか弱い女にあんなモノを押し付けるつもりか? 男なら黙って立ち上がるべきだろう?)
(誰がか弱いだ誰が……)
(何か仰いましたか?)
(いしし……。さすがの私もあそこまでネタ盛りだくさんの連中の相手は御免被るわねぇ。キラリちゃんならいけるんじゃないかねぇ?)
(ちょっとメルさん人の事を生贄に差し出そうとしないでくださいよ。私はこのへんな気持ちになる液体のせいでお姉様とイチャイチャしたいんですから!)
(ちょっと、キラリさん! いい加減に離れてください! あ、こら!? ちょっと!! んッ!? どこに触っているのですか!!)
(イヤン、お姉様こそさっきから私の胸を揉んでいるではありませんか……)
(はぁ!? 私がそのような事をするはずがないでしょう……メル! 貴方でしょう!?)
(おやまぁ。バレてしまったかねぇ? まぁ別にバレてもいいんだけどねぇ……キラリちゃん)
(あ、そこいいですぅ……お姉様……)
(やめなさい! 私ではありませんから!! あ、ちょっと! いい加減にしなさいよ! 誰か灯! こんなにも薄暗いからみんなおかしな事するのよ! こら! ああっ、もういいですわ! 『魔力の灯火』)

 薄暗かった穴の底がまるで昼間の様に明るくなってーー。
 お姉様にしがみついて胸を揉む私の胸を弄るメルさんの姿が白日のもとに晒された。
 勇者様とノインさんは……。
 二人並んで立っていた。
 その向こうに黄色い髪のメイド少女と澄ました顔の老執事が立っていた。
 何故かその前にはスタンドマイクがセットされていたけれど……。
 何なのかしら? あの人たちは一体何なのかしら?

 誰も疑問には答えてくれないでしょうし、あまり放っておくと売れない漫才コンビのつまらないコントが始まりそうなので構ってあげるしかない。
 嫌だなぁ……。もうホントのほんとに本気で嫌なのだけど、どう見てもみんな引いているのがわかるし、それでも誰かが構ってあげるしかないし。
 出来れば第二幕の幕が上がる前に……。

(勇者様……)

 柔らかな膨らみを堪能しつつ私はその時を待つことにします。ただちょっとメルさんのテクニックに逝かされてしまいそうで不安です。

(ぁ、はぁぁん……)
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