探偵ドラゴンと怪盗ドラゴン ~ドラゴンに転生したら純白のドラゴンヒロインと探偵怪盗ごっこをすることになった件~

おもいこみひと(元七色一浪)

文字の大きさ
9 / 10

第九話 フェイク

しおりを挟む
 ドラゴンを信仰する側と、そうでない側。

 その両者、両家で儀式が始まる。怪盗ドラゴン、フーリヤに家宝のダイアモンドソードを盗ませるか、それともそれをどうにかして阻止するか。

 僕としては全くのノープランではあるのだが、果たして。

「ところで、あなたはどうするんですか?」

 僕は依頼主の黒髪の女性に問う。実は真っ黒い狐で、ドラゴンとともに生きてきたという彼女に問う。

「どう、とは?」

「あ、いえ。ドラゴンが身近にいる環境で育ったのなら、その、そこでの経験に基づくなにかはあるのかなと思いまして」

「ドラゴン様ご本人のほうがお詳しいのでは?」

 もっともな返答をされてしまった。

 そう、この黒い狐の女性は僕がドラゴンであることを知っている。曰く、ドラゴンのにおいというものがプンプンとするらしい。
 
 においを気にしたことはあっても、ドラゴン特有のそれを気にしたことのなかった僕としては、まさに目からうろこであった。もしや気づかないうちにドラゴンであると気づかれていたのでは? と冷や汗をかいたが、曰く「私が特別鼻がいいだけですから」とのこと。

「まあ、風に乗ってきたにおいは気をつけておきますね」

 女性はそう言い残して、屋敷の方に駆けて行った。そろそろ戻らないと、主人が心配するのだという。

 日は森の向こうに沈みに切って、すっかり暗くなっていた。儀式の準備や正装への着替えを考えると遅すぎるくらいだと思ったが、まあ、急に予告状が来てバタバタしていたということにしよう。

 失礼かもしれないが、あの女性のお転婆さを微笑ましく思った。

 …ふむ。

 とりあえず、いつも通りやるしかあるまい。

 いつも通りとはいっても、なすすべもなく、まったく何もできず、いつもことは終わってしまうのだが。だからこそ、さっきからどうしたものかとうんうん唸っているのである。

 明日の宵。つまり、怪盗フーリヤはいつ現れてもおかしくない、ということである。

 とりあえず、僕も儀式の会場に向かうことにした。

 来た道を戻り、正面から正規の客として入りなおす。近所のBBQのようだ、という感覚は当たっていたようで、一般の冒険者としてすんなり入り込めた。

 客としては冒険者が多いのか、武装している者がほとんどである。

「さて、と。ダイアモンドソードは…」

 剣を収集している身としては、やはり現物を見るのは楽しみであった。

 と、ここで違和感がよぎる。形容しがたい、曖昧な違和感というか、空気感というか。

 まず、ただ一言、ドラゴンを崇めているかと門番に聞かれた。

 とりあえず僕は頷いておいた。

「ついにドラゴンが我が家宝を取りに来て下さる!」

 会場内では、そんな台詞が口々に聞こえてきた。

 ただ、何というか、何とも形容しがたい雰囲気があった。

 それは、ドラゴンへの信仰とはまた違うような、そんな異様さがあった。

 にも関わらず、人々はこれから来訪する怪盗ドラゴンフーリヤに対する賛辞を口々に口にしていた。

 この違和感は、何だ?

 怪訝に思いつつも、取り敢えずは怪盗フーリヤの対策を考えねばと、ダイアモンドソードに近づく。

 目の前に来たとこで、ようやくに気づく。

 …まて。まてまて。

 いくら遠目とはいえ、布越しとはいえ、家宝のダイアモンドソードを目の前にして、僕の心が動かなかったというのは、どうしてだろうか。

 いや、でも、他のどの獣人よりも鼻がいいと自負するこの家の夫人が、そのにおいに気づかないなんてあるのだろうか。

 …いや、どんな探知魔法もすり抜けて見せるフーリヤである。においすら魔法で消していても、なんら不思議ではない。

 なら、玄関先の広場に持ち出されたあのダイアモンドソードは、本当にダイアモンドソードなのだろうか。

 現に今、僕の心は動かない。

 そう、つまり、これは…。

 僕は周囲の静止を強引に振り切り、剣が置かれた台にかぶさっていた布を剥ぎとった。
 
 その瞬間、僕に対する怒号がどよめきに変わる。

 そこにあったのは、白銀に輝くダイアモンドソードではなく、漆黒の剣であった。

「…やっぱり」

 やられた。今回も、何もできなかった。
 
 というか、僕にはどうしようもなくないか? 僕の感覚が正しければ、僕がこの屋敷に侵入して遠目に見たときには、もう入れ替わっていたことになる。

 そのときにはもう既に、フーリヤはすでにダイアモンドソードを回収し、贋物がんぶつを置いていったことになる。

 僕をドラゴンだと見透かしたあの人は僕次第だと言っていたが、これでは…。

 僕は取り押さえられたまま、領主の若い男に何故分かったと問われる。

 布越しであってもその輝きが伝わらないのはおかしい、というふうに答えた。

 しかし、僕はその場で取り押さえらたまま。どうやら嫌疑はまだ晴れていないらしい。

 ともかく、依頼は失敗である。これからどうしようかと、この領主の妻である、依頼主の女性を探す。そろそろ着換えも終わるころではないだろうか。

 と、ここで可憐なドレスに身を包んだ女性が玄関から出てきて、こちらに駆け寄ってくる。もちろん、耳をどこかにしまった(魔法かなんかで見えないようにした?)状態である。

「旦那様、何の騒ぎですか!?」

 その声の瞬間、領主の一声で女性も取り押さえられた。

 いや、え? どういうことだ?

「何を白々しい! お前がこそこそやっていたのは知っている!」

 領主は自身の妻を、それこそ虫でも見るような目で見降ろし、言い放つ。

「この男に依頼し、ドラゴン様に捧げるはずの家宝を盗ませたに決まっている!」

 …は?

 僕は、唖然とするしかなかった。
 

 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

処理中です...