グランピングランタン

あお

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第六章

パールミルクティー

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ー文化祭当日。
体育祭と違った雰囲気に包まれる学校。
体育館ステージや教室では1年生による出し物。ダンスを戻ってる生徒たちもいれば、演劇を行っている生徒たちもいる。その中でも教室で行われている『脱出ゲーム』は、群を抜いて人気のようだ。
中庭には2年生による模擬店。出店されているのはカレーライス・たこ焼き・焼きそば・タピオカ。ちょっと寒いが、タピオカには行列が出来ているようだ。

「ねぇねぇ加奈子、タピオカ飲もうよ!」
「いいね!でも寒くない?」
「教室に戻ってから飲めばいいじゃん!それに体育祭で代わりに走ってくれたから、おごってあげる!」

加奈子と仲良く話しているのは君島綾子。体育祭の時、足を捻挫して学年リレーに参加できず、急遽加奈子が走ることになった。

「そんなの全然いいのに。」
「いーや!ここで加奈子に恩返しをしないと。」
「じゃ、甘えようかな。」
「そうこなくっちゃ!」

タピオカ屋の前に並ぶ2人。その前には田口と江藤が並んでいた。

「うーっす。なんだ。お前らもタピオカ目当てか?」
「そーだよ!田口と江藤男2人でタピオカぁ?」
「そうだよ。悪いかよ。」
「ったく、彼女とかいないの?」
「いねーし。大きなお世話だな。」

君島と田口がテンポ良く話す。

「でもさ、お前らも彼氏いないだろ?このまま4人で一緒にタピるか?」
「いいねー!」

加奈子達はタピオカを買い教室に戻り、机を重ねて4人で話し始める。

「なぁ。高梨。お前、木村のことどう思ってるんだよ?」
「えぇ、いきなりなに?」
「そうそう!加奈子、木村君とどうなの?」
「どーなのって…何もないわよ。」
「ただの幼なじみなのかよ?」
「うーん…。」

そこに模擬店で買ってきたカレーライスを手に、龍が教室に入ってきた。

「4人でなにしてんの?」
「ちょっとね。高梨の好きな人について喋ってたんだよ。」
「ふーん。」

龍は自分の机に座り、カレーライスを食べ始める。

「木村、興味ないのか?」
「………。」
「興味ありありだよねぇ木村君!」
「もう、やめようよみんな!」

加奈子が止めに入るが、3人で龍と加奈子を茶化す。ワイワイしながらも黙々とカレーライスを食べ進める龍。その後も4人で話をするが、話は受験の話へー。

「俺と木村と高梨は東海高校目指してるけどさ、君島と江藤はどこの高校受験するんだよ?」
「私も東海高校だよ?」
「俺は工業高校に行くわ。」
「え!?君島もなのか。江藤は…スポーツ推薦だろ?」
「夏休み中に推薦もらったからな。」
「みんなバラバラになっちゃうよなー。」
「受験も控えてて、毎日塾があるからなかなか遊ぶこともできないよね。」
「まぁな!けど、高校行って俺は彼女作るんだ!な、江藤!」
「作りたいね彼女!」
「高校では絶対彼女作るんだよ!」
「あんた達ほんとモテなかったもんねー。それに比べて甲斐田君と香川君は後輩女子からモテてたもんね。」
「まじかよ!」
「でも、ここに香川振った奴がいるじゃんか。」
「加奈子にはね…決まった男がいるからね。このー!」

ニヤニヤしながら加奈子を肘で突く君島。そんなわけないでしょ!と加奈子が言うと目線に龍が入ってくる。

『木村せんぱーい!』

教室の廊下側を見ると、2年生の女の子が龍を呼んでいる。

「ん?」

振り向く龍。喋っていた4人も振り向く。ドアを開け、龍のところに歩いてくる。目の前に立ち机をバン!と叩き、喋り始めたのは岩本飛鳥。元気の良い2年生で、可愛いと1年生・3年生の間でも話題の女の子。

「木村先輩!脱出ゲーム行きましょ!」
「え?え!うわわちょっと待て!カレーがー」
「いいから行きましょ!終わっちゃいますよ!」

腕を強引に引っ張る岩本。こういう時の女の子の力は強く、そのままずるずる引っ張られ教室の外に連れて行かれた龍。

「な、なんだあれ…。」
「あの子って確か可愛いって田口が言ってた子だよな。」
「あぁ、あの子は可愛い。とてもな。というかなんで木村と…。」
「加奈子。見に行かなくて大丈夫?」
「え!えぇ、大丈夫だよ。」

大丈夫と言うが、下を向く加奈子。

「おい、江藤。ちょっと様子見に行こうぜ。」
「そーだな…ちょっくら見てくるか。」

龍と岩本の後を追う田口と江藤。

「大丈夫加奈子?」
「大丈夫だって…」
「木村君って意外にモテるんだね。」
「あいつはさ、優しいんだよ。」
「あの子とは知り合いなのかな?」
「あの子はね、私たちの幼なじみなの。」
「そうなの?」
「うん。幼稚園の時から一緒だよ。それで、龍のことが好きなんだ。」
「えぇ!?それってやばいじゃん!」

ー岩本は幼稚園のときに引っ越してきた。父親の仕事関係が理由で転入してきたのだが、岩本は生まれつき髪が人より明るい。髪は長く、とても綺麗な髪の毛をしていた。が、それが理由で岩本は、みんなから『変な子』と言われ、クラスに馴染めずいつも泣いていた。みんなが遊んでいても教室の隅っこで1人ポツンと座っていた。

「ねぇねぇ、泣いてるの?」

1人の男の子が、泣いている岩本に声をかけてた。

「ぐすん…」

体育座りからずっと頭を下げたままだった。

「君、最近幼稚園に来た女の子だよね?」
「うん……。」
「なんで泣いてるの?」
「髪の毛が明るいから…」
「お人形さんみたいで可愛いよ!」
「え……?」

顔を上げると、笑っている龍がそこにはいた。

「とっても可愛いよ!いいなぁ。僕もそんな明るい髪にならないかなー?」

コンプレックスだった髪の毛。それを褒められたのは初めてだった。

「ねぇねぇ一緒に遊ばない?」
「…いいの?」
「うん。僕たちの教室においでよ!」

岩本の手を握り、教室に連れて行く龍。その時岩本は、龍の後ろ姿を見てキラキラした人だと思った。
それから岩本は龍のクラスによく行くようになった。家が近所ということもあり、龍や加奈子とは一緒に帰ったり、家に行き来をするようになった。それから自然に変な子とも言われなくなり、岩本が泣くことは無くなった。

ちょっとした昔話を思い出していた加奈子。しかし龍に救われたのは岩本だけじゃなくー

「ねぇってば!加奈子聞いてるの?」
「あ!ごめん…ちょっと考え事してた…」
「もう加奈子って自分のことになると、責任感ないよね!そんなんじゃ木村君、取られちゃうよ!」

そこに帰ってくる、龍と田口と江藤。

「捕まえましたー!」
「捕まえたって悪いことしてるみたいじゃんかよ。」
「さぁ!吐いてもらおうか!あの子との関係性を!」
「ただの幼なじみだよ。高梨と一緒で昔から家が近いんだよ。なぁ高梨?」
「うん…。」
「ちょっと木村君。あなた女心わかってるの?」

キョトンとする龍と2人。

「もういいわ…行きましょ加奈子。」
「う、うん…」

加奈子と君島は教室を出て行く。

「あーあ。嫌われちゃったな木村。」
「なんでだよ。」
「というか何してたんだよ後輩と?」
「いや、脱出ゲームに一緒に行こうって言われてさ…」
「それで、行ったのかよ?」
「入るギリギリで振り切って逃げたよ。そのときにお前らに会ったんじゃん。」
「入ればよかったのに。」
「それは…高梨と約束してて…」
「まさか!だからずっと近くでカレー食べてたの?」
「うん…」
「なんで言わないんだよ!」
「言えるわけないだろ4人で楽しそうにしてるんだから!」

『キーンコーンカーンコーン』

時計を見ると午後の2時。文化祭の終わりをチャイムが告げる。

『チャイムが鳴りましたのでー』

〔しまった…やっちゃった…〕

3年生最後の文化祭はあっという間に幕を閉じた。加奈子との約束を果たすことはできなかったー

文化祭も幕を閉じ、学校を後にする龍。目の前には、帰宅中の加奈子が歩いている。

〔謝ったがいいよな…〕
「お、おい!高梨!」

振り向く加奈子。しかし、歩き始める。

「ちょ、ちょっと待てよ高梨!」

走って加奈子の横まで追いつく龍。それでも歩くスピードは変わらず、歩き続ける加奈子。

「怒ってるのか?」
「…。」
「まさか岩本が来るなんてー」

ピタッと足を止める加奈子。

「?」
「ねぇ。飛鳥ちゃんが来なかったら、私の事誘えてた?」
「それは…。」

口ごもる龍。言い返すことができない。

「…脱出ゲーム、行ったの?」
「行ってないよ。お前との…その…約束したからさ!」
「…。私、楽しみにしてたのに。」
「……ごめん。」
「大丈夫。もう大丈夫だから。」

足早になり、その場から離れたかった加奈子。龍を置いて帰ろうとした。
しかしー

「待てよ!!」

加奈子の左手を握る龍。

「…昔から……お前の大丈夫は、大丈夫じゃないんだよ!」

ドキッとする加奈子。

「あの時だってそうだ!大丈夫って言ってお前だけが辛くなるだろ!そんな…そんなお前は見たくないんだよ!」

加奈子の目から涙がこぼれ落ちる。

「大丈夫じゃねーんだよ!脱出ゲームのことは悪かった。けどな!俺に大丈夫なんて言っても通用しないからな!」
「……。」
「この穴埋めは絶対にする。約束する!必ずするから、そんな顔するな!」
「うん…。」

そういうと、加奈子の手を強く握りなおす龍。ちょっと強引に加奈子を引っ張る。加奈子は右手で涙を吹き、ちょっと照れ臭そうにそのまま手を繋いで歩いて帰った。

〔いつ以来だろう龍と手を握ったの…〕

嬉しくもあり、懐かしくもある。
昔、加奈子の身に起きたことが、頭の中でフラッシュバックしていた。

ー夕方。小学校1年生の時、泥だらけの加奈子がいた。手を強く引っ張って連れて帰った龍。加奈子は前を見れないほど泣きじゃくっていた。精悍な顔つきで力強く加奈子の手を握っていた。
加奈子はどうして泥だらけになったのだろうか。


続く。


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