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新たな関係

162.来客

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部屋を出て、リビングダイニングに向かう。
顔を覗かせると、キッチンにカン君とソファにどっかりと座る師匠と、その隣にレザリック先生。

そして、ダイニングテーブルに、知らない方が2人。

茶色の前髪で目が隠れそうな、線が細い眼鏡の男性と。
赤髪リーゼントの偉丈夫。師匠くらいの体格の良さだ。

眼鏡の男性は白鎧、赤髪リーゼントさんは黒鎧。
あのデザインは、騎士団の人だろうか。


「あ、リンさん。」


一番遠くにいるのに、真っ先に気づいたカン君が声を上げた。


「お、起きたか。」

「おはよう。休めたかい?」


師匠とレザ先生も、声をかけてくれる。
私は軽く頭を下げた。


「はい。おかげさまで。寝坊ですみません。」

「もうちょい寝てたかっただろうに、押しかけてごめんね?」


気遣ってくれるレザ先生に、私は少し首を横に振ると、本題であろう騎士の方々を見遣る。

すると、2人共に無駄の無い動きで立ち上がった。

間髪を入れず、師匠が口を開く。


「察してるとは思うが、この領の騎士団の団長と、第4部隊の部隊長だ。」


わぁ。お偉さん方が出てきた。
す、と赤髪リーゼントさんが席を離れ、前に出る。大っきいな。


「ファルコ領騎士団団長、アイザック=ファルコ、と申します。この度は、当騎士団の馬鹿共の所為で、多大な迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ない。」


そう言って、団長さんは深々と頭を下げた。躊躇いないその動きが潔くて、少しビックリする。


「第4部隊部隊長のスミス=ローマンと申します。今回の騒動は、当部隊の騎士達の行動を制御できなかった自分の責任です。大変申し訳ありませんでした。」


こちらも、深々と頭を下げる。
その様子に、嘘偽りがないんだろうな、と直感で思う。
グリオさんの話を聞いて、この人は部下を大事に考えるタイプの人なんだろうと思っていたし。部下の失態は、自分の責任だと、覚悟してるんだろう。

思わず、す、と背筋が伸びた。
職務に真っ当であろうとする彼らには、最大限の敬意を。


「『グレイハウンド』所属、B級ライセンス冒険者のリンと申します。辺境の地にまで、わざわざご足労頂きまして、ありがとうございます。」


商業ギルドのレインさん程洗練された動きはできないけど、それなりの格好でお辞儀をする。

顔を上げると、団長さんと部隊長さんは、キョトン、とした顔をしていた。
驚きと戸惑い、そんな感じ。

その様子に、師匠とレザ先生がくすくすと笑う。


「罵倒されると覚悟してきたのに、そんな対応されると、ビックリするよね?」

「リンもカンも、それが標準仕様だからな。」

「あ、あぁ。・・・その、冒険者は血の気が多い者が大半だから・・・寧ろ、ウチの団員よりも礼儀正し過ぎて驚いてしまいました。大変申し訳ない。」


バツが悪そうに、頭を掻く団長さん。
思わず、くす、と笑ってしまう。


「いえ、お気になさらず。それで、御二方が此方にいらっしゃるということは?」

「はい、謝罪及び、これまでの経緯と、今回問題を起こした者達の処遇についてのご報告を。」


部隊長さんが、緊張の面持ちで伝える。それに続けて、団長さんが話す。


「あと・・・昨日、貴女を襲ったあの2人について、何か変な事は言ってなかったか、貴女のお話を伺いたいのですよ。」


成る程。被害者からの供述を取りたいと言うことか。

まあ、私の方も腕輪の事とか、『戦乙女ヴァルキリー』の事、別な国の話とか気になる事が沢山あるから。
騎士団の方々と直接話ができるのは良い機会かもしれない。
あの場にいたカン君も居るし、この世界に詳しい師匠もレザ先生も同席してくれるなら、一人で考えるよりは良いのかも。


「分かりました。私も気になる事がありますので、お話させて下さい。」


ぺこり、と頭を下げた。
キッチンから、カップの乗るトレイを持ったカン君が声をかける。


「とりあえず、皆さん座りましょう?」


その声に促され、私たちは、ダイニングテーブルの席に着き。
師匠とレザ先生が、ソファでそれを聞く、という状態になった。



カン君の淹れてくれた紅茶は、ミントの香りが仄かにする。
少し寝ぼけた頭がスッキリする。


「先ずは、今回のニースの森での一件。精神干渉を受けた騎士達を保護して頂き、ありがとうございました。」


団長さんと部隊長さんが揃って頭を下げる。


「あ・・・皆さん大丈夫だったんですか?」

「はい。48名全員が確保され、腕輪も外して頂きました。」


涙を浮かべ、部隊長さんが答える。
私は思わず、カン君を見た。


「リンさんとイズマさんが保護してくれた30名も、集落にいた18名も、無事ですよ?レザ先生と、俺で、腕輪も外せました。」


良かった。
ほ、と深く息を吐く。


「あ、集落のみんなは?」

「みんなも大丈夫。もうコッチに戻って来てますよ。」

「わ、荷物返さなきゃ。私が預かってるのいっぱいあるのに。」


ちょっと慌てると、くす、とカン君に笑われた。


「大丈夫ですよ。みんなリンさんが落ち着いてからでいいって言ってくれてましたから。」

「あ、山火事・・・」

「イズマさん、ベネリさん、コウさんに集落の皆さん達が確認に行ってます。見た目は鎮火してますから、燻ってる火種がないか、最終確認ですね。」


ぽんぽんと、私の疑問を解消してくれるカン君。


「話が終わったら、様子見に行きましょ?」


にこ、と、微笑んでカン君は伝えてくれる。
色々ほっとして、私は小さく頷いた。


こほ、と小さく咳払いが聞こえ、前を見ると、団長さん達が困ったような顔をしていた。


「あ、すみません。」

「いえ、守護役なのですから、森の事の方が気になりますよね?なるべく早く終わらせましょう。」


そう言うと、部隊長さんは微笑んでくれた。

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