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脅威との遭遇
202.探索開始だけど
しおりを挟む今回の指名依頼を受けた全員が出張所に揃ったところで、ザイルさんから説明がある。
イグバイパーの異常発生が、別な脅威の出現により引き起こされた可能性。
調査範囲は、ルイジアンナ近くから広がる森林地帯。とりあえず直径5キロ範囲。
それぞれ、1キロの幅を受け持つ。
クラスAパーティーは、両端に。
クラスBパーティーは、中央側に。
なるべく戦闘は避けて問題ない。
クラスBパーティーは、イグバイパーなどのクラスA魔獣は無理に手を出さない。
クラスA魔獣から逃れられない場合は、信号弾を撃ち、近くにいる『旅馬車』か『猟犬』が救援に向かう。その際残るクラスBパーティーは即撤退することとされた。
クラスBの3パーティーは、みんなそれぞれに気の良いメンバーだった。
仕事がしやすそうで、少しホッとする。
調査範囲並び順は、進行方向左手より、
『猟犬』
『朧梟』
『蒼穹の剣』
『影猿』
『旅馬車』
となった。
緊急時用信号弾数個と、伝書鳥用の紙を数枚渡され、パーティー達はそれぞれ出発する事となった。
***
「・・・そう考えるとさ、レシーバーみたいな通信手段が欲しくなるよねぇ?伝書鳥があって、記録用魔道具もあるから、電話やトランシーバー的な物があってもよさそうだけど、無い物なの?」
森の中を突き進みながら、私はこーくんに尋ねる。
「うん。そこまでの魔道具開発には至っていないのが現状だね。せめて、2機間だけでやりとりできる、トランシーバーみたいなモノでも出来ないかなとは思うけど。なかなか、術式がねぇ。」
「そうですか・・・あ。」
「ん?何かいた?」
「いえ・・・」
もご・・・と、カン君が言い澱む。
ハッキリしないのは、珍しい。
「どうかした?」
「いや・・・その・・・トランシーバー、作れる、かも。」
「「は?」」
私とこーくんは、思わず足を止め、カン君を見た。
「ちょ、どゆこと?」
「・・・鑑定さんが、暴走してる感が満載です。」
「え?何それ。」
カン君が言うには、トランシーバーを思い浮かべた途端に、頭の中に構造が浮かんだと。
動力は魔石。それに付与する術式でが指示された、らしい。
向こうから持ってきたモノではなく、こちらにあるモノで作る事が可能なのは理解したが。
「ちょっと、待って?」
私は、はたと思い立ち、カン君に鑑定をかけた。
================
名前:カン(神凪 葵)
年齢:19
性別:男
種族:人間
職業:A級ライセンス冒険者・魔導師
犯罪歴:なし
スキル:採取・複製・解体・調合・料理・魔法錬成・魔道具作成
職業スキル:採取者・薬師・守護戦士(仮)・治療師・魔工技師
魔力:全適性
================
あ、誕生日過ぎてる。歳が1つ重ねてるわ。
それはさておき。
「・・・なんか、スキルがいっぱい生えてる。そんでもって表示の仕方が変わってる。職業スキル、凄くね?」
「え?あ、マジで?う、わ。」
カン君も慌てて自分に鑑定をかけて、吃驚している。
以前は、職業の欄に薬師やら採取者やら、羅列されていた筈が、「職業スキル」という新たな欄が出来、そちらに移っている。
どうやら、職業欄は、現在付いている職業が記載されるよう。
職業スキル欄は、力を展開できる職業が記載されるようだ。
にしても、後天的なスキル酷くないか、こりゃ。
「ん?どーゆーこと?」
「こーくんの鑑定で、見る事は出来ないのかな?」
こーくんに聞けば、やはり他人の鑑定は、名前から職業までしか見えないとのこと。因みにこーくんから見て「A級ライセンス冒険者・魔導師」と記載され、その他の職業スキルは見えないらしい。もちろんスキルもだ。
《迷い人》の私たちとは、やはり鑑定さんの仕様が違うみたいだ。
私は、空間収納からメモ帳を取り出し、見えた結果を書き留める。
それを見たこーくんが唖然とした。
「・・・これ、ないわ。ないわー。」
大事な事だから、2回言った?
眉間を押さえていたこーくんは、顔を上げる。
「魔工技師って、かなりレア職なんだよなー。この国でも、数人しかいない。彼らが魔道具の基礎作りをするんだよ。それを、分解構成して、量産化しているのが現状。カン・・・ヤバイわ。バレたら君も囲い込みかかるわ。」
「うわぁ・・・」
そして、ふと気づく。
何だろうこの(仮)は。
「何だろ、守護戦士(仮)って」
「・・・盾役途中でやめたからじゃないっスかね?」
「それか。」
つまりは、本人が途中まで齧った職業は(仮)になる、という事だろうか。
ふむ、と考えていると、こーくんから声がかかる。
「鈴は?」
「私?えーと?」
恐る恐る鑑定さんにお出まし願う。
================
名前:リン(佐伯 鈴)
年齢:20
性別:女
種族:人間
職業:A級ライセンス冒険者・銃剣闘士
犯罪歴:なし
スキル:狩猟・解体・採取・調合・料理・魔法錬成
職業スキル:採取者・狩人・狙撃手・薬師・料理人・戦乙女
魔力:全適性
================
「・・・銃剣闘士、って。なんか・・・無理矢理当てはめた感満載。」
「はは、最初からアウト。言っておくけど、この世界には、そんな職ないからね。」
「ですよねー。でも、これ以外に書きようないよねー。」
あはは、と乾いた笑いを返せば、こーくんがますます頭を抱える。
そして。
書き留めながら、嫌な文字を見つける。
「職業スキルに『戦乙女』の記載があるのが解せない。何でやねん。」
「スキル効果はわかるの?」
「そこまでは教えてくれないみたい。」
こーくんの質問に、ふるふると首を振った。
やだなぁ、このフラグ。
「とりあえず、職業スキルから得たスキルは、職業についてなくても使えるって事で良いのかな?これ。」
「まぁ、スキル使うときに、職業に就いていたら、ボーナスがあるとか、そんなんじゃない?ゲームなんかの仕様ならさ?」
あ、だんだんこーくんが投げやり。
はぁ、と溜息を吐いた彼は、私を見る。
「・・・ね、僕はどう読み解かれてるの?」
「ん。見てみるね?」
================
名前:コウラル=チェスター
年齢:22
性別:男
種族:人間(転生者)
職業:A級ライセンス冒険者・魔法剣士
犯罪歴:なし
スキル:魔法錬成・解体・採取・料理
職業スキル:狩人・弓師・闘剣士・薬師(仮)・治療師(仮)
魔力:風・光・無属性
>>>
================
とりあえず書き留めて、こーくんに渡す。見た瞬間、やっぱり頭を抱えた。
「・・・自分で見るものより精査されてんのが、解せぬ。」
こーくんが自分で見る表示には、
【職業:A級ライセンス冒険者・魔法剣士・闘剣士】
となっており、
私達が見た、職業スキルにある【狩人・弓師・薬師(仮)・治療師(仮)】は載っていないとの事。
また、犯罪歴も、魔力も、そして(転生者)も見えないと。
鑑定さんのネタバレ感がヒドイです。
そして何だろ、この『>>>』
私がソコに意識を向けると、新たにウィンドウが開いた。
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<<<
コウラル=チェスター
モースバーグ国、ファルコ領出身
チェスター子爵家三男。
国立学園騎士科158期首席卒業生
学園在籍中より、周囲の目を盗んで冒険者ギルド・ミッドランド支部所属冒険者として、『英雄』ファーマスに師事し、業務に従事。
卒業と同時に本格稼働、同時にA級ライセンス昇格試験突破。
冒険者登録後、2年でのA級ライセンス昇格は当時の最速記録。
転生者であり、転生前の『佐伯康平』は、『佐伯鈴』の夫である。
『鈴』と一緒に居られるのが嬉しいようで、ただ今はっちゃけ溺愛中。
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・・・ねぇ、鑑定さん。
その情報は、誰得なんだい?
応援ありがとうございます!
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