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脅威との遭遇

209.討伐開始〜ひと狩り行こうぜ!

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「・・・にしても、まぁ、人誑しは健在だなぁ。」

「ん?なんか言った?」


先行していた2人に追いつくと、溜息を吐きながらこーくんが何事かを呟いた。


「うんにゃ。何でもないよ?さて、と。そろそろ行こうか?」


こーくんが、ふい、と顔を向ける先には、目の前から獲物が消えて、怒っている劣竜種レッサードラゴン

ジェリさんたちが居た場所のすぐ近くに倒れていた盗っ人冒険者を、その前足で踏み付けていく。


「あー・・・アレ、ほっといていいの?」


劣竜種レッサードラゴンが進む先には、冒険者が3名。
なんだかんだで大騒ぎ中だ。


「僕としては、ほっといて良いと思ってるよ?依頼を受けた訳でもなく、勝手にココに来て。戦場を引っ掻き回したんだ。協力者である、『影猿シャドウモンキー』のメンバーも、危険にさらされたしね。助ける義理はない。」


こーくんは、バッサリと切り捨てる。


「それに、あの女性冒険者達は、ギルドでリンとカンに絡んでいた奴らでしょ?義理立てする必要ある?冒険者は、自己責任だ。こうなってるのも自業自得だよ。」


笑顔だけど、目が笑っていない。
淡々と告げるこーくんを見て、ふと昔を思い出した。



地元特産食材を使った加工品開発の仕事で、みんなで色々と頑張っていたのに、開発メンバーだった農家さんが、他町にリークして。
他町も、同じ食材が特産で、先にそっちで製品化したから、ウチのモノが出せなくなってしまった。

その後、ボツになった案を見直して。
地元の商業高校にも協力してもらって、別な加工品を作り上げた。
その加工品がSNS関係で盛り上がって。ふるさと納税が騒がれるようになった頃だったのもあって話題になり。商業高校にテレビや新聞の取材が入ったりする様になって、結構町が盛り上がるようになった。

その後、バツが悪そうにやってきた例の農家さんを、彼は笑顔でバッサリと切り捨てた。慈悲も何もなく。
無論、通常の農家への支援はする。役場だし、私念で動くわけにはいかないから。
でもそれ以外の点・・・プロジェクトだったり、イベントだったり。その参加や発言権を、とことん排除していった。

温和で柔和なイメージの彼の印象が、ガラリと変わるくらい。
・・・課長がビビってたもんなぁ。
アレから、『佐伯は絶対怒らせるな』ってお達しが出るくらいに。

あの時の目と一緒・・・というか、綺麗な顔立ちの所為で、昔よりも凄みが増している。



「こーくん・・・」

「ねぇ鈴。助けてどうするの?助けた所で、あんな輩はまた同じ事を繰り返すんだ。利用価値もない。」


感情を削ぎ落とした様な冷たい声で吐き捨てた言葉に、ふるふると、私は首を振る。


「・・・別に、助けたい訳じゃないよ。私だって、聖人君子じゃないし。ただ、目の前で喰われるのを観ているのが気分が悪いだけ。どうせ死ぬなら、私の見えないところで勝手にくたばってて欲しい。」


きょとん、とした顔で、私を見つめるこーくん。
思わず顔を伏せてしまった。


・・・そう、これは私の我儘。

既に死んでる者を見るのは仕方がないと思えるけど。
まだ生きている人間が、自分の目の前で死ぬのを見るのは、なんか・・・嫌だ。
どんなに腹が立った相手だったとしも、『くたばれ』と思っていたとしても、命が刈られるのを目の前で見て、『ざまぁみろ』と平然としていられる程、私は強くはない。

私は、人を殺す覚悟が、無いから。

命の価値が低く見えてしまうこの世界だけど。
だからと言って・・・


伏せていた顔を上げると、こーくんは困った様な顔をして私を見ている。

すると、隣で黙って話を聞いていたカン君が笑い出した。


「はは・・・分かりました。とりあえずお2人は、冒険者アレを気にせず、劣竜種レッサードラゴンを相手して下さい。普通に討伐クエストですよ?」


にま、と糸目をさらに細めて笑うカン君。


「・・・冒険者アレは、俺が相手しとくっス。後方支援として、2人の戦いに邪魔にならないようにしときますから、ね?行きましょ?」

「・・・何、するの?」

「え?別に・・・何もしねっスよ?ポーションくらい売りつけて、この場から立ち去って貰うくらいで。ですから、2人は思いっきり、劣竜種レッサードラゴン相手にして下さい。【 保護プロテクト 】【 魔盾シールド 】【 迅速ヘイスト 】【 攻撃倍加ダブルアタック 】っ!」

「ん。じゃ、リン行こう。」

「う、うん。」


誤魔化すように支援魔法をかけていくカン君の態度に、何処か釈然としない気持ちのまま、私は銃剣相棒を取り出して、土属性と氷属性の弾を込めた。

崖下を見ると、劣竜種レッサードラゴンが冒険者達に襲いかかろうとしていた。

銃剣相棒を構え、魔力を込めて、劣竜種レッサードラゴンの眼に狙いを定める。


「行けっ!」


ダァン!!




ーーー グギャァァァァァ!!




高速の石飛礫を片目に食らった劣竜種レッサードラゴンは、凄まじい咆哮を上げ首を持ち上げる。

その瞬間、銃声と共に崖下へ降りていたこーくんが、風魔法を纏い、右前足を切りつけていく。

痛みからなのか、劣竜種レッサードラゴンは、咆哮を上げながら暴れ始めた。


ーーー こうして、私達『旅馬車トラベリン・バス』と、劣竜種レッサードラゴンの戦いが始まった。



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