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モースバーグ国横断、1/3の夢旅人
297.1/3の夢旅人 其の八
しおりを挟む「相談?」
「はい。」
「リン!母上の戯言など真に受けなくていい!」
私の目の前で、可愛らしく、こてん、と首を傾げた子爵夫人。
私の後ろでは、こーくんが、語気を荒げる。
私は思わず、はぁ、と溜息をついて、こーくんに振り返る。
「こーくん、戯言じゃないよ?私だって、メイア夫人の疑問は考えつくもん。それが問題ないって胸張って言えなかったら、私も自分自身を守れない。だから、仮説と検証、証明が必要じゃない?」
「だからって・・・」
「私的には、私情が入らない第三者を介した検証が必要と考えてるけど・・・メイア様、ご協力頂けますか?」
「ん。わかったわよ?ちゃんと考えてるようで安心だわ。何でも囲っときゃぁいいって愚息と違って、ねぇ。・・・貴方がたの出発は、午後なのよね?その前に神殿にも寄るのでしょう?じゃ、サッサと朝ご飯食べて、検証しないと。話は食べながら聞くわね?」
「おや、何だか我が妻が滾ってるねぇ?みんなおはよう。」
「父上・・・」
「あ、おはようございます。」
「丁度いいわ、グレイド。貴方も検証に加わって。」
「うん?よく分からないけど、いいよ?」
・・・よく分からないのに、いいんだ。
いつの間にか、のほーん、と現れたチェスター子爵は、ゆるーい感じで、子爵夫人がやる事に是の意思を示す。
あんまり気にして感じていなかったのだけど、しっかりと魔力の気配探知すると、チェスター子爵の周りからは、子爵夫人の魔力気配である、太陽のような力強い熱さを感じる。
逆に子爵夫人の周りからは、チェスター子爵の魔力気配の、静謐な森林の中に居る様な凛とした涼やかさを感じる。
真逆なのに、しっくりと馴染んでいるのが分かる。
この2人は、本当に信頼しあって仲良しなんだなぁ、と、眩しく見えた。
「ささ、先ずはご飯よ!」
子爵夫人の勢いに押されるがまま、私達は席に着き、給仕される朝食に手をつけた。
*
食事をとりながらの会話は、マナーとしてはよろしくないのだろうが。
ホスト側である子爵夫人がたが率先して話してくれているので、気を使わずに済むのがありがたい。
とりあえずは、私の魔力の捉え方がどうも人とは違う、という点を伝えた。
また、私が人に生活魔法を向けたらヤバい事になることも。
ヒルデ嬢の一件で捕まった破落戸達の事は、子爵夫妻も知っていたので、その裏での出来事(【 乾燥 】をぶっ放して悶絶させた)を伝えたら、すんごい顔されてしまった。
・・・うん、朝食会場で話す話題でもないね。
「・・・つまりは、魔力の捉え方が違うから、一般的な反応が難しいのと、魔力量が膨大故に、時々制御が甘くて垂れ流すから、変なのが寄ってくんのねぇ?捉え方の違いの所為で、意図せず相手の魔力の根幹に触れられる、かぁ。そして、受け取り方も違う可能性、ね。」
「はい。異国の人間だからかとも思いましたが、同郷であるカン君はそんなことありませんし・・・私だけの問題なのだと思います。ですから、そんな状態でも『残滓が付くのは相性である』という条件が成り立てば問題は無いのかと。あと、一つ気になる点もあるので・・・」
「気になる点?」
「それを検証で確認させていただきたいな、と。」
「ふぅん・・・分かったわ。でも、使用人と言えども誰彼が相手になるのは嫌でしょ?そうねぇ・・・私とグレイド、それに、ダーヴィ辺りでも良いかしら。貴方、それで良い?」
「ん?良いんじゃないかな。勿論リンさんが、嫌でなければだけど。」
「大丈夫です。寧ろお手数をおかけして申し訳ありません。」
「ちょ、リンっ!母上は兎も角、2人はっ!」
さくさくと、私と子爵夫人で話を進めていたら、慌てた様子で、こーくんが意を唱える。
「こーくん、大丈夫だよ?色々急ぐ必要もあるワケだし。ゴメンね、もっと早くにやっておくべきだったね。」
「でもっ。」
「コウラル、貴方煩い。妻が、身の潔白証明すんのに体張るって言ってんの。黙ってなさい。」
心配と嫉妬の混じる表情のこーくんを、ギロリと子爵夫人が睨み、黙らせる。
ちらりと周りを見渡せば、チェスター子爵と、家令のダーヴィさんが、少し困り顔をしていた。
師匠・・・じゃなかった、ファーマスさんは、若干の呆れ顔で、食後の紅茶を飲んでいた。
カン君は、食事を食べ終え、何かメモを取り出し、一心不乱に書き留めている。
・・・うん、この場が無礼講状態とは言え、それはやり過ぎじゃないかな?
「まぁまぁ、メイア。そう言ってやるんじゃない。実父とはいえ、ね、思う所はあるのは仕方がないよ?僕だってホントは、君がファーマス殿と手合わせ時は、嫌なんだから。チェスターの男はそんなもんだって、君が1番分かってるじゃないか。」
「えぇ、まぁ・・・」
「だから、さっさと終わらせてしまおうね?」
ぐ、と息を飲む母と三男。
流石父親。扱いを心得てらっしゃる。
いつの間にか、チェスター子爵の仕切りで朝食を切り上げて、応接間へと移ることとした。
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