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異世界からの洗礼
しおりを挟むハッ!!と目を覚ましたDDは、どうやら夜の森の中にいるらしい。
「……トイレには…本当にキレイな女神様がいるんやなぁ…。
…たま子ではなく花子だったということか…。
いや、そうじゃない。
…夜の森か。面倒だな…。」
「花子でもないです。」と言う空耳が聞こえた気がしながらユックリと身体を起こして周囲の気配を探る。
懐にケラウノスの存在も確認し、すっと抜き取って構えながら立ち上がると周囲の散策を始めるべく歩き出しつつ銃に向かって小声で話しかける。
「おい、聞こえてるか?」
「聞こえている、マスターよ。遠くにいくつかの反応が有る。
大型、中型程度の獣のようである。人型種の様なものは近くに感じられない。」
月と同じような天体もあるようだ。それに照らされて多少は目が効く。問題は、今が夜のウチのどの辺なのか…どれほどの長さ続くのか。進むべきか、明けるまで待つべきか…?
暫く留まっていたが直感と多少の好奇心に負け、気配の探知はケラウノスに任せて動くこととし、体内時計で1時間程度だろうか…戻る場所一点を決めて歩き回ると、獣道というには少し人の手が入ったと見える小道を見つけた。
「人が通るようだな…。
…そういえば、お前は何が出来るんだ?
ただのおしゃべりな銃として使っていたが…。
ララ子から受け取った時には何か色々出来る様な事を言っていた気がするが?
自分の銃とユックリ話す…というのもおかしな話だが、
そんなヒマもなかったからな…。」
少し照れくさそうに目を背け、銃身で頭をコツコツと叩きながらどれ程か判らない時間を共に過ごす事になったパートナーの力量を問う。
「マスターに合わせて銃という形態をとっているが、本来は雷霆そのものである。
杖や矢、短剣程度の武具の形態を取ることも可能であるが…
我は今の形に満足している。
今している様に気配の探知や小さな魔法の様なことも出来はするが、
大きな霊力を必要とするため、使い手が人間である場合は推奨しかねる。」
DDは左右に道の奥をながめた。
「例えばこの辺りの地形や人里までの距離などは調べられるか?」
「今後の事も考えると今は霊力を温存すべきであると考えるが…
数キロ程度であれば問題はなさそうである。」
「じゅうぶんだ。
道が在るなら何かしら手掛かりはあるだろう。頼む、相棒。」
一瞬、銃身がキラっと輝き少し間を置くと…
「任せるといい、マスター!」
「DDだ。お前は?」
「了解、DD。
あの天使は我の事をケラちゃんと呼んでいた。ケラで構わない。
では頭上に向かって引き金を引いてくれ。」
「語呂が悪いな、ケラウと呼ぼう。」
そう言うとDDは銃を空に向けて引き金を引いた。銃口周辺に小さな魔方陣のようなものが展開され、その中心を一筋の光が貫いて伸びてゆくと一瞬だけ辺りを照らして消えた。
「どうだ?」
「分析完了。
まず右に進めば三キロ程で川に出る。
流れは穏やかではあるが、それを渡った先には獣道程度の道しかない。
左に進めば二キロ程先に館が一つ。その先は崖になっている。
引き返して森を進めば検知ギリギリ…四~五キロ程度で拓けた場所に出るが…。」
「…人里に出るとは限らない…か。
この森にどんな生き物が居るかも知れん以上は危険だな。
選択肢は一つ。その館を訪ねよう。
変わった場所にあるとはいえ、人はいるのだろうし…。
敵意を見せなければいきなり襲いかかってくる事もないだろう。
あとは吸血鬼の館でない事を祈ろうか。」
「妥当である。
吸血鬼の館であれば寧ろ神具である我が有効。
一瞬で我が灰にしてやるのである。」
「はは…そうだったな。
じゃ、道中も引き続き警戒を頼む、ケラウ。」
「了解、DD。」
機械的な口調のままではあるが、どことなく少し嬉しそうに返事を返す銃を構えて館があるという方向へと歩きだした。暫く進むとだんだんと道も太くなり、手入れも行き届いた風である。
更に進むと大きな門が見えてくるが門扉は開いたままになっている。中に入れば少し離れて三階建ての立派な洋館があり、カーテンは閉まっているが窓の一つに明かりが灯っている。
通れるとは言えそのまま入ったのであれば、ただの不法侵入者だ。この世界の常識がどうであるのかは解らないが…念を押して間違いはないだろう。
「この先に人の反応は?」
「…悪意は感じられないが、強力な結界のようなものがあって探れないのである…。
十分な警戒を。」
DDはすぐに抜ける様にケラウを懐にしまい、両手を挙げて声をかける。
「こんな時間にすまない!道に迷っている!
何もするつもりは無いから夜明けまで滞在させてもらいたい!
…出来れば少し話を…。」
暫くすると、明かりの灯る窓に人影が現れ、両手を挙げたままのDDを見て片手をあげた。
…物音はおろか、気配も感じなかった。
DDはプロの、しかも世界でトップを争う程の殺し屋である。しかもケラウという神具まで持っている。
その彼の耳元で背後から声がした。
「失礼致します。」
同時に全身に痛みが走り、気を失う瞬間まで彼は自分が背後を取られた事に気がつかなかった。
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