死なずのお嬢と絶殺の殺し屋さん

FM

文字の大きさ
3 / 5

異世界からの洗礼

しおりを挟む
 

 ハッ!!と目を覚ましたDDは、どうやら夜の森の中にいるらしい。



「……トイレには…本当にキレイな女神様がいるんやなぁ…。

 …たま子ではなく花子だったということか…。

 いや、そうじゃない。

 …夜の森か。面倒だな…。」



 「花子でもないです。」と言う空耳が聞こえた気がしながらユックリと身体を起こして周囲の気配を探る。

懐にケラウノスの存在も確認し、すっと抜き取って構えながら立ち上がると周囲の散策を始めるべく歩き出しつつ銃に向かって小声で話しかける。



「おい、聞こえてるか?」



「聞こえている、マスターよ。遠くにいくつかの反応が有る。

 大型、中型程度の獣のようである。人型種の様なものは近くに感じられない。」



 月と同じような天体もあるようだ。それに照らされて多少は目が効く。問題は、今が夜のウチのどの辺なのか…どれほどの長さ続くのか。進むべきか、明けるまで待つべきか…?

暫く留まっていたが直感と多少の好奇心に負け、気配の探知はケラウノスに任せて動くこととし、体内時計で1時間程度だろうか…戻る場所一点を決めて歩き回ると、獣道というには少し人の手が入ったと見える小道を見つけた。



「人が通るようだな…。

 …そういえば、お前は何が出来るんだ?

 ただのおしゃべりな銃として使っていたが…。

 ララ子から受け取った時には何か色々出来る様な事を言っていた気がするが?

 自分の銃とユックリ話す…というのもおかしな話だが、

 そんなヒマもなかったからな…。」



 少し照れくさそうに目を背け、銃身で頭をコツコツと叩きながらどれ程か判らない時間を共に過ごす事になったパートナーの力量を問う。



「マスターに合わせて銃という形態をとっているが、本来は雷霆そのものである。

 杖や矢、短剣程度の武具の形態を取ることも可能であるが…

 我は今の形に満足している。

 今している様に気配の探知や小さな魔法の様なことも出来はするが、

 大きな霊力を必要とするため、使い手が人間である場合は推奨しかねる。」



 DDは左右に道の奥をながめた。



「例えばこの辺りの地形や人里までの距離などは調べられるか?」



「今後の事も考えると今は霊力を温存すべきであると考えるが…

 数キロ程度であれば問題はなさそうである。」



「じゅうぶんだ。

 道が在るなら何かしら手掛かりはあるだろう。頼む、相棒。」



 一瞬、銃身がキラっと輝き少し間を置くと…



「任せるといい、マスター!」



「DDだ。お前は?」



「了解、DD。

 あの天使は我の事をケラちゃんと呼んでいた。ケラで構わない。

 では頭上に向かって引き金を引いてくれ。」



「語呂が悪いな、ケラウと呼ぼう。」



 そう言うとDDは銃を空に向けて引き金を引いた。銃口周辺に小さな魔方陣のようなものが展開され、その中心を一筋の光が貫いて伸びてゆくと一瞬だけ辺りを照らして消えた。



「どうだ?」



「分析完了。

 まず右に進めば三キロ程で川に出る。

 流れは穏やかではあるが、それを渡った先には獣道程度の道しかない。

 左に進めば二キロ程先に館が一つ。その先は崖になっている。

 引き返して森を進めば検知ギリギリ…四~五キロ程度で拓けた場所に出るが…。」



「…人里に出るとは限らない…か。

 この森にどんな生き物が居るかも知れん以上は危険だな。

 選択肢は一つ。その館を訪ねよう。

 変わった場所にあるとはいえ、人はいるのだろうし…。

 敵意を見せなければいきなり襲いかかってくる事もないだろう。

 あとは吸血鬼の館でない事を祈ろうか。」



「妥当である。

 吸血鬼の館であれば寧ろ神具である我が有効。

 一瞬で我が灰にしてやるのである。」



「はは…そうだったな。

 じゃ、道中も引き続き警戒を頼む、ケラウ。」



「了解、DD。」



 機械的な口調のままではあるが、どことなく少し嬉しそうに返事を返す銃を構えて館があるという方向へと歩きだした。暫く進むとだんだんと道も太くなり、手入れも行き届いた風である。

更に進むと大きな門が見えてくるが門扉は開いたままになっている。中に入れば少し離れて三階建ての立派な洋館があり、カーテンは閉まっているが窓の一つに明かりが灯っている。

 通れるとは言えそのまま入ったのであれば、ただの不法侵入者だ。この世界の常識がどうであるのかは解らないが…念を押して間違いはないだろう。



「この先に人の反応は?」



「…悪意は感じられないが、強力な結界のようなものがあって探れないのである…。   

 十分な警戒を。」



 DDはすぐに抜ける様にケラウを懐にしまい、両手を挙げて声をかける。



「こんな時間にすまない!道に迷っている!

 何もするつもりは無いから夜明けまで滞在させてもらいたい!

 …出来れば少し話を…。」



暫くすると、明かりの灯る窓に人影が現れ、両手を挙げたままのDDを見て片手をあげた。



 …物音はおろか、気配も感じなかった。

 DDはプロの、しかも世界でトップを争う程の殺し屋である。しかもケラウという神具まで持っている。

その彼の耳元で背後から声がした。



「失礼致します。」



同時に全身に痛みが走り、気を失う瞬間まで彼は自分が背後を取られた事に気がつかなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...