五感王国勇者物語

あふ

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第1章 アレク村からタタンタルク

長老様と剣

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「長老様っっ!」

俺は村の集会所で長老様を探した。

「わしはここじゃぞ」

にこやかな笑みを浮かべて奥から長老様が出てきた。

「して、カルロスよ。何か用かのう?」
「長老様、お願いです!俺に力を与えてください!」
「きちんと、最初から話すのじゃカルロス。」
「…父が、見つかったんです。」
「ほお、グルモアが」
「はい…、父が見つかったのは昔廃国となったシグリアス。」
「シグリアスとな、それはまた随分と…」
「父は、戻ってこないつもりらしいけど…。でも、俺は納得いきません!!」
「なぜ、納得いかぬのだ?」

長老様は心底不思議そうな顔をした。

「グルモアが戻らぬと言ったのであろう?なぜそれで納得がいかぬ?」
「それは確かにそうですが…」

俺は、息を吸い込んだ。

「もし父が帰ってこないなら、それでいいんです。でも、一度きちんと話したい。…このまま話さずにずっと家で待ち続けるなんて俺には耐えられません。」
「…なるほどな。そこまで考えていたとは、わしはどうやらお前をみくびっていたようじゃ。…よかろう。お前に力を授けよう。」
「長老様…!!あ、ありがとうございます!!」

長老様は一旦奥に行き、またすぐ戻ってきた。

「これはこの村に大昔から伝わる剣じゃ。これを持てカルロス。」
「はい…い゛っ!?」

その剣はとても重く、まるで俺を拒むかのように光り輝いていた。

「その剣も持てぬくらいなら、旅になど出ないほうがよい。村の外はそれほど危険なのだ。」

俺は目を閉じる。

剣が重いんじゃない。俺の覚悟が足りないんだ。俺を拒んでいるんじゃない。心のどこかで俺が拒んでいるんだ。

さあ、覚悟を決めろカルロス。

俺はもう一度剣を握りしめた。

「よっ…と!」

一度目とは比べ物にならないくらいその剣は軽かった。

「持てたのじゃな。ふふ、お前ならきっと持ち上げると思うておったわ。」
「長老様。俺、行ってきます…」
「ああ、気をつけてな。」

俺は長老様に背を向け、集会場を後にした。
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