竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件

一 葵

文字の大きさ
13 / 129
冒険者と鍛冶師

武具街に行こう

しおりを挟む
「ねぇ……そういえばいつまでそれ使ってるのぉ……?」

 オーガとの戦闘から一週間が過ぎたある日。久々に手が空いたということでダルナさんに訓練をつけてもらっていると、突然こちらを指さしてそんなことを言い出した。

「それって……どれです?」
「その刀と装備だよぉ……それ最初にあげたやつでしょぉ……? ギルドに有り余ってる支給品だからぶっちゃけ安物だよぉ……」

 そう言って身に着けている刀と革の装備を指さし、不思議そうに言ってきた。

「そういえば……なんででしょうか?」

 まああれからしばらく動けなかったり、リハビリがてら簡単な任務幾つかこなしてたから暇もなかったってのはあるなぁ。

「僕に聞かれてもねぇ……いい機会だから一式買い替えちゃえばぁ……? ここ最近任務ちょっとこなしてたんでしょお……報酬金もそんな使ってないみたいだしぃ……」
「そうですね……ところで、そういうのってどこで買えるんですか?」
「まあギルド内にも売ってはいるけどぉ……せっかくだから……武具街行ってみようかぁ……」
「武具街?」



          ***



「おおおおおおおおおおお!!」

 それを見て、俺は思わず目を輝かせ声を上げた。

 作り自体はよく見る商店街。まっずぐ幅のある通路があって左右に店が並んでいる。そして路地裏のようにその大通りから細い通路が脇に伸びてそこにも店が並んでいる。

 しかしその店は決して元の世界ではありえないものだ。一つの大きな樽に乱雑に入れられたものから丁重にガラスケースに収められた武具の数々。自慢の商品を声高らかに宣伝するドワーフの姿。

「ここがこのアルガーンの全ての武具屋の集まる密集地……通称武具街だよぉ……主にドワーフ系の人族が出店してるんだぁ……まあ鍛冶させたら他種族じゃかなわないからねぇ……」
「へぇ……」

 やっぱドワーフは鍛冶専門なのか。確かにギルドの冒険者でも普通の人とエルフは比較的見かけるけどドワーフの冒険者ってあんま見かけない気がするな。

「じゃあ後は好きに見て行ってよぉ……僕は用事あるからねぇ……」
「え!? 一緒に見てくれないんですか!?」

 選ぶ時にアドバイスもらおうと思ってたのに。

「デートしたいのは山々なんだけどねぇ……それに僕基本魔法糸しか使わないからぁ……武器に関してはそんなにアドバイスもできないしねぇ」

 デートではないけど、それなら仕方ないか。

 ダルナさんはじゃぁねぇと気だるげに言うとふらふらと去っていった。……あの人が元気になる日って来るのだろうか。

「……とりあえず行くか」

 ――安心しろ。武具の鑑定に関しては我は自信があるぞ?

 え、お前竜じゃん。ダルナさんより絶対武器使わないじゃん。

 ――簡単なことよ。我に届きうる武器、我の爪を受け止められる防具が良いものだ。

 ……それの選定基準は?

 ――直観よ。

 ……ロイについてきてもらえばよかったな。

 ぎゃーぎゃーと文句を言うドラグニールを無視しながら行き交う人々の間を抜けながら、店頭から見える武具を見て回る。どうやら大通りに面してるのがそこそこ大きい店。脇に伸びる通路に面する店は小さい規模の店のようだ。

 しばらく見て回り、俺はあることに気づいた。

「刀……置いてなくない?」

 正確に言えば、他の武器に比べて圧倒的に少ない。

 ――それはそうだろう。それは他の剣の類と比べると少々作りが厄介のようだ。

 そうなのか?

 ――普通の両刃のものは通常その重量を利用し叩き斬るものだ。言ってしまえば多少雑なつくりでも一定以上の効果は発揮するし、腕が良いものが作ればより良いものになる。しかし刀は斬ることに特化し、軽量でありながら重量級の大剣以上の威力を時に発揮する。しかしそれゆえに職人の技量と使用者の技量も問われる。せっかくいいモノを作っても生半可な使用者に買われては作り損もいいところだがな。

 なるほどなぁ。お前意外とわかってるんだな。

 ――初めから自信があると言っておろうが!

 はいはい分ったよ……にしてもあれだな。少ないながらにあっても、どの刀も馬鹿みたいに高いな……。

 ――まあさっきと同じ理由だろうな。作る手間と使用者の選別を考えればそうなるだろうよ。

 うぅむ……。買えなくはないけど……防具までは回らないな。

 ――必要なかろう。どうせお主死なんのだし。

 痛いのは嫌なんだよ! どうせ買うなら失敗はしたくないしなぁ……。

 ――なら鑑定眼を使えばよかろう。まだ教えてなかったか?

 何その便利そうな魔法。

 ――目を閉じ、物の本質を見ることに意識を切り替えて開けば、その価値に応じ光が伴って見えるようになるのだ。

 物の本質を見るねぇ……。

 俺は取り合えず目を閉じ、言われた通りに意識し目を開くと、思わずその眩しさに目が眩みそうななった。

「おお……これ便利だな……」

 眩しさになれるのに少し時間がかかったが、普通に見られるようになるとその便利さを実感できた。武具の一つ一つが大小様々な光を放っている。多分より光っているのがいいものってことなんだろう。

 さて、じゃあ見つけた刀を見て回って……あれ?

「……ほぼ光ってなくない?」
 ――形だけのなまくらだったな。

 これまで見つけた刀はどれも光は弱く、碌なものはなかった。しかしその店の職人の腕が悪いというわけではないのだろう。他の武器は滅茶苦茶光ってるし、何より今まで使ってた支給品の刀はもはや光ってすらなかった。

「これはよっぽど根気強く探さないとなぁ……」

 俺は一店一店ゆっくり見回りながら刀を探して回った。いっそ違うものにしてもいいかとも考えたけど、いろんな武器を試した結果の刀だったから、少なくともしばらくはこのままの方がいいだろう。

 しかし鑑定眼使いながらだと、やっぱりドワーフの腕の高さがわかるな。ドワーフの店の武具は多種族のものと比べてどれも強い光を放っている。

「ドワーフの店の買っとけばはずれはない感じだなぁ……けどやっぱり刀少ない……そもそも使ってる人が少ないから品ぞろえも少ないのか……」

 ぶつぶつとダルナの様に独り言を呟きながら歩いていると、一瞬視界の端で眩い光が見えた気がした。

「何か今凄いのがあったような……んな!?」

 少し戻って細い路地の方を覗き見ると、今までで一番強い光があった。

 てっきり大通りにいいものが集中してるのかと思ったけど、掘り出し物も路地の方にはあるのか。いやでもこの光様は掘り出し物ってレベルじゃないけど……。

 俺はその光を放つものを置いてある店の位置を確認すると、いったん鑑定眼を切って路地に入っていった。

 大通りのしっかりとした店とは違い小さな店や簡易的なテントなどの移動式の店が多い印象だった。

 そんな路地の店を通り抜けて俺は目当ての店に着いた。そこは店と呼ぶにはあまりに規模が小さい……というかシートを敷いていくつか武器を置いているだけだった。

 ここ……だったよな……?

 俺は若干の不安を覚えながら確認のため鑑定眼を使い、そして確信した。目を開けないほどの、神々しさすら感じる光。しかもそれは、いくつか置かれた剣の中の一振りの刀から特に強く放たれていた。

「見つけた!」

 俺はつい声を上げてしまい、眠っていたのかずっと俯いていた店主らしき男がびくりと肩を震わせこちらを見た。

 鍛え抜かれた鍛冶師の筋肉、赤髪の短髪で年は恐らく20代前後くらい。イケメンよりも男前、兄貴という言葉が似合いそうな男だった。

「……んだよガキか。ここにはおもちゃなんざ置いてねぇぞ。邪魔だからさっさとママのとこにでも帰りな」

 ……口悪。

 男は鬱陶しそうに手を払い大きく欠伸をした。

 ……いや、まあいい。俺は買えさえすればいいんだ。

 俺は一瞬沸いた怒りを深呼吸して落ち着け、置かれた刀を指さした。

「これ、ください」
「……あ? ガキがこんなもん買ってどーすんだよ」
「ガキじゃないです冒険者です」
「ガキには違いねぇじゃねぇか。しかも冒険者だぁ……? ハッ。まだまだ嘘つくのは下手みてぇだな」
「嘘じゃないもん!」
「……まっ、嘘じゃなかったとしても、俺の自信作がテメェみてぇなガキに使われるなんざ気に入らねぇ。帰りな」

 男は取り付く島もなく、売ってやればいいじゃねぇかとからかう様に言う周りの店の人たちに怒鳴ると、まだ前に立ってる俺のことを無視して再び俯いた。

 ――どうする? いっそ盗んでいくか?

 いや流石にそれはしねぇよ。……とりあえず今日は一旦引き上げよう。こんなものを見て他ので妥協はしたくない。

「また来ますから!」

 俺はそう言い残すとその場を後にした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

処理中です...