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さらなる高みへ
赤毛の少女
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太陽が暖かな日差しを降らし、爽やかな風が頬を撫でてゆく。こんな日に室内にいるのは勿体ないと、子供達は我先に外へ出て行った。
面白い事に、子供の遊びというものは世界を隔てもそれ程違いが出ないようだ。鬼ごっこやかくれんぼ、サッカーみたいなものもあった。
革の切れ端を縫い合わせ、威力の殆ど無い風の魔法を送り込み膨らませたボールを壁に描かれたゴールの枠に蹴り入れるのだが、大きな違いはチーム戦では無く個人戦のバトルロイヤル方式だ。
「この、ボールよこせ!」
「取れるもんなら取ってみろ!」
「じゃあ貰っていくねっ」
ボールの取り合いをしていた二人の間を隙を突いてすり抜け、奪ったボールをそのままゴールに蹴り込む……が、ボールは枠の外の壁に当たり跳ね返った。
「アリアさっきから全然入ってねーじゃん」
「へたくそー」
「へーん。だったら私からボール取ってみなよ!」
思えばこんなに思いっきり遊ぶのなんて何年ぶりだろうか。大人になってからははしゃごうにもどうにも恥ずかしさが勝ってしまうが、今の俺は正真正銘女の子。無邪気にはしゃいでも何らおかしくない。おまけにドラグニールの憑依のお陰で身体能力も底上げされてるし、冒険者生活の訓練で運動センスも上がってる。今の体ならスポーツだってどんとこいだ。……まあ技術が必要なやつはお察しだけど。
その後も色んな遊びを通して子供達と仲良くなり、しばらくして一旦別れどこか休むところを探そうと園内の散策をしていると、木陰のベンチに座る少女に気がついた。肩ほどの長さの赤い髪と緑の瞳、少しサイズの大きい白いワンピース姿。確か……昨日ギルドでレイと一緒にいた子だ。この園の子だったのか。
「こんにちは。隣座ってもいいかな」
俺は少し屈んで少女に目線を合わして話しかけると、少女は驚いたように少し肩を振るわせ、少し間を置いて少し座る位置をずらしてスペースを開けてくれた。
「ありがと。君、昨日レイさんと一緒にいた子だよね。私アリア。君は?」
「……ニーア」
「ニーアちゃんか。ここ気持ち良くていいところだね。お気に入りなの?」
俺の問いにニーアは俯いたまま小さく首を振った。
「そっか……」
「…………」
しまった。つい話しかけちゃったけど、何話すか全く考えてなかった。
「……お姉ちゃんも、あのお姉ちゃんに連れてきて貰ったの?」
流石に今離れるのも駄目だろうと何とか話題を考えていると、ニーアがぽつりと問いかけてきた。
あのお姉ちゃん……レイのことか。
「ううん。私は別の人達だったな。森で迷ってたところを助けて貰ったの」
「ニーアと同じだ。私も森であのお姉ちゃんに会ったの」
「そうなんだ。ニーアちゃんは何で森にいたの?」
特に何も考えずに言ってしまい、直後にやってしまったと後悔した。サリーナが言っていたが、ここは孤児園。多くが魔物被害によって身寄りを無くしてしまった子だ。つまりはニーアも……。
「……わかんない。ニーア、気づいたら真っ暗の中にいて、怖くて歩いてたら外に出られて、そしたらあのお姉ちゃんがいたの」
「そっか。それより前のことは覚えてないの?」
俺の質問にニーアは小さく頷くと、俺の手をそっと握った。
「なんだか、お姉ちゃんと一緒だと安心する」
「……うん。私で良かったらいつでも一緒にいてあげるからね」
記憶を無くしちゃうほどのショックな事があったのだろう。俺はニーアの手をしっかり握り返した。
「良い……!」
サリーナのお説教を終えたレイがそこにいなければ良い雰囲気だったと思う。
「……レイさん、どうしたんですか?」
「サラーサに邪魔されちゃったから、アリアを連れてきた目的の再開」
「目的って……一緒に寝たかっただけじゃ」
「それは八割」
多いな。
「ついて来て。訓練してあげる」
面白い事に、子供の遊びというものは世界を隔てもそれ程違いが出ないようだ。鬼ごっこやかくれんぼ、サッカーみたいなものもあった。
革の切れ端を縫い合わせ、威力の殆ど無い風の魔法を送り込み膨らませたボールを壁に描かれたゴールの枠に蹴り入れるのだが、大きな違いはチーム戦では無く個人戦のバトルロイヤル方式だ。
「この、ボールよこせ!」
「取れるもんなら取ってみろ!」
「じゃあ貰っていくねっ」
ボールの取り合いをしていた二人の間を隙を突いてすり抜け、奪ったボールをそのままゴールに蹴り込む……が、ボールは枠の外の壁に当たり跳ね返った。
「アリアさっきから全然入ってねーじゃん」
「へたくそー」
「へーん。だったら私からボール取ってみなよ!」
思えばこんなに思いっきり遊ぶのなんて何年ぶりだろうか。大人になってからははしゃごうにもどうにも恥ずかしさが勝ってしまうが、今の俺は正真正銘女の子。無邪気にはしゃいでも何らおかしくない。おまけにドラグニールの憑依のお陰で身体能力も底上げされてるし、冒険者生活の訓練で運動センスも上がってる。今の体ならスポーツだってどんとこいだ。……まあ技術が必要なやつはお察しだけど。
その後も色んな遊びを通して子供達と仲良くなり、しばらくして一旦別れどこか休むところを探そうと園内の散策をしていると、木陰のベンチに座る少女に気がついた。肩ほどの長さの赤い髪と緑の瞳、少しサイズの大きい白いワンピース姿。確か……昨日ギルドでレイと一緒にいた子だ。この園の子だったのか。
「こんにちは。隣座ってもいいかな」
俺は少し屈んで少女に目線を合わして話しかけると、少女は驚いたように少し肩を振るわせ、少し間を置いて少し座る位置をずらしてスペースを開けてくれた。
「ありがと。君、昨日レイさんと一緒にいた子だよね。私アリア。君は?」
「……ニーア」
「ニーアちゃんか。ここ気持ち良くていいところだね。お気に入りなの?」
俺の問いにニーアは俯いたまま小さく首を振った。
「そっか……」
「…………」
しまった。つい話しかけちゃったけど、何話すか全く考えてなかった。
「……お姉ちゃんも、あのお姉ちゃんに連れてきて貰ったの?」
流石に今離れるのも駄目だろうと何とか話題を考えていると、ニーアがぽつりと問いかけてきた。
あのお姉ちゃん……レイのことか。
「ううん。私は別の人達だったな。森で迷ってたところを助けて貰ったの」
「ニーアと同じだ。私も森であのお姉ちゃんに会ったの」
「そうなんだ。ニーアちゃんは何で森にいたの?」
特に何も考えずに言ってしまい、直後にやってしまったと後悔した。サリーナが言っていたが、ここは孤児園。多くが魔物被害によって身寄りを無くしてしまった子だ。つまりはニーアも……。
「……わかんない。ニーア、気づいたら真っ暗の中にいて、怖くて歩いてたら外に出られて、そしたらあのお姉ちゃんがいたの」
「そっか。それより前のことは覚えてないの?」
俺の質問にニーアは小さく頷くと、俺の手をそっと握った。
「なんだか、お姉ちゃんと一緒だと安心する」
「……うん。私で良かったらいつでも一緒にいてあげるからね」
記憶を無くしちゃうほどのショックな事があったのだろう。俺はニーアの手をしっかり握り返した。
「良い……!」
サリーナのお説教を終えたレイがそこにいなければ良い雰囲気だったと思う。
「……レイさん、どうしたんですか?」
「サラーサに邪魔されちゃったから、アリアを連れてきた目的の再開」
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「それは八割」
多いな。
「ついて来て。訓練してあげる」
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