竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件

一 葵

文字の大きさ
55 / 129
さらなる高みへ

俺の非日常/私の日常

しおりを挟む
 レイとの特訓が始まって、半月が過ぎた。

 最初の数日はあの孤児院で過ごしていたが、寝床や食事でお世話になりっぱなしと言うのも申し訳ないと食事分だけでもお金を払おうとしたが、孤児院が子供から受け取るわけにはいかないと拒否されてしまった。だからといってそのまま過ごすというもの気が引けるので、今はギルドから孤児院に向かうようにしている。
 ギルドの訓練室の方が設備も整っているしこっちでやればとも思ったが、レイがしょっちゅうギルドに出入りするとラウドがあまりいい顔をしないらしく、幸い孤児院までそこまで遠くもないので毎日通っている。

 そう、毎日。毎日朝から晩まで体で覚えろとばかりにただただレイと打ち合う毎日。最初の頃本人も言っていたが、レイの言葉で説明する能力が絶望的なせいもあって、何度か口頭での説明も試みた場面もあったが結局は実戦の中で身につける訓練となった。
 とはいえ、刀の使い方の基礎を口頭で説明する代わりの実戦だからか、確実に身にはついてきている。言語化能力が低いだけで教える能力はあるのだろう。ただその代わり毎日朝から晩まで猛特訓だ。

「通りで最近見かけねえはずだ。ここんとこずっとあの女剣士と特訓漬けだったのか」
「えぇまあ……。クラガさんはどうしてました?」

 とある日。ラウドがレイに用があるとかで特訓が出来ず、俺は久しぶりにクラガと一階の酒場で昼食を取っていた。

「俺もまあ教官と特訓だな。後は腕が鈍らねぇよう武器打ったり……ま、いつも通りだな」
「まあそうですよね。……そういえば、エリシアさんってどうしてるんです?」
「あ? あー、そっか。あいつマジで言ってねぇのか」

 俺の質問に、クラガは溜息をつき誰に言うでもなく呟いた。

「えっ、何、エリシアさんなんかあったんですか?」

 クラガの反応に不安を覚え詰め寄ったが、クラガは苦笑を浮かべ手を払った。

「んなたいしたもんじゃねぇよ。ほら、あいつって貴族のお嬢様だろ。冒険者になる前に父親と本音で話し合ったらしくてよ。お前は家柄に縛られず自由に生きろってお許しを貰ったらしいんだけどよ、だからといって冒険者になるのは自由が過ぎるだろうって今絶賛喧嘩中なんだと。無用な心配はかけたくないからお前には言うなって言われてるんだけどな」
「あー……」

 正直よく冒険者になる許しが貰えたなとは思ってたけど、そこまでは貰えてなかったのか。まさか隠してたとは……。

「エリシアさんってああ見えて実は私たちの中で一番無茶しますよね」
「本当だぜ。普段しっかりしてる分余計に際立つよな」

 俺たちはひとしきり笑い合うと、ギルドに出入りする冒険者達に目を向けた。

 依頼を受け向かう者、追えて帰ってくる者。前者が持つ気合いや闘志、希望を持ったまま帰ってくる者は、果たして全体の何割だろうか。いや、そもそも帰ってこれないこと自体それほど珍しくもない。
 日本とは全く違う日常。世界に目を向ければ話は別だが、少なくとも俺の知る常識はこの世界にはない。この世界に来て半年は過ぎているが、自分でも多少は慣れたと思っていても、朝挨拶を交わした人が帰ってこない日常にはやっぱり慣れそうもない。

「まあ、仕方ないですよね。いくら危険が隣り合わせの世界だからって、身内がその危険にわざわざ近づくなんていい気はしないでしょうし」
「そりゃあな。冒険者になんてなるやつなんざ、良くも悪くも訳ありな奴だけだからな。そう言う意味じゃあ、あのレイっていう女剣士、あいつはなんで冒険者になったんだろうな。割と縁遠い感じじゃねぇか?」
「そう言われれば……まあ他人が踏み込むことでもないですしね」
「それもそうだ。よしっ、お前も今日は暇なんだろ? 刀の具合見てやるよ。ついでに防具とか諸々調整して、慣しに任務でも行こうぜ」

 クラガは切り替えるように声を上げてると、彼らしいからっとした笑みを浮かべて立ち上がった。俺も続いて立ち上がって、いつか当たり前になるこの世界での日常に向かった。



          ***



「……で、どうだ?」

 ギルド最上階のラウドの私室。窓を背にし座るラウドは、正面に座るレイに重く問いかけた。

「何が?」
「アリアに修行をつけているんだろう? 何か感じるか?」
「あの子自体はそこまで強くないよ。冒険者になれるかも怪しいくらい。けど内面が底上げしてる感じ」
「憑依しているものか?」

 レイの言葉に、ラウドは少し眉をひそめそう問い返した。

「それもあるけど、あの子の精神的な意味。見た目とちぐはぐな感じはする」
「まあ確かに、見た目からは想像がつかん程しっかりはしているな」
「総合してみたら、十分だと思う。特訓が終わった頃だったら迎えても良いと思う」
「そうか……」

 ラウドは目を瞑ると、重く溜息をついた。

「全く、嫌になるな。お前みたいな女だけでなく、あんな少女にまで頼ろうとするとは」
「たまたま私たちが役割をこなせる力を持っていただけ。気にすることじゃない」
「はは、お前らしい。……彼女の修行、いつ終わる」
「あと半月もあれば完成すると思う」

 ラウドはそれを聞くと、机においてある紙を手に取る。

「丁度いい。ここで見極めるとしよう」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

処理中です...