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森林の国、エルフの歴史
終局
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その手応えは、初めて感じるものだった。
「ふっ……!」
右手に持つ不知火による逆袈裟の斬り下ろし。白炎を纏った一刀を、しかしサイスは細身の長剣で苦も無く受け止める。だがアリアは直後に不知火を手放しそのまま空の右手を振りきる。更に左手に持つ如月を手首のスナップで軽く上に投げ、振り切った右手で逆手に持ち左足をバネの様に伸ばし胸へ向けての刺突。
「おっと」
流れるような二撃目に、サイスは長剣を引き如月の切っ先を刀身で受け止める。
「ああもう……!」
腕を交差させるように空いた左手で不知火を掴み、着地した右足で後ろに跳躍し距離を開ける。
一撃目の開闢の焔は囮の為だったから通常より威力は落ちていた。二撃目の刺突も力の入った突きとは言い難い。しかし、どちらもあれほど気安く受け止められるものでは無いはずだった。だが結果は起こったとおりだ。それも全ての一撃が、同様に防がれている。しかも、
ただ受けられてるのとは違うんだよな……。
不知火の開闢の焔は現状アリアの出来る最も威力の高い一撃。如月は魔法による威力の底上げはないが、刀自体の性能により高威力の一撃となる。故にどちらもまともに受け止める事は容易くない。受けられたとしても、それによる手応えがこちらに返ってくる。
しかしその手応えが、サイスとの戦闘では一度も感じられないのだ。
力を込めた刀身と長剣がぶつかった瞬間、まるでこちらの力が抜けたように感覚になる。
「どういう仕組みだ……?」
──こちらで確認してる限りは何かをしている気配はない。魔導とかいうのは魔法とは違うゆえ捉えづらいが、それでも何も感じられない。
「じゃあどうやってんだよ」
乱れた襟元を正すサイスと不意に目が合う。
「そうやって独り言してくれてると僕は楽できて助かるけど、そちらは良いんです? お仲間の時間稼ぎ、それほど長く持たないんですよね?」
「…………」
答えない。
恐らく操っているエルフ経由で会話を聞いていたのかも知れないが、だからといってわざわざ教える義理はない。
ドラグニール、残りは?
──もうすぐ三分を切るかというところだ。
その返事に奥歯を強く噛む。
あれだけ大見得切って飛び出してこの様だ。こっちの攻撃が妙に通じないって言うのもあるけど、それ以上に……。
翼による加速、飛翔、降下。文字通り縦横無尽の剣撃に、しかしサイスはその悉くを軽々と受けきる。
「確かに速い連続攻撃ですし、しかも威力が全部ヤバ目……特に右手の燃えてる方はヤバすぎるんですが」
二刀の斬り下ろしを受け止め、自らの長剣を円を描くように回し受け止めた二刀の切っ先を地面に突き立てさせる。
「貴女が弱い」
前傾姿勢になり顔を近づけ、笑みを絶やさない糸目の顔で冷たく告げる。
「チッ……!」
翼の羽ばたきによって後ろへの跳躍。舌打ちをし相手を睨むが、しかしサイスの言わんとしていた事は自覚していた。
「実力はあるし、技術もある。貴女の”精神”以外はね」
……そう。事ここに来て、未だに俺は直前で躊躇ってしまう。
相手がどれほど明確な敵であれ。やらなければ自分が、仲間がやられてしまうのに。それでもあと一歩。人を殺すという一線が踏み込めずにいるのだ。
「あの集団に貴女の様な甘い人がいると思ってなかったけど、そんな迷いに溢れて隙だらけの剣筋じゃあ簡単に止められちゃうねぇ」
「……自覚はあるんで、あんまり言わないで欲しいんですけど」
黙っていると奥歯を砕くほど噛み締めてしまいそうなので、悪態で流す。
──アリア、いざとなれば代われ。この程度なら構わん。
……悪いな。
右手の不知火を逆手に持ち替え、腕を上げる。
気ぃ使わせて、悪い。でも、いい加減、俺が覚悟決めないといけないんだ。
握る手に力を込める。震えを押さえつけるように。誓いを立てるように。
こっちの世界に来て、もう何ヶ月も経って。いつまでもウジウジしてらんねぇよな。
左手に持つ如月を地面に突き立て、右手に添わせる。
だから取り敢えず、治療だけ任せたわ。
──……は?
何をする気だ? というドラグニールの問いを待たず──不知火を自分の腹部に突き立てた。
「──んっ、グゥゥゥウウウ……っ!」
傷口が燃えるように熱い。しかし今は翼を展開中だから不知火の刀身には炎は無い。この熱さは強すぎる痛み故だ。だから俺は翼を不知火に移動させる。
「ッ……ァ……!」
全ての炎を用いた全力の開闢の焔。それはこの少女の体にはあまりに過剰で、体を内部から灼き尽くし声を発する事さえ許さない。
常人であれば即死の一撃。しかしアリアは、その不死身の特性故にその痛みを受け続ける。
──な、何をしておるか!
ドラグニールが無理矢理に体の主導権を奪い、不知火を抜き捨てる。続けて己が使える最高度の治癒魔法で体を修復。しかし主導権を奪った直後から感じた負傷の痛みに思わず膝をつく。
「本当に、なにをして……気でも触れ……っ!?」
体の修復が終わり声を発っせれるようになった時、再び主導権が入れ替わった。
「……あー、マジやらなきゃ良かった。トラウマなるわマジで」
グロッキーな表情で若干の嘔吐感を抑えながら、低い声でアリアが呟く。
──……理由は聞けるのであろうな? というかあるのであろうな、理由。
呆れた、というより起こっているその言葉に、アリアは不知火と如月を拾い上げて答えた。
「開闢の焔を食らうとどうなるのかを身をもって体験しておきたかった。俺の攻撃で、相手はどうなるのか識っておきたかった。そしてなにより」
正面に向き直り、表情を変えずにこちらを見るサイスに切っ先を向ける。
「俺は今初めて、人を殺した。俺の刀で斬られたらすっげぇ痛いって事を知ったし、炎付きなら発狂しそうなことも知ったし、殺されるって事も知った」
「だから?」
「それを味方に感じさせるよりは、俺が敵に押し付ける方が何倍もマシだ」
「エゴですね」
「それが──」
光翼を展開。最大限の羽ばたきをもって、初速から最高速度での跳躍。
「──人を殺すってもんだろ!」
サイスの手前で右足をつき、それを軸とし速度を少し落とし回転。遠心力も加えた横凪の一刀。サイスは変わらず受けようと長剣を縦に構えるが、寸前で行動を受けから回避に変更。長剣は不知火を受けるのではなく弾き逸らす構えに、自身は身を逸らす。上へと軌道を逸らされた不知火の切っ先はサイスの身を捉えられず。しかし軍帽を引っかけ斬り飛ばした。
「……ふぅ、危ない危ない。急にちゃんとしてくるやん」
数歩よろけて下がるサイス。焦った口調だが、その表情の笑みは不変だった。
「いやいや、久しぶりや避けたのなんて。しかも避けきれなかったしね。……本当に、久しぶりに、楽しめそうだ」
その笑みを強くし長剣を構えようとしたとき、背後の男が不意に口を開いた。
「サイス、そろそろ時間のようだ。撤退するぞ」
「えっ、もうですかぁ? せっかく面白くなってきたところなのに」
「残りたいのであれば自由にしろ。心配するな、死亡処理はやっておいてやる」
「ちょ、勘弁して下さいよ!」
こちらへ背を向け早足で追いかけるサイス。アリアは追いかけようと踏み出すが、男の時間だという言葉に慌てて確認する。
ドラグニール、残り時間!
──あと四十秒。
その秒数に急がねばと思うが、しかしその思考を止める。
あと四十秒。しかしそれはこちらにとってはだ。相手にとってはまだ四十秒。撤退とする時間にはまだ早い。そう思っていたのはアリアだけでは無く、サイスの部下達も戸惑いの表情を浮かべていた。
「サ、サイス小隊長。撤退ですか? しかし状況はこちらに優勢、あと少しで妙な魔法で止められている奴らも動かせますし、明日以降の多国への侵攻作戦には影響は無いかと」
「……ん? ああ、ごめんごめん。そんな作戦、本当はないねん」
軽い口調で、掌を振りながら否定した。
「と、言いますと……?」
「んー、教えてあげたいんやけど、自分らここまでやしなぁ」
それはどういうことでしょうか?
そう問おうとした彼らの言葉は、しかし発する事は出来なかった。彼らの前のサイスは長剣を振りきっている。しかしその長剣が斬ったのは彼らでは無く、自身の背後に現れ襲い掛かった光矢だった。光矢が突き刺さり息絶えた部下を確認すると、
「ほなまたねーアリアちゃん。なんか急に一皮むけて良い感じになったし、何よりその見た目で俺っ娘は僕好みやから、またやろねー!」
「ちょ、待てって! そんな作戦無いってどういうことだよ!」
急に現われた光矢の迎撃に気をとられたアリアは、問いを投げかけたが帰ってくることは無く、既に二人の姿は夜の森に消えてた。
「……なんか、急に口調軽くなったなあいつ」
──残り十秒だが、魔導とか言う力の流れが消えた。洗脳は解けたとみてよいだろう。
「そっか……はー、よか……った?」
安堵し、息を吐く。すると緊張が解けたせいか力が抜けてその場に倒れてしまう。
「んー、動けん。体痛ぇ、けどさっきのに比べりゃマシな痛み」
──それはそうだろう。常人であれば軽く五回死んでいるぞ。付き合わされる身にもなれ。
「悪い悪い……焦ってたとはいえ、今考えるとどうかしてたな」
──全くだ。……それで、どうだ?
「どうって?」
──初めて同族を殺した感想、殺された感想はあるか? ある種貴重な経験だからな。
「……どっちも相手は自分だけどな。まあ、うん」
右手を持ち上げ、何度か握り直す手を眺める。
最後の一刀。それは明らかに今までのどの感覚とも違う物だった。それは思ったよりも重くは無くて、
「あんま慣れたくはないかなぁ」
「ふっ……!」
右手に持つ不知火による逆袈裟の斬り下ろし。白炎を纏った一刀を、しかしサイスは細身の長剣で苦も無く受け止める。だがアリアは直後に不知火を手放しそのまま空の右手を振りきる。更に左手に持つ如月を手首のスナップで軽く上に投げ、振り切った右手で逆手に持ち左足をバネの様に伸ばし胸へ向けての刺突。
「おっと」
流れるような二撃目に、サイスは長剣を引き如月の切っ先を刀身で受け止める。
「ああもう……!」
腕を交差させるように空いた左手で不知火を掴み、着地した右足で後ろに跳躍し距離を開ける。
一撃目の開闢の焔は囮の為だったから通常より威力は落ちていた。二撃目の刺突も力の入った突きとは言い難い。しかし、どちらもあれほど気安く受け止められるものでは無いはずだった。だが結果は起こったとおりだ。それも全ての一撃が、同様に防がれている。しかも、
ただ受けられてるのとは違うんだよな……。
不知火の開闢の焔は現状アリアの出来る最も威力の高い一撃。如月は魔法による威力の底上げはないが、刀自体の性能により高威力の一撃となる。故にどちらもまともに受け止める事は容易くない。受けられたとしても、それによる手応えがこちらに返ってくる。
しかしその手応えが、サイスとの戦闘では一度も感じられないのだ。
力を込めた刀身と長剣がぶつかった瞬間、まるでこちらの力が抜けたように感覚になる。
「どういう仕組みだ……?」
──こちらで確認してる限りは何かをしている気配はない。魔導とかいうのは魔法とは違うゆえ捉えづらいが、それでも何も感じられない。
「じゃあどうやってんだよ」
乱れた襟元を正すサイスと不意に目が合う。
「そうやって独り言してくれてると僕は楽できて助かるけど、そちらは良いんです? お仲間の時間稼ぎ、それほど長く持たないんですよね?」
「…………」
答えない。
恐らく操っているエルフ経由で会話を聞いていたのかも知れないが、だからといってわざわざ教える義理はない。
ドラグニール、残りは?
──もうすぐ三分を切るかというところだ。
その返事に奥歯を強く噛む。
あれだけ大見得切って飛び出してこの様だ。こっちの攻撃が妙に通じないって言うのもあるけど、それ以上に……。
翼による加速、飛翔、降下。文字通り縦横無尽の剣撃に、しかしサイスはその悉くを軽々と受けきる。
「確かに速い連続攻撃ですし、しかも威力が全部ヤバ目……特に右手の燃えてる方はヤバすぎるんですが」
二刀の斬り下ろしを受け止め、自らの長剣を円を描くように回し受け止めた二刀の切っ先を地面に突き立てさせる。
「貴女が弱い」
前傾姿勢になり顔を近づけ、笑みを絶やさない糸目の顔で冷たく告げる。
「チッ……!」
翼の羽ばたきによって後ろへの跳躍。舌打ちをし相手を睨むが、しかしサイスの言わんとしていた事は自覚していた。
「実力はあるし、技術もある。貴女の”精神”以外はね」
……そう。事ここに来て、未だに俺は直前で躊躇ってしまう。
相手がどれほど明確な敵であれ。やらなければ自分が、仲間がやられてしまうのに。それでもあと一歩。人を殺すという一線が踏み込めずにいるのだ。
「あの集団に貴女の様な甘い人がいると思ってなかったけど、そんな迷いに溢れて隙だらけの剣筋じゃあ簡単に止められちゃうねぇ」
「……自覚はあるんで、あんまり言わないで欲しいんですけど」
黙っていると奥歯を砕くほど噛み締めてしまいそうなので、悪態で流す。
──アリア、いざとなれば代われ。この程度なら構わん。
……悪いな。
右手の不知火を逆手に持ち替え、腕を上げる。
気ぃ使わせて、悪い。でも、いい加減、俺が覚悟決めないといけないんだ。
握る手に力を込める。震えを押さえつけるように。誓いを立てるように。
こっちの世界に来て、もう何ヶ月も経って。いつまでもウジウジしてらんねぇよな。
左手に持つ如月を地面に突き立て、右手に添わせる。
だから取り敢えず、治療だけ任せたわ。
──……は?
何をする気だ? というドラグニールの問いを待たず──不知火を自分の腹部に突き立てた。
「──んっ、グゥゥゥウウウ……っ!」
傷口が燃えるように熱い。しかし今は翼を展開中だから不知火の刀身には炎は無い。この熱さは強すぎる痛み故だ。だから俺は翼を不知火に移動させる。
「ッ……ァ……!」
全ての炎を用いた全力の開闢の焔。それはこの少女の体にはあまりに過剰で、体を内部から灼き尽くし声を発する事さえ許さない。
常人であれば即死の一撃。しかしアリアは、その不死身の特性故にその痛みを受け続ける。
──な、何をしておるか!
ドラグニールが無理矢理に体の主導権を奪い、不知火を抜き捨てる。続けて己が使える最高度の治癒魔法で体を修復。しかし主導権を奪った直後から感じた負傷の痛みに思わず膝をつく。
「本当に、なにをして……気でも触れ……っ!?」
体の修復が終わり声を発っせれるようになった時、再び主導権が入れ替わった。
「……あー、マジやらなきゃ良かった。トラウマなるわマジで」
グロッキーな表情で若干の嘔吐感を抑えながら、低い声でアリアが呟く。
──……理由は聞けるのであろうな? というかあるのであろうな、理由。
呆れた、というより起こっているその言葉に、アリアは不知火と如月を拾い上げて答えた。
「開闢の焔を食らうとどうなるのかを身をもって体験しておきたかった。俺の攻撃で、相手はどうなるのか識っておきたかった。そしてなにより」
正面に向き直り、表情を変えずにこちらを見るサイスに切っ先を向ける。
「俺は今初めて、人を殺した。俺の刀で斬られたらすっげぇ痛いって事を知ったし、炎付きなら発狂しそうなことも知ったし、殺されるって事も知った」
「だから?」
「それを味方に感じさせるよりは、俺が敵に押し付ける方が何倍もマシだ」
「エゴですね」
「それが──」
光翼を展開。最大限の羽ばたきをもって、初速から最高速度での跳躍。
「──人を殺すってもんだろ!」
サイスの手前で右足をつき、それを軸とし速度を少し落とし回転。遠心力も加えた横凪の一刀。サイスは変わらず受けようと長剣を縦に構えるが、寸前で行動を受けから回避に変更。長剣は不知火を受けるのではなく弾き逸らす構えに、自身は身を逸らす。上へと軌道を逸らされた不知火の切っ先はサイスの身を捉えられず。しかし軍帽を引っかけ斬り飛ばした。
「……ふぅ、危ない危ない。急にちゃんとしてくるやん」
数歩よろけて下がるサイス。焦った口調だが、その表情の笑みは不変だった。
「いやいや、久しぶりや避けたのなんて。しかも避けきれなかったしね。……本当に、久しぶりに、楽しめそうだ」
その笑みを強くし長剣を構えようとしたとき、背後の男が不意に口を開いた。
「サイス、そろそろ時間のようだ。撤退するぞ」
「えっ、もうですかぁ? せっかく面白くなってきたところなのに」
「残りたいのであれば自由にしろ。心配するな、死亡処理はやっておいてやる」
「ちょ、勘弁して下さいよ!」
こちらへ背を向け早足で追いかけるサイス。アリアは追いかけようと踏み出すが、男の時間だという言葉に慌てて確認する。
ドラグニール、残り時間!
──あと四十秒。
その秒数に急がねばと思うが、しかしその思考を止める。
あと四十秒。しかしそれはこちらにとってはだ。相手にとってはまだ四十秒。撤退とする時間にはまだ早い。そう思っていたのはアリアだけでは無く、サイスの部下達も戸惑いの表情を浮かべていた。
「サ、サイス小隊長。撤退ですか? しかし状況はこちらに優勢、あと少しで妙な魔法で止められている奴らも動かせますし、明日以降の多国への侵攻作戦には影響は無いかと」
「……ん? ああ、ごめんごめん。そんな作戦、本当はないねん」
軽い口調で、掌を振りながら否定した。
「と、言いますと……?」
「んー、教えてあげたいんやけど、自分らここまでやしなぁ」
それはどういうことでしょうか?
そう問おうとした彼らの言葉は、しかし発する事は出来なかった。彼らの前のサイスは長剣を振りきっている。しかしその長剣が斬ったのは彼らでは無く、自身の背後に現れ襲い掛かった光矢だった。光矢が突き刺さり息絶えた部下を確認すると、
「ほなまたねーアリアちゃん。なんか急に一皮むけて良い感じになったし、何よりその見た目で俺っ娘は僕好みやから、またやろねー!」
「ちょ、待てって! そんな作戦無いってどういうことだよ!」
急に現われた光矢の迎撃に気をとられたアリアは、問いを投げかけたが帰ってくることは無く、既に二人の姿は夜の森に消えてた。
「……なんか、急に口調軽くなったなあいつ」
──残り十秒だが、魔導とか言う力の流れが消えた。洗脳は解けたとみてよいだろう。
「そっか……はー、よか……った?」
安堵し、息を吐く。すると緊張が解けたせいか力が抜けてその場に倒れてしまう。
「んー、動けん。体痛ぇ、けどさっきのに比べりゃマシな痛み」
──それはそうだろう。常人であれば軽く五回死んでいるぞ。付き合わされる身にもなれ。
「悪い悪い……焦ってたとはいえ、今考えるとどうかしてたな」
──全くだ。……それで、どうだ?
「どうって?」
──初めて同族を殺した感想、殺された感想はあるか? ある種貴重な経験だからな。
「……どっちも相手は自分だけどな。まあ、うん」
右手を持ち上げ、何度か握り直す手を眺める。
最後の一刀。それは明らかに今までのどの感覚とも違う物だった。それは思ったよりも重くは無くて、
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