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一話完結

きみは友達。

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僕の友達は、最高の人だ。

面白くて、天才で、ずっと話を聞いていたい。言葉をすごく慎重に選んでくれて、傷付けないように、否定しないようにいてくれる。

大好きだった。

けれど、君はもう、僕にその言葉を告げる日はこない。

それが、酷く悲しくて、きみと話していた時間をなぞるように思い出す。

好きだよ。

友達としてじゃなく、そう言いたかったって、今更気が付いた。

きみは、素敵な人で、優しくて、楽しいの一部だ。

きみに、友達としてじゃない好きをもらったって知って、気付いてしまった。

心臓の鼓動が煩いんだ。
それなのに、きみに告げられない心は、酷く悲しい。酷く、苦しい。

きみはきっと、前へ進んでいく。
なにもなかったみたいに、仲の良い友達に僕を入れてくれる。

僕も、それで嬉しい…嬉しく、ならないとね。

きみの望みは、幸せを壊さないこと。
僕も、僕もそうだよ。
僕は、壊さないよ。
きみへの好きは、友達だから。

僕は、きみの望みを壊したくないから。

きみが望むことを、僕は壊さないと誓うよ。
だから、僕は、きみの助言を受け入れるよ。

これは、僕の中でする、きみへの約束。

きみと話した記憶をなぞり、きみの言葉を繰り返す。


そうして、僕は、きみとの記憶を心の奥底に沈めた。

きみは友達。
魔法のように繰り返すんだ。
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