上 下
9 / 45
後ろの熊君

後ろの熊君 上

しおりを挟む
 高校に入って、恋とかして青春してリア充するぞ!!とか、思ってたんだけど…。
 入学式の日からずっと痛いくらい感じる ある人からの視線。すごく怖いけど、とりあえずご機嫌を損ねないように、目があったら笑いかけるようにはしていた。

していたのに!!

「おい、小崎こさきちょっと来い。」

 視線の主であり、僕より25センチくらい背の高い熊谷くまたにが後ろから声をかけてきた。熊谷は、目つきが鋭くて、声も低くて…いかついヤンキーみたいな、感じで…。

(あ、僕、高校生活オワター)

 と、彼を見上げながらそう思った。

「あ、あの、く、熊谷君。な、なにか、用?」
 熊谷君に腕を掴まれ校舎裏へ連れられて、僕が聞く。熊谷君を見上げると、僕を凄い形相で睨んだ。
(あ、殺される…)
 内心震えながら熊谷君の言葉を待った。
「…小崎…お前。」
ドン
(あ、これって壁ドンだー…って!僕、この後どうなっちゃうの…殴られるの?!胸倉でと掴まれるの?!)
 熊谷君の壁ドンにより逃げ場がなくなった僕はパニクりながら死を覚悟し始めた。

 だから、この後の熊谷君の言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

「…俺の友達になってくれ」

「……………はぃぃ?!」

「入学してそんなに立っていないのに俺の名前を知っていたり、俺が名前を呼んでも逃げなかったり…俺と目があっても殴りかかってこないし、むしろ、笑いかけてくれる…。俺は、小崎と仲良くなりたい!だから、俺の友達になってはくれないか…?」

 その時、風が吹いて熊谷の目にかかっていた前髪が動いた。目つきが悪いと思っていた目は、捨てられた子犬ようになって、僕を見つめていた。

「やっぱり、俺みたいなやつと友達になるのは…嫌、か?」

 その問いと、潤んだ瞳に僕は耐えられなかった。

「…い、嫌じゃ…ないよ。」
「ほ、本当か!じゃあ、友達になってくれるのか!?」
「…ぇと、うん。」
「ありがとう!!」

 そう言って僕を抱きしめた熊谷の笑顔は大きい犬が笑った時みたいに見えて…不覚にも可愛いと思った。

こうして、リア充したい僕と強面だけど友達 大募集中の熊谷君は友達という関係になったのだった。

 
しおりを挟む

処理中です...