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第8話
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日も暮れて後と少しでラストオーダーの時間が来てしまう時間。
カランコロンとドアベルの音が鳴り目を向けると、そこには来るのをずっと待っていた人の姿があった。
「すまない…もう終わりの時間だろうか?」
「団長さんいらっしゃいませ、まだ大丈夫ですよ
お好きな席へどうぞ、今日は何時もより少し時間が遅いんですね」
ルイスの他に客が居ない店内、好きな席にと言われたので厨房近くのカウンター席に腰を下ろした。
話しながらもソフィアはお絞りとお冷をルイスへと渡す。
「あぁ…今日はこれから夜勤でな、他の用事を済ませていたら来るのが遅くなってしまった。注文はBセットのコッコのオムレツを頼む、後はパンで」
「はい、少しお待ち下さいね」
「分かった…今日は妹君はいないのか?」
「えぇ、もう店も空いてますから…レティには少し用事を頼んで出かけて貰ってます。」
「そうなのだな」
ソフィアが厨房へと戻ると直ぐに料理を作っている音が聞こえる。
今日のメニューはAセットがビックドードーのステーキでBセットがコッコのオムレツだった。
メニューを見て驚いた、それはAセットのステーキの肉がビックドードーだったからだ。
ビックドードーはEランクの魔物で強さは余りないがとても希少でその肉は美味とされている、だから買うとなるととても高い筈なのだがこの店ではお手軽な固定値段のまま提供している。
よほど良い仕入先があるのだろうと密かに感心したのであった。
そう考えているとジュワーっと厨房から卵の焼ける音と美味しそうな匂いが漂ってきた。
団員達はきっと滅多に食べる事の出来ないビックドードーのステーキをこぞって頼んだ事であろう。
だが、ルイスは違った。
ルイスはここ最近、彼女の作ったオムレツにハマっているからだ。
とろりとした卵の中に肉や野菜などの具がたっぷりと詰まったオムレツは、今まで食べた事の無い程に美味しい物だった。
普段【まんぷく亭】で食べる以外は騎士団の食堂でただ焼いた肉ばかり食べているが、この店にきたら必ず手料理の様に手の凝った料理を頼んでいる。
それはひとえに彼女の料理が美味いからである。
「はい、お待たせいたしました。熱いので気をつけてお食べ下さいね」
「あぁ、ありがとう…頂きます」
「はい、召し上がれ」
何分もしないうちに出てきたコッコのオムレツ、お好みでトマトソースをかけて食べれる様に小皿で横に置かれていた。
まずはパンを一噛り、フカフカなパンを噛みしめると小麦の甘みが感じられとても美味しい。
そして今日の日替わりスープはコンソメスープ。ベーコンや人参やキャベツなどの具が沢山のとても暖まり満足する優しいスープだ。
メインのコッコのオムレツにスプーンを差し込むと柔らかな卵の中から挽いた肉と玉ねぎが炒められた具材が中から出てきた。
「今日はまたオムレツの中身が違うのだな」
この前来たときのオムレツにはホワイトソースにほうれん草とキノコ、小さく切った鶏肉が入っていた。
それもまたとても美味であったが、今日の具はどんな味がするだろうか。
「ん、これはまた…」
スプーンで一掬い、口の中に入れるとオムレツの旨さが口いっぱいに広がった。
挽いた肉と玉ねぎにはニンニクと胡椒が効いており、それがまた優しい味の卵に良く合う。
「お味はいかがですか?」
「んっ……とても美味い。」
「良かった!今日は皆ステーキばかり頼むの、オムレツも自信作だったから少し悲しかったのだけど…団長さんが美味しそうに食べてくれて嬉しいです」
「うむ…そうか。それは何よりだ」
そう言った彼女の言葉に、やはりビックドードーのステーキの誘惑に皆抗えなかったのだなと納得した。
「ごちそうさまでした。」
彼女と談話しながら食べるオムレツの味は一人で食べるよりも遥かに美味かったが、そんな楽しい時間も直ぐに終わりに近づいた。
食べ終わり席を立ち会計をする為にレジの前へ行く
「お会計は1200リルです」
「あぁ、今日はちょうどあるな」
「はい、ちょうどですね。ありがとうございました」
「こちらこそ、とても美味かった…また来る」
「えぇ…お待ちして、あ!そうだったわ
団長さんにお渡ししたい物があったの、少しお待ち頂けます?」
「分かった」
「すぐ戻りますね…」
何かを思い出したかの様に声を上げた彼女が自分に渡したい物があると言って厨房の方へと小走りで走っていった。
いったい渡したい物とは何なのだろうか気になりながら待っていると
数秒後、パタパタと小走りする彼女が何かを手にして戻ってきた。
「これ、この間荷物を持って頂いた時のお礼にマフィンを焼いたんです…甘い物がお好きか分からなかったから甘く無いマフィンも一緒に作ったのですが…」
「甘い物は好きなので問題ない」
「本当ですか!ではお二つ共貰ってください、良かったら夜勤中のお夜食にでもして下さいね」
「ありがとう」
「いえ、お気をつけて。夜勤頑張ってください」
「あぁ、ではまた。」
まさかこの前の荷物のお礼を貰えるとは思わずとても驚いたが彼女の心遣いがとても嬉しくなり、マフィンを手にした自分の足取りは凄く軽やかだ。
「うむ…夜勤励むとするか」
夜食で頂いたマフィンは優しい甘みがとても美味かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その頃森の中では
「んー…いないねぇ。コカトリス」
「キュー」
「もぉ…お姉ちゃんたら急にコカトリスの南蛮漬けが食べたいっていうんだから」
「キュイキューイ」
「え、そっちにいるって?ありがとう、よしサクッと狩って今日の夕食は南蛮漬けだよ!」
「「「「キュイ!!」」」」
カランコロンとドアベルの音が鳴り目を向けると、そこには来るのをずっと待っていた人の姿があった。
「すまない…もう終わりの時間だろうか?」
「団長さんいらっしゃいませ、まだ大丈夫ですよ
お好きな席へどうぞ、今日は何時もより少し時間が遅いんですね」
ルイスの他に客が居ない店内、好きな席にと言われたので厨房近くのカウンター席に腰を下ろした。
話しながらもソフィアはお絞りとお冷をルイスへと渡す。
「あぁ…今日はこれから夜勤でな、他の用事を済ませていたら来るのが遅くなってしまった。注文はBセットのコッコのオムレツを頼む、後はパンで」
「はい、少しお待ち下さいね」
「分かった…今日は妹君はいないのか?」
「えぇ、もう店も空いてますから…レティには少し用事を頼んで出かけて貰ってます。」
「そうなのだな」
ソフィアが厨房へと戻ると直ぐに料理を作っている音が聞こえる。
今日のメニューはAセットがビックドードーのステーキでBセットがコッコのオムレツだった。
メニューを見て驚いた、それはAセットのステーキの肉がビックドードーだったからだ。
ビックドードーはEランクの魔物で強さは余りないがとても希少でその肉は美味とされている、だから買うとなるととても高い筈なのだがこの店ではお手軽な固定値段のまま提供している。
よほど良い仕入先があるのだろうと密かに感心したのであった。
そう考えているとジュワーっと厨房から卵の焼ける音と美味しそうな匂いが漂ってきた。
団員達はきっと滅多に食べる事の出来ないビックドードーのステーキをこぞって頼んだ事であろう。
だが、ルイスは違った。
ルイスはここ最近、彼女の作ったオムレツにハマっているからだ。
とろりとした卵の中に肉や野菜などの具がたっぷりと詰まったオムレツは、今まで食べた事の無い程に美味しい物だった。
普段【まんぷく亭】で食べる以外は騎士団の食堂でただ焼いた肉ばかり食べているが、この店にきたら必ず手料理の様に手の凝った料理を頼んでいる。
それはひとえに彼女の料理が美味いからである。
「はい、お待たせいたしました。熱いので気をつけてお食べ下さいね」
「あぁ、ありがとう…頂きます」
「はい、召し上がれ」
何分もしないうちに出てきたコッコのオムレツ、お好みでトマトソースをかけて食べれる様に小皿で横に置かれていた。
まずはパンを一噛り、フカフカなパンを噛みしめると小麦の甘みが感じられとても美味しい。
そして今日の日替わりスープはコンソメスープ。ベーコンや人参やキャベツなどの具が沢山のとても暖まり満足する優しいスープだ。
メインのコッコのオムレツにスプーンを差し込むと柔らかな卵の中から挽いた肉と玉ねぎが炒められた具材が中から出てきた。
「今日はまたオムレツの中身が違うのだな」
この前来たときのオムレツにはホワイトソースにほうれん草とキノコ、小さく切った鶏肉が入っていた。
それもまたとても美味であったが、今日の具はどんな味がするだろうか。
「ん、これはまた…」
スプーンで一掬い、口の中に入れるとオムレツの旨さが口いっぱいに広がった。
挽いた肉と玉ねぎにはニンニクと胡椒が効いており、それがまた優しい味の卵に良く合う。
「お味はいかがですか?」
「んっ……とても美味い。」
「良かった!今日は皆ステーキばかり頼むの、オムレツも自信作だったから少し悲しかったのだけど…団長さんが美味しそうに食べてくれて嬉しいです」
「うむ…そうか。それは何よりだ」
そう言った彼女の言葉に、やはりビックドードーのステーキの誘惑に皆抗えなかったのだなと納得した。
「ごちそうさまでした。」
彼女と談話しながら食べるオムレツの味は一人で食べるよりも遥かに美味かったが、そんな楽しい時間も直ぐに終わりに近づいた。
食べ終わり席を立ち会計をする為にレジの前へ行く
「お会計は1200リルです」
「あぁ、今日はちょうどあるな」
「はい、ちょうどですね。ありがとうございました」
「こちらこそ、とても美味かった…また来る」
「えぇ…お待ちして、あ!そうだったわ
団長さんにお渡ししたい物があったの、少しお待ち頂けます?」
「分かった」
「すぐ戻りますね…」
何かを思い出したかの様に声を上げた彼女が自分に渡したい物があると言って厨房の方へと小走りで走っていった。
いったい渡したい物とは何なのだろうか気になりながら待っていると
数秒後、パタパタと小走りする彼女が何かを手にして戻ってきた。
「これ、この間荷物を持って頂いた時のお礼にマフィンを焼いたんです…甘い物がお好きか分からなかったから甘く無いマフィンも一緒に作ったのですが…」
「甘い物は好きなので問題ない」
「本当ですか!ではお二つ共貰ってください、良かったら夜勤中のお夜食にでもして下さいね」
「ありがとう」
「いえ、お気をつけて。夜勤頑張ってください」
「あぁ、ではまた。」
まさかこの前の荷物のお礼を貰えるとは思わずとても驚いたが彼女の心遣いがとても嬉しくなり、マフィンを手にした自分の足取りは凄く軽やかだ。
「うむ…夜勤励むとするか」
夜食で頂いたマフィンは優しい甘みがとても美味かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その頃森の中では
「んー…いないねぇ。コカトリス」
「キュー」
「もぉ…お姉ちゃんたら急にコカトリスの南蛮漬けが食べたいっていうんだから」
「キュイキューイ」
「え、そっちにいるって?ありがとう、よしサクッと狩って今日の夕食は南蛮漬けだよ!」
「「「「キュイ!!」」」」
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