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第59話
しおりを挟む「いったい何の用でしょうか…」
ロベルトは朝早く、王家の使いの人間に叩き起こされ王城へと連れて来られていた。
朝早いのに王城は人々が多く、忙しなく動き回っていた、城の朝は忙しいようだ。
そんな廊下を案内人に連れられ歩いていると、時たまロベルトの耳に聞こえてくる噂があった。
「昨日第二王子が女性を城に泊めたらしい」
「夜もその女性の部屋を訪れたそうだ」
「来賓の客室に泊めさせたそうだ、随分とその女性に惚れているそうとか」
「その女性は英雄様のご息女との噂だ」
「あの絶世の美女と有名なご息女か…グラシア伯爵と恋仲ではなかったのか?」
「いや、その妹君らしいぞ。確か殿下と歳も近かったな」
「そうか…妹もさぞかし美しいのだろうな」
「英雄様のご息女と殿下が結ばれるとはおめでたい事だ」
聞こえてきた噂はレティシアとライムンドの事だとロベルトは直ぐに分かってしまった。
「レティシアさんがライムンド殿下と…」
足元から崩れ落ちそうになりそうになった。
レティシアさんはライムンド殿下は結ばれてしまったのだろうかと、ロベルトは胸が苦しくなった。
あの時、自分が彼女の事を見つけていれば…
目の前が真っ暗になったが、ここは王城である為、理性が働きロベルトはかろうじで歩みを止めずにすんだ。
気合いで歩き、ロベルトが辿り着いた場所は訓練場だった。
「何故…訓練場」
不思議に思いながらが足を踏み入れた訓練場には、一人の影があった。
その人物は…。
「遅かったな…待ちくたびれたぞ」
第二王子のライムンドだった。
「殿下…」
「拾え」
そう言ってライムンドは手にしていた二本の剣の一本をロベルトへ投げ渡した。
ロベルトは状況が理解出来ずにいると、ライムンドは鞘から剣を抜いて鞘を放った。
「ロベルト・ディアス第三騎士団副団長、俺はライムンド・ガルシアとしてお前に決闘を申し込む」
ライムンドの放った言葉にロベルトは驚いた。
「なっ…なぜです?私は殿下と決闘する理由などありません」
「理由など分かりきっているだろう?レティの事だ」
「レティシアさんの……」
いったい何故レティシアさんの事で決闘する必要があるんだ、レティシアさんはライムンド殿下と結ばれたのだろう、なら自分が決闘する意味などないだろうとロベルトは思った。
「レティを泣かせた罪は重いぞ」
ライムンドは足を踏み出しロベルトへと切りかかった。
ロベルトは慌てて地面に転がっている剣を拾いライムンドの剣を受け止めた。
「くっ!!」
次々に打ち込まれるライムンドの攻撃を、なんとかロベルトは受け止める。
✽✽✽✽✽✽✽✽
カンッ…カンッカンッ!!
「はっ!強くなったと期待していたが、こんなものか」
ライムンドの振るった剣がロベルトの脇腹にダイレクトに入り、ロベルトは後ろに下がるが、苦しさで息が詰まり膝をついた。
いくら刃を潰しているとはいえ、痛いものは痛い。
「ぐっは!!」
「それとも、俺が王族だからと手加減でもしているのか」
確かにロベルトは初めはライムンドが王族である為、攻撃をしていいのか考えていだが、それ以上にライムンドが強過ぎて受け身にならざる負えなかったのだ。
そんなロベルトに興ざめとばかりにライムンドは剣を下ろして膝をつくロベルトを見下ろした。
「少しは骨のある奴だと思っていたが勘違いだったみたいだな…
まぁ、良いか…どうせ子爵家に婿入りするんだったか?
ならば剣の腕などそんなモノで良いだろう
これからはレティに近づくな、お前のせいでレティが傷つくなど許せない」
ライムンドの言葉にロベルトは顔を上げて反論する。
「っ!私は子爵家に婿入りなどしません!!」
「ほぅ…なら何故レティはお前が子爵令嬢と婚約していると勘違いをしているんだ?」
「それは…」
ライムンドの言葉にロベルトは吃った。
「早く子爵でもなんでもいいから婿入りしてレティの側から消えろ」
二度と会うなと、ライムンドは冷たい目でロベルトを睨む。
そんなライムンドを睨み返す様にロベルトの目つきも変わった。
「私が好きなのはレティシアさんただ一人だ!!!貴族位など欠片も興味などなければ、好きでも無い女性に婿入りする気もない!!」
ロベルトは叫んだ。
その声には悲痛な思いが込められていた。いくらレティシアさんが好きだと叫んでも、彼女はもう他の男のものになってしまった。そう、目の前の男のものに…
「………」
ロベルトは立ち上がりライムンドへと切りかかる、それをライムンドは受け止めたが、先程とは違う剣の重さにロベルトが本気になった事が分かった。
「ふっ!…レティが好きだと言うならば俺にお前を認めさせてみろ!」
「望むところだ!」
認めさせた所でレティシアは自分のものにならないとロベルトは思いながらも、ここで引く事など出来なかった。
せめて、レティシアの1番弟子でも良いからライムンドに認めさせようと剣を振るった。
静かな訓練場に二人の剣が打つかる音が鳴り響く。
どれ程の時間打ち合っていただろうか、ロベルトの真剣な目に、ライムンドは彼のレティシアへの思いが本物である事に気がつく。
嫌…もとから分かっていたのだ…ライムンドは。
ロベルトとレティシアが想い合っている事を。
「何故…お前なんかの為にレティは泣くんだ
何故、お前の事が好きだと…泣くんだっ」
何故、俺ではないんだ!
「ぽっと出のお前が何故レティの心を奪ったんだ!!」
剣をぶつけ合いながらライムンドは悲痛な顔でロベルトに叫ぶ。
ずっと好きだったのは自分だったのに…
子どもの頃からライムンドの一番はレティシアだった。
自分の事を好きになって欲しかった、だけどレティシアの心は憎くも、ロベルトのものになってしまった。
そんなライムンドの言葉にロベルトは驚いた、レティシアが自分を好きだという事実に。
「な…!?」
レティシアはライムンドと結ばれたと勘違いをしていたのに、その言葉を聞いたロベルトは僅かな希望を胸に抱いた。
だが、ライムンドはそんなロベルトに畳み掛けるように剣を打ち付ける。
「レティを泣かすお前など彼女には相応しくない!身を引けっ!」
「くっ……絶対に嫌だと言ったら?」
レティシアが自分の事を好きだと知った今、絶対に諦めないとロベルトは誓った。
「ここでお前を倒すだけだっ!」
ライムンドの一撃がロベルトに降りかかる、だが二度も同じ攻撃を受けてたまるかと、ロベルトは即座に剣でライムンドの剣を弾き飛ばした。
カッン!!……ザシュッ………
ライムンドの剣は手から離れ宙を舞って、地へと刺さった。
「……俺に勝つとは、良くやったな…剣の腕だけでは俺はレティよりも強いのに」
魔法込みで戦ったらレティの方が俺より強いが、と笑ったライムンドは刺さった剣を抜いてロベルトを見つめた。
「ロベルト・ディアス、俺に誓え。
絶対にレティを泣かさないと、幸せにすると」
その言葉にロベルトは騎士の礼をして言葉を続けた。
「……私は、ロベルト・ディアスの名にかけて、二度とレティシアさんを泣かさないと誓います……そして絶対に幸せにすると」
それに満足したのかライムンドはロベルトから顔を背けポツリと呟いた。
「レティは家に帰った………馬を貸してやる早く誤解を解いてやれ」
「ありがとうございます…」
そしてライムンドはロベルトに背を向け訓練場を後にした。
そんなライムンドの背にロベルトは長く礼をした。
ロベルトは知ったのだ、ライムンドが心の奥底からレティシアの事を愛していた事を………。
そして自ら身を引いてくれたのだと。
最後の弾いた剣はとても軽かった、初めに脇腹に受けたものとは程遠い程に。
ロベルトは気づいたのだ、ライムンドは最後手を抜いたのだと。
「レティシアさんより剣の強い殿下に私がまぐれで勝てるわけない…」
ワザと負けライムンドはロベルトにレティシアをたくしたのだ。
「レティ…………幸せになれ……心の底から愛してる」
例え隣にいるのが自分でなかったとしても、レティが幸せなのが俺の幸せだとライムンドは自室で、誰にも知られずに涙を流した。
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