戦闘レベル0の若返り錬金術師

冨山乙女

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【最弱】な冒険者パーティー

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  【ディアーヌ王国】。
  《魔導文明ディアーヌス》の流れを受け継ぐ、《魔導王国》。ここには、《魔法》のあらゆるモノが揃っていた。
  【王立魔導学院】では、《魔法》のエキスパートを教育し、【錬金術アカデミー】では、《錬金術》を探究出来る。【王立魔導学院】を卒業すれば、《王宮魔導師》や《魔導師ギルド》への就職が約束され、【錬金術アカデミー】を卒業すれば、《錬金術師ギルド》、《商業ギルド》に登録出来、《アトリエ》を持つことが出来る。どちらも、『将来、食いっぱぐれることはない』と大人気だった。
  ただ、何事にも例外はあるものだ。

  王都近郊【はじまりの森】
 「カロス!そっちに行ったわよ!」
  赤毛の少女が《森ウルフ》を弓矢で誘導して、藪に身を隠す。
 「・・・・お、おぅ。ま、任せ、とけ!!」
  黒髪の少年が剣を正眼に構える。近くの木の陰に隠れていった栗毛の少女が《森ウルフ》が、黒髪の少年に飛びかかる寸前で、手にしていた杖を《森ウルフ》に向けて、
「《ファイア》」
と小声で呟いた。杖から小さな炎の球が出て、《森ウルフ》の前の土に被弾した。
「《ブースト》」
  黒髪の少年が剣と自分の足に魔法を付与して、《森ウルフ》の首筋に向かって跳躍し、剣を突き刺した。《森ウルフ》は暴れ、黒髪の少年は弾き飛ばされた。《森ウルフ》は最後の力を振り絞って黒髪の少年と栗毛の少女に突進してきた。
「ひぃやぁぁぁっっ!?」
 栗毛の少女は背中を見せて逃げようとした。
 カチッ!!
 微かな音がして、《森ウルフ》が吹き飛んだ。周辺の土や木も綺麗に無くなっている。
 「エミリア。大丈夫?」
 赤毛の少女が駆けて来て、栗毛の少女、エミリアに声をかける。
 「う、うん。大丈夫・・・・・。!!」
 エミリアは赤毛の少女、ミランダの鞄から覗く、《森ウルフ》の首を見て顔をひきつらせる。
 「ミランダ。石ころに魔力注いでおくなよ!」
 カロスが黒炭と化した剣を引っ提げてやって来て文句を言う。
 「ごめん、ごめん。でも、リリアの【依頼】は達成したよ」
 ミランダはそう言って鞄を叩く。
 「そんじゃあ、街に帰りますか!!」

 街に戻った3人は、王宮魔導師のローブを身に纏った同年代の少年少女達の視線から逃れる様に《冒険者ギルド》に入った。
 王都には2つの《冒険者ギルド》があり、王城へ続く小高い丘の麓にある広場にある、《冒険者ギルド連合組合》は巨大施設で中小都市が、すっぽりと入っている。
 《宿屋》から《銀行》、《酒場》、《鍛冶屋》、《雑貨屋》、《魔法雑貨屋》、《錬金術工房》と言った冒険に密接する施設から、《魔獣解体屋》、《素材鑑定・回収窓口》と言った冒険後の所謂、『汚れ仕事』請負人の施設も存在する。勿論、ギルドとしての《解体部屋》や《冒険者窓口》も備わっている。 
 3人は足早に、《魔獣解体屋》に向かった。
 「親父さん。今日も宜しくお願いします!」
 カロスが声をかけ、ミランダがカウンターに《森ウルフ》の死骸を置く。エミリアの顔がひきつる。
 「またか。いい加減、自分らで『解体』出来るようにならないと、《ひぐらし組》の異名を払拭出来ないぜ?」
 解体屋のギルの言葉に、ギルド内に冷笑が起こる。カロス達は居心地の悪さに、ギルにお金を渡し、ギルドを後にしようとする。
 「【クエスト】の報告をお願いします!」
 窓口から、受付令嬢の怒声がカロス達に響き、再びギルド内に冷笑が起こった。
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