戦闘レベル0の若返り錬金術師

冨山乙女

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【調合】【錬成】専門の新人錬金術師

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 私は自宅兼《錬金術工房》の一室『作業部屋』で、乾燥させた薬草をすり潰しながら、窓の外に目をむけた。
 「もう、夕方か。カロ君達遅いなぁ!!」
 私は錬金鍋にすり潰した薬草と、ろ過して不純物を取り除いた魔獣の血を入れて、ゆっくり鍋をかき混ぜる。
 「何か、あったのかなぁ?《森ウルフ》の牙と毛皮は今日中に欲しいんだけどなぁ・・・」
 独り言を言いながら、火加減を調節する。ゆっくり、丁寧に焦げ付かせないように。
 窓の外が暗くなった頃、鍋を火からおろし、粗熱をとってから瓶詰めしていく。
 「遅いなぁ。どうしちゃったんだろう?・・・・!!もしかして、怪我して森で動けなくなってる、とか。様子、見に行ったほうがいいかな?ギルドに」
 私は作業部屋を出て、玄関に向かう。その際、居間のソファーで寛いでいたお母さんに、
 「リリア。おはよう!!」
と皮肉を言われた。いつものこと、気にしない気にしない。
 ドンドン!!
 玄関の扉に手をかけようとしたら、扉を強く叩く音にびっくりする。隣にはお母さんが営んでいる薬と錬金雑貨のお店があるので、お店のお客さんかもしれない。急いで開けると立っていたのは、カロ君達だった。
 「カロ君、ミラちゃん、リアちゃん!!遅いから心配したよ!!!」
 私はミラちゃんとリアちゃんに抱きつく。でも、ミラちゃんはうつむいてるし、リアちゃんは半べそ状態だし、カロ君は蒼白な顔してるし、何事?
 「リリア。ごめんな!!」
 「カロ君達が無事なら、それでいいよ。それで、牙と毛皮は持って来てくれた?」
 私は手を差し出す。
 「リリアちゃん、ごめん、なさい。先に請けてた【森ウルフ討伐】のクエストが、期限切れを迎えてたみたいで、違約金替わりにって・・・・」
 リアちゃんの声は途中から小さくなった。ミラちゃんがリアちゃんを抱きしめて、
 「請けた覚えないって、抗議したんだけど。カロスの鞄から依頼書が出てきて、《森ウルフ》の死骸没収された!」
と言って悔しそうな顔でうつむく。私は小首を傾げて、カロ君を見つめる。思考がついてこない。
 「請けた覚えないんだ。なんで、俺の鞄に依頼書が入ってたのかも。だって俺達、依頼主にお前の名前がある依頼しかしてねぇし・・・・」
 カロ君は必死に弁解してるけど、私の耳には入ってこない。牙と毛皮がないと、【錬成】の依頼が出来ない。
 「私、ギルドに抗議して来る!!」
 私は玄関を出ようとして、後ろに引っ張られる感覚に後ろを振り向いた。お母さんが私の腕を掴んでいる。
 「抗議しても無駄だろう。ギルド連合の総意にしてやられたのだろうからな」
 「お母さん、何落ち着いてるの?《錬金術師ギルド》で請けた依頼、出来なかったら違約金がぁぁぁぁ!!」
 お母さんはパニックに陥る寸前の私に、お金の入った袋を差し出す。
 「何?」
 「お前が請けた依頼、【牙の守り】、【毛皮のマント】、【レッドポーション】の報酬だ」
 なんで・・・・?私、まだ納品してない。【調合】依頼は終わってるけど、【錬成】依頼は手付かずのまま。
 「リリア。お前、依頼書をよく読んだか?」
 呆然としていると、お母さんに問いかけられた。
 「読んだよ。【牙の守り】には《硬い牙》って書いてあったから、カロ君達に《森ウルフ》の牙を採って来てって依頼出したんだし」
 私の答えにお母さんはため息を吐く。
 「採取に他人を使っているから、そんな勘違いをしたまま、質の悪い品を納品するポカを繰り返していた訳だ」
 お母さんはそう言うと、奥の資材部屋から《森ウルフの牙》と《灰色オオカミの牙》を持ってきた。
 「カロス。これを斬ってみろ。まずは、《森ウルフ》からだ」
 お母さんが牙を放る。カロ君が短剣を無造作に振るうと、牙は真っ二つに斬れた。
 「「「「うそーーー!!」」」」
 4人揃って叫ぶ。
 「次は《灰色オオカミ》だ」
 お母さんはそう言うと再度、牙を放る。カロ君は今度も短剣を無造作に振るう。
 キィーン!!
 甲高い音がして、牙ではなく短剣が折れた。
 「「「「なんでーーー!!」」」」
 私達4人の絶叫をお母さんはため息を吐きつつ、冷めた目で見ていた。
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