最弱職な彼にも栄光あれ!

夜ヶ崎 雪

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第1章 銀狼族の落ちこぼれ

自己紹介 前半

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「お、お兄ちゃん!? な、何やってるの!?」

 他の生徒が全員既に着席している中、その声の主ーーアリスは未だ立ったまま、驚いたように叫ぶ。

「何って先生に決まってるだろ。それと学校ではお兄ちゃんはやめろ先生と呼べ。後、敬語使え」
「えっ…………えぇ……?」

 未だに混乱している様子で、アリスは席に着く。俺達のやり取りに教室が少々ざわめくが、そんなクラスに対して俺はパンパンと手を叩いて静かにさせる。

「悪い、そいつは俺の妹だ。……義理だけどな。多分、ほとんどが初対面だろうが仲良くしてくれると助かる」

 俺の言葉に生徒達は素直に頷いてくれたが、アリスだけは苦々しい表情で俺のことを見ていた。

 俺は所謂捨て子という奴だ。
 本当の両親は、俺が物心つく前にフラフラとどこかに行ったまま蒸発してしまったらしい。一攫千金を狙ってどこかのダンジョンに潜ったまま帰らぬ人となってしまっただとか、父親の方が貴族の娘と不倫して、その後血で血を洗うドロドロな修羅場展開になっただとか、噂は色々と聞くが本当の所は誰も知らないらしい。
 まあ別にだからなんだって話だけどな。顔も知らないような親に興味なんて持てる訳ない。
 ただ、俺の事を拾ってくれたアリスの両親には感謝しているし、本当の両親のように慕っている。
 もちろん、アリスは俺にとって可愛い妹だ。勿論喧嘩くらいよくするが、兄妹仲は悪くない。寧ろ良すぎるくらいだ。

 そんな可愛い妹がやっと席に着いた所でクラス全体へと向き直る。
 そして、コホンと咳払いをした後。

「これから3年間お前らを教えることになった担任のハルトだ。ちょっと前まで商人をやってた分、人に教える経験なんて殆どない。不慣れな所もあるかもしれないがよろしく頼む」

 自己紹介をした後、クラス全体を見渡すと、ポニーテールの女の子が手を挙げているのが見えた。

「ん。どうした?」
「先生先生! ずっと気になってたんですけどそのカッコいい髪は何ですか?」
「ああ、これか? 生まれつきこうだから何故かは知らん。……羨ましいか?」

 俺の問いに一斉にクラス全員が勢いよく頷き始める。……妹のアリスも含めて。
 お前は普段から見慣れているだろ……

 先程ポニーテールの子が言ったように俺の髪の色は少々変わっていて、どうやらツートンヘアーというものらしい。右側の髪は銀狼族特有の銀色をしているのだが、左側は真っ黒な黒髪をしている。俺のこの髪を初めて見る奴らは今みたいに皆、目をキラキラさせて羨ましがってくる。
 俺的には、半人前の証しみたいで嫌なんだけどなぁ、これ。髪の色を変える魔道具でもあればいいんだが。

 次に活発そうなツインテールの子が手を挙げる。

「先生先生! 先生ってすっごく若いですよね! 何歳ですか?」
「16。お前らの四つ上だな」

 俺の年齢にクラスから歓喜の声が上がる。やはり、生徒としては年老いた先生よりも若い先生の方が良いのだろう。
 俺だっておばさん先生よりは若い女の先生の方が遥かに嬉しいからな。美人だと尚良い。

 更に別の生徒が手を挙げる。

「先生! 商人やってたって言ってましたけど、やっぱり商人って儲かりますか!?」
「んー、そうだな。儲かる奴はかなり儲かるな。俺も実際かなり額をこの歳で稼いでるしな」
「おお!!」

 途端、その子の目つきが変わった。例えるなら獲物を見つけた時のモンスターの目だ。将来有望だなこの子、男は金だっていうことをよく分かってる。男は女を顔で選び、女は男を金で選ぶ。いい言葉だな、正に今の状況にぴったりだ。
 思わず愛人候補にしてあげようかと思ったが、アリスがとんでもない目でこちらを睨んできているのでやめておくことにした。

 冒険者の中でも遥かに高い知能を持つ銀狼族の中でも飛び抜けて俺は知能が高い。そのお陰か、どうやら俺には商才があったようで、商人としてはかなり成功している。
 俺は魔道具を作れるような大きな魔力はないが、世の中の政治的混乱、その年の作物の収穫量、人々の流行り廃りなどを読んで、需要がありそうなアイテムを助言、考案したり、新しい商売を考えるのが得意だった。
 また、この里のみならず他の街の観光事業にも口を出したりして、それらが面白いようによく当たるのだ。

 そろそろ俺への質問もないようなので、生徒達の自己紹介に移る。
 まず始めに、腕に包帯を巻いた少女が華麗にローブを翻しポーズを決めた。

「我が名はアリシア! 我を差し置いて魔王などと偉ぶっている人類の敵を討ち滅ぼし、次期魔王となる者!」

  ……どっから突っ込めばいいんだか。
 まあ、アリスを除いたクラスの表情を見るにきっとこれが平常運転なのだろう。

「……とりあえず、その腕の包帯は? 怪我とかなら治してやるけど」
「ふっ、これは呪いです。太古の昔に邪龍にかけられし呪いが今尚、我が腕を蝕んでいるのです」

 ほう、成る程。

「そうか、安心しろ。世界最高とも言われるハイプリーストと俺知り合いだからそいつに解呪を頼んでやる。だからその呪いともおさらばだな」
「えっ!? …………いや、その、これは強力な呪いだから……いくらなんでも解けない、と思われ……」

 先程までの荘厳な雰囲気とは一変してアリシアと名乗った少女は俺の言葉に慌て、手をわちゃわちゃとさせる。
 ……少しからかい過ぎたか。クラスの皆はなんだか苦笑いしているし、後ろの席のアリスはドン引きの表情でこちらを見ている。

 王都にいる変な名前の勇者候補曰く、こういうのって確か、中二病っていうんだったか?
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