暗黒騎士の大逆転

モト

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第4章

課外授業 その四

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 アルマーニャ村の岩場浴場に作られた滑り台風呂。以前に存在したものから大幅に拡大され、はるかに高く、湯の流れも滑走速度も段違いである。
 その滑り台をマリベルとパトリシアは絡み合いながら滑り落ちていく。

 滑り台は急角度な上に急旋回。二人は足を下にしてくっつき合っている。狭くて姿勢を変えられず減速しようがない。

「みゃああああ!」
「きゃああああ!」
 二人の悲鳴が岩場にこだまする。

 猫魔族のマリベルは本来であれば極めて高い運動神経を持ってはいる。しかしパトリシアと裸で密着しながら滑り落ちていくという状況に訳が分からなくなっている。ずっと魔装の中で過ごしてきたマリベルには人とこんなに近づくなんて絶えてなかったのだ。

 マリベルは怖くてたまらない。急カーブのたびにパトリシアからしがみつかれるのがとりわけ怖い。滑り台からはみ出して落ちそうな恐怖を感じる。こんなの滑り台じゃなくて処刑台だ。高すぎて速すぎる。むちゃくちゃだ。ドワーフたちはいつもやりすぎる。大火山作戦のときだってちょっと噴火させればよかったのに村中が溶岩流で埋もれてしまった。あのときはとても怖かった。

 でもマリベルには怖いだけじゃない気持ちも湧いている。胸の中が弾むような、恥ずかしくてたまらないような、今まで知らない気持ちだ。パトリシアと会うまでは知らなかった気持ち。それがまたマリベルを混乱させる。

 滑走速度がどんどん増していく中、マリベルがなんとかまともな姿勢を取ろうと動く。その手がパトリシアの脇をこすった。

「く、くすぐったいですわ!」
 パトリシアがじたばたする中、急カーブに突入する。二人は姿勢が乱れ、カーブの勢いでくるりとひっくり返った。今度は二人とも頭が下になってさらに加速する。

 滑り台は連続ループに入った。景色がぐるぐると回り続ける。遠心力が二人をぎゅっと押し付けあう。マリベルとパトリシアの目もぐるぐるだ。
 速度が倍にも達した頃に滑り台は上昇へと転じた。ジャンプ台に突入する。

 もはや言葉を出すこともできず、二人は空へと放り出された。水滴の弧を引きながら夕焼けの空を二人は飛んでいく。

「「——!!」」
 二人は放物線を描いて丸風呂に落ちた。滑り台風呂のゴールだ。高く白い水しぶきが上がり、二人は深く沈む。
 水中に落ちるとマリベルは恐怖で身動きが取れなくなる。暗黒瘴気が重くこもって身体がこわばってしまうのだ。

 口からこぽこぽと小さな泡を吹きながら沈んでいくマリベルをパトリシアが両腕で掴み、抱きかかえて泳ぐ。二人とも水面に顔を出した。パトリシアはぜいぜいとあえぐ。

 パトリシアはマリベルを抱えて泳ぎ、丸風呂の端までたどり着いた。二回目だから慣れたものだ。

 息も絶え絶えな様子のマリベルがつぶやくように話し始める。
「それでね…… 滑り終わったら…… お姉ちゃんが…… 話してくれたの……」
 しばらく喘ぎ、なんとか落ち着いてから、
「……洞穴の中の川を流れ落ちていった黒猫剣士はね…… 気が遠くなってしまったの。目を覚ましたらね、小さな龍が目の前にいたの。ぽたぽた濡れた火の龍、サラマンダーの子だよ。サラマンダーだけど火をまとっていなかったの。おぼれていた黒猫剣士を助けるために川に入ったからだって黒猫剣士にはわかったの。サラマンダーの子はね、黒猫剣士が生きててよかったって明るく笑ったの」

「優しい子でしたのね」
 一息ついてからパトリシアが言うと、
「うん。パティみたい」
 なにげなくマリベルが言う。
「そ、そうですかしら!?」
 パトリシアの顔が真っ赤になった。

 それからしばらくマリベルは黒猫剣士の話を語って、パトリシアはまた熱心に聞き入った。そして終わりのころ合いで声がかけられた。

「とびきりの滑りだったでしょう。帝国一、いえ世界一と自負しております」
 ドワーフのビジェンだ。にこやかに立っている。しっとり美しい布地のアズマ伝統衣装をまとった女性姿だ。

「やりすぎですわ! こんなの死んでしまいますわ!」
 パトリシアが激しく抗議する。

「そういう普通ではない出来事がお二人連れの方を熱く結びつけると大好評なのでございますよ」
 ビジェンが自信満々に言う。

 パトリシアは自分がマリベルをぎゅっと抱きしめていることに気づき、
「そ、そうかしら。そうかも……」

「お乗りになったお客様はお二人が初めてでございますが。上手くいってなによりでございます」
 しれっと告げたビジェンは、
「ところでその小さなお嬢さんは……? ザニバルの旦那はどうなさったので?」

 マリベルは何も言おうとしないのでパトリシアが答える。
「マリベルですわ。あの、その、ザニバルの家に住んでいるのですわ」
「さようでございますか」
 ビジェンは余計な詮索をしないことにしたらしく、それ以上は質問してこない。

「お風呂を上がられましたら、お食事をどうなさいますか。とっておきの料理をご用意しておりますよ」
 ビジェンが尋ねる。

 マリベルのお腹が鳴った。
「食べるもん。お腹減ったもん」
 恥ずかしがらずに堂々と言う。同じく空腹だったパトリシアは自分のお腹が黙っていてくれて安堵する。

「ザニバルの旦那はどうなさいますかね。いつも通りおひとりでお召し上がりですか?」
「いらないもん。パティとマリベルの分があればいいもん」
「さようで。それでは外でお待ちしております」
 ビジェンは疑問に思ったようだが、口には出さず去っていく。

 二人だけになって、パトリシアがマリベルをじっと見る。
「やっぱりマリベルがどうしてここにいるのか、ザニバルとどんな関係なのか気になりますわ……」

 マリベルは体をこわばらせ、どうごまかそうかと頭を回しかける。だがパトリシアは続けた。
「気になりますけど、マリベルは言うのが嫌なのでしょう? でしたら聞きませんわ。だって私たち、と、友達ですもの!」

「ともだち!?」
 マリベルは胸がずきりと痛む。顔をゆがませる。パティには本当のことを何も言っていない。ずっとだましている。それなのに。

 思い切って言ったパトリシアだが、マリベルの反応に慌てた。
「ご、ごめんなさい。厚かましかったですわね」

「そうじゃないもん……」
 マリベルの言葉は歯切れが悪い。

「そ、そういえば、ご飯が待っているんでしたわ! 急ぎますわよ」
 パトリシアは強引に空気を変えようとする。

 二人はかみ合わない会話をしながら脱衣所に戻った。そこにはザニバルの魔装が置かれたままだ。パトリシアはザニバルがずっと突っ立っていると思っている。

 パトリシアは無言のザニバルから見られているようで気になって仕方ない。ザニバルがいったい何を考えているのか聞きたいところだが、さきほどマリベルに「聞かない」と言ったばかりだ。だまってザニバルから見えない位置で着替える。

 着替え終わったマリベルは魔装の傍にやってきた。そのまま動こうとしない

「私、先に出ていますわ」
 マリベルはザニバルとの間でなにか話があるのだろうとパトリシアは気を利かせ、先に脱衣所を出ていった。

 一人になったマリベルは魔装に触れる。魔装は解けて暗黒瘴気に戻り、マリベルの身体に吸収された。たちまちバランの文句が始まる。

<ザニバル、あんまりじゃあないか! 離れすぎだ! 悪魔は憑依できなくなったら消えちまうんだよ!>
<しょうがないもん。消えなかったからいいじゃない>
<こんなこと二度と試すんじゃないよ! だいたいザニバルは——>

 まだまだ続くバランの文句に聞く耳持たず、マリベルは脱衣所を出る。パトリシアに合流し、ビジェンに案内されて宿に入った。宿には他の客がおらず、村のドワーフばかりだ。

 部屋に入ったパトリシアは今まで見たことがない調度に戸惑った。靴を脱いで上がり、床にそのまま座らねばならない。
 ビジェンがアズマ様式の温泉宿であることを説明し、くつろげる効能を説く。
 マリベルはかつて家族で来たことがあるから懐かしくはあっても驚きはしない。
 いつも父が仕事に忙しくて家族旅行などしたことがないパトリシアには温泉宿自体が初めての体験だ。

 アズマ様式の浴衣に着替えさせられた二人が座卓に着くと、ドワーフたちがたちまち料理の数々を座卓に並べた。

 お客様に大人気の名物料理だとビジェンが解説する。パトリシアが気になって聞いたら、ビジェンはあっさり二人が初の客だと答えた。
 自分たちは実験台なのではとパトリシアは疑うも、空腹に耐えかねて食べ始めた途端、実験は成功だと確信した。キノコや川魚など新鮮な山の幸が香ばしく味わい深い。いつも家で食べている帝都風の料理もまずいわけではないが、この料理には作り手の暖かな気持ちが感じられる。

 マリベルも小さな口で夢中になって食べている。美味しさのあまりか獣耳がぴょこぴょこ動いていてかわいらしい。

 二人がお腹いっぱいになると座卓は片づけられ、代わりに二組の寝具が敷かれた。これもアズマ様式で布団というものだとビジェンが説明する。
 マリベルが小さくあくびをして布団にもぐりこんでいった。

「え、え、え~っ! 泊まるんですの? 無断外泊はまずいですわ! 叱られますわ! いえ、そんなことより二人っきりは早すぎですわ!」
 パトリシアは目を剥く。

「眠いもん。おやすみ」
 マリベルは布団に身体を横たえ、目を閉じてしまう。ビジェンも挨拶をして退出していった。部屋は灯りを消されて暗くなってしまった。マリベルはたちまち寝息を立て始める。

 日が落ちたとはいえまだ夜は浅い。仕方なく布団に入ったパトリシアは一日の興奮と疲れすぎで全然眠くなれない。暗い天井の木目をぼんやりと眺める。思い返すに今日はとんでもない一日だった。学校からいきなり温泉に来て、ザニバルとマリベルから黒猫剣士の話をたくさん聞いた。忘れず脚本にまとめなきゃ。

 パトリシアがとりとめなく考えていたら布団のこすれる音が近づいてきた。パトリシアの心臓が大きく跳ねる。寝ているはずのマリベルが寄ってきているのだ。

「マリベル!?」
「お姉ちゃん……」
 マリベルは寝ぼけた声だ。

 マリベルはパトリシアの布団に入り込んできて、パトリシアにくっついた。さらにパトリシアの身体の上へと登ってくる。パトリシアは事態に動転してしまって、身体がまるで金縛りにでもあったかのようだ。

 パトリシアの上に登りきったマリベルはそのまま丸くなってすやすやと寝てしまった。

「な、な、なんですの~!?」
 パトリシアは心の中で叫ぶ。
 小さなマリベルはそんなに重くないが、熱い体温が伝わってくる。穏やかな寝息からマリベルが安らいでいるのも分かる。獣耳を垂らして寝入っているさまはあまりにもかわいらしい。
「こんなの眠れませんわ~!!」
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