怪演!ゴーストレストラン

日向コタ

文字の大きさ
9 / 25
第2章 洋食亭ゴースト 怪演!

3.配達員「零」

しおりを挟む
 次の日、学校が終わると光太と零はキッチンに集まり、この日の仕込みをしていた。そして、光太はハンバーグの生地をこねながら零に尋ねた。

 「今日は零が配達の番だけど、大丈夫なの?少し足とか透けてるじゃん。幽霊ってバレたらヤバいんじゃない?」

 「たしかに今は透けてるけど、透かないようにすることもできるんだよ。」

 「え!じゃあ普通の人間みたいな見た目にもなれるってこと?!」

 「そうそう、見てて、、」
 そう言うと零は、しばらく目をつむっていた。すると、みるみるうちに足の透明感がなくなり、リアルな足になっていった。光太が驚き、唖然としていると零は笑っていた。
 「さ、早く準備しないと開店時間が来てしまうよ!」
 零にせかされると光太は我に返った。

 「しかし、幽霊ってすごいな~。」
 光太は思わず呟いていた。

 営業2日目は、初日ほどではないが2件の注文が入った。1件はOL風の女性からで、もう1件も若い女性からの注文だった。
 SNSで注文を受け付け、料理の写真や調理風景を投稿していたため、若い年齢層からの注文が多かった。そして、営業2日目に投稿した写真にコメントが投稿された。
 「クリームパスタ美味しかったです!」
 コメントを見た光太と零は小さくガッツポーズをした。実店舗を持たない2人のお店では、このようなコメントがとても励みになると実感したのだった。

 洋食亭ゴーストはその後も毎日数件の注文が入り、光太と零はわずか3時間の営業時間にも関わらず、忙しく、充実した日々を過ごしていた。営業開始から1カ月ほど経ったある日、注文者の住所を見た光太は驚いた。それは実家からの注文だった。
 「ハンバーグとクリームパスタを1つずつ。あとコーヒーも2つお願いします。」
 と書かれていた。光太の両親はSNSをやっていないはずだった。注文してきたということは、勘づかれたのかもしれない。もしバレたらレストランを続けられないかもしれないー。光太の頭の中では様々な不安が駆け巡った。
 「でもさ、行くしかないだろ、お客さんなんだから。俺が行ってくるよ。」
 零はそう言うと、早速調理に取りかかっていた。たしかにそうだ。まさか親から注文が入ることは想定していなかったが、今はお客様なんだ。光太も零に続くようにして調理に取りかかった。
 料理が完成すると、零は自転車に跨がってこちらを向いた。すると、不安そうに佇む光太に向かって「大丈夫だ、うまくやってくる。」そう言うと、手を降りながら自転車をこぎ出した。

 「ピンポーン」零は光太の実家のインターホンを鳴らした。2階建ての一軒家で、リビングのみ明かりがついていた。しばらくすると、「はーい!」という声とともに玄関ドアが開いた。そこには光太の母親である美和が現れた。

 「ご注文の品をお届けに参りました。」

 「ありがとうございます。お代はいくらですか?」

 「2600円です。」
 美和は一度リビングに戻ると、現金2600円と小さな紙袋を持ってきた。

 「これ、よかったら食べて下さい。」
 美和から渡された紙袋には、ドーナツが2個入っていた。

 「ありがとうございます!戻ったら美味しくいただきます。またよろしくお願いします。」
 零は一礼すると、自転車に跨がり来た道を戻っていった。クッチーナに戻ると、零は光太に紙袋を渡した。

 「光太の母さんがくれたよ。ドーナツ好きなのか?」
 光太は紙袋を開けると、昔から大好きだったドーナツが2個入っていた。そして、角の方に小さいメモ用紙が折り畳んで入っていた。

 "レストランやってるんだってね。最近の光太はイキイキしているから、陰ながら応援してるよ。体には気を付けてね。"

 光太は胸が熱くなった。直接言ってもらうよりも、両親の気持ちが強く伝わってくる。きっと自分の高校生という立場を考慮してくれたのだろう。両親からの陰ながらの応援メッセージは、光太の胸に強く刻み込まれた。

 その頃、広と美和はテイクアウトしたハンバーグとクリームパスタに舌鼓していた。ハンバーグのフワフワな食感に溢れる肉汁。以前より美味しさを増しているが、一口で光太が作ったものだとわかる。「うまい」広は一言そう言うと、感心しながら食べ進めた。クリームパスタを食べた美和も絶妙な麺の茹で加減、濃厚でクリーミーなソースを絶賛した。

 「あの子達、本気で料理作ってるのね。光太が何かにここまで夢中になることなんて、なかったものね。」
 美和の目には光るものがあった。
 「そうだな。親としては一生懸命頑張る息子を応援するしかないな。陰でしっかり見守ってやって、何かあったら相談にのってやる。それくらいでいいのかもしれないな。」
 広は光太が着実に成長していると感じた。ここまできたら、好きなことをやらせてあげようー。二人は温かいコーヒーを飲みながら、ゆっくりと語り合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

処理中です...